- Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101290393
作品紹介・あらすじ
「老い」のために、少しずつ崩れ始めた肉体に戸惑う青年と、南国のリゾート地を突然襲った悲劇との交錯。-日常性の中に潜む死の気配から、今を生きる実感を探り出そうとする11の短篇集。小説家は、なぜ登場人物の「死」を描くのかという謎を、ノルマンディ地方の美しい風景の中で静かに辿る「『フェカンにて』」。経済のグローバル化のただ中で、途方に暮れる一夫婦を描く「慈善」など。
感想・レビュー・書評
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短編集だが、色々な手法を凝らしている。
これまでに味わったことのない短編集。
「鏡」「女の部屋」「母と子」は特に驚いた。
文学には程遠い自分が一番気に入ったのが「フェカンにて」
この短編の主役は、平野啓一郎先生ごい本人にとても近い。
私はご本人であろうと思い込んで読んでいた。
先生の作品である「葬送」にも触れられ、
私が先日読んで、どう読むべきか酷く迷っていたドフトエフスキーの
罪と罰にも触れていた。とても興味深い。
当たり前だが、私の軟弱な「あぁ面白かった。」という感想とは
かけ離れている。
読み方のレベルが違いすぎて溜息しか出てこない・・・。
この本を読んで、何故かもう一度平野啓一郎先生の「決壊」を読まなくては!と思った。そろそろ再読してもいい頃なのかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
実験やん笑
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[初版(第1刷)]平成21年8月1日
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作者の作品を読むのは、「決壊」に続いて二作目。難しい、難解。。読みやすいのは、「義足」と「慈善」くらいか。(「義足」は、あの後藤健二さんの著作を参考にしてるそう。)
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「やがて光源のない…/TSUNAMI」
老化現象にまつわる個人的な話と大量死のスケッチが同時進行する
「鏡」
物理法則すら信用には値しないという考えへのある種の偏執
「フェカンにて」
英雄的な死に憧れをもつ小説家が思わず崖から飛び降りそうになる
「女の部屋」
同じ文章が7回、それぞれパターンの違う虫食い状態で繰り返される
「一枚上手」
貞操を証明するために携帯電話を交換して連休を過ごそうという提案
「クロニクル」
過去の男について饒舌に語る女たちだが結局は自分のことしか喋れない
「義足」
慣れた義足が泥にはまって抜けなくなり、ただのモノになってしまう
「母と子」
シチュエーションを異にして同じ行為が何度も繰り返される
「異邦人♯7ー9」
言葉もわからないまま海外出張に出向いた男の不安が見せる白昼夢
「モノクロウムの街と四人の女」
全体主義の街に現れた異物が全てを解放するどころか余計な混乱を招く
「慈善」
外貨預金で儲けた妻の賢しさが忌々しいのでヒューマニズムを持ち出し
もっともらしく批判する夫 -
書き手の透徹した視点が魅力的だった。今度はもう少し長いのを読もう
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死とはつまり。
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知らない言葉をたくさん使っているからたぶん好き。大変日本語の勉強になる。電子辞書片手に、時たまメモをとりながら、楽しい国語の時間となる。
これは短編小説集だが、その中で言葉を並べ、物語を作るという作業で大変冒険しているのがわかる。成功しているかどうかは別として、形式上でもこのくらい新しいことしてみるのは若いなぁとうれしく思う。