英国機密ファイルの昭和天皇 (新潮文庫 と 20-1)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101291819

作品紹介・あらすじ

世界帝国維持のため、インテリジェンスを駆使するイギリスは、アジアの新興国家・日本をも標的にしていた。とりわけ彼らが注目したのが、天皇ヒロヒトだ。その名代として対英米戦回避を図った吉田茂、白洲次郎らの動きから、戦後の天皇退位計画、カトリック改宗説、皇室の資産隠匿疑惑まで、ロンドンに眠っていた英国機密文書をひもとき、現代史の闇を照射するノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 世界帝国維持のため、インテリジェンスを駆使するイギリスはアジアの新興国家・日本をも標的にしていた。とりわけ彼らが標的にしていたのが天皇ヒロヒトだ。その名代として対英米戦回避を図った吉田茂、白洲次郎らの動きから戦後の天皇退位計画、カトリッック改宗説、皇室の資産隠匿疑惑まで、ロンドンに眠っていた英国機密文書をひもとき、現代史の闇を照射するノンフィクション。(解説文抜粋)

  • 日米関係ではなく日英関係で戦前戦後を見た本。既知の内容と目新しい内容が混在しているのがもったいない。興味深かったは以下の点。
    いわゆる「吉田・イーデン秘密工作」は吉田茂の独断専行というより、宮中とつながった動きであったらしい。外務省を飛ばしていたのでイギリス側では公式なのか測りかねたっぽい。
    戦後、昭和天皇の退位が取りざたされた際に秩父宮妃を摂政にすることが検討されるほど高松宮が忌避されていた(反動分子とのつながりを懸念)。
    戦後、昭和天皇はバチカンの威光をも生かそうと運動していたらしい。

  • 新書文庫

  • 太平洋戦争では何かとアメリカとの対立がメインで語られますが、イギリスの外交と戦略をこの本では書いています。
    イギリスがなぜ、皇室を留学させたがるのか、また白洲次郎はケンブリッジに留学してますが、彼は開戦前には吉田茂の元で日英の和平工作に走り、終戦後はイギリスの企業の仲介となって暗躍します。これもケンブリッジ大学での繋がりが強いというのもあったと思います。
    また、駐日大使についても書かれていて、中でも開戦前のクレーギー大使が最終報告で英米の日本への外交を批判し、干されてしまったという話は、日本人としてはよく言ってくれたなあ、と思ったりもしました。

  • 広田こうきは、右翼の頭山満と同郷で、関係が継続していたかもしれない。
    吉田茂はイギリスで和平交渉をしたが、日本はどんどん戦争へ向かうので、英国政府は吉田の権威を疑念しした。その際吉田は、自分があるグループと志を同じくしている、ということを示唆していたが、それは十中八九、昭和天皇を中心とする新英派である。
    「われわれは、どんな犠牲を払ってもこの島を守る。われわれは海岸で戦い、水際でも闘う。われわれは野で、街頭で、丘でも闘う。われわれは決して降伏しない。たおて、この島やその大部分が征服され飢えに苦しもうとも、わたしは降伏を信じない」これはチャーチルのことば。
    ★同じことを日本軍人が述べたら一億玉砕へとなるわけだが、これが国民性なのだろうか。
    昭和天皇と木戸内大臣は、終戦直前に皇室資産を海外に送金し、隠匿?した。
    昭和天皇は、明治大帝より受け継いできた海外領土を失ったことがつらい、と述べたことがある。
    結局、開戦前の日本の和平派、穏健派は、海外経験もあり頭もよかったが、弱かった。それが問題。

  • ■ 英国の機密文書からみた昭和天皇を中心とした昭和日本。そこから紐解かれる話が面白い。
    ・白洲次郎は亡くなる数年前、彼は自宅にあった書類を全部燃やしている。自分の過去はむろん、その活動の痕跡すら消そうとした真意は・・・。
    ・太平洋戦争の歴史を振り返ると、ほぼ英国の読み通りの展開になっている。
    ・秩父宮の英国留学を実現させ、日英友好を演出し、白洲のような将来国に大きな影響を与える若者を迎え入れ、英国式教育を仕込む。一方、全く同じ時期に将来の対日戦争計画を作成し、日本人を「黄色人種」と言い放つ。見事なダブル・ストラテジー(二重戦略)だ。一見穏やかで洗練されているように見える紳士こそ、裏で何をやっているかわからないという見本である。
    ・英国大使クレーギーは、新外相松岡洋右に対し、政治信条や外交方針こそ違え、政治家としての松岡の気骨と誠実さを認めていた。
    ・チャーチルはドイツを破るため、何としてでも米国を引きずり込む決意でいた。真珠湾攻撃はその最高のきっかけを作ってくれた。
    彼にとって、平和を望む天皇や穏健派などはハナから眼中になかったのだ。
    ・1942年夏、英国に帰国したクレーギー大使は政府にファイナルレポートを提出したが、その中で英米政府への猛烈な批判が展開されており、当時のチャーチル内閣に大きな波紋を引き起こした。
    ・近衛首相とルーズベルト大統領のトップ会談計画は天皇自らの指示だったこと、日米交渉で米国が何らかの妥協をすべきと報告しながら本国が無視したこと、また、日本が渡した最終案は天皇と穏健派の最後の賭けであったが、それを拒絶した米国政府を強く避難していた。
    ・クレーギー「また、当時の日本について知っている者は、日本がハル・ノートを受け入れる可能性はないことはわかっていたはずである。もし、この時に米国政府が強硬姿勢を変えていれば、開戦を数箇月遅らせられたはずで、そうすれば、ドイツの欧州戦線の状況から、結果開戦を避けられる可能性が高まったはずだ。1941年秋の時点で、米国政府は日本の情勢を見誤っていたか、すでに日米開戦を決意していたかのどちらかである」
    ・戦後、吉田茂をはじめ、クレーギーと親交を結んだ者たちは、戦前彼が日本のために何をしてくれたかを忘れなかった。日本からの帰国後、チャーチルの怒りを買い、不遇な境遇であったことも知っていたはずだ。そして、彼の息子のビジネスを支援することで、その恩に少しでも報いようとした。
    ・現代は順風な時だけ親しく付き合い、逆境に置かれると交際を断ってしまう者が多い。それに比べ、古き良き日本人の気骨を感じさせた。
    ・英国をはじめとする極東委員会は、GHQが新憲法草案を作り、日本に押し付けた事情を把握していた。そして、彼らのあまりの理想主義が、いつか日本の外交や安全保障論議に混乱を引き起こす事も見抜いていた。
    ・1948年頃、天皇自ら地方を視察する「巡幸」も続いていたが、護衛という名目で進駐軍兵士が取り囲んでいた。いわば当時の天皇は物理的、精神的な軟禁状態に置かれていたのだ。
    ・マッカーサー「憲法は批判もあるが、ほぼ満足できるものだった。(将来は)他の人間が独断的に改正するより、日本人が自ら改正するのが望ましいだろう。そうでないと、日本人は憲法への信頼を失ってしまう」
    ・もし、昭和天皇が退位した場合、その後継となる幼い新天皇の補佐として、摂政設置が検討されたが、その候補者として秩父宮妃が上がっており、支持者も多かった。
    ・これは秩父宮は病気のため難しいので致し方がなかったが、本来選ばれるべき高松宮がいかに信用されていなかったかの証左である。
    ・白洲次郎「戦前の日本の会社の方が、個人主義を貫く人間が多かったが、戦後は護送船団方式で、皆がサラリーマン化したと嘆いた。」
    ・人物の目利きの基準として、白洲は、『自分の意を話せるかどうか』であった。
    ・白洲の友人や、英外交文書を通じて浮かび上がってくるのは「GHQに抵抗した唯一の日本人」「ダンディズムを極めた男」という一般に言われているイメージではない。それは、不幸な戦争で傷つき、英国との絆を必死に取り戻そうとした一人間の姿だった。
    ・「長州ファイブ」=若き日の、伊藤博文、井上馨、井上勝、遠藤謹助、山尾庸三
    ・戦後、クレーギーは日本人の戦犯(広田弘毅)を弁護する行動に出、それが原因で英国外務省と対立し、かつ、英国人捕虜虐待から反日感情が高まったいたなかで、より立場を悪くした。
    ・ところが、弁護した広田とクレーギーとは決して良好な関係ではなかったようだ。
    ・クレーギーは何故そういう行動にでたのか?「父によると、祖父は自分のプリンシブル(原理原則)に忠実な人間だったそうです。たとえ世間の反発を受けても、自分が信じた事は曲げません。周囲は日本の同調者と攻撃しましたが、それは違います」
    ・日米交渉中、国務長官ハルは最初から強硬1点バリではなく、妥協案も作成していたが、それを知った中国が強い抗議申込みをし、結果、撤回されていたという事実。

  • (欲しい!)/文庫

  • 知人が出ている... どんな関係なんだろう、と気になります

  • 対イギリス工作だとやっぱり出て来るのは吉田茂と白洲次郎か。あまり目新しい話はないが、駐日イギリス大使クレーギーには興味を惹かれる。

  • 2010/1/26
    知らなかったことがたくさん書いてあって、思ったよりおもしろかったけれど・・
    自分では絶対買わない本。
    (家族に勧められて読んだ^^;)

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