ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 589
  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101292342

感想・レビュー・書評

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  • 稀代のダメ男・ニシノユキヒコの日常を十人の女性が語る短編集。「女自身も知らない女の望みを、いつの間にか女の奥からすくいあげ、かなえてやる男。それがニシノくんだった」。彼はどの女性も不幸にしていない、だけど、読むごとに苦しくなるのはなぜだろうと思いました。

  • ニシノユキヒコはほんとにダメ男だ!
    けど、妙にセクシーである。
    ダメ男なのはわかってるのにいつのまにかはまってしまう女心は、とてもよくわかる。
    ダメ男なんだけど、悪人ではない。むしろ、自分にとても正直で、そういう意味では善人に近いのかもしれない。言うなれば、無意識さの悪、みたいなものだろうか。

    川上弘美さんの、温度の低い、なんだか乾いた雰囲気の文章が好きだ。
    ベースは恋愛小説だし、出てくる女たちは色んなかたちでニシノユキヒコに恋をしているのだけど、けして温度は高くない。
    最初から終わりを予感させるような冷たさがあって、ダメ男のニシノユキヒコが愛おしくなる。
    真性の女ったらしであるニシノユキヒコに一度でも触れた女たちは、ずっと好きなわけではないのに、彼のことを生涯忘れることはできない。

    人生の最初から最後まで、自分が本当に求めるもの(愛?愛すること?)を探し続けた、まさしく冒険のような彼の生きざま。(生きざまというほど格好良くはないのだけど。笑)
    映画版は竹野内豊がニシノユキヒコらしい。観てみようかな。あんなにイケメンじゃないほうが、逆に合う気がするけど。笑


  • とんでもない浮気男を取り合う10人の女の話だと思ってました。全然違いました。

    川上弘美さんの手にかかると、部屋に二人でいるだけ、ご飯を食べてるだけのシーンがとってもロマンチックな場面になる。さすがです。

    側から見ると順風満帆なニシノユキヒコくんの垣間見えるさみしさと、それに付随する10人の女たちの美しさと自立心。
    ぶどうという話がとってもすきです。
    飄々としている男を壊すような、自立した女になりたいな。

    出てくる女の人たちもみんなとっても素敵な人ばっかりなんだよな。憧れる。

    ただの下世話な話じゃなかったです。
    美しいけどさみしい恋物語でした。

    2018.01.31

  •  解説を読むと、このニシノユキヒコってとことん悪い男のように書かれているが、同性の僕から見れば、ちっとも悪い男には思えない。
     もちろん、問題はあるのだろうが、僕からすれば登場してくる女性たちにも充分に問題はあるように思える。
     ニシノユキヒコと同じ「男性だから」ということもあるのだろうが、やはりそれだけではないように思える。
     よく「ダメな男性を好きになる」女性は、とことんダメな男性を好きになるそうだが、そうなると、ダメな男性を好きになる女性特有の「ダメな女性」というものもあるのだろうし、もしかしたらここに登場してくる女性たちはその一部なのかも知れない。
     とまぁ、なんだかんだと理屈っぽく思考を巡らせてみたけど、結局はダメな男とダメな女が恋愛して、その恋愛が予想通り成就しない、というこれまたありふれた内容のお話だったのかもしれない。
     それにしては、随分と面白く読めたのは、やはり川上さん独自の匂いがプンプン香ってくる文章や単語、擬音の使い方がそこにあり、僕なんかはその香りに誘われてズズズと深入りしてしまう一匹のハエみたいなものだからだろう。

  • 語り手によって文章の雰囲気が少しずつ違うところがとても良い。

  • 現代の源氏物語という感じがする
    ニシノさんのかっこよさに痺れるのもよいが、でてくる女性陣をこの人苦手だな〜とか素敵とか考えて読むのも面白い

    私は断トツでマナミが好き
    おやすみを読むと切なくて胸がぎゅっとなる
    マナミは源氏物語でいう六条御息所ポジションかな〜

  • どうせ色気でも振りまいてなんて罪な男だと思っていた序盤から、いつしかニシノユキヒコが愛おしくてたまらなくなっていた。
    まるで、彼の彼女、いや、母にでもなったような。

    そして、読み終えたときにこの装丁の良さもわかる。

  • 主人公ユキヒコはザ・女たらし。
    ユキヒコに振り回される女たちと、好き勝手するユキヒコの話が連続していて、少しつまらなかった。

    が、

    ラスト2つの話では少しハッとさせられた。
    この2つの話のために、その前の8つの話はあったのかも。
    これまでの女達とは違い、ユキヒコを全然愛していない愛。中年になったユキヒコをみっともなく狂わせている20歳そこそこの愛との物語「ぶどう」は、ユキヒコの死という衝撃的な出来事が含まれているせいもあるけれど、明らかに異質。
    そして最後の「水銀体温計」では、時がさかのぼってユキヒコの大学時代に。結局は姉のことがユキヒコの人生にずっと呪いみたいに付きまとって、哀れな一生を終えることになってしまったんだろうなと再確認させる話だった。

    主人公は一応ユキヒコということになるのだろうが、すべての話を読み終えた今、主人公は一人に決められないのではないかという気もしてきた。
    つまり、主人公はそれぞれの女たち。
    ユキヒコと出会い、惹かれ、思い悩む女たちは、彼にすっかり主導権を握られているようだ。だけど、彼女たちは自分から彼に別れを告げ歩み去る。彼はどんどん遠くなる。確かに一度は彼女たちの人生を彩ったユキヒコだけど、遠ざかるにつれてどんどん色を無くしていく。そして、彼女たちの引き出しの中にたくさん入っているガラクタの一つになる。

    そう考えると、ちょっとむなしくなる。
    少年のころに受けた傷を抱え、屈折してしまったユキヒコという男を、心から理解しようとした女もいないし、そんな境遇、彼女たちにとっては関係ないのだ。ユキヒコは自分主演のドラマの、単なる相手役だったのだ。

    大騒ぎする恋が、滑稽にも思えてくる。

  • 「僕は勉強ができない」の秀美くんから、なぜかふと思い出して「ニシノユキヒコ」に至った私。
    川上弘美の筆致は好きだし、女性の“感じ”も好きだし、更にいうとフォントの「ふ」の字にもクラクラくるぐらい好きだ。

    しかし、ニシノユキヒコ、困った人。
    あらゆる女性が、どこかでニシノユキヒコを「赦し」ていることを、彼自身は気付いているんだろうか。
    最後にのぞみが言う、突然自分の世界に入っていってしまう男。そんな、自己愛のお話に読めてしまう。

    彼が最後に出会うのが、愛。
    彼女だけはニシノユキヒコを愛さない。
    どこか『パイロットフィッシュ』の七海を彷彿とさせる、少女の聖性を匂わせた女の子である。
    愛されないことに依存心を強め、聖性がある存在に崇高な感情を抱く。

    結局のところ、彼は冒険の中で自分自身を見出すことが出来たのだろうか。

    • 円軌道の外さん

      ミツキさん、はじめまして!
      関西出身で東京在住、
      読書は勿論、映画と音楽と猫には目がないプロボクサーです。
      遅くなりましたがリフォ...

      ミツキさん、はじめまして!
      関西出身で東京在住、
      読書は勿論、映画と音楽と猫には目がないプロボクサーです。
      遅くなりましたがリフォローありがとうございました(^o^)

      僕もどこか官能的な川上さんの文体が好きです。
      そしてニシノユキヒコ!
      ホンマどうしようもないヤツだけど、
      僕の亡くなった親友も同じタイプだったので
      なぜか憎めないのです。

      コレ、映画も観に行きました。
      小説とは違って、あえてニシノユキヒコを幽霊として先に登場させて、ユキヒコの葬式に集まる女たちとの恋を回想で描いていく形にストーリーを変えていて、
      これがホンマいい効果をもたらしてます。
      あと数々の名作映画へのオマージュや分かる人には分かるマニアックな遊び心が散りばめられていて、
      映画が好きであればあるほど楽しめる作品です。
      (ニシノユキヒコを演じた竹野内豊が、飄々としていて時折見せる寂しげな微笑みに切なさを感じさせて、まさにハマリ役でした)

      まったりとした空気感や淡々と流れる作りは観る人を選ぶだろうけど、
      個人的にはなかなかの傑作だと思ってます(^^)
      機会があれば是非是非。

      ではでは、これからも末永くよろしくお願いします!

      コメントや花丸ポチいただければ
      必ずお返しに伺いますので
      こちらにもまた気軽に遊びに来てくださいね。
      (お返事は仕事の都合によってかなり遅くなったりもしますが、そこは御了承願います…汗)

      ではでは~(^^)


      2015/06/20
  • 絶対に好きになっちゃいけないタイプ。ニシノユキヒコと、横道世之介。
    でもね、やっぱりこういう男魅力的。というか、こういう男を書く筆をもたせたら、川上弘美は秀逸なのだ。
    どうしてもてんの?(怒) どうして執着しちゃう?(寂) 理性、理屈と本能のあいだは何なのか? そういうことを、解りやすく書いたらきっととても単純でつまらなくなってしまう。だってある種の世の女は皆そういう男に惹かれる法則だから。
    その「間」をまるで説明臭くなく、のんびりと描く腕に楽しませてもらったよ。

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著者プロフィール

川上 弘美(かわかみ・ひろみ)
1958年生まれ。96年「蛇を踏む」で芥川賞、99年『神様』でドゥマゴ文学賞と紫式部文学賞、2000年『溺レる』で伊藤整文学賞と女流文学賞、01年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、07年『真鶴』で芸術選奨、15年『水声』で読売文学賞を受賞。ほかの作品に『風花』『どこから行っても遠い町』『神様2011』『七夜物語』『なめらかで熱くて甘苦しくて』『水声』などがある。2016年本作で第44回泉鏡花文学賞を受賞した。


「2019年 『大きな鳥にさらわれないよう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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