ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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本棚登録 : 3908
レビュー : 589
  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101292342

感想・レビュー・書評

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  • 稀代のモテ男・ニシノユキヒコの爛れた女性遍歴を、相手方の女性10人がそれぞれの視点で語り下ろすという連作。
    「稀代のモテ男の生涯」という意味では、源氏物語みたいなものなのだろうか。読んだことないからわかんないけど。

    非モテな私としては、恥ずかしげも文脈もなくさらりと中二みたいなことを言ってしまう感じとか、なんやかんや言って結局彼とそういうことになってしまう展開とか、いきなり始まる観念的かつ感応的なハルキスト的な問答に随分イラッとさせられました。
    非モテな私にはあまりはまらなかったわけですが、女性が読んだらどう思うんだろう。

    作中に登場する10人の女性にぜひ集まってもらって、ニシノユキヒコについて語りあってみてほしいと思った。
    はたしてそれが、「ニシノユキヒコファンの集い」になるのか。
    それとも「ニシノユキヒコ被害者の会」になるのか。
    私はそれを、ぜひ覗いてみたい。

  • ニシノユキヒコは、女の子の理想。
    見た目は、それなり、キスもさりげなく、セックスも心を癒す。そして優しい。
    10人の女性との恋物語。
    淋しく切ない恋。
    川上弘美のゆったりとしたすてきな時間を堪能できる作品。

    「おやすみ」
    わたしたちは愛しあいかけていた。けれども愛しあうことはできずに、愛しあう直前の場所に、いつまでも佇んでいた。

    「ドキドキしちゃう」
    夜の海が満ちて、あたしたちを沈めて、そうしたらあたしたちは小さな蟹になればいい。
    波がときおり大きな音をたてて、寄せてくる。海が大きく満ちてくる。夜の中で、あたしはいつまでも、ドキドキしている。

  • 川上弘美さんが描く純リアリズムの恋愛小説。年齢も様々な10人の女性たちが語るニシノユキヒコの物語。恋の相手に恵まれるニシノだけれど、それらはけっして長続きしない。それはそうだろう。「2人は末永く幸せに暮らしました」では恋愛文学にはならない。忍ぶ恋、禁断の恋、破滅的な恋こそが恋愛小説の王道だ。だから、この物語にはいつも別れが待っている。女たちは本質的な孤独がニシノに内在することに気づいてしまうから。その上に彼は絶対に叶うことのない、姉への恋愛感情までを秘めているのだから。寂しい、そして寂しさが似合う小説だ。

  • 現代の源氏物語という感じがする
    ニシノさんのかっこよさに痺れるのもよいが、でてくる女性陣をこの人苦手だな〜とか素敵とか考えて読むのも面白い

    私は断トツでマナミが好き
    おやすみを読むと切なくて胸がぎゅっとなる
    マナミは源氏物語でいう六条御息所ポジションかな〜

  • どうせ色気でも振りまいてなんて罪な男だと思っていた序盤から、いつしかニシノユキヒコが愛おしくてたまらなくなっていた。
    まるで、彼の彼女、いや、母にでもなったような。

    そして、読み終えたときにこの装丁の良さもわかる。

  • 主人公ユキヒコはザ・女たらし。
    ユキヒコに振り回される女たちと、好き勝手するユキヒコの話が連続していて、少しつまらなかった。

    が、

    ラスト2つの話では少しハッとさせられた。
    この2つの話のために、その前の8つの話はあったのかも。
    これまでの女達とは違い、ユキヒコを全然愛していない愛。中年になったユキヒコをみっともなく狂わせている20歳そこそこの愛との物語「ぶどう」は、ユキヒコの死という衝撃的な出来事が含まれているせいもあるけれど、明らかに異質。
    そして最後の「水銀体温計」では、時がさかのぼってユキヒコの大学時代に。結局は姉のことがユキヒコの人生にずっと呪いみたいに付きまとって、哀れな一生を終えることになってしまったんだろうなと再確認させる話だった。

    主人公は一応ユキヒコということになるのだろうが、すべての話を読み終えた今、主人公は一人に決められないのではないかという気もしてきた。
    つまり、主人公はそれぞれの女たち。
    ユキヒコと出会い、惹かれ、思い悩む女たちは、彼にすっかり主導権を握られているようだ。だけど、彼女たちは自分から彼に別れを告げ歩み去る。彼はどんどん遠くなる。確かに一度は彼女たちの人生を彩ったユキヒコだけど、遠ざかるにつれてどんどん色を無くしていく。そして、彼女たちの引き出しの中にたくさん入っているガラクタの一つになる。

    そう考えると、ちょっとむなしくなる。
    少年のころに受けた傷を抱え、屈折してしまったユキヒコという男を、心から理解しようとした女もいないし、そんな境遇、彼女たちにとっては関係ないのだ。ユキヒコは自分主演のドラマの、単なる相手役だったのだ。

    大騒ぎする恋が、滑稽にも思えてくる。

  • 「僕は勉強ができない」の秀美くんから、なぜかふと思い出して「ニシノユキヒコ」に至った私。
    川上弘美の筆致は好きだし、女性の“感じ”も好きだし、更にいうとフォントの「ふ」の字にもクラクラくるぐらい好きだ。

    しかし、ニシノユキヒコ、困った人。
    あらゆる女性が、どこかでニシノユキヒコを「赦し」ていることを、彼自身は気付いているんだろうか。
    最後にのぞみが言う、突然自分の世界に入っていってしまう男。そんな、自己愛のお話に読めてしまう。

    彼が最後に出会うのが、愛。
    彼女だけはニシノユキヒコを愛さない。
    どこか『パイロットフィッシュ』の七海を彷彿とさせる、少女の聖性を匂わせた女の子である。
    愛されないことに依存心を強め、聖性がある存在に崇高な感情を抱く。

    結局のところ、彼は冒険の中で自分自身を見出すことが出来たのだろうか。

    • 円軌道の外さん

      ミツキさん、はじめまして!
      関西出身で東京在住、
      読書は勿論、映画と音楽と猫には目がないプロボクサーです。
      遅くなりましたがリフォ...

      ミツキさん、はじめまして!
      関西出身で東京在住、
      読書は勿論、映画と音楽と猫には目がないプロボクサーです。
      遅くなりましたがリフォローありがとうございました(^o^)

      僕もどこか官能的な川上さんの文体が好きです。
      そしてニシノユキヒコ!
      ホンマどうしようもないヤツだけど、
      僕の亡くなった親友も同じタイプだったので
      なぜか憎めないのです。

      コレ、映画も観に行きました。
      小説とは違って、あえてニシノユキヒコを幽霊として先に登場させて、ユキヒコの葬式に集まる女たちとの恋を回想で描いていく形にストーリーを変えていて、
      これがホンマいい効果をもたらしてます。
      あと数々の名作映画へのオマージュや分かる人には分かるマニアックな遊び心が散りばめられていて、
      映画が好きであればあるほど楽しめる作品です。
      (ニシノユキヒコを演じた竹野内豊が、飄々としていて時折見せる寂しげな微笑みに切なさを感じさせて、まさにハマリ役でした)

      まったりとした空気感や淡々と流れる作りは観る人を選ぶだろうけど、
      個人的にはなかなかの傑作だと思ってます(^^)
      機会があれば是非是非。

      ではでは、これからも末永くよろしくお願いします!

      コメントや花丸ポチいただければ
      必ずお返しに伺いますので
      こちらにもまた気軽に遊びに来てくださいね。
      (お返事は仕事の都合によってかなり遅くなったりもしますが、そこは御了承願います…汗)

      ではでは~(^^)


      2015/06/20
  • 女の子らしい小説だなあと思いました。ニシノ君は女性のファンタシーなんでしょう。きっと。
    女性は女の子から女に、大人になってしまうけれども男性はそのまま男の子でいられるような気がするという女性の羨望が形になったような小説だなあと思うのです。実際は男性だって大変なんだと思うんですけどね。

    個人的にはこんな主体性の無い男性は苦手ですがだからこそ彼はモテるのかもしれない。女性の願望をそのまま鏡のように映してそのまま投影するから。それだからこそ女性は惹かれ、そのうちに自分自身と踊っていることに気が付いて去っていくのかもしれない。そんなことを思いました。
    恋愛小説はあまり好きではないのですがこの作者の描く世界のリズムと言葉の選び方が上手でいつも何となく読まされてしまう感じがします。好きな話かは置いておいて好きな世界だな、とは思うのです。

  • 「蛇を踏む」のような川上弘美を期待して読むと肩すかしをくらう。でもこれはこれでとても良い作品だと思う。ニシノくんがどれだけ魅力的で、たらしで、モテモテで、女性たちの間を渡り歩いたか、なんてことはどうでも良いのです。どこにも辿り着けないニシノくんの恋と冒険が、さみしくて愛おしいと思うから。かわいそうなニシノくん。こんな男のひとがいたら、かわいそうでかわいくってきっとすぐさま恋に落ちてしまうだろうと思います。

  • ニシノユキヒコの生涯の恋愛事情。
    若い頃からいわゆる“たらし”な彼だけど、どの女性も彼を“かわいそうな人”という。容姿端麗、勉強も仕事も出来て恋愛もたっぷりとしている。けれども彼には深く愛して失うことへの恐怖心が幼少時の出来事から植え付けられてしまっていた。

    愛することは感覚的なものだと思う。それが分からないって辛いなと思った。

著者プロフィール

川上 弘美(かわかみ・ひろみ)
1958年生まれ。96年「蛇を踏む」で芥川賞、99年『神様』でドゥマゴ文学賞と紫式部文学賞、2000年『溺レる』で伊藤整文学賞と女流文学賞、01年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、07年『真鶴』で芸術選奨、15年『水声』で読売文学賞を受賞。ほかの作品に『風花』『どこから行っても遠い町』『神様2011』『七夜物語』『なめらかで熱くて甘苦しくて』『水声』などがある。2016年本作で第44回泉鏡花文学賞を受賞した。


「2019年 『大きな鳥にさらわれないよう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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