センセイの鞄 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1853
レビュー : 218
  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101292359

感想・レビュー・書評

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  • R2.6.7 読了。

     ピュアな恋愛小説でした。食べ物の好みが一緒っていいですよね。
     何の束縛も打算も介護も結婚も上下関係も意識しなくて良い二人の関係に憧れますね。また、カタカナのセンセイの独特な響きも良い。この小説のような心地よい世界観から離れるのは寂しいです。

    ・「大事な恋愛ならば、植木と同様、追肥やら雪吊りやらをして、手をつくすことが肝腎。そうでない恋愛ならば、適当に手を抜いて立ち枯れさせることが安心。」

  • センセイという言葉の響きが、とても遠いものを感じさせるのに、実は、普通の人と同じような恋愛感情をもってくれているということが、ゆっくりとしたペースで伝わってきて、何だかすごーく感動しました。
    この物語に漂うゆったりとした空気が、上品で、知性的で、ユーモアもあって、とても心地よかったです。

  • 現実はこうもうまくいくまい、と思いつつ年のはなれた(元生徒と国語教師)男女の恋を描いた恋愛小説。ツキコのセンセイへの恋慕にページをめくる手が止まらなかった。恋敵への嫉妬、同級生への違和感と反発といった第三者の存在を通してツキコのもやもやした恋情を明確にさせる。恋愛文学の王道を踏みつつ、二人の佇まいが静謐で清潔。それに季節と食べ物とお酒が美味しそうで、思わず鱈と春菊が食べたくなる。著者の文章も魅力的でくせになりそう。文章は書き出し一文目が肝要というが、冒頭一文で物語世界に読者を引きずり込む。句点で心情を表現する機微も繊細で一文ずつ噛みしめながら読んでしまった。
    ひらがなや漢字でもないカタカナの"センセイ"表記もおもしろい。カタカナ表記は口承や伝承といった声音を思い浮べるが、この小説では片仮名表記で声の届く範囲=センセイとツキコの距離感を表したのかなと。ツキコとセンセイの偶然の出会いは居酒屋で隣あったのがきっかけ。ぼそぼぞと声が届く距離感はツキコとセンセイの恋愛模様そのもの。と、ごちゃごちゃ考えることもできる素敵な小説でした。

  • 『センセイの鞄』読了。
    すごく胸が苦しくなるくらい淡い感情に浸りました。
    ビール、熱燗、おでん、湯豆腐…浮かぶ情景はなんら変わりない何処にでもあるような居酒屋で交わるセンセイとツキコ。すごく普通なのに途中から特別な関係性へ加速するのにそこに至るまでの年月の緩さが好き。すごくよい。
    「ツキコさんは、ほんとうに、いい子ですね」と言うセンセイが好き。
    二人だけの世界。歳なんて関係ないねって思ってしまう。
    お互い単身者で家族という呪縛がない。ツキコが泣いたのはきっと家族の存在を知ってしまったからだと思う。
    お互いひとりの人間として引力のように惹かれたんだと思うな。多分。

  • 何度も読み返したことのあるこの本を、久々に通して再読した。やっぱり好きだなーと思う。あわあわとして、色濃い、センセイとツキコさんの日々。二人の心情とともに挟まれる四季のうつろいも美しく、なにより酒と肴!なんでこんなに美味しそうなんですかね。ビール(中瓶)と日本酒が必要。

  • 静かな小説だった。静かに、降り積もる時間に、確かに熱い人間の感情が細く絡みつく。そういう小説だと私は思う。

    私が惹かれた点はまず、肴の描写だった。日本酒が好きな酒飲みなので、ひとり飲み、しかも落ち着いた日本居酒屋を選ぶところに好感を抱いた。

    そこで出会ったセンセイと肴の趣味が合うことから知り合うのもいい。食べ物の趣味が合うことは大事だ。それで長く続く関係もある。

    お互いが自立していて、ほどよい距離感があるのがとてもいい。お互いを認めているのが伝わる。

    対比であろう、ツキコさんの昔の恋人である小島孝の「男女」の付き合いは違う。くどくて、もつれてて、型にはまっている感じがした。

    私は生臭いものが好きじゃない。
    17の章にわかれた小説には海の幸の肴も、島の海も、生臭さはない。ドロドロした感情の生臭さもない。心地よい風が吹いている。


    段々とセンセイが心を占めてきてバランスを崩すツキコさんは本人も言う通り子供のようだ。

    ツキコさんとセンセイの距離は遠い。それは「因った環境」でもなく、年の差によるものでもなく、遠くにある。

    「たまたま」近くにあった。
    だんだん、「たまたま」が重なった。
    そして、「たまたま」が重なるようになればいいと思うようになった。

    そういう関係を読んでみませんか。

  • 居酒屋で久しぶりに出会った高校時代の先生とアラフォー女性の恋物語。30歳以上離れた大人の恋愛ゆえに、静かにゆっくりと心が動いていく様子を丁寧に描いているのですが、料理の描写が細やかなのも特長の一つかなと思います。

    まぐろ納豆と蓮根のきんぴら、塩らっきょうから始まる二人の料理の遍歴は、きのこ鍋、湯豆腐、おでん、花見のおかず、鮎料理などなど、季節の移ろいとともに変化していく。

    そんな数々の料理の中で個人的に惹かれたのは、湯豆腐とトビウオの刺身。主人公のツキコさんの湯豆腐は、醤油と酒を混ぜて削りたてのかつお節を散らした小さな湯のみを豆腐とともに温め、そこに浸して食べるんですって。なんとも美味しそう♪今年の冬にきっと再現するはずです。
    トビウオの刺身は今まで食べたことがないだけに興味がむくむく。

    二人の心の距離とともに二人の料理の好みもより近づいていく、ほっこりと心温まる小説でした。

  • 2、3年前に、一度読んだことのあるこの本。その時に書いた感想は
    「初めのほうは退屈だった。なかなかくっつかない二人がもどかしかったから。大人のほうが恋愛に対して誠実で、純粋なのかもしれないな」
    とかいうものだったと思う。

    特に深い想いを感じなかった当時の私は、その後部屋に溜まった本を整理するにあたり、この本を「もう読み直さないだろう」の山へノミネート、数々の他の本とともに古本屋へ売ったのだ(!!)

    あれからしばらくして、川上弘美の作品をとっても好きになった。
    わたしがかつて、ぼんやりと読んでふわっとした感想しか抱けなかったこの本を、「そんなはずはい!」とおもった。
    もう一度読んで、確かめたくなった。

    そういうわけで、本屋にて新品で購入し、二度目の読了を果たしたのだ。

    結果・・・

    初めから最後までずうっっと、二人のきもちがいとしくて、ときにせつなくてたまらなかった。
    なんともないやりとりの部分で、うっかり涙が流れたりした。


    この本がでた当時、週刊誌に下記のような匿名書評が載ったという。
    『「センセイの鞄」に涙するバカなオヤジたち』。
    読者には中高年サラリーマン風が多く、しばらく小説から離れていたオヤジたちが、読んで、感動の涙を流すという案配を受けての批評だという。

    『この本には生きだ人間と現実の軋みがない。主人公のツキコさんは、「すっかり子供になっている」、
    と告白している。子供に恋愛はできない。』

    えっ!?と思う。

    節々に、すてきな表現があふれているじゃないか。

    ちいさなことがありがたくて、幸せに思う。好きな人のまえで、子供のようになってしまう。でも大人だから、核心には迫れない。

    言葉にするとちょっとチープだけれど、この小説には上手に、丁寧に、書き綴られている。


    一見淡々と進む、だたの老年男・中年女、歳の差カップルの恋物語を読みながら
    ぜったいにそれだけではない、この小説はそんなところに重点をおいてはいない、言葉のひとつひとつがとても静かだけれどシンとひかっている、と感じる自分を、少し好きになった。

  • 20191031

  • ーーー
    ひとり通いの居酒屋で37歳のツキコさんがたまさか隣あったご老体は、学生時代の国語の恩師だった。カウンターでぽつりぽつりと交わす世間話から始まったセンセイとの日々は、露店めぐりやお花見、ときにささいな喧嘩もはさみながら、ゆたかに四季をめぐる。年齢のはなれた男女の、飄々として、やがて切々と慈しみあう恋情を描き、あらゆる世代をとりこにした谷崎賞受賞の名作。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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