センセイの鞄 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 247
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101292359

感想・レビュー・書評

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  • R2.6.7 読了。

     ピュアな恋愛小説でした。食べ物の好みが一緒っていいですよね。
     何の束縛も打算も介護も結婚も上下関係も意識しなくて良い二人の関係に憧れますね。また、カタカナのセンセイの独特な響きも良い。この小説のような心地よい世界観から離れるのは寂しいです。

    ・「大事な恋愛ならば、植木と同様、追肥やら雪吊りやらをして、手をつくすことが肝腎。そうでない恋愛ならば、適当に手を抜いて立ち枯れさせることが安心。」

  • 川上弘美さん、初読です。
    とにかく心の内の描き方が自分には初めてで、新鮮に感じました。

    148頁
    しまった、と強く思った。うかつだった。うかつだったが、いやでもない。いやでもないが、嬉しくもない。嬉しくもないし、少し心細い。
    中略
    いろいろ考えちゃいそうになってもよかったような気もするな、とわたしはタクシーの後部座席で小さくつぶやいた。

    う~ん、・・・・・。切ない、侘しい、でも少し温かい。なんともいえないですね。

    287頁
    センセイと過ごした日々は、あわあわと、そして色濃く、流れた。

    ・・・・・。こんな表現も有るのですね。
    他の作品も読みたいです。

    ただ、「〇〇さんはいい子ですね。」は、自分にはまだまだ言えそうにもありません。多分、一生言えないな。


  • 著者、川上弘美さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    川上 弘美(かわかみ ひろみ、旧姓・山田、1958年4月1日 - )は、日本の小説家。東京都生まれ。大学在学中よりSF雑誌に短編を寄稿、編集にもたずさわる。高校の生物科教員などを経て、1994年、短編「神様」でパスカル短篇文学新人賞を受賞。1996年「蛇を踏む」で芥川賞受賞。

    で、本作の内容は次のとおり。(コピペです)

    駅前の居酒屋で高校の恩師と十数年ぶりに再会したツキコさんは、以来、憎まれ口をたたき合いながらセンセイと肴をつつき、酒をたしなみ、キノコ狩や花見、あるいは島へと出かけた。歳の差を超え、せつない心をたがいにかかえつつ流れてゆく、センセイと私の、ゆったりとした日々。谷崎潤一郎賞を受賞した名作。

    • りまのさん
      seiyan36さん
      おはようございます!
      この小説、ずいぶん前に読んだのですが、素敵でした。
      堀川正美詩集のレビューに、いいね くださって...
      seiyan36さん
      おはようございます!
      この小説、ずいぶん前に読んだのですが、素敵でした。
      堀川正美詩集のレビューに、いいね くださって、ありがとうございます!とても嬉しかったです。
      今日一日が、ステキな一日となりますように♪
      2022/02/18
  • さして物語という感じでもないけれど、完全な日常というのとも少し違う、この作品の世界で流れる独特な時間。

    ツキコとセンセイの掛け合いも楽しいけれど、二人の関係性も気になるけど、けど…後半はなんだか眠くなってしまうように感じてしまった。
    偶然会い過ぎやろ街狭過ぎやろとか突っ込んでしまってあまり入り込めなかった。

  • センセイという言葉の響きが、とても遠いものを感じさせるのに、実は、普通の人と同じような恋愛感情をもってくれているということが、ゆっくりとしたペースで伝わってきて、何だかすごーく感動しました。
    この物語に漂うゆったりとした空気が、上品で、知性的で、ユーモアもあって、とても心地よかったです。

  • 静かに、緩やかに変わっていく2人の関係性が、綺麗に、切なく表現されていた。
    年齢差のある恋愛小説はあまり読まなかったが、激情的な描写が少ない分、とてもすっきり受けとめることができた。
    とにかく最後には虚しさが残ったが、それすらもひどく悲しく思えた。

  • なんていうんだろう…前に読んだ絲山さんと同じような空気感だった。題名になってはいるがそこまで「鞄」には拘っていない感じを私は受けた。センセイとの距離がゆっくりと縮まっていく。この距離感がすごくリアルに描かれてあると思いました。

  • 大人のラブストーリー。
    主人公が、まさかの30歳も離れた初老の元国語教師に恋心持つとは、最初は全く気付こうと思いませんが、少しずつ距離が近くなると心にも変化が現れます。先生も同じ気持ちなのでしょう。堅物な先生というのもあって、それ以上の展開はありませんが、一緒にいるだけ、共に行動する、共感するだけで充分なのでしょう。
    2人だけの心地良い時間。『センセイ!』『はい、月子さん』という何度も言葉の掛け合いがキュンとしました。こんな大人の恋も素敵だなぁと思いました。

  • 『センセイの鞄』読了。
    すごく胸が苦しくなるくらい淡い感情に浸りました。
    ビール、熱燗、おでん、湯豆腐…浮かぶ情景はなんら変わりない何処にでもあるような居酒屋で交わるセンセイとツキコ。すごく普通なのに途中から特別な関係性へ加速するのにそこに至るまでの年月の緩さが好き。すごくよい。
    「ツキコさんは、ほんとうに、いい子ですね」と言うセンセイが好き。
    二人だけの世界。歳なんて関係ないねって思ってしまう。
    お互い単身者で家族という呪縛がない。ツキコが泣いたのはきっと家族の存在を知ってしまったからだと思う。
    お互いひとりの人間として引力のように惹かれたんだと思うな。多分。

    2020.2.18(1回目)

  • 現実はこうもうまくいくまい、と思いつつ年のはなれた(元生徒と国語教師)男女の恋を描いた恋愛小説。ツキコのセンセイへの恋慕にページをめくる手が止まらなかった。恋敵への嫉妬、同級生への違和感と反発といった第三者の存在を通してツキコのもやもやした恋情を明確にさせる。恋愛文学の王道を踏みつつ、二人の佇まいが静謐で清潔。それに季節と食べ物とお酒が美味しそうで、思わず鱈と春菊が食べたくなる。著者の文章も魅力的でくせになりそう。文章は書き出し一文目が肝要というが、冒頭一文で物語世界に読者を引きずり込む。句点で心情を表現する機微も繊細で一文ずつ噛みしめながら読んでしまった。
    ひらがなや漢字でもないカタカナの"センセイ"表記もおもしろい。カタカナ表記は口承や伝承といった声音を思い浮べるが、この小説では片仮名表記で声の届く範囲=センセイとツキコの距離感を表したのかなと。ツキコとセンセイの偶然の出会いは居酒屋で隣あったのがきっかけ。ぼそぼぞと声が届く距離感はツキコとセンセイの恋愛模様そのもの。と、ごちゃごちゃ考えることもできる素敵な小説でした。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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