センセイの鞄 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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本棚登録 : 1787
レビュー : 213
  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101292359

感想・レビュー・書評

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  • 友人にもらった本。

  •  37歳の独身女性「ツキコ」と学生時代の国語教師(老人)の静かな関係、という、控えめに言って生理的にやや厳しい小説。37だけど女性は少女のようでセンセイは一人称が「ワタクシ」などと、やや現実離れした感があり、ファンタジーを読んでいるような気さえする。
     一回りも二回りも離れた年下女性に劣情を抱く残念な男性なども職場にゴロゴロしているし、こうした小説を真に受けて勘違いの暴走機関車と化すのだろうか、と思う。純文学はベストセラーになるべきではないとすら思う。

     とはいっても、ぼんやりとした二人の関係は、途中に出てくるヒロインと同年代の男性「小島孝」から発せられる明らかな「恋」よりも、互いの欠けた部分を埋めるような、非常に自然な感じの関係にも思える。
     「一羽だと可哀そうだからです」と二羽のひよこを購めるセンセイや、「お正月」に描かれるツキコからは、二人の心にぽっかりと空いた穴が見えるようだ。
     それでいて、互いのテリトリーを守ろうとするところは、この二人の個性か、あるいは歳を重ねた人同士だからこその恋愛なのかもしれない。
     だが、恋愛はそんなテリトリーなど浸食してしまうし、終わった後にはセンセイの鞄の中のように、何もない空間を自分の中に抱えなければならない。そんな通俗的哀しみから読者を逃さないところも良い。

  • お酒が呑めないので、サトルさんの店やおでん屋さんや先生の家でのシーンが美味しそうで楽しそうで羨ましかった。
    途中、何箇所も泣くまいと思って読んでいましたが、最後の2ページほどで涙がはらりと溢れてしまいました。
    なんにせよ、いい意味で焦れったくもあり、クスリと笑う部分も多々あり、ほっこり心を温めてくれる、今の季節に炬燵で読んで良かったと思える作品です。

  • いつまでも読んでいたくなる本。

    積読状態で放置していたはずだが、全編読んだ覚えがあった。こういった、抑揚のあまりない日常を描いた小説が大好きで、大概終わりがけになると、終わってほしくないという理由だけで長期間積読にしてしまう。

  • 最初は漫画でいう日常系みたいな小説だと思ったのだが、後半になって胸を締めつける切ない恋愛小説になった。
    ツキコさんとセンセイは恋愛関係にならないと思ってたし、なったとしても肉体関係にはならないだろうなと思ってたのを、見事に裏切られた。
    でも、そんなものしなくていいというツキコさんに対して生真面目に、
    「あれは、そんなもの、でしょうか」
    と答えるのはやっぱりセンセイらしいなと。

    「日常系」パートでは「二十二個の星」が好き。なんだこのカワイイやりとりは。思わず微笑んでしまう。なんでそんなに巨人が憎いの。
    ツキコさんは自分でも認めている通り、子どもっぽい。意地っ張りだったり、すぐにすねたり。でも肝心なところで素直で。舞台が居酒屋じゃなかったら、女学生とセンセイの話に思えてしまうかも。
    にしてもこの二人、酒飲みすぎ。γGTPは大丈夫なのだろうか(笑)。

    しかし、センセイが老年の男性であるため、このほんわかした物語には別離の予感が常につきまとう。それは見事的中するわけだけれど、もし「いつまでも幸せにくらしましたとさ」で終わっていたら騙された気分になっていたことだろう。二人はそう遠くない将来に死で袂を分かつことを了承した上で「恋愛を前提としたお付き合い」を始めたのだから。
    センセイの名前も馴染まないうちにきた別れ。残ったのはセンセイの鞄。

  • 自分だけ知っている美味な肴を横にお酒を飲みながら読みたい一冊。

    37歳、独身のツキコの思いと一緒に漂う心地よさ。

  • とても素敵な物語だった。
    センセイと私の微妙な関係。
    きっと若いころに読んでいたら、主人公の気持ちを汲み取ることはできなかっただろう。
    大人の恋愛というのは、若い人のそれとは違ってゆっくりと穏やかなものなのかもしれない。
    作者は真っすぐなものの見方をする人なんだろうなと思った。

    (読了から10日も経ってしまい、感動や記憶が薄れてしまったように思う。感想は読了直後に書かねばと反省)

  • 静かにドキドキできる素敵な話
    2人の距離感が好き

  • 読み終わったら、なんだかちょっと泣いていた。でも、読んでいる最中は自分が37歳になった時、どう感じるんだろう、ばかり考えていた。

    今感じるのは、この二人の年齢差の恋愛を、現実のものとしては全く想像できないということ。
    自分がこの歳になったら、果たして現実味を帯びて読めるのだろうか?

    あとは、お酒が好きだったら登場するお酒、つまみにもっと反応して読めるのかしら?ということ。

  • 読後、小料理屋に一人で行って酒が飲みたくなった。

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著者プロフィール

川上弘美(かわかみ・ひろみ)
一九五八年東京都生まれ。一九九四年「神様」でパスカル短篇文学新人賞を受賞しデビュー。一九九六年「蛇を踏む」で芥川賞、一九九九年『神様』で紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞、二〇〇〇年『溺レる』で伊藤整文学賞、女流文学賞、二〇〇一年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、二〇〇七年『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞、二〇一五年『水声』で読売文学賞、二〇一六年『大きな鳥にさらわれないよう』で泉鏡花文学賞を受賞。二〇一九年紫綬褒章受章。

「2019年 『掌篇歳時記 秋冬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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