古道具 中野商店 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101292373

作品紹介・あらすじ

東京近郊の小さな古道具屋でアルバイトをする「わたし」。ダメ男感漂う店主・中野さん。きりっと女っぷりのいい姉マサヨさん。わたしと恋仲であるようなないような、むっつり屋のタケオ。どこかあやしい常連たち…。不器用でスケール小さく、けれど懐の深い人々と、なつかしくもチープな品々。中野商店を舞台に繰り広げられるなんともじれったい恋と世代をこえた友情を描く傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 恋愛モノだって気付いたのって読み進めてだいぶ後。
    不思議モノかと思ったのに。でも良かった。
    少年ぽい笑顔じゃなくて中年そのものの笑顔(笑)の中野さんはリリー・フランキーさんになぜか変換して読んでました。
    人との関係ってレンアイ関係じゃなくても良くも悪くも変わっていく。
    そういうもんなんだってもういい年なんだから分かってるけど、イライラしたりさっぱりしたり、寂しくなったりもするけど、申し訳ないなと反省もする。
    ひとみちゃんが数年後、タケオに「悲しかったよ」って言えて良かった、いいなぁーと思った。
    3冊目にしてようやく川上弘美作品の魅力が分かりました。よかった。

  • 中野商店に集まる、一風変わった人々のエピソードがおかしくて、吹き出しそうになりながら読みました。
    ヒトミとタケオの恋愛が、不器用でじれったいのだけれど、応援し続けてよかったー!最後は感動でした。
    姉のマサヨさんの率直な一言が、毎回気持ちよくて、感心しちゃいます。

  • 自分の周りにも中野さん、マサヨさん、タケオはいた気してくる。

  • 中野商店の人たちが、あたたかく、個性あふれる人ばかり。
    ふつうの企業に勤める人間模様とは少し違う、
    縛り合わない関係、楽で居心地のいい関係を見ているようで、ほっこりする気持ちになった。

    うまく生きることができないというタケオの成長が、自分と重なった。
    うまく生きるってなんだろう、と思うけれど。
    不器用で、素直で、自分に正直なタケオがとてもいいキャラクターだった。

  • お仕事小説であり、恋愛小説であり、人間ドラマでもある。面白いバランスの作品だった。

    主人公は、中野商店という古道具屋でアルバイトをしているヒトミ。経営者の中野さんはけっこう適当で、仕事中たびたび出かけて行っては、不倫相手のサキ子と会っている。
    ヒトミは同僚アルバイトのタケオと、付き合っているのかいないのか、微妙な関係が続いている。
    中野さんの姉であるマサヨさんは芸術家で、中野商店の面々と程よい距離感で絡んでいる。
    そして月日が過ぎ…というお話。

    雰囲気は緩いのだけど、実はものすごく深い。
    人と人の関係(とくに恋愛)のままならなさ。若いからこそお互い意地を張ってすれ違って、そこから数年過ぎた頃、大人になって素直さを手に入れたらすんなり進んでしまうちょっとあっけない感じ。
    でもやっぱり、大人になっても別のままならなさがあったりして。
    3組のカップルが出てくるのだけど、みんなそれぞれに小さな苦しみがある。

    著者の川上弘美さんの弟さんが実際古物商をされているらしく、古道具屋の仕事の内容や競りの様子なども描かれていて興味深かった。
    住み分けじゃないけれど、この店はどの分野に強い、とか同業者でもお互い何となく線引きしている感じが面白い。

    日常の些細な痛みをあぶり出すのがやっぱり巧いなぁ、と思った。生きていればそういうことの積み重ね。
    ドラマチックなことなんて、そうそう起きるわけじゃないものね。

  • 東京の西の近郊の町で
    古道具屋を営む、
    女にだらしなく浮き世離れした
    中年親父の中野さん。


    語り部であり
    主人公の
    中野商店アルバイト店員のヒトミさん。


    同じくアルバイトで
    右手の小指の先がない
    タケオ。


    中野さんの姉で
    きっぷのいい芸術家の
    マサヨさん。


    凛とした中野さんの愛人の
    サキ子さん。


    どこかちょっと変わってるけど、
    憎めない登場人物たちが織りなす
    心ほぐれていくストーリー。



    店に来るお客がまた
    あやしくて
    一癖も二癖もあるような連中ばかりで
    ホント飽きさせません。


    川上さん特有の
    上手いなぁ〜と思わず唸るほど美しい文体と、
    ドキドキするような言い回しと、
    瑞々しい
    恋する女性の心理描写。


    印象的なシーンも
    沢山あります。


    三日月が浮かぶ
    夜の公園のベンチで、
    ヒトミさんが
    ひとりチーちくをアテに
    缶ビールを一杯やってる場面。


    タケオとヒトミさんが酔っ払って
    公園でキスをする場面。


    タケオからの留守電を聞きながら
    コンビニで買ったプリンを
    ゆっくりと食べるヒトミさん。


    タケオが携帯に出れない
    あらゆるシチュエーションを
    ヒトミさんが妄想する場面。


    どれも劇的な出来事ではないけれど、
    普通の日常の中の
    小さな幸せの粒を
    見逃さず掬い取ってくれる感じ。


    それにしても
    生きるのがヘタで
    じれったい恋に悶え苦しむ、
    ヒトミさんとタケオの
    ぎこちない会話が、
    どうにも切なくて胸が震えます(≧∇≦)


    誰かを好きになればなるほど、
    不安になったり
    怖がったり
    胸が張り裂けそうな思いを
    嫌でも味わうことになる。


    でもそれでも、

    過去にどんなに痛い目に遭ったって、
    人は人をまた好きになるし、
    性懲りもなく
    ある日突然
    恋に蹴つまづく。


    人は本来、永遠や、
    限りないものに
    憧れる傾向があるらしいけど、

    限りあるものや
    いつかは無くなってしまうものほど、
    いとおしく思える体質な自分には、


    埃の匂いのする古道具屋での
    可笑しき日々と、
    亀のように進む
    じれったい恋を描いたこの小説は、
    読み終えてしまうのが勿体無いくらい
    空気感がハマった作品です。


    民法ではなくNHKで
    全5話くらいの
    ドラマにしてほしいなぁ〜(笑)

  • ふむ

  • ゆるい店主中野さんが営む中野商店で働くわたしとタケオと、中野さんの姉のマサヨさんの日々の話。なんだか、終始「タケオオオ」って感じ。

  • 雑多なものが所狭しと詰め込まれた空間って、
    無条件にときめいてしまうたちなので、
    古道具屋という舞台設定にまず惹かれた。

    だからさあ、が口癖の適当店主中野さん、
    中野さんのお姉さんで芸術家のマサヨさん、
    少々ぼんやりしたアルバイトの男の子タケオ、
    中野さんの愛人?らしき“銀行”ことサキ子さん、

    古道具屋関係の人達は
    ちょっと浮世離れしているというか、
    変わっている。
    変わっている、というのが第一印象だ。

    でも、物語を読み進めると、
    彼らの人間くささを知ることになる。
    このリアリティと非現実感のバランスが絶妙だ。

    ヒトミとタケオのじれったい恋愛に、
    もしくはマサヨさんの大人の恋愛観に、
    はたまた中野さん(中年オヤジ)の愛嬌に、
    あるいはサキ子さんの心の変化に、
    きっと誰もがどこかで自分の経験を重ね合わせて、
    はっとすることがあるんじゃないだろうか。

    誰もが強さと弱さを持っていて、
    意思や感情を持っていて、
    生きている一人の人間という感じがして
    すごくよかった。

    主人公であるヒトミの人間らしい感情は、
    主人公であるが故に1番見えづらいんだけど、
    ラストの“悲しかったよ”で全部もっていかれた。

    主人公に自分を投影しながら
    読むケースがあると思うけど、
    ヒトミがひとりの独立した人間だって、
    このシーンで強く感じた。

    川上弘美さんの作品は『某』とか『神様』とかを
    読んだことがあって、
    ちょっとファンタジックな世界観の中で、
    だからこそより克明に現実が見えてくる、
    みたいな印象だったので、
    それと比べると
    舞台設定に現実感が強いなと思ったけど、
    SFもファンタジーもなしに
    この作風は成立するんですね。

    『某』が好きだからこそ敬遠してしまっていた
    『センセイの鞄』も読んでみようと思った。

  • 不思議な語り口。するする読めるが、ゆっくり読むと色々と考えさせられる

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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