どこから行っても遠い町 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1874
レビュー : 210
  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101292410

作品紹介・あらすじ

捨てたものではなかったです、あたしの人生-。男二人が奇妙な仲のよさで同居する魚屋の話、真夜中に差し向かいで紅茶をのむ主婦と姑、両親の不仲をみつめる小学生、そして裸足で男のもとへ駆けていった女…。それぞれの人生はゆるくつながり、わずかにかたちをかえながら、ふたたび続いていく。東京の小さな町を舞台に、平凡な日々の豊かさとあやうさを映し出す連作短篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 舞台は東京の小さな町。商店街の様々なお店の人々、そこに暮らす人々はそれぞれ淡くつながっていて、何食わぬ顔をして暮らしているけれどそれぞれ色んな過去や思いを抱えながら生きている。
    そんな淡いつながりを連作で描いた短編集。

    平凡な人生って何だろう、と考える。
    端から見れば平凡で穏やかに暮らしているように見える人でも、実は他人からは見えない何かを抱えて生きているかも知れないし、「あの人は恵まれているよね」と噂されるような誰かにも、もしかしたら計り知れない苦悩があるかもしれない。
    実際毎日色んな人と会話をしていると、じっくり話してみて初めて分かることは山ほどある。イメージや思い込みとは全然違った、ということも日常茶飯事だ。

    この小説はまさしく、端から見れば“普通の人”である登場人物たちに、一人ずつスポットを当てて描いていて、そこには平凡な人生なんて言うものはひとつもない、という風に思わされる。
    核には“男と女”という厄介なものがあって(私はそう感じた)一旦がんじがらめになった果てに他人からすれば理解できないような形に収まった人もいたりして、しかしそれさえも「さもありなん」なんて思ってしまう。

    川上弘美さんの小説は、根底がとても静謐だ、といつも思う。
    どろどろした関係性を描いていても、どこか静かで、諦めのようなものが漂っている気がする。

    一番印象的だったのは「貝殻のある飾り窓」
    雨のしずくの写真を撮るのが趣味である20代のユキと、ロマンという謎のお店(たこ焼き屋?)に勤めるあけみという中年女性のお話。
    あけみはちょくちょく登場するのだけど、何だか妙に気になる脇役的な感じで好き。

    他人の噂って生きていればしょっちゅう聞くしうまく避けなければ自分も加担してしまうものだけれど、自分だってどこかでその“他人の噂”の的になっていることがあるはず。ひっそり暮らしていても、人と人はどこかで必ずつながっているから。
    その“他人の噂”のなかには、どれくらいの真実が潜んでいるのか。
    そんなことを思った、淡い空気の短編集。

  • 川上弘美のあたたかいところを切り取ったお話。
    アンソロジーぽいところが彼女のこんだて帖に近いかな。
    人間味あふれてて、こんな人達いそうで、こんな町がどこかにありそうだから、ちょっと憧れる。

  • もやもやを家事にぶつけるタイプの男子高校生の話、ものすごく善良な感じがしてとてもよかった

  • とってもよかった。
    川上弘美のあたたかさは健在。
    切ないと美しいとあたたかいをどこか醒めた目線で語る彼女の文体はとてもとても好きだ。
    いくつもお気に入りのいいまわしに付箋を残した。

  • 知人に勧められて読んだけれども、私にはいまひとつだった。
    それぞれ別の短編集のようで、その主人公たちがなんとなく繋がっている。そんな設定。
    私にはその主人公たちがそれほど魅力的ではなかった。

    川上弘美さんのこと、別の人も推していたからもう一冊読んでみようか悩むところ。

  • とても好きな空気の連作短編集です。
    どこから行っても遠いけれど、この町も世界のどこかにありそうな気がします。
    どのお話もゆるゆると素敵なのですが、「長い夜の紅茶」がとても好みだと気が付きました。
    弥生さんをすっかりもたいまさこさんに脳内変換して読みましたが、楽しかったです。このような楽しみ方もあるのだな。
    そして、この本の物語の最後の一文が好きでした。
    捨てたものではなかったです、あたしの人生。
    わたしも自分の人生の終わりに、こう言えるように生きていこうと思います。

  •  とりたてて物凄いことは起こらない。
    「平凡」よりは少し色々な物が加わった人生を歩んでいる人々。
     あるいは「歩んできた」人のお話。
    「物語」ということでいえば、きっとつまらないのだと思う。
     間違いなく「つまらない本だ」と思う人が多くいるだろう。
     だって大したことが何も起こらないし、淡々と語られているし。
     読んですぐに記憶から消えていってしまうような内容。
     なのに、なんで読んでいてこんな気持ちになってしまうのだろう。
     なんで、こんなにも心を捉えられてしまうのだろう。
     全部で11編の連作短編集。
     シュールな内容や、不思議なお話は一切なし。
     最後の「ゆるく巻くかたつむりの殻」は死者が語るお話。
     それでもそれはシュールでも不思議な話でもない。
     解説に「最後まで読んだらもう一度始めから読みたくなるだろう」とある。
     その通り。
     いずれ必ず始めから読み直す。

  • 川上弘美の世界観が読みたくなって手に取りました。
    全ての短編が少し前の時代の商店街の人の平凡そうで平凡でない人生を淡々と綴る。
    全部の短編が繋がっていたことでまたいつか読み返そうと思う。

    • 9nanokaさん
      繋がっている短編集、面白そうですね。少し前の時代というのが更にいいですね。
      川上弘美続々と読まれてますね(^^)
      今読まなきゃな本を読み...
      繋がっている短編集、面白そうですね。少し前の時代というのが更にいいですね。
      川上弘美続々と読まれてますね(^^)
      今読まなきゃな本を読み終わったら私も続々と読みたいです。
      2014/09/28
  • ひとつのまちの住人達がどんどん描かれていく。不思議で、面白い。好きだな、と思った。
    感想すぐに書かなかったからうろ覚えなんだけど。

  • 人と人との間には、いつも周りからだけじゃ見えない感情や真実がある。それをそっと大切にしていたいな。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「周りからだけじゃ見えない感情や真実」
      気付かない場合もあれば、気を遣い過ぎてギクシャクしちゃう場合もあるから、自然体で過ごせれば一番良い...
      「周りからだけじゃ見えない感情や真実」
      気付かない場合もあれば、気を遣い過ぎてギクシャクしちゃう場合もあるから、自然体で過ごせれば一番良いのでしょうね。。。
      2014/03/25
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著者プロフィール

川上 弘美(かわかみ・ひろみ)
1958年生まれ。96年「蛇を踏む」で芥川賞、99年『神様』でドゥマゴ文学賞と紫式部文学賞、2000年『溺レる』で伊藤整文学賞と女流文学賞、01年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、07年『真鶴』で芸術選奨、15年『水声』で読売文学賞を受賞。ほかの作品に『風花』『どこから行っても遠い町』『神様2011』『七夜物語』『なめらかで熱くて甘苦しくて』『水声』などがある。2016年本作で第44回泉鏡花文学賞を受賞した。


「2019年 『大きな鳥にさらわれないよう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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