どこから行っても遠い町 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.51
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本棚登録 : 1891
レビュー : 210
  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101292410

作品紹介・あらすじ

捨てたものではなかったです、あたしの人生-。男二人が奇妙な仲のよさで同居する魚屋の話、真夜中に差し向かいで紅茶をのむ主婦と姑、両親の不仲をみつめる小学生、そして裸足で男のもとへ駆けていった女…。それぞれの人生はゆるくつながり、わずかにかたちをかえながら、ふたたび続いていく。東京の小さな町を舞台に、平凡な日々の豊かさとあやうさを映し出す連作短篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 舞台は東京の小さな町。商店街の様々なお店の人々、そこに暮らす人々はそれぞれ淡くつながっていて、何食わぬ顔をして暮らしているけれどそれぞれ色んな過去や思いを抱えながら生きている。
    そんな淡いつながりを連作で描いた短編集。

    平凡な人生って何だろう、と考える。
    端から見れば平凡で穏やかに暮らしているように見える人でも、実は他人からは見えない何かを抱えて生きているかも知れないし、「あの人は恵まれているよね」と噂されるような誰かにも、もしかしたら計り知れない苦悩があるかもしれない。
    実際毎日色んな人と会話をしていると、じっくり話してみて初めて分かることは山ほどある。イメージや思い込みとは全然違った、ということも日常茶飯事だ。

    この小説はまさしく、端から見れば“普通の人”である登場人物たちに、一人ずつスポットを当てて描いていて、そこには平凡な人生なんて言うものはひとつもない、という風に思わされる。
    核には“男と女”という厄介なものがあって(私はそう感じた)一旦がんじがらめになった果てに他人からすれば理解できないような形に収まった人もいたりして、しかしそれさえも「さもありなん」なんて思ってしまう。

    川上弘美さんの小説は、根底がとても静謐だ、といつも思う。
    どろどろした関係性を描いていても、どこか静かで、諦めのようなものが漂っている気がする。

    一番印象的だったのは「貝殻のある飾り窓」
    雨のしずくの写真を撮るのが趣味である20代のユキと、ロマンという謎のお店(たこ焼き屋?)に勤めるあけみという中年女性のお話。
    あけみはちょくちょく登場するのだけど、何だか妙に気になる脇役的な感じで好き。

    他人の噂って生きていればしょっちゅう聞くしうまく避けなければ自分も加担してしまうものだけれど、自分だってどこかでその“他人の噂”の的になっていることがあるはず。ひっそり暮らしていても、人と人はどこかで必ずつながっているから。
    その“他人の噂”のなかには、どれくらいの真実が潜んでいるのか。
    そんなことを思った、淡い空気の短編集。

  • 川上弘美のあたたかいところを切り取ったお話。
    アンソロジーぽいところが彼女のこんだて帖に近いかな。
    人間味あふれてて、こんな人達いそうで、こんな町がどこかにありそうだから、ちょっと憧れる。

  • もやもやを家事にぶつけるタイプの男子高校生の話、ものすごく善良な感じがしてとてもよかった

  • とってもよかった。
    川上弘美のあたたかさは健在。
    切ないと美しいとあたたかいをどこか醒めた目線で語る彼女の文体はとてもとても好きだ。
    いくつもお気に入りのいいまわしに付箋を残した。

  • 知人に勧められて読んだけれども、私にはいまひとつだった。
    それぞれ別の短編集のようで、その主人公たちがなんとなく繋がっている。そんな設定。
    私にはその主人公たちがそれほど魅力的ではなかった。

    川上弘美さんのこと、別の人も推していたからもう一冊読んでみようか悩むところ。

  • とても好きな空気の連作短編集です。
    どこから行っても遠いけれど、この町も世界のどこかにありそうな気がします。
    どのお話もゆるゆると素敵なのですが、「長い夜の紅茶」がとても好みだと気が付きました。
    弥生さんをすっかりもたいまさこさんに脳内変換して読みましたが、楽しかったです。このような楽しみ方もあるのだな。
    そして、この本の物語の最後の一文が好きでした。
    捨てたものではなかったです、あたしの人生。
    わたしも自分の人生の終わりに、こう言えるように生きていこうと思います。

  •  とりたてて物凄いことは起こらない。
    「平凡」よりは少し色々な物が加わった人生を歩んでいる人々。
     あるいは「歩んできた」人のお話。
    「物語」ということでいえば、きっとつまらないのだと思う。
     間違いなく「つまらない本だ」と思う人が多くいるだろう。
     だって大したことが何も起こらないし、淡々と語られているし。
     読んですぐに記憶から消えていってしまうような内容。
     なのに、なんで読んでいてこんな気持ちになってしまうのだろう。
     なんで、こんなにも心を捉えられてしまうのだろう。
     全部で11編の連作短編集。
     シュールな内容や、不思議なお話は一切なし。
     最後の「ゆるく巻くかたつむりの殻」は死者が語るお話。
     それでもそれはシュールでも不思議な話でもない。
     解説に「最後まで読んだらもう一度始めから読みたくなるだろう」とある。
     その通り。
     いずれ必ず始めから読み直す。

  • 川上弘美の世界観が読みたくなって手に取りました。
    全ての短編が少し前の時代の商店街の人の平凡そうで平凡でない人生を淡々と綴る。
    全部の短編が繋がっていたことでまたいつか読み返そうと思う。

    • 9nanokaさん
      繋がっている短編集、面白そうですね。少し前の時代というのが更にいいですね。
      川上弘美続々と読まれてますね(^^)
      今読まなきゃな本を読み...
      繋がっている短編集、面白そうですね。少し前の時代というのが更にいいですね。
      川上弘美続々と読まれてますね(^^)
      今読まなきゃな本を読み終わったら私も続々と読みたいです。
      2014/09/28
  • ひとつのまちの住人達がどんどん描かれていく。不思議で、面白い。好きだな、と思った。
    感想すぐに書かなかったからうろ覚えなんだけど。

  • 人と人との間には、いつも周りからだけじゃ見えない感情や真実がある。それをそっと大切にしていたいな。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「周りからだけじゃ見えない感情や真実」
      気付かない場合もあれば、気を遣い過ぎてギクシャクしちゃう場合もあるから、自然体で過ごせれば一番良い...
      「周りからだけじゃ見えない感情や真実」
      気付かない場合もあれば、気を遣い過ぎてギクシャクしちゃう場合もあるから、自然体で過ごせれば一番良いのでしょうね。。。
      2014/03/25
  • 川上弘美さんらしい短編小説が11編。連作で、それぞれがゆる~く繋がっています。東京の下町風の郊外(?)での、日常を描いていますが、皆さんはそこからなにを感じるでしょうか。

  • 穏やかなのに息苦しかったり、もやもやしていたはずなのにさわやかだったり。
    細かな繋がりに少し嬉しくなる連作小説。

  • 読了 2013/8/22

    捨てたものではなかったです、あたしの人生ー。男二人が奇妙な仲のよさで同居する魚屋の話、真夜中に差し向かいで紅茶をのむ主婦と姑、両親の不仲をみつめる小学生、そして裸足で男のもとへ駆けていった女…。それぞれの人生はゆるくつながり、わずかにかたちをかえながら、ふたたび続いていく。東京の小さな町を舞台に、平凡な日々の豊かさとあやうさを映し出す連作短篇小説。

    《目線》
    1 予備校の英語教師・唐木妙子
    2 穏当でない父をもつ小4・枝元譲
    3 家庭内別居の両親をもつ三田村サチ
    4 介護ケアマネ3年目・谷口聡
    5 非凡な義母をもつ平凡な千木良時枝
    6 「ぶどう屋」板前・廉
    7 違わない世界観を想う榊原潮
    8 東大中退の占い師・川原清
    9 雨の写真を撮る津原由起
    10 決定する女を疎む羽生高之
    11 20年以上前に亡くなった春田真紀

  • ”結婚は、こわい。たった一回の失敗でそんなふうに思うなんて、ただの臆病者なのかもしれないけど。”

  • 都心から電車で20分ほどの場所にある商店街のある街。
    そこに関わる様々な人のストーリーを短編集で物語っていく。

    下町のような風景描写があり、でも下町らしいストーリーがあるわけでもないため、様子を頭に思い浮かべることができず、すっと自分の中に入ってこなかった。

  • 都心から電車で20分、人口も多く大型スーパーなどもあるのに商店街が“善戦”している町。そこに住む老若男女の人生模様を綴る連作短編集。
    連作短編集の面白さの一つは、次はどの登場人物が主人公になるのか、というワクワク感である。前の一編では小さな小さな脇役だった人物が、次の、もしくはもっとあとの一編では意外なドラマを見せてくれたりするとうれしくなってしまう。
    そういう意味ではこの短編集はまさしく意外なドラマの連続であった。
    意外と言えば死者の語りでしめるのもかなり離れ業だ。しかもそこで物語の中の謎の一つが明かされる。この作者でなければできないような自然さで。そこがすごい。
    一方、「四度目の浪花節」の廉ちゃんと央子さんや「急降下するエレベーター」の佐羽と南龍之介などはもっと行く先を見てみたい気もする。

  • ある小さな町に住む老若男女たちが、少しずつ関わったり、どこかでこっそり見られていたり、実は誰にも知られていない事情があったり…
    なるほど、ここは”街”ではなくて、”町”なのですね。
    人が日常を生きていく場所。寂しさや憂いをいっぱい含んだ場所。

  • とても不思議な作品。

    ひとつの町を舞台にした連作なため、他の章で登場する人物がひょっこり現れて交点は見えるけれど、決して一本にはまとまらない。

    不思議な関係があっても、それがすべて明らかにされることはなく、最後まで読んでもくっきりとした輪郭は出てこない。

    でも、人間ってそういうものなのかもしれない。

    中の文章を借りるならば、自分の存在など何の決め手にもならないと思っていても、ただ生きてすれ違うだけで、人は他人に何かしらの影響を与えてしまうのかもしれない。
    そして、そういう影響が重なり合って人間関係が、町がつくられているのかもしれない、と思った。

    ぽろっと気になる文章が作品中に落っこちているので、それを拾うために立ち止まりながら読んでもおもしろかった。

  •  とある町のオムニバス。1話1話独立しているようで、あぁやっぱりつながっていたか…と。
     ちょっとせつなくなるような…。
     商店街…。現在、居住する町の商工会会員でありながら、設計事務所、という、商店ではない自分の仕事。でも第1話の魚屋の2階は設計事務所だった。まったく物語には出てはこないけど。
     あの設計事務所はやっぱり商店街の一員なんだろうか…という、どうでもいいことが気になった。多分、私だけの感想。
     蔵書になるだろう…は装丁のせいもあるだろう。

  • ひんやり、ひたひた。
    時折、ほっこり。

    人と人と、否、自分と誰かの繋がりについてふと思いめぐらせる。
    私とあの人、あの人と誰か。あの人たちと私。
    小説並みに不思議なことも感じることはある。
    何て頼りないんだろう、目に見える物事のかたちとは。

    そんなことを思いながら、不思議な手触りの遠い町に引き込まれた。

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著者プロフィール

川上弘美(かわかみ・ひろみ)
一九五八年東京都生まれ。一九九四年「神様」でパスカル短篇文学新人賞を受賞しデビュー。一九九六年「蛇を踏む」で芥川賞、一九九九年『神様』で紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞、二〇〇〇年『溺レる』で伊藤整文学賞、女流文学賞、二〇〇一年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、二〇〇七年『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞、二〇一五年『水声』で読売文学賞、二〇一六年『大きな鳥にさらわれないよう』で泉鏡花文学賞を受賞。二〇一九年紫綬褒章受章。

「2019年 『掌篇歳時記 秋冬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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