パスタマシーンの幽霊 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 904
レビュー : 74
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101292427

作品紹介・あらすじ

恋をしたとき、女の準備は千差万別。海の穴に住む女は、男をすりつぶす丈夫な奥歯を磨き、OLの誠子さんは、コロボックルの山口さんを隠すせんべいの空き箱を用意する。おかまの修三ちゃんに叱られ通しのだめなアン子は、ふたまた男の誘いの電話にうっかり喜ばない強い心を忘れぬように。掌小説集『ざらざら』からさらに。女たちが足をとられた恋の深みの居心地を描く22の情景。

感想・レビュー・書評

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  • なんとまぁ
    贅沢な短編集だこと。

    やっぱ川上弘美好きやわぁ〜♪


    美しく官能的な文体が織りなす
    切なくも心地良い世界観、

    あの独特な言い回し、

    そして川上さんお得意の
    物語を彩り
    主人公たちの心情に寄り添う
    たくさんの料理や食べ物の描写の素晴らしいこと。

    久々にハズレのない短編集に
    何度も読み返してしまったなぁ(^O^)
    (この一遍の短さで
    この味わい深さと完成度の高さは
    もはや職人技!)


    個人的に気に入った話を挙げると、

    『古道具 中野商店』のヒトミさんとタケオのじれったい恋を思い出した
    「銀の指輪」、

    親の再婚に揺れる
    中学生のリアルな心情と
    クロスワードパズルを組み合わせた構成が見事な
    心に残る一遍
    「すき・きらい・らーめん」、

    料理下手な女の葛藤と
    ばあちゃん幽霊との出会いを描いたユニークな表題作
    「パスタマシーンの幽霊」、

    人を好きになる不思議を
    思春期の淡い恋心と併せて教えてくれる
    「ほねとたね」、

    コロボックルの男性に恋した奥手な女性の
    揺れ動く心情を綴った
    「ナツツバキ」、

    オカマの修三ちゃんと
    ダメな男を忘れられないアン子との
    性別を越えた絆の話
    「修三ちゃんの黒豆」、

    コロボックルが再び登場し
    一人ぼっちの中年女性との心の触れ合いを描く
    「庭のくちぶえ」、

    甘ざみしくて物憂い片思いと
    おむすびに込められた恋情が切ない
    「少し曇った朝」が
    オススメ。


    しかし恋とは
    なんて報われないものなんだろ。

    それでも人は恋に落ちるし、
    誰かとの明日を夢に見る。


    映像喚起力の高い
    それぞれの話を読んでると
    村下孝蔵の「初恋」や
    オリジナル・ラヴの「プライマル」や
    YOSHII LOVINSONの「CALL ME」や
    山崎まさよしの「振り向かない」などの名曲が
    脳内再生されて流れてゆく。
    (さてどれがどの話でしょう笑)


    切なくて可笑しくて
    シュールでいて
    読む者に小さな勇気を与えてくれる一冊!


    しかし、コロボックルと人間の女性との恋の行方が無性に気になるし、

    バターとお醤油とケチャップが
    三位一体となった
    ケチャップごはんの威力には
    胃袋掴まれましたよ(笑)(>_<)
    (いつか川上作品の料理本出ないかな〜)

  • ずっと前、居たなそういう人、原田聖子のような理解できなかった存在の人。(ゴーヤの育て方)
    「ねえ、大学時代はさあ、会社に入って働くとか、考えてもなかったよね」「いろんな女や男やおっさんやおばさんがいるところで、自分も働いていることが、まだ信じれん」
    不特定多数の人と、誰もが良い人間関係を結ぶのは難しいと学んだ自分の「お勤め」のころを思い出した。
    輪ゴム、はよかった(全部よかったけど)。どのお話も哀愁が漂って、ふわふわしてるのにせつなくて、だけど穏やかになる。

  • 恋っていう名前のものじゃなかった。でも、知らんふりは、できないものだった。
    知らんふりできなかった想いは「あたし」の中に確かにずっと残ってる。

    雑誌『クウネル』に連載された22の短編集第2弾。
    今回も様々な「あたし」達の揺れ動く想いに、私の気持ちも揺さぶられっぱなし。
    第1弾から続く修三ちゃんとアン子の親友コンビに加え、初登場の誠子さんと山口さんコンビもとてもいい。
    この二組は長編にしてほしい。

    この他印象的だったのは『海石』。川上さんの不思議ワールド全開の話で初っぱなからやられた。
    どうして「陸のいきもの」は相手を好きになると混じり合わないようにしてしまうのだろう。
    「海のいきもの」のように好きと好きが引き合ってくっついちゃうといいのにね。

    また今回は美味しそうな料理も印象的。
    ケチャップごはんに、修三ちゃんお手製の黒豆、アン子お手製のはまぐりずし、鶏のまるごと煮込み、ブイヤベース…。
    料理と一緒に、作った時食べた時の想いも伝わってきた。
    このシリーズはこの先もずっと続けていってほしい。

  • 川上さんの本を開くといつも、同じ活字なのに、活字を見ただけで、あっ川上さんだって思ってしまう。
    「ざらざら」の続編。
    不器用でどうしようもない、女という厄介な生き物について書かれている。
    厄介だけど、恋するって幸せなんだよね。

    修三ちゃんとアン子と中林さんの登場する長編が読みたくなってしまった。
    あと、コロボックルの山口さんも。

  • このお話が好き、こっちがいちばん、

    と心でしるしをつけながらひとつひとつ読み進めたら、

    最後にはいちばんがなくなってしまった。

    ひとつ読むと、それがいちばんになる。

    そして、左手で挟むページが薄くなってくると

    かなしくて、

    あとひとつ?まだある?と、

    そわそわした。


    読んでしまうのが勿体ない。

    けど、もっと欲しい。まだまだ食べたい。

    だから、川上さんの短いお話はだいすきなのだ。

  • いくつかの短編は、ドキドキするほど自分のことが書いてある…と思い、
    自分のこの恋も、もしかしてこの小説の登場人物たちみたいに終わっちゃったりするのかなとか、
    本気で心配しちゃうくらい、気持ちの中で重なるところが大きくて、
    小説は小説なんだろうけど、どうにも繊細にあたしの胸をついてくるものだから、
    読みやすいんだけど、数編読むと疲れて先に進めないのでした。

    今はいくつかの短編にビビっと反応して、
    きっとまた違う恋をしたら違う短編にビビっと反応して。

    川上弘美さん、もてるんだろうな。
    良い恋も悪い恋も、たくさんして来たに違いない。
    良い恋も悪い恋も、どれもたぶん良い恋なんだ。

  •  雑誌「クウネル」に連載されていた短編を集めたもの。
    「ざらざら」も「クウネル」に連載されていたものを集めた本だったので、その続きということになるのかな。
     やはりこの人の短編は面白い。
     とりたてて凄いことや凄い人が登場する訳でもない。
     起承転結のうち、「承」のみで構成されているような印象の作品も多い。
     それでも、読んでいて少しも欲求不満にはならない。
     女性視線の失恋物が多いので、100%感情移入できる訳ではないのだけれど、それでもある程度心情は理解できるような気にすらなる。
     登場人物は(海の生き物の海石さんも含めて)心底悪い人はおらず、平凡なんだろうけれど、その平凡さに味があるというか、なんというか。
     とにかくスススーと心に注がれてくる物語が22話詰まっている。 
     コロボックルの山口さんには会ってみたいなぁ(あるいはコロボックルの山口さんみたいな存在になってみたい、なんて思いもある)。

  • まったりしてるのにどこか物悲しいところが好きだな、と思った短編集。
    いや、超短編集。

    パスタを作るおばあちゃんの幽霊が出てくる表題作もとても可愛らしくて好きだけど、私は小人のヤマグチさんが出てくるお話が好きだった。
    忘れたころにまたヤマグチさんの短編がやってくるところも何か嬉しい。そういうつくりだった。

    可愛くて笑ったり、ちょっとほろっとしたり、切なくなったり。
    そしてそこにはいつも男女がいる。様々なかたちで。

    多くは語れないけど大好きな世界観。

  • 読んでいてすごく心がザワザワした。

    道明寺ふたつ、やっとこ、きんたま、富士山が好き。
    この本の中では言葉にできて的確なものは言葉にするししないものはしない。と言葉できない感情をそのまま時々差し出されるような。
    それが心をざわつかせるのか。
    好きになった瞬間の言語化は特に難しい、反面別れたこと、原因を言葉にするのは易いよう・・・で易くない自分の倫理と感情が反するような。
    うまくいった話も、行かなかった話もどこかしんとひとりごちたよう、個人の感覚的で人は1人と思わせられる悲しさも感じた。
    感想を考えるうちに思い出と混同してチクチクしてきたから締めたい。
    「今」から離れた時にもう一度読みたい。

  • クウネルでの連載をまとめた2作品目だということは解説にて知ったが、オトナの女性が読んだらきっと胸がつかえるような、繊細な物語たち。
    川上弘美が紡ぐ言葉が本当に好き。この人はなんて綺麗な言葉を編むのだろう。
    流れるような日本語の甘く脆く緩やかな様にいちいち胸がきゅっ、となる。
    少女も会社勤めするOLもお婆さんも、女性が抱く繊細な感情は大して変わりないのかもしれないなーなんて思うと、私もずっとこのままなのかなあ、と何だか不安な気持ちになる。同時に、このままでもいいかな、とも思う。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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