猫を拾いに (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 341
レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101292441

作品紹介・あらすじ

誕生日の夜、プレーリードッグや地球外生物が集い、老婦人は可愛い息子の将来を案じた日々を懐かしむ。年寄りだらけになった日本では誰もが贈り物のアイデアに心悩ませ、愛を語る掌サイズのおじさんの頭上に しぐれが降りそそぐ。不思議な人々と気になる恋。不機嫌上機嫌の風にあおられながら、それでも手に手をとって、つるつるごつごつ恋の悪路に素足でふみこむ女たちを慈しむ21篇。

感想・レビュー・書評

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  • 川上さんならではの不可思議な世界と、レンアイの話を、一つ一つ丁寧に読むのが楽しかった。
    恋人の弟、丹二さんを好きになってしまった衣世の、せつない恋の話 「ぞうげ色で、つめたくて」
    地球外生物が出てくる不思議な話 「誕生日の夜」
    修三の母の心の内を綴った「はにわ」
    気持ちが動くたびに、カウンター機をカチカチと押している女の子の話 「真面目な二人」等々、21篇が収められている。
    それぞれ深く考えさせられたり、最後まで飽きることなく楽しめました。
    川上さんの掌小説、好きです。

  • 随分久しぶりに川上弘美さんの小説を読みました。
    10年ほど前にも好んで読んでいた時期があったのですが、安心感のある文章と不思議な雰囲気のストーリーに再びはまりそうです。

    本書に収められた21編の短編、どれも身体の芯の部分をくすぐられたような、さわさわとした感触を残します。
    …が、1編だけ、「なんだこれは」という鳥肌の立つ読後感のあった「ハイム鯖」の印象強し。
    1回読み終えて「え?」と思い、慌ててもう1度読み直してやっぱり「え?え?」となる、不気味さの配分が絶妙です。

    解説はタレントの壇蜜さん。
    「恋をすると、誰でも少し不幸になる」という川上さんの物語が、壇蜜さんによってより艶っぽくなる感じが素敵でした。

  • 川上弘美さんの本は6冊目。
    以前、こちらでも書いたことがありますが、「川上弘美の文章は美しい」
    どこかでどなたかが書いていたこの一文がずっと頭の片隅に。
    実際に読んでみると、川上さんの文章はとても優しく、心地よい。
    お気に入りは『これでよろしくて』

    この【猫を拾いに】はちょっと不思議な短編集。
    時々、あたまのなかに”?????”の嵐が巻き起こる物語もあるけれど (笑)

  • 恋をすると不幸になる。
    それでよいとおもう。
    川上弘美のそういうところが好きだ。

    どういうところかと言われても、
    そういうところ、としか言いようがない。



    どうしても欲しいものは、
    いつだって、
    僕の手に入らない。
    それがでも、
    僕は決していやではない。

    『トンボ玉』



    少しずつ、すべてがまんべんなく、
    痛かった。

  • ここ最近仕事で活字を追うことが多かったので、自分のための読書は久しぶりだった。リハビリ的にも、川上さんの文章は何の負荷もなく沁み入ってくるので。
    わたしたちの世界とは少し違う世界の話、と切り離してしまうのも違うし、夢のような話、というのも違うな。
    そういうのもあるのかな、みたいな。
    形のないものが、川上さんによって名前や体温や色を与えられてそれぞれの物語になっている。わたしが好きな川上弘美が掌編としてきゅうっと詰まった一冊だった。
    九月の精霊、朝顔のピアス、が好き。

  •  真ん中くらいまでは、結論がなくて何ともないただの描写じゃないのかと思っていましたが。「そういうことは、なんとなく、わかるものなのだ」という、村上春樹みたいな文章あたりから、その結論の無さが好ましくなってきました。
     「地球上の生活には金がかかるかもしれないけど、太陽のまわりを年に一周する旅が無料でついてくる」なんていうちょっとくさい文章もなんだか許せてしまいます。
     川上さんはあまり読んだことはありませんがちょっと気を付けて読んでみようと思いました。

  • この短編集に出てくるのは(たぶん)過去に大事なものを失った人たちです。あるいは失おうとしている人たち。そういう話って大抵しんみりしちゃうんだけど、川上弘美の手にかかれば極端に不幸なわけでも幸せなわけでもない淡々とした生活として描かれてしまう。登場人物に共感できたりできなかったり、そういうのもまた良い。

  • スパスパ読めていって、なごむー。

    ふしぎなことにこだわる人達が出てくる。
    風変わりな仕事をしているとか。
    名前で呼ばれたくないとか、交通量をはかるカチカチを持って歩いているとか、ふつうは見えないものが見えるとか。
    そういう、ふしぎなことの中には、ああ、見てらんない、というザラッと感が含まれている。
    ……、このザラッと感をうまく説明できない。

    ふつうとは違うことを、それがスタンダードでしょう、当たり前でしょうと見せられると、私は時々苦しくなってしまう。
    多様性がいいとか、どうとかいう話ではない。
    私は私よ、と言ってのけることを羨ましいと感じているのかもしれない。
    ただ、そういう部分をあえて前面に押し出してくる人に、世界はアナタだけでもないんだよ、と一般人代表の気持ちになってしまう自分がいる。

    「クリスマス・コンサート」と「旅は、無料」の続きのような二作が好き。
    坂上のもやもやした不器用な可愛さもすごくわかるし、そんな彼女を研究し、好きな人を紹介したくないとまで思う千絵も可愛いと思う。
    胸の内でごちゃごちゃしながら、真っ直ぐ前を向こうとする女の子は、なんだか可愛い。

    「信長、よーじや、阿闍梨餅」は、最後にして、最強の一話だと思う。
    とりあえず、声をあげて笑ってしまった。
    新田義雄が、極度に京都を拒否する理由。
    二人だけの出張の中で、その理由が次第に明らかになるのだけど……。
    京都を出ようとしたその時、この旅最大の危機が訪れるのだったー!
    なんか、映画の番宣みたいだけど(笑)
    もう、コメディーっす。面白すぎる。

    隙間時間に読めて、楽しめた!

  • 祝文庫化!

    新潮社のPR 未掲載
    http://www.shinchosha.co.jp/book/129244/

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    川上マジックがいっぱいの最新短篇集はたとえばこんな話が21篇も収められている。
    《好きになった時には、好きは永遠につづくはずだったのに、いつの間にか恋はさめ、ひとときも離れたくなかった男はただのかさばる存在になり、そのたびにわたしは率直に、前向きに、「別れよう」と宣言した。》――〈わたし〉の新しい旅立ちを描く「旅は、無料」。
         *
    《日本の人口が減りはじめたのは五十年ほど前のことだ。それまでにもすでに少子高齢化が進み、生殖可能な人口の絶対数が減ってしまっていたので、減りかたは急激だった。》
    ――若い人が激減した近未来の日本を描くSF風味の「猫を拾いに」。
         *
    《私の人生で、最大の悔恨。それは、息子がゲイになってしまった、ということなのである。》――川上ファンならおなじみの〈ゲイの修三くん〉の母が登場する「はにわ」。
         *
    《結婚なんてさ、脳天がしびれる感じでばかになってなきゃ、できないことだよ。きちんと考え始めちゃったら、怖くてできないでしょ。》――優しくって顔も声もいい、清潔で趣味もいい。そんな言うことなしの恋人と別れた〈あたし〉の心の底を描いた「ホットココアにチョコレート」。
         *
    《そのお店はとても不思議なお店なのだと桐谷さんは言う。お店に入れるのは、恋の悩みを持つ人間だけ。悩みをうちあけると、店主が必ず解決してくれる。》――日常とファンタジーが入り混じる「まっさおな部屋」。
         *
    《マルイさんは、僕の両のてのひらをあわせた上に乗っかってしまうくらい小さいけれど、れっきとした人間である。》――少年と〈小さい人〉の交流を描く「ミンミン」。
         *
    《たぬきのつがいと鶴が三羽、くだをまきながらビールを飲んでいる。キッチンでは地球外生物らしき浅葱色のぼやけた存在が、よごれものをていねいに洗っていた。》――わたしの誕生日のパーティにはいろんな人がやってきた。地球外生物も現われる「誕生日の夜」。
         *
    《なにしろ、京都は怨霊のメッカだから、と新田義雄は言うのだ》――あたしの同僚の新田は霊能者らしい。信長の怨霊とふたりの絶叫がこだまする「信長、よーじや、阿闍梨餅」。 

    技巧をこらしたヴァラエティ豊かな傑作が21篇――贅沢で楽しい短篇小説集。
    https://magazineworld.jp/books/paper/2619/

  • どことなく星新一の小説を思い出すような、不可思議な短編が詰まった一冊です。
    読み終えてもいまいち消化できず「?」が浮かんだままの話が多いですが、愛について語る小さなおじさんや、誕生日を祝うために見知らぬ人々や地球外生物までもが集まるお話など、どの話にも根底に小さな愛が湛えられているように感じました。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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