ブラバン (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101292717

作品紹介・あらすじ

一九八〇年、吹奏楽部に入った僕は、管楽器の群れの中でコントラバスを弾きはじめた。ともに曲をつくり上げる喜びを味わった。忘れられない男女がそこにいた。高校を卒業し、それぞれの道を歩んでゆくうち、いつしか四半世紀が経過していた-。ある日、再結成の話が持ち上がる。かつての仲間たちから、何人が集まってくれるのだろうか。ほろ苦く温かく奏でられる、永遠の青春組曲。

感想・レビュー・書評

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  • 大人の青春譚。

    四十代に入った中年が高校時代を振り返り、吹奏楽部再結成に向かう話。

    私はブラバン経験もないし、楽器も作中の音楽もてんでわかりませんでしたが、「ああ、青春の振り返りは甘いもので、けど現実に戻ったときの衝撃も大きいなぁ」と感じた作品でした。

    年月が経って変わらない人もいれば、音信不通の人もいる、変わり果ててリスカする飲んだくれになっている者もいる。
    発案者の桜井さんは土壇場で披露宴取りやめで、クライマックスは悲しみに溢れてしまう。
    主人公も順風満帆とは程遠く、振り返った後は悲しみが残るような感じで描かれていました。
    割と救いが無い人は完膚なきまでに無いよなぁ…
    特に先生…
    流産した子はやっぱり来生の子だったのかな?

    それもひとつの人生で、宝石のように大事に取っておける青春を過ごしたことはかけがえの無いものなんだなぁ。
    私も高校よりは大学で部活に精を出した者で、今でもその思い出は宝石のように輝いています。

    割と救いがなくて暗かったり、楽器、音楽の知識が必要で、登場人物が多くて読むのが大変でしたが、年を取ってから読むべき一冊です。

  • 悲喜交々のオンパレード? いろんな人がいるから、この世は面白いのでしょう。

  • 高校時代に在籍していた吹奏楽部を途中退部しているのだが、ふと手に取ったこの作品を読んで、主人公たちの年齢と心情に近付いてる自分に気付かされた。
    当然この作品における登場人物たちの如く長い年月で失敗もたくさんしてきたから、境遇だってそこまで変わらない。

    死ぬ人もいれば身体障害者になる人もいるし土壇場で婚約破棄される人もいるし、主人公にいたっては女顧問と身体の関係を持ってしまっている。斜め上すぎる。
    もちろん普通の専業主婦なんかもいるけど、アクの強い人達のインパクトばかりが残ってしまう。
    主人公達は自分の親世代だが、高校生だった頃も大人になってからの方も感情の巡り方も自分達の世代と同じように思えた。聞いてた音楽も喋ってる方便も全く違うのに。
    しかし作品的に仕方ないしこれで作品の評価を下げる事そのものはないとはいえ広島弁は読みにくい。昔は今より方便キツい時代だったなあ。

    誰々は誰々に似てるとかあの先生もそうだったなとか色々と思い出してしまった。
    たぶんもう会うことはないけど、その断片に触れてしまった気がする。

  • 自分の結婚式で、高校時代のブラスバンドを再結成・演奏してもらおうと企画したのをきっかけで、当時の部員の今昔を描き出す。語り部となるのは立案した女性ではなく、彼女の一年後輩の男性となる。地元に残って酒屋(描写としてはバー)を営んでおり、昔の仲間とも

  • 自分が吹奏楽部に所属しているためタイトルと表紙に惹かれて手に取った本。
    少しずつ読み進めてようやく読了。
    全体的に切なさをとても感じた。
    高校時代と成人してからの人間関係の変わりよう、思い描いていたのとは違う将来、寂しくなる要素は多くあれど、また再び、かつての青春時代を過ごした仲間と音楽を奏でるということに胸を打たれた。
    とりあえず明日から部活の練習をちょっとだけ頑張ろうと思う。

  • この間、職場の有線で「ムーンライト・セレナーデ」がかかっていた。
    やっぱり名曲だなぁと思ったのは、こんな本を読んだからだ。


    『ブラバン』 津原泰水 (新潮文庫)


    作者は私と同年代である。
    同じ時代に違う場所で高校生をやっていたんだね。


    典則高校吹奏楽部で、“弦バス”ことコントラバスを弾いていた他片(たひら)くんが、この物語の語り手である。
    これは、四十代になった彼らの物語なのだ。

    読み始めてすぐ、素朴な広島弁にまず引き込まれる。


    高校を卒業して四半世紀、様々な人生を歩み、四十路となった元吹奏楽部のメンバーに、ひょんなことから再結成の話が持ち上がる。
    しかし物語は、再結成までの苦労話というよりは、どちらかというと高校時代のエピソードに重きが置かれているようで、私はブラバン部員ではなかったけれども、高校時代を思い出して懐かしい気持ちになった。

    でもすごく読みにくいのよねー。
    現在なのか過去なのか、いつの話が始まったのか分かりづらいところがあったり。
    そしてやたら人が多い!
    まあ登場人物が多いのは、三学年分だからしょうがないけど。
    冒頭の登場人物紹介を見ると、ブラバン関係者だけでなんと顧問含め総勢34人!
    たぶん登場人物をある程度絞って書けばすっきりするはずなのに、この34人全員の名前をとりあえず作中に出した作者の意気込みには拍手を送りたい。


    初めてのコンクールでの緊張感はとてもリアルだ。
    二度目の文化祭での“悪事”はすごかったな。
    クラシックや課題曲などの正規の演目のラスト一曲に、勝手にジャズの曲をかぶせてしまうという。
    顧問が怒って舞台を降りた後、有志のみで演奏された「ムーンライト・セレナーデ」は名演だった…。

    彼らは、顧問に内緒で、弦バスの裏板に穴をあけてアンプとスピーカーを内蔵し、エレキ化してしまったりする。(ちなみに学校の備品)
    こんな若気の至りに時間を惜しげなく使えるのは若さの特権だ。
    案外結果はどうでもよかったりするのだ、こういうのって。
    将来のためとか、自分にとってプラスになるとか、何かを得ようとしてやるわけじゃないから、純粋だしアホだし。


    ところで、語り手の他片くんが自分のことを話す時やたら暗いのが、読みながら気になった。

    本人が語るところによると、彼は高校卒業とともにコントラバスをやめ、漫然と大学に通ったあと、好きになれない仕事を転々とし、すべての恋愛に失敗してきた。
    飲み屋を始めたが経営は火の車、金目の物はすべて手放し、大切なフェンダーのベースも売り払ってしまう。

    ……という人生なのだそうだ。
    店を持ったのは、「自分を許容してくれる場所、狭い穴蔵が、ただ欲しかった」から。

    再結成を一番喜んでいたのは、実は彼だったのではないだろうか。
    ただの語り手として役を振られたわりには、背景に含みがあり過ぎるもの。
    安野先生と付き合っているのも、本当は、“弦バスの他片くん”という若き日の肩書きを、夢見るように楽しんでいたかったからなのかもしれない。


    ラストシーンは、母校の現役吹奏楽部員たちが、OBたちのために企画したクリスマスコンサートだ。

    物語は、本番寸前の楽屋の場面で終わっている。
    本番前のドキドキが、高校生だったときの彼らと今の彼らとは、明らかに違うのがわかる。
    年を重ね時を経ることの重さが、ひたひたと胸に迫ってくる。

    これを現役の若い人たちが読んだら、もしかしてちょっとガッカリするかもしれない。
    でも、四十代になったらもう一回読んでみてほしいな。


    チューバを抱きしめる唐木くんや、本番前なのに眠ってしまった幾田くん。
    校庭に佇む桜井さん。
    小日向くんの「行くで」にほろりとした。


    四十にして惑わずなんて嘘だ。
    大体の人は惑っている。
    私も。
    人と比べるしか測りようのないものよりも、味のある人生だったと思えることの方がいい。

    若い読者にはちょっぴり苦い、これは大人のための青春グラフィティなのだった。

  • ★彼女は僕にこう言った。「悲しい?」(p.320)
     ブラバンやってた連中の一体感は恐ろしいほどで経験者たちの語り合いの中には入っていけないくらいでなんだか一生の宝もののようですが、お話は高校卒業後四半世紀を経て吹奏楽部再結成の提案があるもののほとんどが演奏をやめているなかメンバーと楽器集めに苦労するものの過去の輝いていた(?)時間もよみがえってくる。作家としてはこういう話をひとつ書けたらシアワセやろうなと思いました。

    ▼簡単なメモ
    【一行目】バスクラリネットの死を知ったトロンボーンとアルトサクソフォンは、ちょっとしたパニックに陥った。

    【芦沢久美子/あしざわ・くみこ】フルート。「僕」の入部時に二年。容姿も声も幼い。人の世話をするのが好き。高見沢の次の副部長。今は老舗和菓子屋「芳村」の女将。
    【荒俣治/あらまた・おさむ】「僕」入部時の部長。
    【アルトサックス】君島秀嗣。岡村美子(後にテナーサックス)。
    【安野志保子/あんの・しほこ】顧問。クラシック好きでジャズやロックは嫌い。ある時点で「僕」と険悪になる。現在は教師を辞めて飲んだくれてる。
    【幾田/いくた】フルート。「僕」の友人。多重録音を始めたのでそのための技術習得のため入部。生真面目なタイプ。現在精神を病んで時間の感覚が曖昧になっている。ギター好きだがエレキは嫌い。
    【石巻充/いしまき・みつる】チューバ。優等生タイプ。他者に厳しい。現在大手書店チェーンの店長。
    【板垣】軽音楽同好会の部長。ベース。
    【144ポータスタジオ】ティアックのミキサー付きレコーダー。カセットテープを使う。
    【Aトレイン】県下でも有数のライブハウス。
    【オーボエ】高見沢庸子。来生俊也。木管のなかでも音を出すのが難しい楽器だとか。リードを自分でつくらねばならない。チューニングも難しく演奏前にはオーボエに合わせてチューニングすることになる。
    【岡村美子/おかむら・よしこ】サックス。二年からは同じクラス。カンタベリーロックこそロックの神髄と主張していた。「僕」の代では副部長。
    【沖田小夜/おきた・さよ】クラリネット。「僕」の入部時に三年。美人。ど近眼。男性にトラウマがある? 現在の夫はオークランドの人でマーク・レスターに似ているらしい。
    【驚く】《死というものの呆気なさに、ただ驚いていた。何年ものあいだ驚き続けていた。つまり高校時代の僕はずっと驚いていたのである。》p.84
    【オネスティ】ぼくも好きな曲ですが歌詞は辛辣なんだとか。《優しさを見つけるのは簡単。大切な愛だって得られないわけじゃない。でも真実ってやつには目を擦ったほうがいいよ。簡単には与えようがないものだから。》《誠実――僕らには無縁の言葉。だってみんな嘘つきなんだから。誠実な言葉なんて耳にしたためしがない。いま君が聞かせてくれるってんなら別だけど。》p.33
    【終わる】《俺はたぶん、何かが終わっていく感じが嫌いなんよ。どうように下らんことでも、それが終わっていくんが悲しいんじゃ。ほいでも終わらんものなんかとこにもない。じゃけえせめて最後の最後まで見届けようとする》p.337
    【音楽】《音楽なんか無駄なんじゃ。ほいじゃけえこそ、いつまでも輝いとる》p.99。《音楽は何も与えてくれない。与えられていると錯覚をする僕らがいるだけだ。》《そのくせ音楽は僕らから色々に奪う。人生を残らず奪われる者たちさえいる。》《なのに、苦労を厭わず人は音楽を奏でようとする。》p.363
    【楽譜】高い。
    【過去】《先生の過去についても現在についても僕は知らないことだらけだが、穿鑿してまた過呼吸の発作でも起こされては困るので、目の前にいる彼女以外には興味をもたないようにしている。》p.301
    【笠井苑子/かさい・そのこ】ユーフォニアム。唐木を見捨てず指導した。今は娘のつくったビッグバンドの救世主となっている。
    【柏木美希/かしわぎ・みき】パーカッション。後輩。他平に好意をよせていたようだ。後のともさかりえ似のルックスに聖子ちゃんカットの髪型だった。卒業後、便箋五十枚くらいある手紙を寄越した。今も「僕」の店の常連。
    【カタログ】《人間というのは、なんで不要を口にしてまで周囲との間に摩擦を生じさせるのだろう。摩擦はそんなに気持ちがいいかな。本物になってくれないからこそ、飽きもせずに紙の上の平面を眺めているのだ。》p.30
    【合奏】《合奏には魔力がある。》《自分との戦いである独奏からこれほどの高揚や失望は生まれえない。ひょっとすると友情よりも素晴らしく、ひょっとすると恋愛よりも過酷なのが、鳥のように音を奏で合うというこの人類特大の発明だ。》p.181
    【唐木悦郎/からき・えつお】チューバのちにユーフォ。「僕」の友人。楽器とは無縁だったが最終的にはユーフォニアムに落ち着く。女子とお近づきになるためにブラバンに入った。現在は郵便局勤務。
    【カリスマ】名前不明。柏木美希が「僕」の店に連れてくる恋人。愛称は「ディック」。
    【川之江祥子/かわのえ・しょうこ】弦バス。皆本よりさらに背が高くジョン・レノンに似ていた。「僕」入部時に三年。科学的な思考をする。現在は病院勤務。
    【岸岡】現在の典則高校音楽教師で吹奏楽部の顧問。典則高校OB.であり吹奏楽部のOBでもある。ホルンをやっていた。
    【来生俊也/きすぎ・としや】「僕」と同じ乾中学出身で同学年の友人。オーボエ。「来ぃさん」と呼ばれている。天才肌で習っていない楽器を演奏できる(こともある)。「無駄なく生きる」という意思を抱く。健康のために入部した(と本人は言っている)。熊谷諒子と結婚。商社で出世して世界中を飛び回っている。
    【君島秀嗣/きみしま・ひでつぐ】アルトサックス。平和公園に近い有名旅館の息子。
    【郷愁】《郷愁と悔恨は仲睦まじい。どちらも必ず親友を後ろに隠している。》p.234
    【熊谷諒子/くまがい・りょうこ】パーカッション。後に来生俊也と結婚する。
    【クラリネット】沖田小夜。新見香織。永倉竜太郎。松原都。
    【檜林/くればやし】安野の後任の吹奏楽部顧問。数学教師。本来は合唱部の顧問。四十代だった。「僕」はこの人に顔が似ていると言われていた。「わからん」が口ぐせであだ名も「ワカラン」になった。
    【黒電話】ダイヤルを回さず電話をかけることができた「僕」は級友の番号を指のリズムとして覚えた。まあ、すごいとは思う。
    【軽音楽同好会】「僕」が仮入部していた。部内で各自にチームを組んで活動するのでそういうメンバーを見つける必要がある。活動を諦めていたがフェンダーを入手してバンドを組んだ。
    【弦バス】→コントラバス
    【合理的思考】《川之江さんの合理的思考が目標達成のための手段だとすれば、来生の合理主義はその実践自体が目的になっているふしがある。》p.55
    【小日向隆一/こひなた・りゅういち】テナートロンボーン。「僕」の入部時に二年。皆本優香とつきあっていた。ぶっきらぼうだが面倒見がいい。荒俣の次の部長。
    【コルネット】玉川成夫。
    【コントラバス】川之江祥子。他片等。ブラスバンド唯一の弦楽器。「僕」の考えではジャズ演奏のとき弦バスの音が必要になったのではないかと。静かな楽器。
    【桜井ひとみ】トランペット。東京弁を直さない。異邦人という感じだった。「僕」もまた他の部員からは異邦人と思われていたらしい。後に蛙の研究に関わる仕事をしていたらしいが吹奏楽部の再結成を提案してきた。《彼女はじっと風上を向いている。風のにおいを嗅いでいる。》p.421
    【佐藤徹雄/さとう・てつお】テナーサックス。ただしエア。なんぼ練習してもまともな音が出ないので演奏するフリだけしていた。ただし吹きまねは名人の域に達していた。
    【シゲさん】現在の「僕」の店の近くの酒場のマスター。むかし歌手だったらしい。本人いわく森茉莉のエッセーにも登場してるんだとか。オネエことば。
    【章の題名】各章には曲名が題としてつけられている。「オネスティ」「ラプソディ・イン・ブルー」「真夜中を突っ走れ」「木星」「秋空に」「パストラル」「I.G.Y.」「スターダスト」「ムーンライト・セレナーデ」「ペンシルバニア6-5000」「蛍の光」「3ヴューズ・オブ・ア・シークレット」。
    【1980年】「僕」が典則高校に入学した年。イラン・イラク戦争勃発し広島カープが近鉄バファローズに日本シリーズで勝利しジョン・レノンが射殺された。
    【高見沢庸子/たかみざわ・ようこ】オーボエ。副部長。薄い印象。後にグラビアアイドルとなる。
    【タダ】用賀さんちにいた用賀さんいわく秋田犬。血統書付きの両親から生まれたが先祖がえりで一度混じった洋犬の特徴が出てしまいタダでもらったのでこの名がついた。
    【他片等/たひら・ひとし】語り手の「僕」。コントラバス。内輪では「ライくん」と呼ばれている。楽器に触れたいので入部した。「ザ・バンド」の映画を中学生のとき観て刷り込まれたのでそれが音楽の原点。現在酒場の主人。自分の居場所ほしさにつくったようだ。《他平くんって昔から、おとなしそうなくせに意地が悪い》p.235。《思うとることを口にださんけえよ。相手が見てほしい部分じゃなしに見てほしゅうない部分をさきに見つけて、しかも黙ったままでおるけえよ。それがみな怖いんじゃ。》p.243
    【玉川成夫/たまがわ・なるお】コルネット。半分プロ。ゲイ。沖雅也に似ている。美形とはいいにくいがパーツパーツは似ているらしい。音大に受かった。現在アメリカのどこかにいるらしい。
    【チューバ】石巻充。唐木悦郎(のちにユーフォ)。
    【辻桔平/つじ・きっぺい】テナーサックス。軽音楽同好会にも入っていてそちらでばベース。アズールというフュージョンバンドのメンバー。テクニック的にはさほどでもないがステージに上がると凄い。「僕」が憧れたミュージシャン。現在道後温泉の有名な宿「碇荘」で仕事をしているらしい。バンド再結成の話に乗らなかったのには理由があった。
    【テナーサックス】辻桔平。佐藤徹雄。
    【典則高校】元二中でリベラルな雰囲気だった。現在は総合学科高校に転身、短大化して生徒自身がカリキュラムを組む。現在の吹奏楽部の部員数は二十二人と少なく楽器が余っている。
    【土橋勉/どばし・つとむ】バストロンボーン。脇役っぽい人。
    【トランペット】桜井ひとみ。用賀大介。西崎裕。
    【トロンボーン(テナートロンボーン)】小日向隆一。土橋勉。
    【永倉竜太郎/ながくら・りゅうたろう】クラリネット。リーゼント。抜群に巧い。「僕」と同学年。現在は私学の衆林館の吹奏楽部の顧問をしている。
    【新見香織/にいみ・かおり】クラリネット。きわめて明朗な性格。今も見た目はあまり変わっていない。
    【西崎裕/にしざき・ゆたか】トランペット。「僕」と同じ代。「かに道楽」と呼ばれている。
    【音色】《美しい音色は習得できない。出せる人間だけが初心者のうちから出せる。》p.350
    【パーカッション】普天間純。柏木美希。熊谷諒子。
    【パーシモン】「僕」が軽音楽同好会で結成した四人バンド。
    【バスクラリネット】沖田小夜。新見香織。皆本優香。長い楽器。「銭形平次」のイントロがソロでは有名。
    【バストロンボーン】土橋勉。
    【バリトンサックス】三浦加奈子。
    【ピッコロ】馬渕春代(フルートのことも)。
    【フェンダー】「僕」が父の出資もあって手に入れることができたエレキベース。
    【普天間純/ふてんま・じゅん】パーカッション。女子。埃をかぶっていたドラムを自力で組み上げた。二年からは同じクラス。ロカビリー好き。
    【ブラスバンド】オーケストラよりも格段にレパートリーが広い。歌謡曲もジャズもやる。
    【フルート】芦沢久美子。馬渕春代(ピッコロのことも)。幾田潔。芦沢久美子。
    【ペンシルバニア6-5000】グレン・ミラーの曲。小日向と君島が文化祭のラストでやりたいと提案した。
    【僕】→他片等(たひら・ひとし)
    【ホルン(フレンチホルン)】荒俣治。馬渕夏彦。金管のなかでも音を出すのが難しい楽器だとか。単純にホルンと言えば角笛のことをさす。
    【松原都/まつばら・みやこ】クラリネット。「僕」の一年後輩。「ムーライト・セレナーデ」が世界でいちばん好きな曲。ジャズはすべてアドリブだがこの曲は譜面通り弾くのでジャズではなく「名曲」だと言い張る。今は隣の市の図書館司書。
    【馬渕夏彦/まぶち・なつひこ】ホルン。春代の弟。打算的な性格。
    【馬渕春代/まぶち・はるよ】フルート、場合によってピッコロ。同じクラス。美人だが「僕」は女性としての興味を抱けない。フレンドリーだったり敵視されたりつかみどころがないキャラクタ。他者のオーラや前世が見えるらしい。
    【三浦加奈子/みうら・かなこ】バリトンサックス。テディベアのようにころころして小柄な女子。辻と付き合う。
    【皆本優香/みなもと・ゆうか】バスクラリネット。「僕」と同学年の女子。大柄。骨折し一時期休部していた。小日向隆一とつきあっていた。後に雇われマダムになったが解雇された後に事故死(?)した。
    【無駄づかい】《最初から訊けばよかった。こういう人生の無駄づかいが僕には多い。これまでの人生で一年分くらいは損しているんじゃないだろうか。》p.37
    【ユーフォニアム】笠井苑子。唐木悦郎。
    【用賀大介/ようが・だいすけ】トランペット。なかなか顔を出さない。個性のデパートのような人。8ミリ映画制作とその資金稼ぎのアルバイトで忙しい。左手をいつもポケットに入れているのはポリオで麻痺しているから。トランペットは片手だけで演奏可能な楽器。現在ブータンにいるかもしれない。辻からは「ダイ」とよばれていた。
    【ヨハネ・パウロ二世】広島を訪れたローマ法王。「僕」はその演説に、その人じしんに感動した。《この人は言葉の力を信じている。》p.254
    【礼於奈/れおな】現在田島さんである笠井さんの娘。
    【A.Sax】アルトサックス。
    【B♭Cl】クラリネット。
    【B.Sax】バリトンサックス。
    【Bs.Cl】バスクラリネット。
    【Bs.Tb】バストロンボーン。
    【Cond】指揮者。
    【Cor】コルネット。
    【Euph】ユーフォニアム。
    【Fl】フルート。
    【Fr.Hrn】ホルン。
    【Ob】オーボエ。
    【Perc】パーカッション。
    【Pic】ピッコロ。
    【St.B】弦バス。
    【Tp】トランペット。
    【T.Sax】テナーサックス。
    【T.Tb】トロンボーン。
    【Tu】チューバ。

  • 私自身、コントラバスを吹奏楽部が弾いていたので、すごくわかる。今アラフォーとなり、さらに気持ちが刺さる。役割を与えられ、初めて存在を得て。
    自己表現の労を惜しんで、溜め込むことに慣れてきた。他に人から大事にされる方法を思いつかずで。
    Noと言おうというまいと、砂時計の砂は勝手に落ちていく。早めに気づいて、ひっくり返して回るほかない。特に大事な人々の時計は

  • 実体験かと思うレベルのリアルさ
    (起伏がない、音楽の話題に脱線しまくる、というあたりも含めて)
    青春を完全に終えた年になったとき皆いろんな人生を背負って集まるんだな
    この世に集まれない人すらいるのがかえってリアルだった。おそらくあともう少し歳をとればより味わい深いはず

  • こういう大人のなり方も、確かにあるだろうなと思えた。没入できたということだと思うので評価。でも、沈む。

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著者プロフィール

1964年広島市生まれ。青山学院大学卒業。“津原やすみ”名義での活動を経て、97年“津原泰水”名義で『妖都』を発表。著書に『蘆屋家の崩壊』『ブラバン』『バレエ・メカニック』『11』(Twitter文学賞)他多数。

「2023年 『五色の舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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