きのね(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101293103

作品紹介・あらすじ

上野の口入れ屋の周旋だった。行徳の塩焚きの家に生れた光乃は、当代一の誉れ高い歌舞伎役者の大所帯へ奉公にあがった。昭和八年、実科女学校を出たての光乃、十八歳。やがて、世渡り下手の不器用者、病癒えて舞台復帰後間もない当家の長男、雪雄付きとなる。使いに行った歌舞伎座の楽屋で耳にした、幕開けを知らす拍子木の、鋭く冴えた響き。天からの合図を、光乃は聞いた…。

感想・レビュー・書評

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  • 宮尾登美子の作品は初めて読んだ。女流作家らしく丁寧に心情を汲み取っていてさすがと思わせる。
    11代目市川団十郎の妻をモデルにした作品。梨園の世界は大変だとは聞くけれど、果たして今でもこれほどまでに尽くす女性がいるだろうか。光乃が雪雄にささげた半生の描写もさることながら、歌舞伎の魅力も余すことなく描いている。今さらながら成田屋の芝居を見てみたい。

  • *大正~昭和初期、戦時中の生活風景ーしかも冒頭、主人公光乃の学生時代までは、貧しさで一家離散する家族の、そして光乃が女中として働きだしてからは、松本幸四郎家や市川団十郎家をモデルとした歌舞伎役者の家のーがよく描かれていて、「自分の知らない人生を知る」という読書の楽しみの一側面については、まず申し分なく満たされる。

    *十一世団十郎(当代海老蔵のおじいさん)がモデルということで画像検索してみたら、今の海老蔵にそっくり。かっこいい。頭のなかでは海老蔵主演で映像化しながら読むので、活字なのに目の保養ができます。イケメン(が登場すると面白い)の法則クリア。

    *しかも貧しい田舎出の特別美人でもない女中光乃が、雲の上の存在であるとわかっていながら、主であるそのイケメンに恋い焦がれ、そしていずれは結ばれる(まだ上巻しか読んでないし史実も詳しくは知らないけど、少なくとも子をなす、それが十二世団十郎)、そういう物語である。恋愛小説として考えても、王道。

    *そして、歌舞伎役者のこととにかく知りたいファン(かつ初心者)にとっては、今をときめく海老蔵さんのルーツ=市川宗家の近現代史を楽しく学べる、最高の参考図書であります(「教科書」は中川右介の本)。

    下巻早く買わなきゃ。

  • 十一代市川団十郎と妻光乃の、壮絶で不器用な真っ直ぐな生き方。戦前戦中戦後の日本の生活文化、歌舞伎の世界の厳しさ賑やかさが、行間から立ち上り、強いエネルギーに眩みながらの読了。十一代が病に冒されていく様子が十二代の最期と重なり、涙した。

  • するめみたいに物語が徐々にジワジワ〜と味わい深く、濃厚に。下巻も楽しみ。

  • 11代市川團十郎(今の海老蔵=堀越孝俊さんの祖父)の陰で尽くした女性の一代記
    はじめは長い説明に読むのをやめようかと思ったけど、最後まで読んでよかった。感動した。歌舞伎に詳しい人ならさらに楽しめるかもしれない。

  • 歌舞伎の世界になかなか入り込めず、どの登場人物にも感情移入が出来なかった。読み進めるのが始め大変だった。
    下巻に続くであろう場面になってからは面白く読みやすくなってきた。この勢いで下巻に進もうと思う。

  • かつての歌舞伎役者市川団十郎の女房の方の一生を描いた物語。

    自分が生きてきた時代からすると、根底となる価値観そのものが異なっていることが個人的に面白かった。

    主人公のお光の耐えている姿はとてもしんどそうであった。
    最初の回想シーンのテンポが若干悪く感じるが、3/4過ぎあたりから一気に面白くなった印象。

    女中って大変な仕事ですね……

  • 11代市川団十郎がモデルで、尽くしに尽くした奥様光乃を中心とした小説。けっこう事実も含まれていると思う。市川家というのは過去からいろいろあったようだ。そのモデルの孫が今の海老蔵さんだから、なんとなく似たものを感じてしまうのは先入観もちすぎ?

  • 段々面白くなってきてる。ミツノの心情がよく描かれてる。

  • 会社員になりたての頃、同期とこの本の感想を熱く話したのは懐かしい思い出。
    耐えて耐えて生きる女性の話。

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著者プロフィール

1926年高知県生まれ。『櫂』で太宰治賞、『寒椿』で女流文学賞、『一絃の琴』で直木賞、『序の舞』で吉川英治文学賞受賞。おもな著作に『陽暉楼』『錦』など。2014年没。

「2016年 『まるまる、フルーツ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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