仁淀川 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101293172

作品紹介・あらすじ

満州で敗戦を迎え、夫と幼い娘と共に必死に引揚げてきた二十歳の綾子は、故郷高知県の仁淀川のほとりにある夫の生家に身を落ち着ける。農家の嫁として生活に疲れ果てて結核を発病した綾子に、さらに降りかかる最愛の母・喜和と父・岩伍の死。絶望の底で、せめて愛娘に文章を遺そうと思い立った綾子の胸に「書くことの熱い喜び」がほとばしる。作家への遙かな道のりが、いま始まった-。

感想・レビュー・書評

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  •  昨年逝去された著者の自伝的小説ということで、手にとりました。
     書き出しの仁淀川とその周辺の情景表現に、思わず感嘆!
    満州からの引き上げ、いつか故郷に帰れるにという、その気持ちの支えが一挙に噴出したかなのうな、迫ってくるものがありました。
     焼きだされた都市と、食糧のある田舎。没落してしまった父と兄。頑強な姑と病弱な嫁である私。
     夢見た故郷での暮らしの現実の多難と、若さゆえに測りきれなった両親の心が切なさを誘います。
     自伝小説の年代を遡って読んでみようと思います。

  • 宮尾登美子の自伝的作品。『櫂』『春燈』『朱夏』に続く作品。満州から帰ってきてから,母父が亡くなるまでを描く。舞台は戦後の高知。

    ・満州から帰ってきた姿のきたなさにショックを受ける。確かに私は戦争を知らないと思う。

    ・人間はいくつになったら大人っていうことはないんだなと思う。母と慕うひとの前ではいつまでも娘らしいわがままと甘えを見せ,父の前では昔からの印象の良くない思い込みでいつまでもわだかまりを感じる。

    母・父の死してのち,「お母さあん」「お父さあん」と心で絶叫してのちの,綾子の娘の顔はどこに行くのだろう。

  • 自伝だけあって、普通の女性の、普通の日々。嫁姑問題は人類の永遠の課題?

  • 櫂、春燈、朱夏に続く作者の自伝的長編の続編。それぞれ波乱に富んだ前三作に比して、戦後すぐの農家を営む嫁ぎ先での生活をを描く本作は時代的にも環境的にも面白みに欠けるか、と思い期待は抑えめで読み始めたが、裏切られた。

    主人公が、父母から自立してゆく様に、強い感慨を持った

  • 10年ぶり?に読みました。
    戦争体験を読みつつ、ふとウクライナのことを思い浮かべてしまいました。

    こんなに悲惨な目にあっても、まだ歴史は繰り返すのでしょうか。

    戦争以外の面では、やはり宮尾先生。
    力強い文章で、本の中にひきこまれていきました。

  • 20190825位〜0905 櫂、春燈、朱夏に続く作者の自伝的小説の集大成。満州から引き揚げてきた綾子のその後。相変わらず、主人公に共感できない上にムカつく。田舎のしきたりに馴染めないのは分かるけど、姑のいちさんなんか全然意地悪とは思えない、可愛いものだよ。戦争も終戦後の日本の混乱も、田舎には関係なかったみたいな。

  • 綾子の帰国、田舎での生活、結核への罹患、そして親との死別。
    辛酸を嘗めてようやく帰国したと思えば、また違う苦労の種が撒かれ、にょきにょきと不満が成長していく様子が描かれている。
    大人になるとともに言葉にせず呑み込んだ言葉があり、そうはいってもやはり綾子らしく向こう見ずなところもあり、人の心が一枚岩ではないことがよく窺える。

  • 朱夏のあまりの壮絶さに、高知へ戻れば暮らしも楽になろうと楽観して読み始めたけれど農村の因習の呪わしさというのは凄まじいものだな…。働き者は美徳と思っているけれど、いちをみているとそうとも言い切れないなと考えも変わる…。
    要は何故農家の長男でありながら町の娘と結婚しようと思ったんだろう、と今更ながらの疑問も。生涯別家庭で通せると甘くみていたのかしら。
    喜和の愛情には心救われるばかり。

  • 読んで損はなし。

  • 1日1冊綾子シリーズ。
    びっくりするのが、この本の発売が2000年だということ。
    櫂が出たのが1970年代ですからね。
    これはファンは待ち望んだだろうなぁとおもいます。

    戦争も終わり、満州から帰ってくると、平和が訪れるのですが
    その平和が綾子には耐えられなかったのだろうな。
    エリザベートみたいなところがあるこの綾子の性格が
    可哀想だよなぁ。

    櫂とか見ると、母親巴吉太夫のように育てば非常に才能をいかせただろうに、
    あの喜和に(大嫌いですね本当に)甘やかされ続けたばっかりに幸せになれない綾子。

    その綾子が高知から離れた農村で、どんどん追い詰められていくような話。

    実際問題、綾子はその後小説に生きがいを見いだし、
    命からがら満州から帰ってきた夫を捨て、借金を抱えて
    東京へと出てくる。

    しかし、2000年になってもまだ、そのあたりの問題については語られず、あと20年、をまたずに宮尾さんがお亡くなりになってしまったので綾子のその先を知る由がありません。
    それが非常に残念です。

    いろいろネットで晩年の話を見ると、東京からばっと高地に移住したりしてる。
    それを次女がそういう人だからと語るのですが、
    介護も全て語るのは次女。
    長女美耶は。
    気になります。

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著者プロフィール

1926年高知県生まれ。『櫂』で太宰治賞、『寒椿』で女流文学賞、『一絃の琴』で直木賞、『序の舞』で吉川英治文学賞受賞。おもな著作に『陽暉楼』『錦』など。2014年没。

「2016年 『まるまる、フルーツ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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