男どき女どき (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.66
  • (57)
  • (104)
  • (155)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 820
レビュー : 86
  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101294049

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 晩年の小説とエッセイを収録した短編集。上品でしなやかな向田邦子の世界を堪能できる。「黄色い服」というエッセイでは、著者が幼き時を受けた厳しき父からの思い出である。洋服ひとつを選ぶのも「選択」なのだと。「選んだ以上、どんなことがあっても、取りかえを許さない。泣きごとも聞かない」「この頃になって、これは、洋服のことだけではないと気がついた」
    人生は選択の連続。泣きごとは許されないのだ。

  • ひとりの時間を背中を丸めてペタンと座ったり、だらしない恰好で町を
    歩いたりは、絶対にしないで生きているのだろう。
    彼女たちはどんなにくたびれても決してシルバーシートに腰をおろさないでしょう。
    ゆれる電車でつり革にもつかまらず、体のバランスをとる訓練をしながら、
    乗り合わせた人の表情や窓の外の景色を、ドン欲な目で観察しているでしょう。
    5年先、10年先もきっと同じでしょう。決して老いにつけ込まれず、老いに
    席をゆずろうとしないのです。悲観論者ではないということ。
    先のくとをくよくよしたところで、なるようにしかならないのです。
    飢え死にした死骸はころがっていないのですから、みんな何とか生きてゆけるのです。
    あの人みたいになりたい・ああなりたくはないという人を見つけておけと
    昔からいうじゃありませんか。


    独りを慎しむ
    ひとりでアパート住まいをはじめたら急激にお行儀が悪くなっているのです。
    煮物を鍋のまま食卓に出して箸をつけていました。
    転がる石はどこまでもということわざがあるそうです。
    お行儀だけのことではない精神の問題。
    誰が見ていなくても、独りでいても、慎むべきものは慎まなくてはいけないのです。
    闇の中でひとり顔をあからめる気持ちを亡くしたら、どんなにいいドレスを着て
    教養があっても人間としては失格でしょう。

  • 昭和50年代からの短編とエッセイ集。年月が経っていても不変な題材を扱っているからだろうか、読み易いし感情移入もしやすい。なにより言葉が簡潔で綺麗だから、無音状態で物語の世界に入れる。
    しょっぱなの「鮒」のラストで震撼させられ、「嘘つき卵」の女主人公の1人称語りで進む話の中、急に数字で夫婦の関係を示す一文があるのにゾっとした。女性が語りだと感情的な流れになるのにその中で急に数字、というのは冷静な狂気の片鱗といいましょうか、すごいな向田邦子氏は!と感心しきり。(わたし何様)
    エッセイは、凛とした佇まいの女性を想像させる小品ばかりで、こういうふうに年を取れたらと、なんだか安心しながら読んだ。
    1人の、ちゃんとした女性がかつていて、悩んで考えながらも書く仕事で身を立てて生きていた、ということが嬉しい。
    「日本の女」のこの感覚、あの時代にそんな矜持を持っていたことに尊敬です。「無口な手紙」「アンデルセン」も好きです。

  • 高校生の時に向田邦子をたくさん読んだ

    今読み返してもまったく古さを感じない。
    人間描写、心理描写が深い。鱒と嘘つき卵に男女関係の奥深さを感じる
    今では使わなくなってしまった日本語も美しい
    どの短編もすみずみまで丁寧に生活の中の
    すれ違いや出会い、人が描かれている



    エッセイは襟を正される。

    一人を慎む。黄色い服。ゆでたまごがいい
    含羞というものがある。凛としている。

    無口な手紙は胸をつかれる思いがする。


    誰が見ていなくても、独りでいても慎むべきものは慎まないといけないもです。
    誰も見ていなかった、誰も気が付きはしなかったけれど、なんと
    恥ずかしい事をしたのか。闇の中でひとり顔をあからめる気持ちをなくしたら、どんなにいいドレスを着て教養があっても、
    人間としては失格でしょう。
    自分にむかって意見している。

  • 著者の遺作。わかりやすい文章を書く。4つの短編とエッセイ多数。どれも良かったが「ゆでたまご」「草津の犬」「無口な手紙」が特に良かった。写真は幾分上向きで勝ち気そうだが、エッセイの内容もそれをうかがわせるものがあった。2018.6.24

  • 好きな作家です。
    いつ読んでも、文章を並べるのが上手な作家なので、
    ついつい手に取ってしまいます。
    男性作家ではこういう風に、
    物って書けないんですよね。

  • ひとこまから見えてくる何か。といったようなもの。

  • 不倫と鮒、不妊と卵の話が◎

  • 小説とエッセイが入った1冊。
    久しぶりに、教科書にあった『字のない葉書』を読んだ。集団疎開に娘を出す父の気持ち、帰ってきた父の男泣きの場面。大人になりより気持ちが理解できる。

    はじめて向田邦子のエッセイを本で読んだが、どれも日常の場面が切りとられていて、分かるわぁーと思わず呟きたくなるものも多数あった。

    ☆心に残ったフレーズ
    ・手紙にいい手紙、悪い手紙、はないのである。どんなみっともない悪筆悪文の手紙でも、書かないよりはいい。書かなくてはいけない時に書かないのは、目に見えない大きな借金を作っているのと同じである

    ・旅も恋も、その時も楽しいが、反芻はもっと楽しいのである
     旅の反芻とは・・テレビで自分が見たのと同じ光景が出れば嬉しい。行ったことのない国を見るよりも、もっと視線は強く思い入れも濃いような気がする。

  • ピリッとしてるなぁ、どれもこれも。

    「鮒」「ビリケン」「三角波」「嘘つき卵」「反芻旅行」「花底蛇(かていのじゃ)」「甘くはない友情・愛情」

全86件中 1 - 10件を表示

プロフィール

1929年東京生まれ。放送作家としてラジオ・テレビで活躍。「だいこんの花」「寺内貫太郎一家」等。1980年に短篇小説「思い出トランプ」で直木賞受賞したが、81年8月飛行機事故で急逝。『父の詫び状』等。

「2016年 『お茶をどうぞ 対談 向田邦子と16人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

男どき女どき (新潮文庫)のその他の作品

男どき女どき 単行本 男どき女どき 向田邦子
男どき女どき Kindle版 男どき女どき 向田邦子

向田邦子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

男どき女どき (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする