男どき女どき (新潮文庫)

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本棚登録 : 976
レビュー : 97
  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101294049

感想・レビュー・書評

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  • 高校生のとき、初めて向田邦子作品を読んだ。起承転結のしっかりした無駄のない構成で描かれる昭和の男女の喜怒哀楽に、子供ながら心を掴まれた。もっと色々彼女の作品に触れたいと思いながら…三十年が経ってしまった。
    短編小説にエッセイを加えた本書は、久々に読む向田作品として丁度良いかなと思い手に取ったのだが、自分自身が登場人物にほぼ近い世代になってから読むと、描かれる男女の心模様の生臭さにギョッとする。それでも決して不快ではなく、心がザワザワしながらも、もっと読みたいと思わせる展開の巧さ。ユーモアもペーソスもちょうどいい塩梅で、今更ながら向田作品のすごさに痺れるのであった。
    エッセイも切れ味鋭く、時にほのぼのするものもあり、昭和という時代が懐かしいなと思う一方で、人間の本質なんてそう変わらないのかなと感じさせるところもあり。薄くて一気に読める分量ではあったけど、その薄さに反し内容は濃くてバラエティに富んでいる一冊だなと実感した。これを機に向田作品を少しずつ読んでいきたいと思っている。

  • 晩年の小説とエッセイを収録した短編集。上品でしなやかな向田邦子の世界を堪能できる。「黄色い服」というエッセイでは、著者が幼き時を受けた厳しき父からの思い出である。洋服ひとつを選ぶのも「選択」なのだと。「選んだ以上、どんなことがあっても、取りかえを許さない。泣きごとも聞かない」「この頃になって、これは、洋服のことだけではないと気がついた」
    人生は選択の連続。泣きごとは許されないのだ。

  • 昭和50年代からの短編とエッセイ集。年月が経っていても不変な題材を扱っているからだろうか、読み易いし感情移入もしやすい。なにより言葉が簡潔で綺麗だから、無音状態で物語の世界に入れる。
    しょっぱなの「鮒」のラストで震撼させられ、「嘘つき卵」の女主人公の1人称語りで進む話の中、急に数字で夫婦の関係を示す一文があるのにゾっとした。女性が語りだと感情的な流れになるのにその中で急に数字、というのは冷静な狂気の片鱗といいましょうか、すごいな向田邦子氏は!と感心しきり。(わたし何様)
    エッセイは、凛とした佇まいの女性を想像させる小品ばかりで、こういうふうに年を取れたらと、なんだか安心しながら読んだ。
    1人の、ちゃんとした女性がかつていて、悩んで考えながらも書く仕事で身を立てて生きていた、ということが嬉しい。
    「日本の女」のこの感覚、あの時代にそんな矜持を持っていたことに尊敬です。「無口な手紙」「アンデルセン」も好きです。

  • ひとりの時間を背中を丸めてペタンと座ったり、だらしない恰好で町を
    歩いたりは、絶対にしないで生きているのだろう。
    彼女たちはどんなにくたびれても決してシルバーシートに腰をおろさないでしょう。
    ゆれる電車でつり革にもつかまらず、体のバランスをとる訓練をしながら、
    乗り合わせた人の表情や窓の外の景色を、ドン欲な目で観察しているでしょう。
    5年先、10年先もきっと同じでしょう。決して老いにつけ込まれず、老いに
    席をゆずろうとしないのです。悲観論者ではないということ。
    先のくとをくよくよしたところで、なるようにしかならないのです。
    飢え死にした死骸はころがっていないのですから、みんな何とか生きてゆけるのです。
    あの人みたいになりたい・ああなりたくはないという人を見つけておけと
    昔からいうじゃありませんか。


    独りを慎しむ
    ひとりでアパート住まいをはじめたら急激にお行儀が悪くなっているのです。
    煮物を鍋のまま食卓に出して箸をつけていました。
    転がる石はどこまでもということわざがあるそうです。
    お行儀だけのことではない精神の問題。
    誰が見ていなくても、独りでいても、慎むべきものは慎まなくてはいけないのです。
    闇の中でひとり顔をあからめる気持ちを亡くしたら、どんなにいいドレスを着て
    教養があっても人間としては失格でしょう。

  • 高校生の時に向田邦子をたくさん読んだ

    今読み返してもまったく古さを感じない。
    人間描写、心理描写が深い。鱒と嘘つき卵に男女関係の奥深さを感じる
    今では使わなくなってしまった日本語も美しい
    どの短編もすみずみまで丁寧に生活の中の
    すれ違いや出会い、人が描かれている



    エッセイは襟を正される。

    一人を慎む。黄色い服。ゆでたまごがいい
    含羞というものがある。凛としている。

    無口な手紙は胸をつかれる思いがする。


    誰が見ていなくても、独りでいても慎むべきものは慎まないといけないもです。
    誰も見ていなかった、誰も気が付きはしなかったけれど、なんと
    恥ずかしい事をしたのか。闇の中でひとり顔をあからめる気持ちをなくしたら、どんなにいいドレスを着て教養があっても、
    人間としては失格でしょう。
    自分にむかって意見している。

  • 短編は三角波、嘘つき卵が予想外の展開だった。エッセイは、なるほどなぁ、、というものが幾つもあって、向田邦子さんの他の作品も読みたくなった。

  • 向田邦子の最後の短編小説4編にエッセイを含む。
    何事も成功する時を男時、めぐり合わせの悪い時を女時という。
    向田氏の短編を読み、やはり、彼女はある種の昭和史を語らせたなら、天下一品なのだと思いました。なんと、日本語の豊かなことか。女性の細やかな、時には陰湿であり、陰のあるところなど、現代の日本では、とんと見られなくなっている風景、表象であろう。

  • 最近読書記録をつけていなかったのでボチボチと。この本は大学時代に一度読んだ。その時は全くわからなかった夫婦というものが、今でも全くわかってはいないけれど、この本に出てくるのは、比較的多くの人が共感できる形なのであろう。

  • 市井の男女の感情の機微が鮮やかに描かれていて引き込まれる。特にら鮒は圧巻。

  • 向田邦子 著「男どき女どき」、1985.5発行(文庫)。小説4編とエッセイ21篇、向田さんの最後のメッセージともいえる作品ではないでしょうか! 小説では「鮒」と「ビリケン」、エッセイでは「若々しい女(ひと)について」「独りを慎む」「ゆでたまご」「反芻旅行」「壊れたと壊したは違う」、特に秀逸と感じました。
    向田邦子さんのラストメッセージとも言える「男どき女どき」、1982.8刊行、1985.5文庫化。21編のエッセイと4つの短編小説が収録。たった3ページのエッセイ「ゆでたまご」が映像的に心に迫ってきます。著者が小学4年生の時の出来事から「愛」を紡いだエッセイです。片足、片目が不自由で疎んじられていた同級生Iにまつわる2つの話。遠足の時、汚れた風呂敷に包まれた大量のゆでたまご。母親が「これみんなで」と著者に。徒競走で遅れて一人走るI、厳しくて人気のない女の先生が飛び出し一緒に走った。愛はぬくもり、自然の衝動!

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著者プロフィール

1929年、東京生まれ。脚本家、エッセイスト、小説家。実践女子専門学校国語科卒業後、記者を経て脚本の世界へ。代表作に「七人の孫」「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」。1980年、「花の名前」などで第83回直木賞受賞。おもな著書に『父の詫び状』『思い出トランプ』『あ・うん』。1981年、飛行機事故で急逝。

「2020年 『向田邦子ベスト・エッセイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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