卵の緒 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 786
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101297729

作品紹介・あらすじ

僕は捨て子だ。その証拠に母さんは僕にへその緒を見せてくれない。代わりに卵の殻を見せて、僕を卵で産んだなんて言う。それでも、母さんは誰よりも僕を愛してくれる。「親子」の強く確かな絆を描く表題作。家庭の事情から、二人きりで暮らすことになった異母姉弟。初めて会う二人はぎくしゃくしていたが、やがて心を触れ合わせていく(「7's blood」)。優しい気持ちになれる感動の作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 今までに
    何度となく読みかえしたけど
    そのたびに切なくて、
    読みきってしまうのが惜しくて、
    いつもページをめくる指が止まってしまう。


    捨て子疑惑に悩む
    小学四年生の育生(いくお)が
    母から見せられたものは
    へその緒ならぬ
    卵の緒(卵の殻)だった…
    「卵の緒」



    家族を知らない自分にとって
    これほど理想の家族はいないです。


    食べることが大好きで
    いつでもどこでも
    突然クイズを始める(笑)
    お茶目な育生の母、
    君子さん。


    そしてそんな母さんがメロメロにハマってる
    会社の上司の
    朝ちゃん。


    猫グッズを集め、植木職人である
    育生のおじいちゃん。


    登校拒否児なのに颯爽とした
    池内くん。



    出てくる人すべてが
    いとおしい。

    中でも育生の母、
    君子さんのキャラが
    最高にあったかくてカッコいい。


    「学校は大切だけど
    休むことなんてたかが知れてる。
    破ってみないと
    わかんないこともあるのよ」

    なぁ〜んて言葉を
    実際に学校の先生である
    瀬尾さんが書いちゃうところがまた
    カッコいいし。


    君子さんのキャラは、
    もしかしたら
    瀬尾さんそのものなんじゃないかなって
    勝手に想像しています(笑)



    そしてもう一編は
    突然、父の愛人の子供と
    暮らすことになった女子高生の
    戸惑う日々を描いた
    「7’s blood」。


    あまり物事に動じない17歳の主人公、
    里村七子。


    父の愛人の子供で
    腹違いの弟である
    11歳の山本七生(ななお)。


    最初はギクシャクしていた二人が、

    腐ったケーキや
    アイスクリームのエピソードなど、
    印象深いシーンを積み重ねながら
    次第に心通わせてゆく構成が
    ホンマ憎い。


    そしてクライマックス、
    お風呂場での散髪シーンの
    胸をきゅい〜んとさせる
    切なさときたら…(ToT)


    野犬から七子を守る
    七生のナイトっぷりなんて、
    男らしさを勘違いしてる輩を
    正座させて読ませたいくらい(笑)
    本当にカッコ良かった。



    血をよりどころにせずとも、
    繋がった家族。

    わずかな血の繋がりこそが
    強固な絆となる家族。

    どんな形でも
    家族は家族。


    教科書には載っていない、
    好きな人と
    好きなものを食べることの大切さを教えてくれる、
    身体に染み込むような一冊です。


    すごーくおいしいものを食べたとき、
    あなたなら
    誰の顔が思い浮かびますか?

    • まろんさん
      この2作を1冊に纏めたセンスが素敵ですよね!

      血の繋がりがあろうとなかろうと
      「おいしいものを一緒に食べたい」と素直に思える気持ちがあるな...
      この2作を1冊に纏めたセンスが素敵ですよね!

      血の繋がりがあろうとなかろうと
      「おいしいものを一緒に食べたい」と素直に思える気持ちがあるなら
      もうそこには、確かな絆がある。。。

      おかあさん達の凛々しさと
      少年たちのけなげさが胸に迫る、
      大好きな本です♪


      2012/06/14
    • 円軌道の外さん

      まろんさん、
      ここにもありがとうございます(^O^)

      そうなんです!!
      これだけ質の高い作品二本が
      なんとなんと
      一冊で読...

      まろんさん、
      ここにもありがとうございます(^O^)

      そうなんです!!
      これだけ質の高い作品二本が
      なんとなんと
      一冊で読めるなんて
      お得感ハンパないっスよね〜♪


      それにしても
      まろんさんの表現は
      まさに言い得て妙!!


      自分も
      一緒に美味しいものを食べたいと思える誰かと
      いつか家族を作ってみたいです(^_^)


      2012/06/19
  • 2組の家族の物語。

    血の繋がりがなくても、自分はお母さんに愛されてるんだって分かっていたら、そこにはちゃんと家族が生まれているんだ。本当は血の繋がりがあるとかないとか、そんなこと関係なくお母さんは子どもにストレートに愛してるってことを伝えることがとっても大切なんだよね。思ってるだけじゃ伝わらないこと、たくさんあるもの。

    「母さんは、誰よりも育生が好き。それはそれはすごい勢いで、あなたを愛してるの。今までもこれからもずっと変わらずによ。ねえ。他に何がいる?」

    ちょっとの血の繋がりに、自分を大切に思ってくれている人がいるとの幸福感や安心感を抱く関係もある。一度ひとつ屋根の下で暮らした時間は、ちゃんと消えることなく存在している。二度と会うことがなくても、姉弟の心はもう繋がっている。温かい血の繋がりで。

    「思い出なんか必要ないじゃない。私たち恋人でもないんだし、七生しばらくは死ぬ予定ないでしょ?もちろん忘れる必要だってない。私たちは血が繋がっているんだよ。少しだけど。何もしなくたって、ちゃんと繋がっているんだから」

    親子や兄弟、家族って言葉に縛られると、時には窮屈になってイライラしてしまう。そんなとき、この物語を読んで深呼吸してみたら、きっと優しい気持ちになれるよね。

  • 『卵の緒』『7’s blood』の2編。
    どちらも、ちょっと変わった関係の…というか、血の繋がりの薄い家族の物語である。

    多くの人が“結婚”という形で、他人同士で家族を作るという行為をしている。
    重要なのは「好き」という気持ちだ。
    だったら、結婚でなくても、いろいろな繋がりで家族を作ってもいいよね?
    多分、世の中には、そういう形の家族が多く存在するのだと思う。

    はじめて読む作家さん。
    とても優しく、押し付けがましくなく、生きる形を提案してくれる。
    もっと読んでみたいと思います。

  • 瀬尾まいこのデビュー作。

    「卵の緒」
    マイペースな母・君子と二人暮らし。
    自分は捨て子じゃないかと疑っている育生。
    へその緒というものがあると学校で教わり、これなら確かめられると母さんに聞いた所、箱に入った卵の殻を出してきた。
    卵で生んだのだという~信じられないが、その場は言いくるめられてしまう。
    同じ会社の朝ちゃんのことをすごくハンサムだとよく口にする母は、ある日、夕食のハンバーグがとても良くできたからと急に彼を呼ぶ。
    やって来た朝ちゃんは、すっきりした外見で、とても食べ方がきれいだった。
    同じクラスの池内君が登校しなくなり、気にかけていた育生。
    学級委員で、とくに理由も見あたらないのに。母さんに家に行ってみたらと言われ…

    日常にありそうな出来事に、ちょっと不思議なアクセントが添えられていて、軽やかなのに、見入ってしまう感じ。
    君子さんのユニークさと、真っ直ぐに向けられる愛情が心地良い。
    人の繋がりは色々なんだと…でも、好きだということが大切。
    好感の持てる人ばかりなので、その場に幸福感が漂います。

    2作目のほうが重い感触があります。
    1作目は絵空事になりかねないようなハッピー感があるのですが。
    こちらは現実的な暗さや怠さも含みつつ、芯が強い登場人物に励まされる心地。
    高校3年の七子は、突然11歳の異母弟・七生と暮らすことになった。
    父はとうに亡くなっているが、愛人と子どもがいることは知っていた。その愛人が傷害事件を起こしたため、母が七生を引き取ってきたのだ。
    ところが、その母がすぐに入院してしまい、二人で生活する日々。
    名前も顔も似ているが、妙に出来すぎで、気を遣う小学生に苛立つ。
    二人だけの日々で起きる行き違いや反発。同じものを食べ、アイスクリームを作ったり。喧嘩した後に、バースデーケーキを発見したり。夜にお揃いのパジャマで外を歩いた日。
    別れの時が切ない。
    もう会うイメージが湧かないので、おそらく会わないのだろうと‥

    そうとも限らないんじゃないかとは思うものの、そうかも知れないと哀しくなりました。
    引きこまれましたね。

  • 瀬尾まいこさんのデビュー作。
    「卵の緒」と「7's blood」が収録されていますが、どちらもとても素敵なお話でした。

    卵の緒を読んでいて、朝ちゃんが家でごはんを食べるようになったくだりの後からなぜか涙がとまらなくなった。
    感動したとか、切ないとか、共感とか、そういう類の涙じゃなくて、とにかく心の琴線に触れてしまったというそれだけの理由の涙。
    こういう涙が出てきてしまう小説って滅多にないのだ。
    そこからはもうすべてが愛おしくて最後まで泣きっぱなしでした。
    君子さんと、朝ちゃんと、育生と、育子。とても素敵な家族だと思った。大切なのは、へその緒でも、血のつながりでもなく、大好きというただそれだけなのかもしれない。
    と思うその一方、「7's blood」は血のつながりだけが理由で同居することになってしまった異母姉弟の話なのだけれど、こっちもこっちでこの家族のありかたに納得させられてしまった。
    どこにいたって、もう会えなくたって、共に過ごした日々の記憶と確かな繋がりがあるということ。それも家族とよべる素晴らしさだと思う。
    あとがきを読んで腑に落ちたのは、それらは「家族」というむやみに仰々しい枠にとらわれたものではなく、単に「心地よい関係」なんだっていうことでした。ここにある2つの小説は、その優れたサンプルとして描かれたものだ。
    家族なんだから、とか、家族ってこうじゃないと、とか。そういうのじゃなくて。
    気負わず心地よい関係をつくっていければいいんだと気づいたら肩の荷がふっとおりたようで、また泣きそうになった。
    私の大切な一冊と出会えました。何度でも読み返したい。

  • 「僕は捨て子だ。」と冷静に信じ切っている育生と、「育生は卵で産んだの。」と語る豪快な母との日常を描いた「卵の緒」。

    入院を控えた母が「七生の周辺にいる大人の中では、自分が一番まともだったから」と預かってきた腹違いの弟七生と、彼をどうしても冷めた目で観察してしまう七子の1年を描いた「7’s blood」。

    血のつながりがなくてもゆるぎない信頼に満ちた親子と、片親とはいえ、血のつながりがあってもギクシャクしながら、時間をかけてやっとお互いを認め合っていく姉弟、この2作を一冊の本にまとめたセンスがすばらしい。

    • koshoujiさん
      瀬尾さんの最新作「僕らのご飯は明日で待ってる」良かったです。
      教師退職後の第一作が期待通りでホッとしました。
      図書館からお借りになったら...
      瀬尾さんの最新作「僕らのご飯は明日で待ってる」良かったです。
      教師退職後の第一作が期待通りでホッとしました。
      図書館からお借りになったら、是非この謎の題名を解読してください。
      素晴らしい内容なのですが、このタイトルだけが未だに気になってます(^-^;)
      レビュー楽しみにしています。
      ちなみにこの小説、初出「GINGER.L」となっていたので調べたら、幻冬舎から出ている女性向け月刊文芸誌で、湊かなえさんや大島真寿美さんなど、錚々たる執筆人のようです。初めて知りました。
      2012/06/03
    • まろんさん
      「僕らのご飯は明日で待ってる」が届くまで、たぶんあと3日になりました♪
      もはや、夏休みを待つ小学生の気分です(笑)

      「GINGER.L」、...
      「僕らのご飯は明日で待ってる」が届くまで、たぶんあと3日になりました♪
      もはや、夏休みを待つ小学生の気分です(笑)

      「GINGER.L」、幻冬舎さんたら、そんな私好みの文芸誌を出してたんですね。
      Lはいったい何の略なのか気になるところですが
      本屋さんに行ったら、張り切って探してみます!
      教えていただいて、ありがとうございます♪
      2012/06/04
    • koshoujiさん
      もういくつ寝るとー、ですかね。
      ちなみに「GINGER.L」のLは、LADYのLだそうです。その名のとおり女性向け文芸誌で、見たら執筆人も...
      もういくつ寝るとー、ですかね。
      ちなみに「GINGER.L」のLは、LADYのLだそうです。その名のとおり女性向け文芸誌で、見たら執筆人も殆どが女性ですねー、実に興味深いです。
      2012/06/04
  • 二編とも、親子、姉弟がうらやましいくらい強い絆で結ばれていて、その優しさや温もりに感動しました。
    家族のつながりって、形や証拠ではないのですね。
    心から思える人のいる人が、本当に幸せなのです。

  • ぬくぬくとは育っていない
    男の子が主人公。
    子供って、自分の運命を選べない。
    そして、誰かの力を借りないと生きられない。
    その誰か、が親でなくても、人生の一瞬に触れ合ったひとでもいいんだ。

  • 『血は水より濃い』(これでよかったかな!?)とか言うけれど、そんなものを超えた温かい物語がここにありました。

    読了後、大切なひとに会いたくなる。
    誰かを愛おしいって思う気持ちを思い出させてくれる。
    そんなやさしくて温かくてこころを毛布で包んでくれるような作品でした。

  • 血のつながっていない親子(母・息子)の話しと、血のつながった異母兄弟(姉弟)の話し。中編ふたつ。
    どちらも「お話し」の世界で、これを読んで癒される人はたくさんいるだろうなぁとは思うものの、「私」のための小説ではなかった。
    でも、それはそれとして、「家族とは血ではない」という話しと「血がつながっていれば家族」という話しを一冊に同居させたというセンスには拍手をおくりたい。

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著者プロフィール

瀬尾 まいこ(せお まいこ)
1974年生まれ。中学校国語講師を務めた後、2005年に教員採用試験合格、2011年に退職するまで中学校で国語教諭として勤務する傍らで執筆活動を行っていた。
2001年『卵の緒』で第7回坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、これが翌年単行本デビュー作となる。2005年『幸福な食卓』で第26回吉川英治文学新人賞、2008年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞をそれぞれ受賞。
これまでの著作で、代表作『幸福な食卓』、そして『天国はまだ遠く』『僕らのごはんは明日で待ってる』が映画化されている。近刊『そして、バトンは渡された』は第31回山本周五郎賞候補となり、2018年「本の雑誌が選ぶ上半期ベストテン」1位に。

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