- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101297729
作品紹介・あらすじ
僕は捨て子だ。その証拠に母さんは僕にへその緒を見せてくれない。代わりに卵の殻を見せて、僕を卵で産んだなんて言う。それでも、母さんは誰よりも僕を愛してくれる。「親子」の強く確かな絆を描く表題作。家庭の事情から、二人きりで暮らすことになった異母姉弟。初めて会う二人はぎくしゃくしていたが、やがて心を触れ合わせていく(「7's blood」)。優しい気持ちになれる感動の作品集。
感想・レビュー・書評
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瀬尾まいこさんデビュー作、いまさら読了。
血の繋がりがない家族を題材にした小説なのに、
ジメってしておらず登場人物もみんな素敵で、安心して読めてほっこりした気持ちに。
育生のじいちゃんの猫のくだりが愛おしい。
君子、わたしも育ててほしいo(^-^)o
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2023.12.13 ☆8.6/10.0
瀬尾まいこさんのデビュー作、そして彼女の作品の7作目です
僕は捨て子だ。その証拠に母さんは僕にへその緒を見せてくれない。代わりに卵の殻を見せて、僕を卵で産んだなんて言う。それでも、母さんは誰よりも僕を愛してくれる。「親子」の強く確かな絆を描く表題作(卵の緒)。
家庭の事情から、二人きりで暮らすことになった異母姉弟。初めて会う二人はぎくしゃくしていたが、やがて心を触れ合わせていく(「7's blood」)。
作品紹介の文章をお借りすると本書はそんな二作で構成されています。
表題作『卵の緒』は、捨て子疑惑を抱く小学生の男の子・育生とその母親・君子の絆を描いた心温まる物語です。
血のつながらない親子…という深刻な話ではなく、母親は実にオープンであっけらかんとしていて、心から息子を愛し、ストレートな言葉で愛情を表現します。
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「母さんは、誰よりも育生が好き。それはそれはすごい勢いで、あなたを愛しているの。今までもこれからもずっと変わらずによ。ねえ。他に何がいる?それで十分でしょ?」
「想像して。たった十八の女の子が一目見た他人の子供が欲しくて大学を辞めて、死ぬのをわかっている男の人と結婚するのよ。そういう無謀なことができるのは尋常じゃなく愛しているからよ。あなたをね。これからもこの気持ちは変わらないわ」
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息子の育生も素直で優しい子です。「親子の証」って何? の答えを軽やかに示してくれています。どこか、『そして、バトンは渡された』に通じるものがあるなと思いました。
本書にせよ過去読んだ作品にせよ、改めて瀬尾さんは、ちょっと複雑な家族関係を、重くならずに優しく、だけどちょっぴり切なく描くのが元々上手だったんだなぁ、と実感しました。
「家族」という言葉ひとつとっても、さまざまな形があります。家族というのは、人と人との結びつきの形、その呼称にすぎません。だとしたら、いろんな家族が、いろんな結びつき方が、あってもいいはずです。
この本を読んでいると、描かれている家族の日常の風景が静かに心に沁みてきて、こわばっていた心をほぐしてくれる。肩の力を抜く手助けをしてくれる。世界を見つめる視野を広くしてくれる。
さらに、瀬尾さんのあとがきの一文がとても印象的です。
”そこら中にいろんな関係が転がっていて、誰かと繋がる機会が度々ある。それは幸せなことだ。”
この考え方が瀬尾さんの作品の原点にあるんだなぁと、妙に納得してしまいました。
瀬尾まいこさん特有の優しさや温かさ、人との関わりを大切にしたくなる物語は、今後も読み手である私たちの心を、明るく照らし導いてくれる気がします。-
こんばんは。ちゃたと申します。この作品名作だと思います。卵の尾ではけらけらと笑い飛ばすカラリとした君子が魅力的です。7s bloodはラスト...こんばんは。ちゃたと申します。この作品名作だと思います。卵の尾ではけらけらと笑い飛ばすカラリとした君子が魅力的です。7s bloodはラストの圧倒的な解放感がよかったです。(ドラマ化されているのでいつか見たいです。)私も心がこわばった時に瀬尾さんの本はオススメだと思います。またのレビューを楽しみにしています(^o^)2023/12/15
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「卵の緒」と「7's blood」の゙2作が収録されている。
両方とも子どもの視点から語られる家族の話。
同じシチュエーションだと暗くなる事もあるけど、この作品は違う。どことなく明るい感じが漂う。登場人物の雰囲気かも知れない。
特に「卵の緒」のお母さんが愛情に溢れてて素晴らしかった。 -
デビュー作には、その作家の総てが卵のように詰まっている。そう言ったのはぼくだけではないけど、それはぼくの信条のようなものだ。
瀬尾さんの読了本はこれで4冊目だ。普通じゃない家族や友達関係が描かれていた。
「困った。(本当のお父さんやお母さんと暮らしていなくても)全然不幸ではないのだ」と呟く主人公も、25年目にして初めて父子の対面をする小説家の物語も、PMSやパニック障害みたいな普通でない持病を抱えながら普通に過ごす男女の物語も、ここに原点があったんだ、とぼくは納得した。
「卵の緒」の育生と君子さんの親子関係は、ちょっと普通じゃないかもしれないけど、全然特別じゃない。いや、特別かもしれないけど普通なんだ。
大切なのは君子さんが育生くんをいかに大好きか、ってことで、11歳の育生くんが当たり前のように君子さんを好きなことなんだとぼくは思う。
「7′s blood」も、普通じゃないけど特別な姉弟の関係だった。姉弟で髪を刈りあいっこする場面があった。散髪屋さん以外に髪を切らすというは、やっぱり特別な相手以外ではできないと思うよ。「夜明けのすべて」でもそんな場面があった。デビューから18年経っても、同じことを描けるというのは、ある意味凄いことなんじゃないかな。
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瀬尾まいこさんのデビュー作、未読でした。2つの短編が収められています。
表題作『卵の緒』は、捨て子疑惑を抱く小学生男児とその母親の絆を描いた心温まる物語です。
深刻な話‥ではなく、母親は実にオープンで心から息子を愛し、息子も素直で優しい子です。「親子の証」って何? の答えを軽やかに示してくれています。何か、『そして、バトンは渡された』に通じるものがあるなと思いました。瀬尾さんは、ちょっと複雑な家族関係を、重くならずに優しく少し切なく描くのが元々上手だったんだなぁ、と実感しました。
もう一編は『7’s blood』。こちらは腹違いの姉(七子・高校生)と弟(七生・小学生)の絆を描いた物語で、少し血が繋がっています。
設定の違いはあれども、2篇とも家族とは、愛情や人の繋がりとは何か、を考えさせられます。
瀬尾さんのあとがきの一文がとても印象的です。
「そこら中にいろんな関係が転がっていて、誰かと繋がる機会が度々ある。それは幸せなことだ。」
この考え方が瀬尾さんの原点にあるのだなと、妙に納得してしまいました。
瀬尾まいこさん特有の優しさや温かさ、人との関わりを大切にしたくなる物語は、今後も読み手である私たちの心を、明るく照らし導いてくれる気がします。 -
『血は争えない』、親子を語る場面などでよく聞く『父母の気質や性向は、何らかの形で子どもに受け継がれていること』という意味をもつ言葉です。この言葉をはじめ、『血筋』『血統』『血を引く』、と人と人の関係を説明するのに『血』はとてもよく登場します。英語では、『Blood will tell.』という言葉に置き換えられるように、世界的にも親子を語る時に『血』は欠かせないものなのかもしれません。それ故に私たちも何かと『血の繋がり』を意識します。幼い頃に、自分は本当にこの家の子どもなのだろうか?という不安に人知れず苛まれた人も多いのではないでしょうか。私もその一人でした。小さい頃から祖母と同じ部屋で寝起きする一方で、妹は父母と同じ部屋で父母に挟まれて寝ていました。私には食べ物の好き嫌いは一切許してもらえなかったのに、妹は好き嫌いし放題などなど。そんなこともあって、自分が生まれた時の話をしつこく聞いたり、小さい頃の写真に自分が父母と写ったものがあるか探したり。そんな幼い身であっても意識してしまう『血』とはなんなのでしょうか。『血』が繋がっていなければ親子とは言えないのでしょうか。親子とは…。
『僕は捨て子だ』という衝撃的な一言から始まるこの作品。主人公・鈴江育生は『「僕は捨て子なの?」と聞いた時のばあちゃんやじいちゃんのリアクションが怪しい』『そして、驚くことに母さんの僕に対する知識があやふやなのだ』と、自身が母親と血が繋がっていない子ではないのかと思い悩みます。『ついでに言うと、僕の家には父さんがいない。僕の記憶にも、さっぱり残っていない』と、元々記憶の範囲内にはすでに母一人子一人の生活を送ってきた小学三年生の育生。そんな時に担任の青田から聞いた『へその緒はね、お母さんと子どもを繋いでいるものなの』という話に執着します。『ついに長年にわたった僕の捨て子疑惑を明らかにする時がやってきた。へその緒一つで今までのもやもやがすっきりするのだ』と勢いづく育生。でも母・君子がそんな育生の問いに見せてくれたのは卵の殻でした。『育生は卵で産んだの。だから、へその緒じゃなくて、卵の殻を置いているの』という君子。すっかり言い含められた育生は『この母さんなら卵で僕を産むこともありえるだろう。それに、とにかく母さんは僕をかなり好きなのだ。それでいいことにした』と納得するのでした。
この本には、書名にもなっている〈卵の緒〉の他にもう一編〈7’s Blood〉という作品も収録されています。分量的にはこの作品の方が長く、こちらも『血』がテーマ。でも、〈卵の緒〉とはある意味真逆、『血の繋がり』のある姉弟が主人公となっています。『七子と七生。父さんがつけた』という姉と弟の名前。でも、『私たちは名前を見れば兄弟だってわかるようになっている。だけど、私と七生は兄弟じゃない。出所が違う。七生は父の愛人の子どもだ』という複雑な思いが渦巻く『血の繋がり』。父親はすでに他界し、七生の母親は刑務所に、そして七子の母親も病床に伏した状態での高三の姉と小五の弟の二人暮らし。『血の繋がり』を意識する二人。でも、それぞれの母親は別に存在し、それぞれの家は別にあると言う微妙な関係性。それ故に、ケンカをしても『本当の姉弟じゃない私たちは、ずれた関係を自然に修復する方法を知らなかった』と七子は悩みます。
〈卵の緒〉と〈7’s Blood〉の間に関係性はありません。しかし、それぞれが『血の繋がり』とはなんなのかということに違う方向から光を当てていきます。いずれも主人公の少年は小学生という共通点。その言葉、行動に彼らそれぞれの境遇、置かれた立場の中で一所懸命に考えた純粋なまでの思い、気持ちが滲み出ています。それだけに、読み手にはストレートに彼らの心の内が伝わってくる分、いずれの話の読書でも心が大きく動かされるのを感じました。第三者的立場で見れば、両作品とも事象として特別に何か大きなことが起こるわけではありません。でも小さな彼らにとっては、とても大きな変化、彼らの人生を左右するであろう大きな変化にも身を寄せて生きていく他ありません。それ故にそれぞれの結末には、それぞれの冒頭で抱いた『血の繋がり』とは別の『血の繋がり』について考えさせられることになりました。そう簡単にどうこう言えるものではない、それが『血の繋がり』というものなんだなと改めて感じた次第です。
ところで、この作品では全編に渡って、とても自然に、とてもさりげない日常風景の中の一コマとして、『母さんはにっこり笑って、ハンバーグを口にほうりこんだ』『七生の作る肉じゃが。味がよく染みたジャガイモが口の中でほろりと崩れた』といったような食事の風景がとても印象深く登場します。重いテーマをほっこり感で優しく包んでくれる、とても瀬尾さんらしい、素敵な作品だと思いました。
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純文はテッパン。
ミステリは、好物。
イヤミスは、格別。
ホラーは、別格。
古典だって、嗜んでみる。
だけど、時には、普通でない家族の優しい瀬尾風家族。癒しの読書。
皆さんの素敵なレビューを堪能しました。
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2022/10/20
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2022/10/21
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良い。良すぎる。瀬尾先生の作品に恥ずかしながら初めて触れた。これがデビュー作!なんと暖かで優しいデビュー作なんだ。
普段ミステリーばかり読んでいるからか、冬の冷えた体で食べるおでんの様に心をじんわりと温めてくれた。
今までたくさんの物語の登場人物に会ってきたけれど育生のことがとても好きになった。好きだ…育生…。 -
ちょっとほんわかしてみたくて、瀬尾まいこ先生の小説を購入。
凄く薄い本だった為、この分量の小説一編だと思ったら、短編がふたつ。
卵の緒と7’s blood
卵の緒
いきなり、僕は捨て子だ。から始まる。
小学校五年生の育生が主人公。
母親に、臍の緒を見せてと言うが、母親は育生を卵で産んだのだと言う。
自分が母親の実の子ではないのだろう?と感じながらも、母親の大きな愛を感じている育生。
不登校の池内くんと仲良くなり、池内くんも育生の家族と接するうちに変化が。。。
7’s blood
母親と二人暮らしをしていた高校生の七子の家に、突然父親の愛人の息子がやってくる。
そんな時母親は入院してしまい、異母姉弟の七生と2人で暮らすことに。
七生は小学生なのに、何をやっても要領が良い。
人に好かれ、可愛がられる。
最初のうちはそれも含めて面白くない七子は、なかなか七生とうまくやっていけない。
しかし、次第に心が通うようになった頃に。。。
瀬尾先生の作品は、いつも本当に温かい。
心が温まる。ほわほわする。
まずは家族の愛。血が繋がってるとか、繋がってないとか、そんなことはさほど重要ではなくて、愛情だけで血の繋がりなど瑣末な事にしてしまう(^^)
あっという間に読めてしまったが、心を休憩させたい人にはピッタリの本。