脳と仮想 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.45
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本棚登録 : 817
レビュー : 73
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101299525

作品紹介・あらすじ

「ねえ、サンタさんていると思う?」歳末の空港に響いたひとりの少女の声。数量化できない微妙な質感=クオリアを出発点として、物質である脳になぜ心というものが宿るのかを研究し続けてきた著者は、その少女の言葉をきっかけに「仮想」の不思議さに取り憑かれる。近代科学の到達点と限界点を明らかにしつつ、気鋭の論客が辿りついた現実と仮想、脳と心の見取り図とは。画期的論考。

感想・レビュー・書評

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  • 一度読んで、なんら感想文がかいてなかったので、
    再度 読み直して見た。茂木健一郎節が、炸裂していた。
    言葉の運び方は、相変わらずうまいものだ。展開力とたたみ方がうまい。
    最初に読んだ時は、まだまだクオリアのイメージがつかみきれていなかったが、クオリア信奉者となって、せっせと、茂木健一郎の本を読み、ポッドキャストをきくことで、茂木節が、だいぶわかってきたのだと思う。
    科学が、数字と方程式で表すことができるようになり、ある意味では、数字と方程式に表せる対象のみを追っかけていた。世界と宇宙を数字と方程式で表すことができるような錯覚に陥っていた。物質である脳に、意識が宿り、現実の世界が反映するばかりか、仮想の世界が形作られた。
    小さな女の子のサンタクロースがいるのかという問いかけが、仮想の世界を作り出す。
    この時に、サンタクロースではなく、神様がいるのかというテーマにしたら、文脈は大きく変わるだろう。
    茂木健一郎は、そういう地雷を踏むことを賢明に避ける力がある。そのサンタクロースは、クオリアにつながって行くのである。クオリアをテーマとしている茂木健一郎が、どう具体的に切り込んで行くのかが楽しみであるが、数値に表せないものを、情緒的な雰囲気でからめ取ることも、こんなんだと思う。情緒的な科学論が確立される必要がありそうだ。そういう意味で、サンタクロースは、色んな方向性と志向性を体内に孕んでいるような気もする。

    • だいさん
      >情緒的な科学論が確立される必要がありそうだ。
      茂木さんは、『クオリア』という表現で確立していると思いました。
      仮想は、時間(=経験?)...
      >情緒的な科学論が確立される必要がありそうだ。
      茂木さんは、『クオリア』という表現で確立していると思いました。
      仮想は、時間(=経験?)を越えられないと考えます。
      2013/02/16
  • 脳は現実と仮想のはざまにいる。そこの区分けはクオリアでありリアリテイを感じる感覚である。
    脳は本の世界やイメージの世界などどんな場面でも仮想できる。
    ただ、脳を発達させるには脳の報酬である喜びなどの情動と結び付ける必要がある そのためには仮想だけでは難しい。

  • 《びあしん慶次郎さん》風^^;

    仮想についての考えをまとめたくて読書。

    心の問題を論じ、仮想(イメージ)に発展させ、記憶でピリオド
    。魂とは何であるのか?新たな問題提起である。

    脳の機能は複雑だ。人間は物理的個体として存在して、他人と区
    別できる。心が脳にあるなら、心も他人とは別にある。脳は物理
    的に確認出来るが、心は「ある」ことが「感じ」られる。(量を
    測れない、科学の証明が困難)

    脳は思考して、共通の認識がもてたり、心として、共感できるこ
    とがある。これが『仮想』である。古代より人々は自分の考えを
    伝えようとしてきた。言語により、音楽により、絵画により、そ
    して現代ではITによる視覚認識が多い。(仮想の意味と現実が混
    同する)

    生物の進化のように、ある時代の仮想が、次の時代の仮想の原型
    となる。(p9)
    現代の私たちは、仮想とは、本来的に目に見えないものであると
    いうことを忘れてしまっているように思われる。(p57)
    言葉の一つ一つには、思い出すことの出来ない記憶によって支え
    られている。(p179)

    本書で示されている内容、テーマについては、理解する、考える
    というよりも、感じる、想うということが、重要なのではないか
    と思った。

    複数の感覚モダリティから得られた、情報が一致するということ
    が、私たちの現実感を支えている。そのような一致が成立しない
    ものを「仮想」と呼んでいる。(p91)

    小林秀雄の講演から始まり、様々な例が挙げられるが、読者側で
    共通の認識を持つことは難しい。かえって、理解を阻むことにな
    っている、とも感じた。

    読書時間:約14時間



    リスペクト⇒びあしん慶次郎さん

  • [塩見図書館長より]
    著者の茂木さんはTVでも有名な脳科学者です。いま科学では分子生物学、進化論とともに脳科学がもっともエキサイティングな領域です。本書は、その先端的研究が開拓した世界を伝えています。人の心とは脳細胞のどのようなあり方なのか?が主題です。「サンタクロースは存在するか?」と問いかけます。それは脳の生産した「仮想」(バーチャル)です。しかし「仮想」も人生において立派な存在ではないでしょうか。
    サン・テクジュペリの『星の王子さま』は、「かんじんなことは、目には見えない」といっています(内藤濯訳、岩波書店、99ページ)。また童謡詩人の金子みすずさんが次のように読んでいます(『金子みすゞ童謡集』JULA出版局、1984年、112ページ)。
    青いお空のそこふかく、
    海の小石のそのように、
    夜がくるまでしずんでる、
    昼のお星はめにみえぬ。
    見えぬけれどもあるんだよ、
    見えぬものでもあるんだよ。

  • 「仮想」と「現実」を対照のものと考え、「現実」でないものを「仮想」と定義する。「確実にそうである」ということができないものは「仮想」となる。
    この世は仮想に満ちており、今現在目の前にあるコップでさえ、視覚のみによって捉えているだけでは、それが”確実に”そこに存在しているとは限らない。故にそのコップは、「仮想」である。しかし、それを「現実」として認識するには2つの方法がある。「一致」という現象によって「仮想」は「現実」になる。2つの方法とは、

    1.五感のうち2つ以上の感覚のモダリティ(心的態度)が一致すること
    2.その存在が世界に及ぼす作用が2つ以上の経路を経由し、それらが一致すること

    となる。前者は視覚のみで捉えていたコップという存在を、見える箇所に手を伸ばし、触覚でも感じることで、その存在は確実にそこに存在すると初めてわかる。それによって「仮想」が「現実」へと変わる。
    後者は自分は視覚としてコップの存在を認識しているが、隣にいる友人は果たしてそれを認識しているのか、としたときに、その友人も認識できていれば「仮想」が「現実」へと変わる。

    といったような、「仮想」と「現実」との関係を様々な切り口で論じている。まだ自分には難しくて、読んでいてつかれた。でも面白かったす。

  • クオリア(質感)のなせる高次の意味。0.1の羅列と仮想現実は同一であるようでそのもたらす価値は異なる。

  • ・3/16 読了.みっくんのおかげでこの本を読んで脳で作り出されると考えられる意識についてより深く考察することができた.それにしても考えれば考えるほど脳で脳のことを考える限界を思い知らされる.それにしても釈迦の「矢の意味を問うより矢の傷を癒す」というエピソードは初めて聞いたような気がするけど感心した.ただこの本にも無いのがやっぱり無意識についての考察だ.

  • 「で、結局クオリアって何なん?」という感想を抱いてしまった私は、彼に言わせれば要素還元主義の科学に毒されてしまっているということになるのだろう。

  • 物体には質感がある。
    それらは「堅そうだ」「良い匂いだ」「大きい」「うるさい」などの言葉で分類できる。
    こういった物に伴う「質感」を著者は「クオリア」という言葉で表現している。

    しかし、五感で捉えたクオリアの間に誤差を生じることにより、私たちは驚いたり、不安になったりする。
    たとえば視覚的に硬そうだと思ったものを触ると柔らかかったり、冷たいと予想したものを飲んでみると熱かったりすると、意外だと感じる。
    であれば、物のクオリアは物自体に内在するわけではない。
    それは私たちの脳が作り出した「仮想」に過ぎない―――

    意識とは何か?

    記憶とは何か?

    感覚とは何か?

    私たちは理解しているように、当たり前にそれらの用語を使うけれど、私たちの脳に関する知識は、実はあまりにも乏しいと、この本により気付かされる。
    脳研究の最前線にいる著者ですら、わからないことがたくさんある。
    摩訶不思議な脳の世界にようこそ。

  • 第一章の小林秀雄の引用と瑞々しい筆致で展開されるアイディアには、衝撃にも似た感動を覚えた。
    が、後半に進むにつれ、観念的で、どう脳や科学につなげているのか要領を得なくなってきた。

    科学を文学的に解釈しているような感じ。
    科学というよりはむしろ哲学的だが、
    科学の前進には哲学にも似た深い思索が必要とされているのだろうか。

    引用が多用されているだけに、筆者よりもむしろ小林秀雄が凄いなァと思った。

    ***

    「物質である脳に、いかにして様々な主観的体験に満ちた私たちの心が宿るのか」 p.19
    「なぜ、単なる物質を、いくら複雑とはいえ、脳というシステムにくみ上げると、そこに「魂」が生じてしまうのか、とんと見当がつかない。」 p.231

    細胞生物学を学んでいて感じていた「すんなりと理解できない感じ」が上手く言い表された、と思った。
    ただし、だからと言って、筆者が主張するように、近代科学のアプローチに間違いがあると短絡付けられると、私は思わない。

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著者プロフィール

脳科学者。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。『クオリアと人工意識』(講談社現代新書)『脳を活かす勉強法』(PHP文庫)など、著書多数。1962年、東京生まれ。

「2021年 『10年後の世界を生き抜く教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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