撃てない警官 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101301525

作品紹介・あらすじ

総監へのレクチャー中、部下の拳銃自殺を知った。柴崎令司は三十代ながら警部であり、警視庁総務部で係長を務めつつ、さらなる出世を望んでいた。だが不祥事の責任を負い、綾瀬署に左遷される。捜査経験のない彼の眼前に現れる様々な事件。泥にまみれながらも柴崎は本庁への復帰を虎視眈々と狙っていた。日本推理作家協会賞受賞作「随監」収録、あなたの胸を揺さぶる警察小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 警視庁警備部の係長、三十代にして警部とうエリートコースに乗っていた主人公の柴崎令司が、不祥事を理由に綾瀬署に左遷させられる。捜査部門の経験が殆どないままいきなり所轄の総務部門にて奮闘する連作短編集。柴崎令司シリーズの一作目。
    出世欲があり本庁への返り咲きを狙う柴崎のキャラは、正直共感しにくいしあまり魅力的ではない。だが、上司である捜査畑出身の助川副署長の元で、捜査のコツや面白さに気づいていく成長物語の様相がなかなか面白い。連作短編という形式のなので、柴崎は様々な事件に関わることで経験を積んでいく流れである。
    本作の一編である『随監』は日本推理作家協会賞短編部門受賞作。

  • 短編集。
    出世コースに乗っていたはずなのに理不尽な理由で左遷させられた柴崎。
    現場で必死に働く刑事たちをどこか見下しているような柴崎が、実際の事件に向き合い変わっていく。
    警部補に昇進したとき、警察学校で教壇に立っていたのが左遷先の綾瀬署で副署長をしている助川だ。
    彼に連れられ自殺かと思われる現場へと向かう。
    警察にもいろいろな部署がある。
    実際に捜査にあたる現場の刑事たち。
    本部に詰め、捜査の方向性を見極める管理職。
    事務系の仕事に明けくれる警察官。
    ふと感じた疑問を柴崎が助川に告げたことから、事件は大きくその様相を変えていく。
    最初は自殺かと思われたものが、結局は殺人事件だと認定される。
    助川ではないけれど、もしかしたら柴崎には刑事としての資質があるのでは?と思ってしまう物語になっていた。

    協会賞を受賞した「随監」は、本当の正義とはどんなものなのか、わからなくなってしまう物語だった。
    法律に照らしあわせれば刑事罰を与えるほどのことではない。
    けれど、些細なことの積み重ねがどれほど人を苦しめるのか。
    ずる賢く立ち回り、確信犯的に悪事を働く人間をなぜ法律が取り締まることができないのか。
    そんな矛盾は、もしかしたら社会にはたくさんあるのかもしれない。
    広松の行為はけっして褒められたものではないだろうが、それでも広松のような警察官がいてくれたら…と思ってしまう。
    杓子定規に法律に縛られるのではなく、地域のため、住民のために動くことができる警察官。
    それはもう、ドラマや物語の中にしかいないのかもしれないけれど。
    出世することで頭がいっぱいだった柴崎が、どんどん人間らしくなっていくところが物語の魅力だった。
    柴崎を主人公にした物語がまだあるらしい。
    ぜひそちらも読んでみたい。

  • 面白くなーい

  • 何とも、変わったキャラクターの、短編連作警察小説であることか。
    何しろ、現場が嫌、事務部門が好き、という警察官が主人公なのだから。
    バリバリのエリートだった主人公は、陰謀により所轄に移動させられる。そこでは、否応なしに事件に遭遇し、いやいやながら捜査に携わっていく。
    今後、刑事魂に目覚め、活躍するのか、あるいはまた、本人が望む本庁の職場に復帰できるのか、次回作以降が楽しみ。

  • 気に入ったのですぐにシリーズ全部読破した。
    地味なリアル調警察小説。

  • 警察小説でも、大事件は起きない。総務部門でキャリア官僚警察官を目指していた主人公が、上司のケツぬぐいで現場に立たされる、その現場で起こる日常事件を舞台にした、短編集。時系列かつ一つ一つの短編につながりがあるので、通しで読むと長編小説になっている。

    横山秀夫や今野敏、笹本稜平、佐々木譲ら、警察小説の書き手は多々いるが安東能明作品は所読。この1冊自体は傑出した大傑作とは言えないが、手堅くまとめてきて読ませる予感、シリーズを通して読んでみたいと思える。今後に期待したい!

  • 短編集だけど、同じ主人公・背景ということで、なんか1時間の警察ドラマを見ている様。
    結構重厚な書きっぷりなので、是非長編を読んでみたいな、というのが最初の感想。


    警官の世界の「実は・・・」が結構散りばめられており、知らない者からすると面白かったりする。抜き打ち監査なんてやってるんやね。


    主人公はある事件をきっかけに、スケープゴートにされ地方に飛ばされてしまうのだが、自分を飛ばした上司に対して虎視眈々と復讐を狙いながら、色々な事件を解決していく話。
    全体的にモヤモヤとしてスッキリとしない話が多いけど、それだけに現実味があるのかな。巨大組織に属すことの悲哀みたいなのが、うまく書かれていると思う。
    妥協・痛み分け・諦めに溢れた話が題名にも上手くリンクしている。なかなか秀逸なタイトルやね。


    ただ最後の話くらいは、もう少し白黒を付けて欲しかったな。
    え、そう終わるの!?
    と思ってしまった。

    続編があるのかな?

  • 警視庁総務部から所轄の警務係に左遷された柴崎。事務方の彼が現場に直面し、「何故自分が」と内心悔しい思いをしながらも細かく捜査をしていくのは持って生まれた真面目さなのでしょうか。

  • 警視庁総務部に勤めるエリート警官の柴崎は、部下の拳銃自殺という不祥事の詰め腹を切らされ左遷される。虎視眈々と復権を狙う彼だが、所轄での経験を経て徐々に「警察官」へと変貌していく…。警察の内幕を描きながら事件の謎解きも楽しめる。横山秀夫を彷彿させる良本。今まであまり縁のなかった作者さんだが何冊か読んでみたい。

  • 総監へのレクチャー中、部下の拳銃自殺を知った。柴崎令司は三十代ながら警部であり、警視庁総務部で係長を務めつつ、さらなる出世を望んでいた。だが不祥事の責任を負い、綾瀬署に左遷される。捜査経験のない彼の眼前に現れる様々な事件。泥にまみれながらも柴崎は本庁への復帰を虎視眈々と狙っていた。

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著者プロフィール

1956年、静岡県生まれ。明治大学卒。‘94年『死が舞い降りた』で日本推理サスペンス大賞優秀賞を受賞しデビュー。2000年『鬼子母神』でホラーサスペンス大賞特別賞、’10年には「随監」で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。緻密な取材が生む警察小説やサスペンス小説で多くのファンを魅了する。本書は朝鮮戦争で計画された原爆投下の機密作戦を巡る謀略を描く渾身の作。著書に『限界捜査』『ソウル行最終便』『彷徨捜査』『伏流捜査』(祥伝社文庫)『撃てない警官』『夜の署長』等。

「2023年 『ブラックバード』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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