切羽へ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 596
感想 : 101
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101302546

感想・レビュー・書評

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  • 読みやすいし綺麗な文章なんだけど。。。。
    なんだかのめりこめない感じ。

  • 描かれていない唐突に翌月へと変わってしまう章立てや、
    石和と別れた翌月の三月や、
    セイと石和の思いがありありと伝わってくる筆力の圧倒的な力を感じる。
    理由もなく本能的に惹かれ合っているのに理由ばかりを求めるセイの姿や、
    そんなに求めているのに結局消毒以外に触れ合うことも無い2人の姿はまさに先の無い切羽のようだった。
    それは周囲にある夫や家族という安定した存在だけがそうしているのではなく、
    2人の自分自身の中にあるものがそうしているような気がする。
    セイの思いが石和へと動いているのにまるで夫が離れていくような気配がして、
    世界の終わりのような気持ちになるのもその一つの要因であると思う。
    石和のことが全くわからず、わからないからこそ読者もセイと同じように石和と惹かれていく話だと思った。

  • (*01)
    廃墟文学というジャンルはあるのだろうか。病院、映画館、廃坑などのモチーフがあって、離島というからそこでかろうじて生きている船や港や学校やマンションや、いくつかの棲みかまでが、いままさに廃れようとしているようにも感じられる。
    主人公はこの廃墟であるが、プロンプターの様な女の視点や話題がこの廃墟に入ってくる。廃墟を体現した石和(イサワ)というのが廃墟からストレンジャー(*02)として出てくる。
    それだけの物語であるが、絵の夫、性の老婆、痴話の同僚などのすったもんだが、この廃墟の場を回している。

    (*02)
    この道化は、幽霊の様に朧気で飄々でもある。この半存在がいくらかは物語をそれらしくしているように思う。

  • 静かな小説。方言がちょっとなじめなかったけれど、島を舞台にある夫婦と本土から来た石和をめぐる、味わいのある本でした。

  • いやー。
    いやー。。。

  • 激しいドロドロはなく、淡いのだけど妙にエロチックて、しかも濡れ場がないという不思議な本でした。島に赴任してきた独身教師にそこはかとなく惹かれていく主人公。夫の事は愛しているのに後ろめたい感情が時折頭をもたげるのであります。僕は性格的に夫側の性格なので、奥さん浮気したらいけませんよと念じながら読んでいました。

  • 第139回直木賞受賞作

  • 主人公・麻生セイ、夫・陽介。セイが惹かれていく石和聡。官能的な視覚的表現はないものの、セイが心惹かれていく様子が描かれていて、むしろそこが妙にエロティック。同僚の奔放な月江と不倫相手の本土さん(結局最後まで名前は出てこなかった)、近所に住むしずかばあちゃんもいい。(ちょっと寂しいけど)

  • 繊細な文章から平穏な離島の暮らしが窺えた。
    方言ものんびりとした雰囲気を醸し出しているし、登場する料理もとても美味しそう。
    ヒロインは東京から赴任してきた石和に惹かれるのだけど、正直なところこの石和の良さがさっぱり判らない。
    かえってご主人の陽介さんの方が好みなんだけど、恋に落ちるのに理屈はいらないということなのね……。
    文章が抑え気味なので、どの程度の恋心なのか測りかねますが、精神的には夫を裏切ったわけで、精神的な裏切りと、心を伴わない肉体的な裏切りの場合、どちらの方が罪は重いのかなとふと思った。

  • 淡々とした語り口ながら、もてますほどの感情を底に感じる、抑え気味の情熱小説。諦めを知った大人の心の物語。ごちゃごちゃとした記述はなく、そぎ落とされている。島ならではの生活の様子が鮮やかに描かれている。

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著者プロフィール

井上荒野
一九六一年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。八九年「わたしのヌレエフ」で第一回フェミナ賞受賞。二〇〇四年『潤一』で第一一回島清恋愛文学賞、〇八年『切羽へ』で第一三九回直木賞、一一年『そこへ行くな』で第六回中央公論文芸賞、一六年『赤へ』で第二九回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『もう切るわ』『誰よりも美しい妻』『キャベツ炒めに捧ぐ』『結婚』『それを愛とまちがえるから』『悪い恋人』『ママがやった』『あちらにいる鬼』『よその島』など多数。

「2023年 『よその島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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