狐笛のかなた (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 6026
感想 : 633
  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101302713

作品紹介・あらすじ

小夜は12歳。人の心が聞こえる"聞き耳"の力を亡き母から受け継いだ。ある日の夕暮れ、犬に追われる子狐を助けたが、狐はこの世と神の世の"あわい"に棲む霊狐・野火だった。隣り合う二つの国の争いに巻き込まれ、呪いを避けて森陰屋敷に閉じ込められている少年・小春丸をめぐり、小夜と野火の、孤独でけなげな愛が燃え上がる…愛のために身を捨てたとき、もう恐ろしいものは何もない。野間児童文芸賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 呪者に呪力を授けられた霊狐・野火。

    人の心の声を聞く能力を持つ
    12歳の少女・小夜。

    屋敷に閉じ込められている少年、小春丸。


    やがて敵対する国同士の
    領土争いに巻き込まれていく
    小夜たち。


    古き良き日本の風景や
    和の心を感じさせる
    冒険ファンタジー。



    いやはや
    上橋さんの作品は初めてだったけど
    美しい日本語で綴られた
    哀と死の物語に、
    寝る間を惜しんで読みふけるほど
    かなり引き込まれました。


    なんと言っても
    自分を助けてくれた小夜に
    密かに恋焦がれる
    特別な力を持った狐、野火の心情が
    なんとも切ないのですよ…(>_<)
    (小夜と野火の仲をサポートし後押しする鈴姉さんのキャラがまたカッコいいのです)


    そして次第に心惹かれていく
    一人と一匹。

    倒さねばならない敵同士。


    生まれたところも生きる場所も違う
    小夜と野火の恋情は
    まるであの
    「ロミオとジュリエット」を彷彿とさせて
    哀しくも美しい。


    命の儚さとその価値を知り
    少女は戦うことを誓い、

    狐は少女の喜ぶ顔を見るためだけに
    自らの主に反旗を翻していく…


    もともとこの小説は
    児童書として書かれたそうだけど、
    子供の頃にこの作品を読めた人が
    ホンマ羨ましいって思う。

    けれど児童書は
    決して子供たちだけのものではないんです。


    絵本や児童書を大人が読んで
    心が救われたり、

    現状を打破する
    ヒントを貰ったりって
    実は結構あるし。


    簡潔にまとめられた文章だからこそ
    受け取る側の心のあり方によって
    違う感想になるし、
    想像力をかきたてられる
    児童書という存在。

    子供に響く話は
    実は大人にも確実に響くんですよね。



    果たして小夜の思いは届くのか?


    「何かを得る者は
    何かを失わなければならない」という
    人生の真理を教えてくれる
    切なく胸を打つラストは
    少しほろ苦いけど、
    自分は断然支持します。

  • 王道のファンタジー。
    生まれから隠された2人の子供と運命を握られた霊狐。
    それぞれのサダメを恨んだり、諦めたりしながらあがなうことで成長していく子供達。
    独特の世界観で読者を魅了する。

  • 鹿の王、水底の橋、本作を読んで、作者のテーマは、自分や周りの未来のために、過去の遺恨に囚われず踏み出す勇気の話しなのかな、と感じた。あと5作ぐらい読みたい。

  • この世には〈あわい〉と呼ばれる場所がある。
    人が住む〈この世〉と神々が住む〈彼の世〉の境目の、霊力のある獣たちが暮らす深い森だ。

    〈聞き耳〉の才を持つ小夜と呪者の使い魔にされた霊狐・野火。
    両者が隣国の領土争いに巻き込まれる純和風ファンタジー。
    上橋先生の今までに読んだ物語は異国風のものばかり。
    勿論それはそれで良いのだけれど、今回のような民俗学的な物語は理解しやすいしストレートに胸に刺さる。
    日本古来から続く野山等の元風景を舞台に、読み手の郷愁を誘う物語で親しみやすく、とてもわくわくして面白かった。
    今後は純和風ファンタジーももっと書いてほしい。
    令和の初読みがこの作品で良かった。

  • 圧巻の上橋ワールド、ありがとうございます。
    上橋さんの作品はものすごく明るいとかではなくて、むしろ暗い。でも、その暗さや登場人物の苦難が、想像の世界にリアリティをもたせているんじゃないかと思う。
    ラストに何があったかをあえて書ききらず、読者の想像に任せるのはずるいよなぁ〜。余韻に浸っちゃうじゃん〜。
    話の密度はとても濃い。無駄なことは書かれず、もうちょっと詳細があってもいいかな?と思うくらいで、どんどん話が展開していく。
    最初は小夜と小春丸の恋愛の流れになるのかと思っていたら全然違った。
    人間に恋をする狐の野火が非常にかわいくて推せる。

  • 宮部みゆきさんの書評を読んで、驚いた。これ、児童書なんですね?!(宮部さんもおっしゃるとおり)そんな枠組みは正直どうでもいいけれど、大人が読んでも、全く物足りなさなど感じない、深く深く心に残る物語だった。
     人間が住む「この世」と神々の住む「あの世」、そのふたつの世の境目の「あわい」。呪者や、霊獣。こんなものが出てきても、日本が舞台だからか、すっと受け入れられるような気がする。どこか懐かしい気さえする。
     この世界観をこんなにもコンパクトに書き収めているところに、作者の力量を感じる。上橋さんの作品はまだ二作目だけれど、本当に素晴らしいファンタジー作家だとすぐにわかる。
     先が気になるストーリー展開と、小夜と野火のせつない想い合いが、読者を先へ先へと急かすかのようだった。恨み、憎しみ、怒りの強さに人間の弱さを感じる。人間はそのような負の感情に身を任せて、人間ではコントロールできない、ありあまる力をつけたとき、自らを破滅の道へ進ませていくのだろうな。戦争や核兵器や、そういうものも、呪術と同じようなものなのだろう・・・
     なんとなく哀しい結末をイメージしていたので、温かなラストにほっと胸をなでおろした。花乃の望みがやっと叶ったとじんとした。全体的に、暗くしっとりしたお話であったにも関わらず、読了後は、涼やかな風が吹き抜けたような爽やかさがあった。美しい若桜野を幸せそうに駆け回る3匹の狐の残像が、しばらく頭から離れなかった。本当に素晴らしい作品だった。

    本当に人間って・・・、と現実の世界に目を向けてもため息が出るけれど、負の連鎖を断ち切ることができる人間もいる。そう信じて。

  • 『獣の奏者』を読んだ時、この人の中で死はバッドエンドを意味しないのだな、と感じた。

    本作も、終わり方は決して晴れやかなものではなく、どちらかというと断たれてゆく哀しさに満ちている。
    でも、それはバッドエンドではない。

    特別な能力を持つが故に孤独である小夜とエリンの立ち位置は非常に似ている。
    二人とも、自らを犠牲にしても遂げたい何かがあり、一途に純粋にそれを貫く。
    そうして、その何かには、必ず生き物との情•絆が濃く存在している。

    この純粋さに、私はたまらなく惹かれてしまうんだなあ……。

    小夜と野火の想いの強さには誰も勝てない。
    野火が人間と狐を行き来する、曖昧さの描写がすごく良かった。
    使役する者とされる者の危うさもしかり。

    だから二人が良しとする結末であれば、もうそれでオールオッケー!なのである(笑)

  • 本を読まない人をかわいそうだなと思うのは、文字を追い、ページをめくっていって、最高の物語の中に入り込めた時におこる、全身が総毛立つような感動を味わえないから。

    総毛立つとか鳥肌って本来は恐怖とか嫌悪感による現象にしか使わないみたいですが、本当に視界の端で前髪がちょっと持ち上がるんです。感動して。

    そうなってしまう本はそんなに多くはないんですが、上橋菜穂子さんの作品は打率が高い。

    「獣の奏者」は私の中では鳥肌本の殿堂入りですが、この「弧笛のかなた」も、時を経ても枯れない本になっています。

    理論社から出ている方の表紙が大好きで書い直しました。

    児童文学という括りになっていますが、風景描写の美しさ、共感を通り越して我が事のように胸を締め付けられる心情表現、大人も存分に楽しめます。

    子どもに薦めるうえで、「獣の奏者」はあの分厚さから、自分の読書力にある程度自信を持っている子どもじゃないと、開いて物語の中にダイブするまでがなかなか難しいですが、「弧笛のかなた」なら壁が低くて、上橋さんの世界を堪能できるかと思います。

    私は理論社版を読んだので知らなかったのですが、他の方が、巻末の解説で、小野不由美さん、荻原規子さんがファンタジー作家の代表として挙げられていると書いてくださってて、すごく頷けました。
    「十二国記シリーズ」「勾玉シリーズ」そして「獣の奏者」が、子どもにお薦めした結果、見事にハマりこんでもらえる鉄板作品なんですよね。

  • 再読。大好きな本です。

    <聞き耳>の力を持つ少女と、主に使い魔として縛られる霊狐。
    何度読んでも小夜の優しさ、野火の強さに胸を打たれます。

    児童文学とはいえ、こんなにもドキドキする恋愛は珍しいのでは?(笑)

    子狐の頃、自分を守ってくれた少女をずっと見守ってきた野火。
    いつも、ピンチの時に現れる少年の正体が分かった時に、
    自然にそれを受け入れる小夜の大らかさにも、じんわりきます。

    切なく、温かく、ラストは思わず涙腺が緩みます。
    「終章 若桜野を」が大好きです。

  • ぬおおおおおお!すごい良かった…!
    相変わらずご飯がうまそうなんですけど。風俗描写が細かくて、本当に、どうやったらこんな話が書けるのだろう?と途方に暮れています。
    闇ノ戸を閉じるシーンがとても美しくて、いいなあ。
    野火と小夜の心のふれあいがいとしくていとしくてならない。そして玉緒が大好きです。
    野火も小夜もまっすぐで感情移入しまくりました。
    小春丸が呪いを自分で増幅させているところは胸が痛かったです。
    異種族同士のふれあいが大好きな私には最高に大好きなお話となりました。息もつかさず読みました。ラストシーン、素晴らしいです。

    レビューを読んで。私はこれ以上ないハッピーエンドだと思ってしまったのですが、切ないエンドだとおっしゃる感想になるほどなぁ…と思いました。他の人の感想って面白すぎる。

    • まるもっちーさん
      コメントありがとうございます!(●^o^●)ファンタジーが好きなのでかなり偏った本棚となっておりますが何か通じるものがあれば嬉しいです♪
      ...
      コメントありがとうございます!(●^o^●)ファンタジーが好きなのでかなり偏った本棚となっておりますが何か通じるものがあれば嬉しいです♪
      この作品は本当に好きで好きでどこか切ない雰囲気が素晴らしいと思っています。上橋さん作品大好きです。
      プロボクサーさんですか!たくさん読まれているようで尊敬しながら眺めていました。
      良い縁に恵まれてうれしく思います。コメントありがとうございました!
      2015/04/12
    • 円軌道の外さん

      まるもっちーさん、おはよーございます(^^)
      コメントの返事まで書いてくれてありがとうございます!

      てか、前回なぜかフォローし忘...

      まるもっちーさん、おはよーございます(^^)
      コメントの返事まで書いてくれてありがとうございます!

      てか、前回なぜかフォローし忘れてました(滝汗)!!
      ホンマすいません!((((((゜ロ゜;
      完全に押したものと勘違いしてました…

      あっ、まるもっちーさんはファンタジー好きなんですね。
      夢を語れなかったり、物語を信じることができない若い人たちが増えてる今だからこそ、ファンタジーが持つ力って必要だと思うし、
      今年、上橋菜穂子さんが本屋大賞を穫ったことでまたファンタジーというジャンルが注目されてますよね。

      つか、話は変わりますが(笑)
      「ヒックとドラゴン」の続編ってホンマなんですか?
      (レビュー読ませてもらいました!)
      ドラゴンのトゥースがめっちゃ可愛かったし、
      (うちの愛猫にソックリでビックリしました笑)
      ホンマいい作品で好きやったので、
      思わずコメントしてしまいました(笑)

      ボクシングは試合がこの前終わった後で当分試合はないので(笑)
      今のうちにブクログライフを楽しみたいと思ってます。
      まるもっちーさんの素敵なレビュー楽しみだし
      また今後ともよろしくお願いします(^^)






      2015/04/27
    • まるもっちーさん
      コメント何度もありがとうございます!

      フォローはお気になさらずに。読んでいただけるだけでありがたいです♪

      ファンタジー大好きです...
      コメント何度もありがとうございます!

      フォローはお気になさらずに。読んでいただけるだけでありがたいです♪

      ファンタジー大好きですね~。ここではないどこかにいつも惹かれています。特に上橋さんのような、これ絶対どこかにある世界だろ、というくらい世界観が深い話に出会えると幸せになります。

      ヒックとドラゴンは3まで公開されているらしいのですが、諸事情があり日本では映画館で公開されない…とのことで残念でなりません。あれも人と人ならざる物の交流ですよね。泣いちゃいます。

      こっそり|ω・`)見守っていますのでまた素敵なレビュー読ませてくださいね。
      コメントありがとうございました!
      2015/04/27
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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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