狐笛のかなた (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.12
  • (931)
  • (803)
  • (537)
  • (45)
  • (10)
本棚登録 : 6728
感想 : 676
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101302713

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 私の中ではバルサとエリンの2つのお話だけでもう確固たるものがある、この作者さん。
    その初期の作品であるこの本は、先日のフォローしている方のレビューを読んで手に取った。

    亡き母から人の心が聞こえる〈聞き耳〉の力を受け継いでいる小夜、この世と神の世の〈あわい〉に棲む霊狐・野火、森陰の屋敷に幽閉されている少年・小春丸、ある夜、この3人が偶然出会ったところから始まる物語。
    彼らは隣り合う2つの国の争いに巻き込まれていくが、過去の因縁の渦に巻き込まれながらも懸命に生きようとする小夜に、使い魔として生きながら彼女に寄り添おうとする野火、彼に毒づきながらも理解を示す玉緒の変化など、それぞれの健気な心情と行動はバルサやエリンの話に似通ったところもあり、この時代不詳だが美しく妖しい日本を舞台にした物語を楽しむことが出来た。

    現在の作者の手際を思えば、小夜が持つ力のすべてが描き出されたわけではなかったように思えることや小春丸がなんだか置き去りにされてしまったような筋書きにはいささかの不満が残るところはあり。

  • 憎しみの連鎖は誰かが復讐を諦めなければ止まらない。
    春望がこれからの子たちのことを考え、若狭野を返したところが印象深い。

    すれ違いつつも、互いを思いやる小夜、野火、小春丸の関係も良い。そして玉緒の気の利かせよう、立ち回りの上手さ、グッジョブ

  • 共感、思いやり、勇気、命を感じる。大人も純な気持ちで楽しめるのが優れた児童向けファンタジーなのだろう。2023.10.9

  • 読みやすかった。
    丁寧な場面描写とスムーズな展開が心地よかった。
    特に最後の場面が美しかった。

  • 日常を離れて、没頭して読むことができた。
    あたたかい世界観、スピーディな物語展開でした。

  • 上橋菜穂子氏の長編作品やデビュー作を読み終えてしまいこの本に辿りついた。
    基本的なファンタジーと感じた。要素を抜き出して絵本にしても、味わいを楽しめると思う。
    他の物語と違って統治、政治、民族が人々の思想に影響を与えているという深みは感じられなかった。

  • 最近は研究書やドキュメンタリーなどが多くて、久しぶりに物語世界に浸った満足感がある。昔、物語本しか読まなかった頃は考えたこともなかったけど、1人の作家の頭の中の空想からこんな風に世界が構築されることに最近はびっくりする。ファンタジーの世界は偉大だ、と今さらながら思う。
    狐笛のかなたのラストシーンは哀しい。小夜と野火は現世に適合しない人たちだった。いたらその能力を期待され、本人の意思に関わらず、また世が乱れる元となってしまっただろう。だから二人はあわいに生きる事を選ぶしかなかった。小夜と野火は幸せだろう。ただ彼らを受け入れることができなかった私たち、私たちに拒絶された2人を考えると泣けて仕方ない。私、このテーマダメなんだ、すぐ泣いてしまう。

  • 呪いと生と死の物語。

    上橋菜穂子さんの作品は,厳しい。生きるとはどういうことかを突きつけてくる。現実じゃなくてファンタジーだからこそ感じられる,選択の厳しさ。私は何を大切にしたいのか。

    小夜は人の心が聞こえる力を持っている。幼い頃出会ったけがをした狐,屋敷に閉じ込められている男の子。亡き母の秘密。隣り合う国の争いに,自分の母や一族,力が関係していると知った小夜はどうするのか。小夜に助けられた霊狐・野火は主を裏切るのか。解放された小春丸は。誰もが自分の信じるものに頼り,どうにか結末を目指そうとする。エゴは醜いものだけれども,否定するのは難しくて。

    もっと壮大な長編にすることもできたのではないかと思った。終わったときにあっけなく感じた。ハッピーエンドではあるけれども,本当にこれで終わりなのか。しかし,実際もそういうものなのだろう。壮大で満足感のあるエンドマークなんて,現実には早々出てこない。現実を語るファンタジー。

  • 会社の人に、面白いからと貸して頂いた本。

    本屋大賞も受賞され、気になっていた作家さんだったが、読んだことは一度もなかった。

    ストーリー的には、浦島太郎や鶴の恩返しではないが日本人には受け入れやすいような気がした。

    期待する展開を裏切らないのも良いのかもしれない。

    ただ、ファンタジー慣れしていない為、世界観を掴むのに難儀した。
    何となくこの物語の世界観を掴みかけたかなぁ・・・
    と思った頃には、既に物語は終わっていた(^-^;

    一日で読み終わりました。
    児童文学ということで、読みやすさはあるのかもしれない。

  • 憎しみが憎しみを呼ぶ。それが根源の原因を覆い隠してしまわぬうちに。

    余所者として幾らかのよそよそしさを抱えながら、少女は村の外れで祖母と暮らしていた。
    ある日、年の瀬の市にて彼女は自らの生まれを知る者たちと出会い、やがて国境にある豊かな土地を巡る隣国間の憎み合いに巻き込まれていく。

    最初は逃げることしか身を守る術を持たなかった少女が、次第に他者を守るために相手へ対峙するようになる変化が目を惹く。
    逃げることは悪いことではなく、生き延びるための有効な手段だ。
    しかし、他者を守るために自分が出来ることは共に逃げるか、立ち向かうことだ。
    だが、その中で彼女は気付く。立ち向かっても相手に新たな憎しみが生まれ、その輪廻は終わりが見えないことを。
    それならば、まだ原因が見えるうちにそれを取り除いてしまおう。

    恨んでも、時は戻せません。この先を変えることしか、私たちには出来ないのです。

著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

上橋菜穂子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
万城目 学
米澤 穂信
上橋 菜穂子
宮部みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×