夢の守り人 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 491
  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101302744

作品紹介・あらすじ

人の夢を糧とする異界の"花"に囚われ、人鬼と化したタンダ。女用心棒バルサは幼な馴染を救うため、命を賭ける。心の絆は"花"の魔力に打ち克てるのか?開花の時を迎えた"花"は、その力を増していく。不可思議な歌で人の心をとろけさせる放浪の歌い手ユグノの正体は?そして、今明かされる大呪術師トロガイの秘められた過去とは?いよいよ緊迫度を増すシリーズ第3弾。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ三作目となる本書。
    国産のファンタジー小説は多数あれど読んで心地よく世界観に浸れるものは数えるほどしかない。
    守り人シリーズは数少ないそのうちの一つと言える。

    前の巻であ「闇の守り人」は、バルサの物語であるが、今回は大呪術師トロガイと薬草師のタンダの物語と言えるだろう。
    普通の人には見えない異なる世界を見ることができる人々の物語。

    バルサは、奴隷狩人から不思議な歌い手を助ける。
    時を同じくして多くの人々が突然眠り続けたままの状態になる奇妙な事件が発生する。
    タンダは眠り続ける姪のカヤを助ける為、危険を冒し「魂呼ばい」の儀式を行い、彼女の夢の世界に入り込む。

    今回扱われる世界は夢と花である。
    花が絡む幻想的な物語というと中国の幻想譚が思い出されるが、そういった何とも言えない怪しく幻想的な雰囲気が漂う世界が巧みに描写されている。
    古来、夢の世界と言うのはあの世とこの世の境目に位置すると考えられている。
    眠っている間人間の魂は肉体を離れ、この幻想的な世界を旅しその時の経験が夢であると昔の人は信じていた。
    また一方、人は恋い焦がれるものや理想とするものを夢と呼びそれを求める。
    あるものは、その思いが強くなりすぎ、自ら作り出した狂気という夢の世界で生きる。
    今回の話は、そういった事がテーマとなっていたように思われる。

    現在よりはるかに生活が過酷で、選択肢が少なかった時代の人々はどのような思いで生きていったのだろうかと考えさせられた。

    物語で、心地良いが死につながる危険な夢の世界から抜け出すのに必要だったものは、親しい人たちからの愛、そして日常の些細な瞬間の美しさを愛おしむ心であるというのは素晴らしい解答であると思う。

    それと武人であまり自分の感情を口にしないバルサがタンダをどれほど大切に思っているかがわかるお話でもあった。
    ホントこの二人には幸せになっていただきたい。

  • 今回も面白かったです。タンダと、トロガイ師の過去が中心でした。
    優しいタンダ、優しすぎるので困難も受けますが、夢に囚われたチャグムを諭すシーン、良かったです。
    チャグムとシュガの王宮でのやりとりも好きです。チャグム、成長したなぁ…でも、バルサやタンダと暮らしていた頃に戻りたい、と思ってるのが切ないです。
    帝は未だによくわからない存在ですが、チャグムが帝になっても、今の帝とは全然違う存在になるんだろうな。続きも楽しみです。

  • 守り人シリーズ第3巻。人を魅了させる見事な歌を歌う放浪の歌い手ユグノ、眠り続けるタンダの姪である少女と新ヨゴ王国の一の妃、期せずして人鬼化してしまったタンダを救おうとバルサたちは奮闘する。

    1~2作目は王国単位の騒動でしたが、本作は大呪術師トロガイの過去を中心に“人の内面”に焦点を当てた展開となっています。
    現実が辛くて辛くて堪らない時、「いっそ全てが夢ならば」「いっそこのまま夢から覚めなければ良いのに」と強く願う瞬間があるかもしれません。本作ではその先、の恐ろしい世界を少し垣間見せてくれたように思います。夢を願い、夢に自ら入ったつもりが、気付けば夢に取りこまれ手遅れになることも。自力で目覚められる人もいるでしょうが、一人の力ではどうしようもない時もあります。そんな時は――やはり信頼し合える家族や仲間の存在が大きな原動力に。

    夢や「サグ」や「ナユグ」を行き来し少し複雑に感じた場面もありましたが、シンプルに見るとバルサやタンダたちの、血のつながりを越えた先にある強い絆を感じられる1冊でした。

  • 守り人シリーズ三作目。いよいよ乗ってきちゃって休日でもないのに1日で読了。は~楽しい。

    今作は呪術師のタンダとトロガイの物語でした。
    が、まず言いたいのが、バルサとチャグムの再会!
    感極まって泣いてしまったよ。笑
    その前のタンダがチャグムを助ける場面の台詞にもぐっときたし、チャグムの成長も感じられて嬉しかった。

    そして花守りと化してしまったタンダを守ろうとするバルサの姿にも涙。
    タンダを殺すくらいなら自分が死んだほうがいいと思うなんて...改めて二人の絆の強さを感じました。
    タンダも言っていたけど、タンダとバルサとチャグムは血こそ繋がっていないけれど家族なんだなって。たとえ離れていても想い合い、支え合って生きている.....だめだ。また泣けてきちゃう。

    解説に「よいファンタジーには、悪人はいない。良い人の悪い行動があるだけである。」という文章があったように、今回は特に誰のせいでもない、事故のような出来事だったなと。
    とにもかくにもタンダが戻ってこられてほっとしました。

  • 夢から目覚めぬ娘。
    娘の魂を捉えた歌唄い。
    現実に帰りたくない魂を糧に生きる花。

    現実を生き抜くバルサ。

    こころをつよくもつのです。

  • 「行きて帰りし物語」という言葉がある。どこが出典だったかと調べるとトールキンだった。ファンタジーの一つの類型として、異世界へ「行って」そこからちゃんと「帰ってくる」物語というものがある。いつもファンタジーを読む時に、頭のどこかにある言葉の一つだ。異世界へ行ったままではだめなのである。ちゃんと帰ってこなければならない。ちゃんと帰ってこそ、その勇気と功績を称えることもできる。

    『夢の守り人』は、タンダが夢の世界へ行って帰ってくる物語だ。タンダが自分を見失わず、帰ってくる。その姿に胸が躍る。これだけでも十分読み応えがあるが、この夢の世界の意味するところが深い。私たちの人生とか、意識や無意識といったところへ鋭く迫ってくる内容。解釈はおそらく幾通りでもあるが、読んだ人がそれぞれ、自分のことに引き寄せて読むのが一番いいのだろう。

    「花」をめぐる会話や文は、人生の折々で自分の境遇の例えに引けるような強度を持っていると思う。
    「あの中で、「花番」が~と言うところがあるだろう。あれはこういうことなんじゃないのかね」と、仮想の対話を思い浮かべる。

    『闇の守り人』の時にも思ったが、人間の「怒り」が美しく、崇高に表現されている。それはファンタジーという枠組みを使わないと難しいことだ、と改めて思う。

  • 守り人シリーズ第三弾

    ついにタンダとトロガイ師の過去が描かれる!
    これで主要登場人物全員の過去が明らかにされたのかな?
    トロガイ師にしてもタンダにしても“呪術師”と呼ばれる存在と言うものが”死へとひかれていた者“であるとの事だが、
    前作や前々作で頑健に生きているように見えたトロガイ師にも、死にひかれるような思いを抱えた事があると言う事実に呪術師トロガイではなく、1人の人間であるトロガイを見れた気がした。

    そして死に近付いた事のある人だからこそ、魂の在り方を知り、その魂に触れる事が出来るんだなと納得した。

    自作はチャグムが主人公の旅人になるけど、今作で悩み、葛藤しつつそれでも成長していた姿がどう変化するのか(成長するのか)とても楽しみ♪

  • 再び新ヨゴ皇国に戻ってはシリーズ三作目。

    隣の芝は青く見えて誰しも無い物ねだりしちゃうよな。
    チャグム皇太子リターンズ。

  • 守り人シリーズ面白すぎて、加減できずに1日1冊のペースで読んでしまっている。
    これが本来の読書体験だ!という気もします…。

    これまでパーソナルな部分がほとんど語られてこなかったトロガイ師の過去を主軸にしつつのお話。
    いよいよ群像劇という感が強くなってきている。
    登場人物は多いが「闇の守り人」を乗り越えた人なら問題なく付いていけるはず。「闇の守り人」、多かったね…。

    トロガイ師が一の妃を説得するシーン、良かった。
    一の妃は息子を亡くしたことが悲しくて悔しくて仕方がないけど、その悲しみが自分の中で薄れてきていることを恥じ、そんなはずはない我が子を亡くしたんだから、とそれこそ「泣くために泣く」状態に入っていたんだろうな。
    トロガイ師はそこまで見抜き、生きる方向性を示してやる。

    「夢の守り人」はバルサやタンダ、トロガイ師などの普通の人生を生きられなかった人の過酷さと強さをメインに据えた話だが、最後には普通に生きる人の強さも称える終わりになっていて、上橋菜穂子さんの人としての厚みよ…。ほんとうに素晴らしいですね。

  • 自分が選ぶことのできなかった幸せをどうしても夢見てしまうのが人間の性である。でも現実に自分が選びとった人生の中で、小さな幸せに気付けるかどうかがすごく大切だと思った。

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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