夢の守り人 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 460
  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101302744

作品紹介・あらすじ

人の夢を糧とする異界の"花"に囚われ、人鬼と化したタンダ。女用心棒バルサは幼な馴染を救うため、命を賭ける。心の絆は"花"の魔力に打ち克てるのか?開花の時を迎えた"花"は、その力を増していく。不可思議な歌で人の心をとろけさせる放浪の歌い手ユグノの正体は?そして、今明かされる大呪術師トロガイの秘められた過去とは?いよいよ緊迫度を増すシリーズ第3弾。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ三作目となる本書。
    国産のファンタジー小説は多数あれど読んで心地よく世界観に浸れるものは数えるほどしかない。
    守り人シリーズは数少ないそのうちの一つと言える。

    前の巻であ「闇の守り人」は、バルサの物語であるが、今回は大呪術師トロガイと薬草師のタンダの物語と言えるだろう。
    普通の人には見えない異なる世界を見ることができる人々の物語。

    バルサは、奴隷狩人から不思議な歌い手を助ける。
    時を同じくして多くの人々が突然眠り続けたままの状態になる奇妙な事件が発生する。
    タンダは眠り続ける姪のカヤを助ける為、危険を冒し「魂呼ばい」の儀式を行い、彼女の夢の世界に入り込む。

    今回扱われる世界は夢と花である。
    花が絡む幻想的な物語というと中国の幻想譚が思い出されるが、そういった何とも言えない怪しく幻想的な雰囲気が漂う世界が巧みに描写されている。
    古来、夢の世界と言うのはあの世とこの世の境目に位置すると考えられている。
    眠っている間人間の魂は肉体を離れ、この幻想的な世界を旅しその時の経験が夢であると昔の人は信じていた。
    また一方、人は恋い焦がれるものや理想とするものを夢と呼びそれを求める。
    あるものは、その思いが強くなりすぎ、自ら作り出した狂気という夢の世界で生きる。
    今回の話は、そういった事がテーマとなっていたように思われる。

    現在よりはるかに生活が過酷で、選択肢が少なかった時代の人々はどのような思いで生きていったのだろうかと考えさせられた。

    物語で、心地良いが死につながる危険な夢の世界から抜け出すのに必要だったものは、親しい人たちからの愛、そして日常の些細な瞬間の美しさを愛おしむ心であるというのは素晴らしい解答であると思う。

    それと武人であまり自分の感情を口にしないバルサがタンダをどれほど大切に思っているかがわかるお話でもあった。
    ホントこの二人には幸せになっていただきたい。

  • 今回も面白かったです。タンダと、トロガイ師の過去が中心でした。
    優しいタンダ、優しすぎるので困難も受けますが、夢に囚われたチャグムを諭すシーン、良かったです。
    チャグムとシュガの王宮でのやりとりも好きです。チャグム、成長したなぁ…でも、バルサやタンダと暮らしていた頃に戻りたい、と思ってるのが切ないです。
    帝は未だによくわからない存在ですが、チャグムが帝になっても、今の帝とは全然違う存在になるんだろうな。続きも楽しみです。

  • 守り人シリーズ第3巻。人を魅了させる見事な歌を歌う放浪の歌い手ユグノ、眠り続けるタンダの姪である少女と新ヨゴ王国の一の妃、期せずして人鬼化してしまったタンダを救おうとバルサたちは奮闘する。

    1~2作目は王国単位の騒動でしたが、本作は大呪術師トロガイの過去を中心に“人の内面”に焦点を当てた展開となっています。
    現実が辛くて辛くて堪らない時、「いっそ全てが夢ならば」「いっそこのまま夢から覚めなければ良いのに」と強く願う瞬間があるかもしれません。本作ではその先、の恐ろしい世界を少し垣間見せてくれたように思います。夢を願い、夢に自ら入ったつもりが、気付けば夢に取りこまれ手遅れになることも。自力で目覚められる人もいるでしょうが、一人の力ではどうしようもない時もあります。そんな時は――やはり信頼し合える家族や仲間の存在が大きな原動力に。

    夢や「サグ」や「ナユグ」を行き来し少し複雑に感じた場面もありましたが、シンプルに見るとバルサやタンダたちの、血のつながりを越えた先にある強い絆を感じられる1冊でした。

  • 守り人シリーズ三作目。いよいよ乗ってきちゃって休日でもないのに1日で読了。は~楽しい。

    今作は呪術師のタンダとトロガイの物語でした。
    が、まず言いたいのが、バルサとチャグムの再会!
    感極まって泣いてしまったよ。笑
    その前のタンダがチャグムを助ける場面の台詞にもぐっときたし、チャグムの成長も感じられて嬉しかった。

    そして花守りと化してしまったタンダを守ろうとするバルサの姿にも涙。
    タンダを殺すくらいなら自分が死んだほうがいいと思うなんて...改めて二人の絆の強さを感じました。
    タンダも言っていたけど、タンダとバルサとチャグムは血こそ繋がっていないけれど家族なんだなって。たとえ離れていても想い合い、支え合って生きている.....だめだ。また泣けてきちゃう。

    解説に「よいファンタジーには、悪人はいない。良い人の悪い行動があるだけである。」という文章があったように、今回は特に誰のせいでもない、事故のような出来事だったなと。
    とにもかくにもタンダが戻ってこられてほっとしました。

  • 夢から目覚めぬ娘。
    娘の魂を捉えた歌唄い。
    現実に帰りたくない魂を糧に生きる花。

    現実を生き抜くバルサ。

    こころをつよくもつのです。

  • 「行きて帰りし物語」という言葉がある。どこが出典だったかと調べるとトールキンだった。ファンタジーの一つの類型として、異世界へ「行って」そこからちゃんと「帰ってくる」物語というものがある。いつもファンタジーを読む時に、頭のどこかにある言葉の一つだ。異世界へ行ったままではだめなのである。ちゃんと帰ってこなければならない。ちゃんと帰ってこそ、その勇気と功績を称えることもできる。

    『夢の守り人』は、タンダが夢の世界へ行って帰ってくる物語だ。タンダが自分を見失わず、帰ってくる。その姿に胸が躍る。これだけでも十分読み応えがあるが、この夢の世界の意味するところが深い。私たちの人生とか、意識や無意識といったところへ鋭く迫ってくる内容。解釈はおそらく幾通りでもあるが、読んだ人がそれぞれ、自分のことに引き寄せて読むのが一番いいのだろう。

    「花」をめぐる会話や文は、人生の折々で自分の境遇の例えに引けるような強度を持っていると思う。
    「あの中で、「花番」が~と言うところがあるだろう。あれはこういうことなんじゃないのかね」と、仮想の対話を思い浮かべる。

    『闇の守り人』の時にも思ったが、人間の「怒り」が美しく、崇高に表現されている。それはファンタジーという枠組みを使わないと難しいことだ、と改めて思う。

  • こんなはずじゃなかった、という思いに引き込まれてしまった人たちの話。夢を見るのは楽しいけど、それで現実から逃れようとしたり、誰かを陥れようとしたり。バルサとタンダの関係が切ない!

  • タンダ、ひどい目に遭ってるなぁ…まさかのバルサとの戦い。
    でもジンやトロガイ、シュガにチャグムなど、懐かしい人達が勢ぞろいしていて、わくわくする。そういや『闇の守り人』はバルサがカンバルに帰っての話だから、彼らは出てこなかったんだ。
    トロガイの過去にも驚いたけど、『夢』についての話は深い。「夢を見ていた方がいい、戻りたくない」と思うほど現実がつらいことは確かにある。そこに居続ける人と、やっぱり厳しい現実に戻ってくる人との違いって、たぶん本当に些細なものなんだろうな。

  • 守り人シリーズの3作目は 「夢」 です。

    現実に強く願う夢や希望や憧れを、寝てみる夢の中でみたことはないけれど
    そんな夢をもし夢でみてしまったら、きっと覚めたくないと思うでしょう。
    このまま夢の中で生きていけたらどんなにいいかと思うでしょう。
    そのうえその夢から覚めなくてもいいと言われたら
    覚めなくてもいい方を選択してしまいそうです。
    それが現実のなかでは死を意味するなどとは知らないまま....

    よくよく考えるととても恐ろしいです。
    そんな夢をみてしまって引きずり込まれてしまったらどうしよう。

    そんな人の夢を糧とする異界の花の、恐ろしい魔力に囚われてしまった
    姪を救うため、薬草師タンダが立ち向かいます。

    がしかし....タンダ自らも囚われの身となって人鬼と化してしまい
    そこにバルサが一役買って幼馴染を救う戦いに挑む――

    年齢不詳といわれている呪術師・トロガイの過去にも深い関わりがあり
    若かかりし頃のトロガイのことを知ると、守り人シリーズとしての世界感にも
    より深みが増したように感じられました。

    チャグム皇子も登場します。
    たくましく成長していて頼もしい !
    今後の期待も膨らみます♪

  • トロガイにそんな過去があったとはっ!(;゜∀゜)夢って美しく癒されるものだと思っていたけれど、囚われてしまうと恐いな(--;)そんな夢にも惑わされないバルサが少し可哀想な気がした(T-T)タンダは優しいところが良いところだけど、優しすぎるよ‼(>_<)バルサとタンダって恋とか愛じゃなく魂で繋がっているんだな~(*´-`)

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著者プロフィール

上橋 菜穂子(うえはし なほこ)
1962年、東京都生まれの児童文学作家、SF作家。
1992年『月の森に、カミよ眠れ』で日本児童文学者協会新人賞、2000年『闇の守り人』で第40回日本児童文学者協会賞、2003年『神の守人 来訪編、帰還編』で 第52回小学館児童出版文化賞、2004年『狐笛のかなた』で 第42回野間児童文芸賞受賞他、2015年『鹿の王』で第12回本屋大賞など、多数の受賞歴がある。
2014年には「小さなノーベル賞」とも呼ばれる世界的な賞、国際アンデルセン賞作家賞を受賞している。

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