夢の守り人 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 468
  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101302744

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ三作目となる本書。
    国産のファンタジー小説は多数あれど読んで心地よく世界観に浸れるものは数えるほどしかない。
    守り人シリーズは数少ないそのうちの一つと言える。

    前の巻であ「闇の守り人」は、バルサの物語であるが、今回は大呪術師トロガイと薬草師のタンダの物語と言えるだろう。
    普通の人には見えない異なる世界を見ることができる人々の物語。

    バルサは、奴隷狩人から不思議な歌い手を助ける。
    時を同じくして多くの人々が突然眠り続けたままの状態になる奇妙な事件が発生する。
    タンダは眠り続ける姪のカヤを助ける為、危険を冒し「魂呼ばい」の儀式を行い、彼女の夢の世界に入り込む。

    今回扱われる世界は夢と花である。
    花が絡む幻想的な物語というと中国の幻想譚が思い出されるが、そういった何とも言えない怪しく幻想的な雰囲気が漂う世界が巧みに描写されている。
    古来、夢の世界と言うのはあの世とこの世の境目に位置すると考えられている。
    眠っている間人間の魂は肉体を離れ、この幻想的な世界を旅しその時の経験が夢であると昔の人は信じていた。
    また一方、人は恋い焦がれるものや理想とするものを夢と呼びそれを求める。
    あるものは、その思いが強くなりすぎ、自ら作り出した狂気という夢の世界で生きる。
    今回の話は、そういった事がテーマとなっていたように思われる。

    現在よりはるかに生活が過酷で、選択肢が少なかった時代の人々はどのような思いで生きていったのだろうかと考えさせられた。

    物語で、心地良いが死につながる危険な夢の世界から抜け出すのに必要だったものは、親しい人たちからの愛、そして日常の些細な瞬間の美しさを愛おしむ心であるというのは素晴らしい解答であると思う。

    それと武人であまり自分の感情を口にしないバルサがタンダをどれほど大切に思っているかがわかるお話でもあった。
    ホントこの二人には幸せになっていただきたい。

  • 守り人シリーズ第3巻。人を魅了させる見事な歌を歌う放浪の歌い手ユグノ、眠り続けるタンダの姪である少女と新ヨゴ王国の一の妃、期せずして人鬼化してしまったタンダを救おうとバルサたちは奮闘する。

    1~2作目は王国単位の騒動でしたが、本作は大呪術師トロガイの過去を中心に“人の内面”に焦点を当てた展開となっています。
    現実が辛くて辛くて堪らない時、「いっそ全てが夢ならば」「いっそこのまま夢から覚めなければ良いのに」と強く願う瞬間があるかもしれません。本作ではその先、の恐ろしい世界を少し垣間見せてくれたように思います。夢を願い、夢に自ら入ったつもりが、気付けば夢に取りこまれ手遅れになることも。自力で目覚められる人もいるでしょうが、一人の力ではどうしようもない時もあります。そんな時は――やはり信頼し合える家族や仲間の存在が大きな原動力に。

    夢や「サグ」や「ナユグ」を行き来し少し複雑に感じた場面もありましたが、シンプルに見るとバルサやタンダたちの、血のつながりを越えた先にある強い絆を感じられる1冊でした。

  • 守り人シリーズ三作目。いよいよ乗ってきちゃって休日でもないのに1日で読了。は~楽しい。

    今作は呪術師のタンダとトロガイの物語でした。
    が、まず言いたいのが、バルサとチャグムの再会!
    感極まって泣いてしまったよ。笑
    その前のタンダがチャグムを助ける場面の台詞にもぐっときたし、チャグムの成長も感じられて嬉しかった。

    そして花守りと化してしまったタンダを守ろうとするバルサの姿にも涙。
    タンダを殺すくらいなら自分が死んだほうがいいと思うなんて...改めて二人の絆の強さを感じました。
    タンダも言っていたけど、タンダとバルサとチャグムは血こそ繋がっていないけれど家族なんだなって。たとえ離れていても想い合い、支え合って生きている.....だめだ。また泣けてきちゃう。

    解説に「よいファンタジーには、悪人はいない。良い人の悪い行動があるだけである。」という文章があったように、今回は特に誰のせいでもない、事故のような出来事だったなと。
    とにもかくにもタンダが戻ってこられてほっとしました。

  • 自分が選ぶことのできなかった幸せをどうしても夢見てしまうのが人間の性である。でも現実に自分が選びとった人生の中で、小さな幸せに気付けるかどうかがすごく大切だと思った。

  • こんなはずじゃなかった、という思いに引き込まれてしまった人たちの話。夢を見るのは楽しいけど、それで現実から逃れようとしたり、誰かを陥れようとしたり。バルサとタンダの関係が切ない!

  • タンダ、ひどい目に遭ってるなぁ…まさかのバルサとの戦い。
    でもジンやトロガイ、シュガにチャグムなど、懐かしい人達が勢ぞろいしていて、わくわくする。そういや『闇の守り人』はバルサがカンバルに帰っての話だから、彼らは出てこなかったんだ。
    トロガイの過去にも驚いたけど、『夢』についての話は深い。「夢を見ていた方がいい、戻りたくない」と思うほど現実がつらいことは確かにある。そこに居続ける人と、やっぱり厳しい現実に戻ってくる人との違いって、たぶん本当に些細なものなんだろうな。

  • トロガイにそんな過去があったとはっ!(;゜∀゜)夢って美しく癒されるものだと思っていたけれど、囚われてしまうと恐いな(--;)そんな夢にも惑わされないバルサが少し可哀想な気がした(T-T)タンダは優しいところが良いところだけど、優しすぎるよ‼(>_<)バルサとタンダって恋とか愛じゃなく魂で繋がっているんだな~(*´-`)

  • 守り人シリーズ。花に魂を奪われたタンダを救うため力を尽くすバルサたち。自然とイメージされる風景がとても幻想的。少し成長したチャグムが登場し、バルサたちと再会できたのも良かった。

  • 守り人シリーズ第三弾!
    花とか夢とかの理屈がよくわからなかったが、やはり物語に惹きこまれて一気に読ませる力はスゴイ!

    現実を逃れて夢の中で生きていけたらと思うこともないではないな。

    バルサがだんだん過去から解放されていく。
    タンダとバルサの関係っていいな。
    女バルサの方が強くて、男のタンダの方が癒し役ってのがいいな。

  • 人の夢を糧とする異界の''花''に囚われ、人鬼と化したタンダ。女用心棒バルサは幼馴染を救うため、命を賭ける。
    心の絆は''花''の魔力に打ち克てるのか?
    開花の時を迎えた''花''は、その力を増していく。不思議な歌で人の心をとろけさせる放浪の歌い手ユグノの正体は?
    そして、今明かされる大呪術師トロガイの秘められた過去とは?

    <守り人・旅人シリーズ>第三弾です。

    この本の世界に溶け込むのに少しだけ抵抗があったのは、自分の思いと重なる部分が多かったからかもしれません。
    現実から逃げて心地よい夢の世界にずっといたい。
    そう思うことは多々あります。
    思う人がいるからこそ、人の夢を糧とする異界の''花''に囚われるのでしょうね。
    タンダが頼りなく見えても、いざというときに発揮する力の偉大さを改めて痛感させられました。自分のためでなく、大切な人のために自分が出来ることをやる。
    なかなか出来ることではありません。

    後半のバルサの言葉が身に沁みました。
    「あれほどの思いをかけてくれたことを、わたしは、信じられぬほどの幸せと思って生きるべきだったんだ。・・・・・好きな者を守って生きることには、喜びもあるんだから。あんな人生だったけれど、ジグロにも、そんな喜びがあったと思いたい。チャグムを守っていたとき、わたしは幸せだった。他人のチャグムのために、死ぬかもしれない危険な戦いをしたけど、それでも・・・・・幸せだったんだよ」

    私は自分の今までの人生で、「もし、こうじゃなかったら・・・・。」と思うことは多々ありますが、それに対してもバルサが明確に答えを示してくれた気がします。
    「もしっていうのは、苦しくなったときにみる夢だよ。目ざめてみれば、もとの自分がいるだけさ。――夢を逃げ道に出来るような人生をわたしは送ってこなかった。」


    読後、かなり感情移入している自分に気づきました。
    どれだけ自分が、自分を甘やかし続けてきたことも・・・・・

著者プロフィール

上橋 菜穂子(うえはし なほこ)
1962年、東京都生まれの児童文学作家、SF作家。
1992年『月の森に、カミよ眠れ』で日本児童文学者協会新人賞、2000年『闇の守り人』で第40回日本児童文学者協会賞、2003年『神の守人 来訪編、帰還編』で 第52回小学館児童出版文化賞、2004年『狐笛のかなた』で 第42回野間児童文芸賞受賞他、2015年『鹿の王』で第12回本屋大賞など、多数の受賞歴がある。
2014年には「小さなノーベル賞」とも呼ばれる世界的な賞、国際アンデルセン賞作家賞を受賞している。

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