夢の守り人 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 4992
レビュー : 468
  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101302744

感想・レビュー・書評

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  • もし自分に諦めきれない夢があって、それは現実の世界ではかなえられないけれど、ある世界ではそれが叶っているなら、私は現実の世界に戻ってくることができるのかな?
    派手なアクションは控えめだけれど、前2作と違い、美しく切ないものがあります。雰囲気も少し異なるけれど、引き込まれる世界観はそのままです。
    タンダの師・トルガイにも若い頃があり(当然だけど)、道を誤ったりすることもあったのだとなんとなくほっとしてみたり。チャグムの再登場が嬉しかったり。
    人間の一生は短く、夢より現実のほうが辛辣ではるけれど、現実のほうが愛しく美しく大切であると感じました。心の奥に響くように語られる物語です。

  • 読まないで手元に置いたままだったのがものすごくもったいなく思う。
    もう一度読みたいですね・・・!!

  • かっこいい無敵の女用心棒バルサが活躍するこのシリーズは、彼女の活躍の爽快感、痛快感と共に、彼女自身が、自分の在り様・・生き方に疑問を持ち、少なからず苦悩しているところが、なかなかに奥深くて、ジャンル的には児童書なのですが、大人が読んでも十分満足できるファンタジーです。

    今回は、呪術師という、普通の暮らしからはみだしてしまった師弟が人生について考える。そんな話。

    今いる場所は、自分のいるべき場所ではないかもしれない。どうしても拭えない居心地の悪さ。多分、大人になる手前の頃に、何となく人生の先行きが見えてしまい、誰もが一度は突き当たるそんな思い。トロガイ師とタンダは、その居心地の悪さを敏感に感じ、普通の村人の生活を捨てて呪術師になった。

    でも、一見、自由に見えるその生活は、誰にも守ってもらうことの出来ないアウトローの生活であり、社会の枠組みから外れて、「自由」を手に入れるということは、「孤独」と隣り合わせなのだということ。それによって失うものは、決して少なくないのだという現実。「自分で生き方を選ぶ」とは、どういう事なのか。その辺がちゃんと書かれていて、少年少女には、興味深い内容なのではないかと思います。

    今回タイトルになっている「夢の守り人」とは誰の事なのか?という事に気づいた時、闇に飲み込まれそうになるバルサの心を守っているのは、間違いなくタンダなのだと・・それがタンダの愛の形なのだと気づかされて、ちょっとほんわかした、いい気分になりました。

    「精霊の守り人」では、威勢のいいバルサ姐さんに、いつも置いてきぼりな感じのタンダでしたが、本作では、二人の心はちゃんと繋がっていて、お互いかけがえのない存在で、支え合って生きている・・という事が本当に良く分かります。結婚という枠にハマっていなくても、もう二人は夫婦同然なのですよね。社会の枠から外れて生きる彼らには、そんな枠など、すでに気に止めることではないのかも知れません。

    手の届く所に、自分の心の拠り所となる人がいる。それだけで、彼らはしあわせなのですから。。

  • 守り人シリーズ3作目。
    チャグムとバルサそれぞれの運命が交錯、つかの間の再会を果たすのが泣かせます。
    バルサは奴隷商人に追われていた青年を助けます。
    若く見える彼じつは妖精に魅入られた歌人でした。
    一方、村ではタンダの姪カヤが眠ったまま目を覚まさず、魂が抜けている様子。
    タンダは師トロガヤに相談しますが…トロガヤには思いがけない過去が。
    皇太子として宮廷に暮らすチャグムは、皇帝になりたいと思わず沈んだ気分でいる。
    宮廷では一の妃が眠りから目を覚まさないという事態が…
    カヤを助けようと魂を呼ぼうとしたタンダは、花守りに取り込まれてしまいます。
    力を合わせて事態を解決しようと動くのが心地よく、夢見て眠る世界も存在感有り、さすがです。

  • 「精霊の-」「闇の-」と、前の2作が活劇系のストーリーテリングだったので、「バルサはこれからどこへ行くの?」と思っていたところの第3作。こうきますか!

    前作2作の活劇のイメージが強かったせいか、最初の歌い手のエピソードの展開を飲み込むのに少し時間がかかりました。ですが、そこからの展開は「人の心」「人の思い」の問題に入り込み、哀しくも美しい世界が広がります。

    バルサはこの話ではどちらかというと脇役に回り(「精霊の」メンバーも要所要所で登場しますが、こちらもそんな感じ)、呪術師トロガイと弟子のタンダが前面に出てきます(アニメ版のタンダはあまりに男前で、驚きながらも見るのが楽しみ♪)。今まで出てきた別世界「ナユグ」とは別のある世界を抱えることになったこの2人(正確にはもう1人いる)の過去と、あるきっかけで暴走しはじめたその世界のかかわりが、それはそれは美しく甘やかなタッチで、時にはやりきれない思いで語られます。

    この愁いを帯びた美しさはどこかで…と自分の読書体験を探ってみたところ、おそらく、菊地秀行さんの「吸血鬼ハンターD」シリーズの「薔薇姫」「昏き夜想曲」の世界に似ているような気がします。人間に圧倒的な敵意を持っているわけではないけれども、人間の奥にある弱さを取り込んで、美しい花や歌で別の世界に引きずり込んでいく存在。それに、日常の世界から外れた人々のありようを素晴らしくうまく描いている点が共通するようにも思います。

    シリーズものを読んでいると、3作目くらいで中だるみする作品が結構あって「もういいや…」と思ってしまうのですが、この巻は「そういうロマンチックテイストな持っていきかたがあったとは!」とすっかり上橋マジックにやられてしまったのでこの☆の数とします。

  • トロガイ師の悲しい過去と呪術師を志したきっかけ。52年を経て、再び向かい合う心の重みと決意の強さ、ああ、かっこいい。現状を打破したい思い、でも自分ではどうにもことを動かせない実情、足掻きもがく苦悩と先に見える不安、現実逃避したい気持ちの訴えがすごい。夢に溺れるという表現もあるけれど、まさにそれ。夢を見ることで自分を支えたり、力を生み出したりすることができる。でも、ただひたすら夢を見ることは何も生まない。大切なのは、現状を正面から見つめ把握すること、夢を見てもすがらないこと、かな?
    .
    「なにをしてるんだい、へぼ弟子!」
    トロガイ師と弟子のタンダの関係性と、トロガイの肝の座り具合がこの一言に表れていて一番好き。

  • タンダとチャグムの再会。バルサとチャグムの再会。どちらも涙。ずっと一緒にいられたらいいのに。

  • 誰にでも夢でもいいから戻りたい過去があるし、夢見たい未来がある。
    花を咲かせるために夢を見せる。その夢に入っていってしまった人々。夢はいい夢もわるい夢もみせる。でも心地良い夢は覚めたくない。
    私はあまり夢見がいいほうではないし、悪い夢は起きた後でも覚えてるし、良い夢はどんな夢だったかあまり覚えていない。でも心地良い夢だったってことだけ覚えている。それくらいでちょうどいいのかもしれない。

    3作目ではタンダがメインかな。
    皇太子になったチャグムがバルサやタンダと共にした生活を懐かしみ、夢に囚われる。けれど、チャグムはちゃんと戻ってきた。元々強い子なのか、あの日々があるからこそさらに強くなったのか。帝に対してのあの堂々たる演技。チャグムが見違えるほど成長したのが感じ取れた。

    2019/01/02

  • 以前、図書館で借りて読み始めて、あまりにも待ち人が多いため、落ち着いてから読もうと後回しにしていた。
    今、とある理由から、何故生きなければならないのか、何故死んではいけないのか?ということを考えている今(私が死にたいわけではないし、周りに死にそうな人がいるわけでもない。念のため)ハッとさせられる言葉がたくさんあった。
    子どもから大人まで読んで楽しめる本であるが、いろんな世代で何度も読みたい本であると思う。

  • トロガイ師の過去が語られる章。タンダの家族構成やトロガイ師との出会いも明かされる。
    人の心のよりどころ(夢)に引き込まれるという物語は、自分だったらどんな夢に囚われるだろうか?囚われなったバルサとの違いは何か?
    途中、読み進めるのを止めて想像してみた。

    シリーズの順番では、「闇の守り人」と「虚空の旅人」の間がこの本のようだ。先に「虚空の旅人」を読んでしまったので、登場人物が前後してしまった。

著者プロフィール

上橋 菜穂子(うえはし なほこ)
1962年、東京都生まれの児童文学作家、SF作家。
1992年『月の森に、カミよ眠れ』で日本児童文学者協会新人賞、2000年『闇の守り人』で第40回日本児童文学者協会賞、2003年『神の守人 来訪編、帰還編』で 第52回小学館児童出版文化賞、2004年『狐笛のかなた』で 第42回野間児童文芸賞受賞他、2015年『鹿の王』で第12回本屋大賞など、多数の受賞歴がある。
2014年には「小さなノーベル賞」とも呼ばれる世界的な賞、国際アンデルセン賞作家賞を受賞している。

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