虚空の旅人 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.20
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本棚登録 : 4423
レビュー : 445
  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101302751

感想・レビュー・書評

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  • 守り人シリーズのスピンオフ的物語。
    守り人シリーズ第一弾で女用心棒バルサが助けたあの新ヨゴ皇国のチャグム皇太子が主人公の物語。

    チャグムが立派な青年に成長してて感動する。
    チャグムに仕える星読博士のシュガがチャグムを思う気持ちにも心を熱くするし、最後のチャグムの言葉に涙するシュガと一緒になって涙してしまった。

  • シリーズ4作目。今回はチャグムとシュガの物語。いつものメンバーの出番が無いのは寂しいものの、代わりにイキイキとした魅力ある登場人物がたくさん出てきます。海に囲まれた南方のサンガル王国の王家のセレモニーに父王の名代として出席するため、はるばる海を旅してきたチャグムとシュガ。サンガルという国は、王こそ男系ですが、各島の長(島守り)の妻として、為政者として徹底的に教育された王家の血筋を引く女性を嫁がせるのが仕来たり。島守がちょっとでも欲を出して隣国に便宜を図ったり謀略に手を貸したりしている疑いがあると、女性たちの情報網と権限によって島守の地位を追われ、罰せられてしまう、という、とても興味深い設定になっています。もともと小規模のグループが身を守るためにゆるやかな連携を図っているうちに王国になっていった、というサンガルの成り立ち、他の国との位置関係、国に属さない海の民(新ヨゴ皇国でいうところのヤク―の存在に近い)の存在も面白い。そういうこまごまとしてち密な設定が、説明調になり過ぎずに楽しみながらさらさらスルスルと理解できるようになっているのが、本当にすごいです。ナユグとサグが揺らいで境目が曖昧になり、そこにつかまってしまった小さな子にまつわる言い伝えを中心に、サンガル王家の兄弟姉妹の性格や資質の違い、将来統治者となる者としてのチャグムの葛藤、それを見守るシュガの決意、などなど、読みどころが満載でした。海の民の娘、スリナァがとても良い子で、ずっと応援しながら読んでいました。とても面白かったです。

  • 20111027
    1日

  • もう文庫でも出ているんですね!
    チャグムの視点で、サンガル王国での王位継承の式典とタルシュ帝国に操られた反乱の顛末。
    皇太子としては無謀だが心優しい少年チャグムの活躍。

  • 守り人シリーズ第4巻。新ヨゴ王国の皇子チャグムはシュガとともに、隣国サンガル王国の新王戴冠の儀式へ帝の名代として出席する。
    海の王国サンガル――血の気の多い男たちと国政を担う冷静沈着な女たち、漂海民、海底の民に魂を呼ばれた<ナユーグ・ライタの目>を持つ少女、そして背後に渦巻く陰謀……海を舞台に、各々の思惑と陰謀が交錯する。

    過去の厳しく辛い経験を経て、心身共に一回りも二回りも大きくなったチャグム。皇太子という立場に閉塞感を抱えつつも、他国との外交を堂々と卒なく対処していきます。広く物事を捉える冷静さを持ちながら、自身の信念にそぐわない事態には例え他者の問題であってもまるで自分のことのように全力で立ち向かう。シリーズの主要人物であるバルサ、タンダ、トロガイが揃って登場しない稀有な本作ですが、チャグムの言動の陰にいつも彼らの姿を浮かべることが出来ます。
    チャグムと、彼の善き理解者であるシュガの二人の関係に度々ぐっとくるものがあります。

    広く渦巻く陰謀という名の伏線を、終盤一気に回収する様はお見事。清々しいラストでした。

  • 守り人シリーズ第四巻です。
    精霊の守り人とされてしまったチャグムの大冒険から3年。
    14歳になった彼は皇太子という重圧の中、立派に成長していました。
    子供らしさが抜け、頭の良さと同時に冷静さを、ただし冷酷ではなく人間味あふれる情熱を内に秘めている様に、いい子に育ったなあ~としみじみ感動してしまいました。
    と同時に、星読博士のシュガの成長も目覚ましいものがあり、二人の心の交流にも胸が熱くなりました。
    本来新ヨゴ国では、こういうタイプの御付きの人はいないし、こういう付き合い方もしないはずですからね。
    彼らが国の頂点に立った時の世界に期待をせずにはいられません。。

    と、本作はこれまでの過去3作品と比べて最高に面白かったのですが、その理由は他にも。。

    今回舞台となったサンガル王国が魅力的です!!著者の上橋さんの筆力には脱帽~
    とにかく眩しくて!色彩鮮やかな王国の美しさが目に浮かび、それだけで華やかな気持ちになって心が浮き立つのです。
    豊かな国は(陰謀がひしめいていたのに)それだけで気分が高揚しちゃうものなんですねえ。。
    今までの舞台はそれと比べると暗くって。カンバル王国とか岩とか洞窟だらけなんだもん。住みたくない(笑)

    それからもう一つ。
    政治色が強くなってきて、私好みのストーリーに突入してきた感じのところも気に入りました。
    それぞれの王が、自分の正義を貫きながら周りの国々と折り合いをつけながらどう守っていくのか、ん?それとも攻めるのか、次巻以降も楽しみです♪

  • 感動する場面は、さしてなかったように感じますが、チャグムの言動に涙を流さずにはいられませんでした。チャグムのエピソードひとつひとつに、バルサの影が見える。命をかけて守り、生きる知恵を与えた皇子が、芽吹いて葉を広げる。バルサに出会わなければ……言ってしまえば、皇帝に命を狙われなければ、この物語はなかったのでしょうね。
    チャグムの成長が、今後も楽しみです。

  • 新ヨゴ皇国皇太子チャグムの成長に感動する。

    『精霊の守り人』であれほど幼かったチャグムが、皇太子としての勤めを行い、その中でも、自分に正直に生きる様。
    シュガに対してチャグムが告げる、
    「なにか陰謀に気づいたとき、わたしを守るためにその真相を隠すようなことは決してせぬと約束してくれ。・・・陰謀の存在を知りながら、だれかを見殺しにするようなことを、決して、わたしにさせるな」
    物語のシュガと同様に、わたしもチャグムのこの言葉に射抜かれた。

    この物語では、バルサやタンダ、トロガイ師は名前でしか登場しない。でも、その意思を受け継いでいる、チャグムやシュガが微笑ましい。
    この物語で更に、チャグムとシュガの絆が深まったことを感じた。

    面白かった。続編が待ち遠しい。

  • すごく良かった!あとがきでも作者が書いてますが、「守り人シリーズ」の流れを変える一冊です。

    複数の人物の話が別々に描かれ、それがクライマックスに向けて合流していく展開が、とても良かったです。国と国とが駆け引きをするような政治的な話も随所に現れ、物語の世界に広がりと奥行きも出てきました。結末の部分も、登場人物たちの思惑が絡み合い、とてもスリリングです。

    「他音声の物語」(社会的立場も文化的背景も異なる多くの存在がひしめく世界)を書きたいという上橋さん。複雑な世界を描き出し、そこにドラマを生んでいく作者の力量に感服です。

  • 「守り人」シリーズ4巻目。
    今作は、明らかに今までの物語とは違い、国と国との陰謀、駆け引き、この世界で今後起こるであろう大過の予兆が描かれている。いわばシリーズ中でも大変大きな意味を持った物語だ。
    恐らく、ここまでシリーズを読み進めてきた読者にとっては、今後の展開がどうなってしまうのか、もはや後戻り出来ないところに足を踏み入れてしまった、そんな感覚を覚えるのではないか。
    シリーズ中で重要な位置付けであることはもちろんだが、一つの物語としての完成度は非常に高い。

著者プロフィール

上橋 菜穂子(うえはし なほこ)
1962年、東京都生まれの児童文学作家、SF作家。
1992年『月の森に、カミよ眠れ』で日本児童文学者協会新人賞、2000年『闇の守り人』で第40回日本児童文学者協会賞、2003年『神の守人 来訪編、帰還編』で 第52回小学館児童出版文化賞、2004年『狐笛のかなた』で 第42回野間児童文芸賞受賞他、2015年『鹿の王』で第12回本屋大賞など、多数の受賞歴がある。
2014年には「小さなノーベル賞」とも呼ばれる世界的な賞、国際アンデルセン賞作家賞を受賞している。

上橋菜穂子の作品

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