炎路を行く者: 守り人作品集 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1059
レビュー : 113
  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101302843

作品紹介・あらすじ

『蒼路の旅人』、『天と地の守り人』で暗躍したタルシュ帝国の密偵ヒュウゴ。彼は何故、祖国を滅ぼし家族を奪った王子に仕えることになったのか。謎多きヒュウゴの少年時代を描いた「炎路の旅人」。そして、女用心棒バルサが養父ジグロと過酷な旅を続けながら成長していく少女時代を描いた「十五の我には」。──やがて、チャグム皇子と出会う二人の十代の物語2編を収録した、シリーズ最新刊。

感想・レビュー・書評

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  • まさかの未読と言うことが判明して慌てて読む。
    本編で出てくる底の知れないけど、でも憎めずむしろ好感を抱くヒューゴの過去。
    きっと国のため人を殺める事も致し方ないと割り切れる強さは武人の家の出だからあるのだろうけど、心の奥ではある意味チャグムと凄く似た性格なんだと思った。
    あと、もう一遍入っていた15の夜にはもう本当に心に沁み入った。大人になったらからそうそう。と、頷けるこの話ももっと若い学生の時に読んだらどんな思いになったか…絶対にもう分からないけど体感してみたかった。

  • ここのところ現実的な物事についての本ばかり読んでいたからか、ふと物語が読みたくなり、上橋菜穂子さんの守り人シリーズから、未読の本を。
    上橋さんの本、あまりに面白くて大好きなので、一気によんでしまうのがもったいなく、物語欲が高まったときに、少しずつおろしている。

    本書はシリーズの番外編のような位置づけの一冊。
    シリーズ本編から時を20年ほど遡り、主要な登場人物であるバルサとヒュウゴ、それぞれの10代半ばごろの日々を描いた小編が2つ収められている。
    小編とはいえ、激しい戦乱と複雑な謀略、その中で必死に生きる人びとの細やかな感情の揺れ、豊かな生活風俗、ナユグと呼ばれる異世界の幻想的な精霊たちを、自在に描写するスケール感は本編と何ら変わらない。

    特に好きなのは、バルサの少女時代を描いた「十五の我には」。
    本編では圧倒的な強さをもつ短槍使いの用心棒として描かれる彼女が、若さゆえ、戦いを読み誤り、その失敗を取り返そうとしてさらに厳しい状況を招き、それでも自分を受け入れられずに強がって涙している姿に意表をつかれ、一方でそうした過程を積み重ねが今の彼女をつくったのだと、深く納得する。
    養父であるジグロの言葉の少ない優しさも沁みた。
    どの大人にも子供だった時代があって、また、大人と言えど決して成熟しているわけではない。
    当たり前のことだけれど、この二つの作品はそれを思い出させてくれた。

    頭の中まで物語の世界につかって心を添わせるのは、本当に楽しい。
    電車に揺られる細切れの時間を、幸せなひとときに変えてくれる一冊でした。

  • 「守り人シリーズ」大好き
    ヒョウゴ、あれっ!
    ぼんやりしている
    これを読むと大好きになったんだけど
    バルサの印象が強すぎてるのかな
    またドラマが始まる
    最近 NHK 頑張ってるような
    綾瀬はるかさんすてきだもんね
    見なくっちゃ
    監督の解説もよかったね
     
    ≪ 堕ちてなお 心の誠 尽き果てず ≫

  • 守り人シリーズのスピンオフ。
    ヒュウゴとバルサの青年期の話です。

    実は、本編に登場するヒュウゴはあんまり好きではありませんでした。
    信念がどんなものか見えず、掴みどころがなくて、ヒュウゴの思惑に踊っている部分もあったように見えたからです。
    しかも、どうしてそのポジションにいるの、もっと力があるならもっと上に…とか色々見えないからこそ思うことが沢山ありました。

    ですが!!

    この守り人シリーズを読んでいて、初めて泣きました。苦笑

    ヒュウゴも絶望の深淵を覗いていたんですね。
    バルサ、チャグムと同じように、それぞれにとても暗く苦しく自分の力ではどうにもできない大きな渦の中で戦っていたんですね。

    そしてヒュウゴの経験は、私が想像していたものよりもはるかに過酷でした。

    読んでいて、何度も泣きそうになって、そして泣いちゃいました。苦笑

    本編のヒュウゴがとてもくっきりとして、輪郭ができたような感じです。
    もっと注目して読んでおけばよかった。読み返します。

    大半はヒュウゴの話ですが、二作目はバルサが15歳のときの話です。
    前作から、さらにバルサは研ぎ澄まされていっていますが、バルサの人の心というか、気持ちが痛いほど伝わってくるし、ジグロの存在の大きさをとにかく感じます。
    どこへ向かっても、茨と崖しかないような道を進んでいくバルサ。とにかくギリギリの生活です。
    バルサもジグロもお互いを思っているからこそ、というのが見えて心が痛かったです。

    スピンオフの二作を読んで、バルサとヒュウゴが立体的になって、物語に厚みが増したように思います。

    願わくば、またどこかで再会したいです。

  • 時間をかけて読んできたシリーズもついにここまで来たか。読みきった達成感が大きい。
    中編と短編の2編で、シリーズのファンに響く話だった。今回はヒュウゴの過去をじっくり読むことができたけど、「守り人」シリーズに出てくる他のキャラクター達にも、本編では描かれていないドラマがあるんだろうな、読んでみたいな、と思った。様々な思惑が絡み合って複雑に見える歴史も、紐解いていくと、一人一人の人生になる。
    何年か経ったらまた改めて最初から読み返したい。

  • 大好きなヒュウゴとバルサの、つらい過去の暮らし…
    それでも乗り越えて、強くなった二人が素晴らしいと思う。
    ますますヒュウゴ、好きになっちゃったなー!!

  • 安定の!
    同じ地球のというわけですらない世界観を、文章だけで思い描けるって本当にすごい。
    ちょっと時間が経ったので、完全にどの地点なのかわからなくなったけど 笑

  • 最後の外伝である。もうこれで終わりなのだろうか、と少し淋しくなった。ヒョウゴの青年期を描いた「炎路の旅人」は、その序章と終章で「天と地の守り人」の第二部最終盤の状況を見せ、15歳のバルサを描いた「十五の我には」では、「天と地の守り人」第三部の序盤の一シーンをも見せた。本篇は、これにより膨らみはしたが、未来は見せていない。未来を見通す眼を見せてくれたのかもしれない。

    いまは亡きヨゴ国武人階級「帝の盾」の息子だったヒョウゴは、九死に一生を得て市中で暮らしている間も、自分の居場所がわからない。命を助けてもらった女性に商売人になったら?といわれて反発する。

    「タルシュの枝国になっちまったこの国で、そんなふうに根を下ろすってことは、タルシュに征服されたことを納得したってことじゃねぇか!土足で踏み込んできた強盗に、のうのうと自分の家に居座られて、そいつらを食わせるために身を粉にして働くなんて冗談じゃねぇと、なんでだれも思わないんだ?なんで、そんなに簡単に納得しちまうんだ?」

    守り人シリーズ通して現れる「異界」、それを見ることの出来る女性は、しかし病気の父親を抱えた貧しい市井の人だった。

    ー降っても照っても‥‥
    かすかな苦いものをふくんだ、しずかな思いが伝わってきた。
    ーわたしらは、ここで生きてきたし、ここで生きていくんだもの。(215p)

    枠の中にいる限り、枠の世界は見えてこない。飛び出さねばならない。しかし、それは枠の外のタルシュ帝国に入ることを意味するだろう。それが出来る人間と出来ない人間がいる。ヒョウゴは意を決してタルシュの武人になる道を選ぶ。それは確かに炎路を行くことになるだろう。むつかしい道だったと思うし、具体的にどんな困難があったのかは、本篇で少しは描かれているが、全体像はわからないし、本篇以降のことは更にわからない。ただ、「異界」を見ることの出来る女性のことがずっとヒョウゴの中にある限り、私たちは安心して彼のことを見ていられる。

    ナユグといい、ノユークといい、バルサの世界の「異界」について、上橋菜穂子さんは「別の生態系を持った、人や神の意思とは全く関係のない世界です」とテレビシリーズの演出家に語ったらしい。バルサの世界も、我々地球上の現代風に科学が発達すれば、そろそろ「異界」を本格的に解明しているのかもしれないが、中世のこの頃では、むしろ「異界」とは、我々のいう「運命」と云われるものだったのかもしれない、とふと感想を持った。もしそうならば、21世紀になっても未だ我々に目に見えない「運命」は、微かに見える彼らを手本にして、乗り越えていくべきモノなのかもしれない。

    2017年2月読了

  • 2017.2.17読了。本当に上橋さんの作品は読んでいる最中でさえ色々と考えさせられる。毎回どこかしらでハッとさせられる言葉がある。本編では油断ならない一癖も二癖もある人物だなと思ってたがメインの輩の話を追うのでいっぱいいっぱいであまり気に留めてなかった。今回まあ予想はしてたがやっぱりヒュウゴ大好きになった。安っぽい言い方になってしまうが上橋さんは運命に翻弄される魅力的な人物書くの本当に上手い。それに上流武人から望まずして平民になった者、平民から望まずして上流武人になった者(獣の奏者のイアル)、両方書けるって凄いなぁ。ヒュウゴがオウルから食事代を受け取って(なんとまあ、肝がすわった人だぜ)ってところで「お前もだよっ!」って心の中で思わず突っ込んでしまった。拷問を受けても上手な嘘のつき方をしているし、くすぶってても頭の切れも、度胸も人並みはずれて持ってるし。こういうの宝の持ち腐れって言うんだろな。そして新知識ゲット!殴る蹴るで人は吐血には至らないとは知ってたけど腎臓は打撲でも傷ついて血尿が出るとは知らなかった!今度から殴る蹴るの暴行にあった輩はトイレで血が出てると思おう!そして感覚や匂いの描写がやっぱり凄い。ヒュウゴがリュアンの手当を受けてる時のくすぐったいような感じとかなんていうの生々しい?リアル?自分に語彙力がなくて上手く当てはまる言葉が思いつかないけど凄い。思うんだけど幸福な記憶って本当に宝物で自分の芯を築くものだと思う。オウルが言ってた自分への忠誠はそれに繋がるものがあると思う。それがあると踏み止まったり立ち上がったりできるんだと私は思う。読む前は炎路って題だからごうごうと目まぐるしい激動の中を進んで行くような話かと思っていたが、実際は業火で一気に燃え上がり辺りが真っ黒な焼跡になってその熱のこもった陽炎の中を出口もなくさまよい歩いているような話だなと思った。ジグロは武術以外でも働き方で信頼を得たとあったけど武人としての日頃の心構えみたいのがあるんだろうな。でもバルサと旅をしていくうちになったのであってもとから「一流の用心棒」ではなかったんだよな。「王の槍」だったんだよな。バルサが見上げた星空の美しさとバルサが感じたくだらなさが胸に沁みる。あとがき見るとドラマ化の前に『十五の我には』は読みたかったかもなぁ。でも何はともあれ念願の文庫化を感謝したい。やっとだよ〜。展覧会も行ったしメッセージに「『炎路を行く者』の文庫化まだですか⁈」って書いたかいあったのかなあ⁈ああーでもこれで長かった守り人シリーズの旅が完結してしまう。本当に素晴らしい時間を過ごせたなぁ。『鹿の王』文庫化してからって思ってたけど読もうかな…

  • シリーズ後半に出て来たヒュウゴの少年時代を描いた中編と、シリーズ主人公のバルサの少女時代を描いた短編。どちらも本人による回想という形で物語に誘われます。
    ヒュウゴは確かに印象深い人物ではありましたが、外伝で主人公になるほどの役回りだっただろうかといぶかしくも思いましたが、読んでみるとなるほど彼を描くことで守り人シリーズの核となるものが浮き彫りになるのだと気付きました。
    何を信じて何のために生きるのか。それは自らが信じていたもの生きる目的としていたものを奪われ無くしたからこそわかるものでもあったのでしょう。目の前のことでいっぱいになった時に、自分を高見に放り投げてくれる人の言葉。それにより視野が広がること。果たして成長した自分は誰かを高見へと導くことができるのだろうかという想い。それは2編ともに通じるものとして書かれていました。そしてそれが守り人シリーズが書いてきたものだと思うのです。シリーズ本編が完結した今だからこそ、より一層ヒュウゴのバルサの若き日の荒々しい猛りがシリーズの核を見せてくれます。

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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