- Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101304816
感想・レビュー・書評
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禅僧が書いた小説
老師と少年の対話で、仏教的な考えが小説として提示される。
余韻のある、簡単な答えじゃないフレーズがたくさん
「『本当の何か』は、見つかったとたんに『嘘』になる」
「友よ。君は賢い。昔の私よりはるかに賢い。何かが正しく、何かが間違っていると考え、正しいことを知ろうとする。だから、見えない。わからない。君が知った『正しいこと』が、全てを隠す」
「理解できないことが許せないとき、人は信じる。信じていることを忘れたとき、人は理解する」
「大切なのは答えではなく、答えがわからなくてもやっていけることだ」
「生きる意味より死なない工夫だ」
「その笑いの苦さの分だけ、君は私を知ったことになる」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
約1年前、恐山に行きたくなって「恐山―死者のいる場所―」を読みました。
大きな感銘を受けて、読後すぐにこの「老師と少年」を入手したのですが、また、恐山に参詣する前に読もう、と積んでおきました。
そろそろかな、と思って、読み終えたところです。
文字数は少ない、少ないのだけれど意味するところは多い。深さと文字数は比例しないのですね。般若心経しかりです。
小説として読むと、本編のラストシーンで思い浮かんだのは芥川龍之介「羅生門」のラストシーンでした。下人が走り去った黒とうとうたる闇の世界、しかし、そこに生のエネルギーを宿した下人が駆け込んでいく。少年もまた、新しい世界で確かに生きていくのだと感じました。そして「後夜」での少女の語り口は「藪の中」を思わせます。しかし、少女が語るところは「藪の中」ではない。そこには死なないことの意味がはっきりと語られているように思います。
大好きな芥川龍之介に引き寄せすぎているとは思います。
なんとなく雰囲気は「闇中問答」に似ているかな。飽くまでも雰囲気だけです。
「恐山とは容れ物である」というようなことが「恐山」中に書かれています。
本作においても「容れ物」感が重要ではないかと読みました。
容れ物をどう作るか、中に何を入れるのか。
できることなら、恐山の宿坊で読み直したいと思います。 -
生きるとは。
わたしも悩んだ一人だからこそ
そして悩み抜いて
自分の中で解決しているからこそ
理解のできる1冊。
子供ができて、悩む側の子だったとしたら
いつか出会わせたい本。
最後の1文。
生きる意味より死なない工夫だ。
に笑った苦さの分だけ、
君は私を知ったことになる
の言葉が刺さった。 -
友人に薦められた本。
これは、星が5つでは足りない。
挟まれた付箋紙の数がそれを物語っている。
以下、ネタバレ
「選べるからなのだ。選べるから、死ではなく、生を選ぶ。理由のないこの決断が、すべての善きことをこの世に作るのだ…そうだ、理由もなく生を選ぶ。それだけがこの世の善を生み、善を支える。」
「生きていくことの苦しさと、生きていることの苦しみは違うのだ」
「信じる」ということは、隠すことに過ぎない。<神>は永遠の夜なのだ。
「理解できないことが許せないとき、人は信じる。信じていることを忘れたとき、人は理解する」
「自分が自分であること、自分がいまここに生きていること、それを
受け容れたい。ただそれだけの欲望が答えを求めるのだ。
そしてこの欲望だけが、生きていることの苦しみなのだ」
「他人に欲望されることで、自分を支え、生きていることを受け容れる」
「この世にたった一つしか無いものは、だから大切なものなのか、だから
無意味なものなのか、どちらだと思う?…本当に一つなら無意味だね。
…でも、その一つが自分だと無意味とは思えない。だから人は苦しいのだ。」
「大切なのは答えではなく、答えがわからなくてもやっていけることだと、
彼はどこかで感じたのだ。」
「生きる意味より死なない工夫だ」 -
「人は、自分はどうして生きているのか?」堂々巡りをしながら悩んでいた10代の頃を思い出した。私には老師はいなかったが、友人がいた。胸に迫り来る想いを、毎日毎日話し合った。
いつの間にか、当たり前のように生きていた。 -
著者が子供のときから悩み続けてきた問いについて、老師との対話形式で書き綴ったように思われる。こうした問いに向き合うために、仏門に入ったのかもしれない。
直哉さんの別の著書を読んだときに、人生の目標は生き抜くことにしようと思った。この目標なら重たく感じることがないかなと。 -
簡単そうで難しい
何度も読み返したくなる -
宮崎哲弥さんと南直哉さんが共演している動画を見て本書を知り、読んでみた。
少年の問に大人は逃げるような回答しか返さなかったのに対し、老師は真っ向から向き合って答えを返さず問を返し続ける。
答えよりも、その問と向き合い続ける方法を老師は少年に伝えたように思った。
と、いうのが今の感想なのだけどこれは1回読んだだけで終わりな本ではない。定期的に読み返したい1冊です。 -
「ただ時間をやり過ごすだけの大人にはなりたくない」、子どもの私はそう思った。社会人になって、文字通りそんな大人になっていた自分に気づき愕然とした。この本を読み、まだ青かった過去を思い出して笑った。物語の中で『断念する』という言葉が出てくるが、それは『諦め』ではなく力を抜いてただ目を開き、耳を澄ます、そういうことだと思う。
「誰だろうとあまり魅力的な人のそばに長くいてはいけないな」という言葉はとても意味深。