残虐記 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2007年7月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784101306353

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

陰鬱な気持ちを抱えながらも、一気に読み進めた作品は、複雑な人間関係や内面的葛藤を描き出しています。物語は、監禁された少女が「性的人間」としての自己を理解しようとする過程を通じて、他者の欲望や支配の構造...

感想・レビュー・書評

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  • 終始陰鬱な気持ちを抱えながら、一気読み。相手の性的欲望を想像する人のことを性的人間かぁ、、。勝手に想像されることへの屈辱や怒りは少し理解できるつもりでいる。悲劇のヒロインになりきれる人間の方が生きやすいのかもしれない。


    『自分で治そうと思ってはいけない。その言葉は私に応えた。私は自分で治そうと思っているのではなく、ただ自分が持っているものの重さに喘いでいたのだ。手から離したくても荷物は消えない。油断すれば押し潰される。だったら、どうすればいい。あれほど夢見た自由は、もっと複雑だった。自由という名の束縛があり、束縛という名の自由もあるのだ。この事実は、まだ十一歳だった私という人間を内部から破滅させそうだった。
    ここで奇怪なことが起きた。誰もわかってくれない、という気持ちはあんなに憎んだケンジの存在を浮上させたのだ。ケンジならわかってくれる、という思いを私は捨て去ることができなくなっていた。私の加害者にして理解者。私をこのような運命に落としたのに、私を救うことのできる唯一の人間。私とケンジの関係はこうしてねじくれ、事件が終わってもメビウスの帯の如く、終わりのない関係になったのだった。』


    あとがきから
    『彼女はまったく正当にも、「事実」そのものに対してはほとんど固執しない。なぜなら、虚構的リアリティは「現実」に拮抗しうる、と確信しているからです。
    そう、事件というものは常に何らかの臨界点で起こるものであり、その真相は誰も正確に知ることができません。ことによると当事者すらも「真相」を理解しているとは限らない。ただ事件を巡って喚起される人々の想像力、これこそが恐ろしくも興味深いのです。』

  • 後味の悪さと引き換えに得るものも多い作品。

  • すごく久しぶりに再読
    小説の中の小説というような構造
    ある事件を複数の視点から物語っていったときの、ずれや違和感みたいなもの、それ自体を味合わせるような作品となっており、かなり独特
    ノンフィクションとフィクションのはざまであったり、私小説とそれ以外の創作物との線引きであったり
    そこをテーマとして扱うことで、読み手に対して、現実と想像の隙間にこそ描き出すべき物語があるのだ、とでもいうようなメッセージを叩きつけてくる
    そういう感じのする一冊

    誰かが何か現実の事象に影響を受けながらも独自の想像を膨らませること、その毒たるゆえんを、酷く純粋に、酷く猥雑に書いている
    他人の心の傷を暴き出したいという欲
    生き抜くために芽吹いた強かささえも簡単に台無しにしてしまいたくなるような、ある種の暴力への憧憬
    そういう類のものとして他者への関心が発動したとき、それを普段は表明しえない分、人は毒を抱き抱えながらそれに親しんで生きていくしかない
    残虐記、グロテスクな黒い光のような物語だなと感じる

  • 拉致され1年間監禁された小4女子。犯人がなぜ自分を監禁したのか、助けてくれるはずの人は共犯だったのか。相手の欲望を想像する「性的人間」となった彼女は作家になり、そして失踪する。支配されることへの安心感、想像されることへの屈辱。人心の面妖不可思議さの渦に飲み込まれてしまう。

    登場人物がみな、言葉足らずな感じで、言葉の信ぴょう性が揺らぐ作品。それだけに異様に想像力がかき立てられた。グロテスクな窃視はだれもが好むところではないかな(私だけ?)。ひといきに読んでしまった。解説にある谷崎の『鍵』との関連がなるほどな、と。

  • ⭐️4.3

    衝撃的な始まりに息も付かぬ展開。
    胸くそ過ぎるし気持ち悪さにハマる。
    面白いという一言では表せない。
    人間の想像力の怖さ。
    なんでこんなにも桐野さんの作品は
    魅力的なんだろうか。
    謎が多いお話だったのに読みやすく
    徹夜して一気に読んでしまった。
    解明されてないから面白いストーリーだった。

  • 誘拐された過去を持つ女性作家が、手記を残して失踪した。それまで語られることのなかった、悍ましく不潔で残酷なできごと。男の欲望と暴力のリアルな描写に寒気がした。しかし本当に囚われていたのは誰だったのか。

  • 面白かったけど、謎が謎のまま終わった作品だった…
    本作は自身が過去の少女誘拐監禁事件の被害者だったという手記?小説?を残して作家が失踪するところから始まる。
    あらすじからしてこの作家の失踪の真実を追うような話なのかと思いきや、この小説のほとんど全てはこの手記の内容。
    また裏表紙には手記とあるが、どこまでが真実でどこからが虚構であるか読み進めれば読み進めるほど分からなくなった。
    タイトルは他同名小説から、ストーリーの着想は実際にあった事件からとのことだが、まさに内容としては"残虐"だった。
    監禁されている時の話ももちろんだが、その後事件が与えた影響など思うと…
    その意味では、本書を小説として"面白い"と軽々に言って良いのかも、不安に思う気持ちもある。それくらいリアルに感じてしまった。
    自分は最後に謎解きがされてすっきりしたいタイプだが、この終わり方が逆に正しいというか、"真実"が書かれてしまっていたらここまでの良作ではなかったのかも

  • 誘拐、監禁された少女が小説家になり失踪した。
    最後までわからない真実。
    謎が想像を読んでこんな終わり方もいいなと思った。

  • 小説家の女性は10歳のころ誘拐監禁され1年をすごした
    それを小説にして語っている
    序盤で監禁から助けられたがその後にその詳細が語られ何が起こっていたのかが明かされる
    そして当時の少女の思いも
    本人にとっては忘れたい過去なんだろうけどその経験もあり小説家になれた感じ?で・・・

  • 新潟少女監禁事件に着想を得て展開された桐野ワールド。他者を傷つける想像という所為...。他者の意を汲むために行われた行為。自身を守るために変換されていく想い。後半に「泥のごとく」を持ってこれるのは流石だなぁ。

  • 2021.12.13読了 2回目

    「本当のことというのは1番難しいことでしょう。僕は鉄棒ができない。バランスが悪いから滑り台にも登るなと言われて育った。それで様々なことを想像しましたよ。幻の鉄棒、夢の中のブランコ、滑り台。それは現実の姿とは多分違っているでしょう。ほんの少しね。あなたが事実を言ったと思ったら、僕はあなたの想像力とあなたの真実との溝についてまた想像するのです。そうやっていくらでも伸びていく想像のために知りたいのです」(p227)

  • 読み始めてみたら実は再読だった。再読したいような後味のよい話ではないけれど、一度読み始めると最後まで読まずにいられないあたりが作家の力量なのだと思う。

    日常を失うことのとりかえしのつかなさ。事件の多い昨今に思うことの多い再読でした。

  • 桐野ワールド全開。超長編でもなく、大作でもないのだけれども、
    ずっしり重くて息継ぎが出来ない感じ。
    同時にテンポが良いので、途中で置くことも出来ない。
    そして読み終わったときには、なんだかとてつもない
    体験をしたような、ある種爽快感を覚えるような、
    要は「小説を読む愉しみ」をしっかり味あわせて
    くれる。

    これはもう、好き嫌いがわかれるだろうな。
    予定調和的な小説、本格推理小説、はたまた文字通り残虐なものを
    求めるひとたちにはみな、期待外れに終わるだろうし。

    もちろん、現実に起きた新潟の監禁事件を想定して読めばあっさり
    裏切られるし。

    でも、わたしにとっては大好きな桐野夏生の、なかでもお気に入りの作品に
    なった。
    一体どこに連れて行かれるのかわからない痺れる感覚。
    整合性が取れていないことへの違和感、不安な感じ。
    それら全てが一転して見事に「愉しさ」に変わる瞬間の、幸福感。

    これぞ桐野夏生。
    これぞ小説または物語。
    これぞ人間だけが味わえる悦楽。

    そんなことまで考えさせてくれる、面白い小説でした。

    前後して発表された「グロテスク」や「魂萌え!」が話題を集めたのに
    比べると、題材のダークさやボリュームなどから若干影が薄いようですが、
    それでもきっちり柴田錬三郎賞は獲っていました。さすがだ。

    これからも何度も何度も読み返し、そのたびにざわついた違和感と
    置いてけぼりを食らうほどのビートに酔いしれることでしょう。

  •  一人の少女が男に誘拐され、1年余り監禁されます。大人になった彼女は小説家になり、1人の編集者宛てに手記を残し、忽然と姿を晦まします。その手記を届けたのは、彼女の旦那でした。

     小学3年生の幼女はケンジという男に誘拐されます。監禁され、ケンジの友として、慰み者として扱われます。助けを求めた大人にも声は届かず…。1年も同じ屋根の下で暮らせば、彼女の心情にも変化が訪れます。一種の洗脳の様な状態に陥り、彼女は警察や検事、精神科医にはケンジの全貌を話さずにいました。何れ、結審が付きケンジは無期懲役と審判されました。ケンジは刑務所から彼女宛てに手紙を送ります。

     ケンジという男に誘拐され、徐々に彼に感情移入をする少女の心情の変化、しかし心の片隅では助けを求めようとする本能、助かった後の安穏な生活の中に過るケンジの顔、少女を助けなかった大人・ヤタベさん。
     ケンジは何故少女を誘拐することになったのか。主要な登場人物は少女・景子とケンジ。2人の視点から描かれる物語を読み、なぜかケンジにも悲しい過去があり、それが異常な性癖の礎になったのだと思うと、私自身の心にもやもやが残ってしまいます。

  • 誘拐された被害者が語り手。現実と複数の妄想が混じりあう内容。最後まで何が現実だったのかわからない。汚いアパートの饐えた臭いと押し入れののぞき穴のイメージがまとわりついた。事実かわからないが誘拐されるきっかけを作った親が酷い。みっちゃんとケンジ。ケンジとヤタベ。景子と宮坂。

  • 最後どうなるの?真実は一体?と気になって読み進めていったが、謎のまま終わって、え・・・これで終わり??となってしまった。読解力が足りないのか。もっと、あっと驚く仕掛けがあるのかと思ってたので、少しがっかり。でも、想像力で、私も読書しながらあれやこれやと考えてそこは楽しかったということかな?

  • 何かでこういう映画か本があったような。誘拐犯と恋に落ちるような。
    これはそこまではないけど、情は確実にあった。のぞき穴みたいなんも不気味過ぎる。
    果たして景子ちゃんはどこに行ったんだろ。続きは気になる。夫にもびっくり。

  • 1年間以上、幼少期に監禁される、、、実際にあった事件が、フォーマットになっているような。
    なかなかリアリティのある話であった。
    解放後の対応も、リアルであった。
    最後の終わり方も、なるほど、という感じだった。

  • 結局何が本当で嘘か分かんないまま終わってくんだけど。
    綺麗に終わって、更にエピローグみたいな終わりが好きだから、これは正反対の終わり方。
    なんだけど、なんで!?とか残念な気持ちにならずに、そっかぁってすんなり受け止められた。
    分からないままでもいっかみたいな。

  • 桐野夏生さん好きです。自分には難しい所も多いし理解出来ない所も多いのですが、なぜか読みたくなる。それが桐野夏生さん… て言う感じの感想でした。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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