錦繍(きんしゅう) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 6078
感想 : 682
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307022

作品紹介・あらすじ

「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」運命的な事件ゆえ愛し合いながらも離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で十年の歳月を隔て再会した。そして、女は男に宛てて一通の手紙を書き綴る-。往復書簡が、それぞれの孤独を生きてきた男女の過去を埋め織りなす、愛と再生のロマン。

感想・レビュー・書評

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  • 宮本輝の代表作。
    全編書簡体の作品。
    過去から現在、未来へとお互いに筆を走らせ、気持ちの揺らぎや変化を綴っている。

  • 良作の一冊。

    この作品の魅力とは?聞かれたら一言では言い表せない。
    往復書簡のみという形式。
    流れるような美しい文章。
    別れた男女が再会を機に振り返るあの時のあの想い。
    丁寧に綴ることで今一度あの日を振り返り、かつ相手の想いも受け取る。
    思いがけない言葉をもらった瞬間の心の揺れ。
    過去の自分を慈しむことが現在を見つめるきっかけへ一歩へと繋がる。

    まるで往復書簡という幾本もの縦糸、横糸が交互に丁寧に紡がれ出来上がる一枚の錦織りのよう。

    ラストの書簡がまた秀逸。

    美の言葉の中に生きる灯火、自分で創る未来を力強く感じた良作。

    • くるたんさん
      yhyby940さん♪コメントありがとうございます。
      美しい世界でしたね。
      また読むたびに心に響く箇所が増えそうなそんな作品だと思いました。...
      yhyby940さん♪コメントありがとうございます。
      美しい世界でしたね。
      また読むたびに心に響く箇所が増えそうなそんな作品だと思いました。

      宮本輝さんはあまり読めてないですが、いつも小説を読み喜びを感じられる作家さんだと思います。
      2021/05/15
    • yhyby940さん
      ご返信ありがとうございます。最近の著者の作品には若干、お説教じみたものを感じることがあるんですが、人を勇気づけてくれる作品が多いように思いま...
      ご返信ありがとうございます。最近の著者の作品には若干、お説教じみたものを感じることがあるんですが、人を勇気づけてくれる作品が多いように思います。不躾ですがフォローさせて頂きました。ご気分を悪くなさったら、ご勘弁ください。
      2021/05/15
    • くるたんさん
      いえいえ、ありがとうございます♪
      よろしくお願いします♪
      いえいえ、ありがとうございます♪
      よろしくお願いします♪
      2021/05/15
  • 無理心中を図った愛人に重傷を負わされながらもひとり生き残った男。その男を愛しながらも許すことが出来ずに離婚を選んだ女。
    その2人が10年後に蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で偶然に再会しました。驚きながらも変わり果てた男の姿を見て、なぜだか自分でも分からない感情に突き動かされ女は男に手紙を書きます。この物語は2人の往復書簡で成り立っています。
    再会したその一瞬で女は男に寂しさを感じ、男は女が幸せではないことを悟ります。2人を変えてしまった10年という時の流れは、けれどもお互いを慮り向き合うことが出来るようになるにも必要だった時間には違いありません。
    手紙は過去から現在、未来へと繋がっているようでした。それはまるで2人を喪失から再生へと導いていくかのようで。
    過去を振り返る女の手紙からは、裏切った男への憎しみ、女としての意地、妻としての自尊心などで、どうして?どうして?と男を責めているようでした。再婚したけれども、愛情を持てない夫。障害を持って生まれた子どもの世話をしながら、男と別れなければこの子も生まれることはなかったのに。どうして?どうして?そんな哀しい叫びが聞こえてくるようでした。
    それが手紙を2通3通と書いていく度に、子どもの為に生きようとする強い母、愛人との間に子どもまで作った夫との別れを選ぶ凛とした妻へと変化していきます。
    男は死へと誘った愛人、裏切り傷つけてしまった妻、そして男とともに一緒に暮らす生命力に溢れた女、彼女らと出会ったことでいろんなものを手放し失ったけれど、今やっとかけがえのないものを掴みかけている時なのではないでしょうか。
    手紙では業、命、生と死、そして宇宙へと話は壮大に広がっていきます。
    不可思議な法則とからくりを秘めている宇宙の下で巡り会った生命。無理心中を図り亡くなった女、年老いた父、夫、星を眺めている子どもと自分。同じ時刻に近くにいた男……女からの最後となる手紙に、わたしは宇宙に響く荘厳な鐘の音を聞いたようでした。
    そしてまた出来るなら。
    10年後、男と女がミモザアカシアの古木の下で偶然に再会してほしい。そんな場面を想像しながら、この往復書簡を読み終えることとしました。

  • 上手くいかなかった元夫婦が手紙のやり取りでお互いの心境を吐露し理解し合い、未来に向けて再スタートを切るに至った心情描写は深いなと感じた。

    時代的には普通なのかも知れないけど不貞があるのが前提な世界観は合わなかった。

  • 秋になって紅葉し始めたら読もうと思ってました。

    ある事件がきっかけで、よく話し合わないまま別れてしまった元夫婦が、偶然に再会したことで始まった手紙のやり取りだけの書簡体小説。

    過去に後悔の念を残した二人がお互いに手紙を書くことで、過去を振り返り、清算し、癒され、今を受け止め、未来に向かって歩いていくまでの手紙。

    最近の私とリンクするキーワード、業、宇宙のからくり。

    生々しい男女の業とでも言うようなことが、日常や情景を丁寧に描くとともに書かれていて、とてもリアルで胸に迫ってきて、一気にほとんど一日で読んでしまった。

    また秋になったら読みたくなるかもしれない。
    そして次に読む時は、また違ったことを感じそうな気がします。

  • 仕事帰り、飛び込んだ書店で手に取り、
    そのまま喫茶店に座り込んで、一気に読んでしまった…
    久々に、こんな小説の読み方をした。引き込まれた。
    たしかに、これ、名作です!

    やんごとなき事情から、離婚をしたふたりが、
    偶然に再会する…しかし、その後、会うこともなく、
    ただただ、長い手紙のやりとりが続く…
    少しずつ、過去がつまびらかにされてゆくのです。

    時間というのは、過ぎるものでなく、
    積もってゆくものなのでしょう…あたかも、錦に、
    美しい刺繍をほどこすように、重ねられ、
    彩られてゆくものでもあるのでしょう。

    この小説は、決してハッピーエンドではないけれど、
    過去を纏いながら、現在を生き、そして、未来へと
    つないでゆく・・・そのことこそ、
    人が生きるということであると感じ入りました。 

    登場人物は、それぞれに悩みも恨みも抱えながら、
    他者を許すのです…いっしょに暮らす女の一言…
    ―うち、あんたの奥さんやった人を好きや
    この場面、涙腺切られました…

  • 紅葉の蔵王で、偶然の再会をした10年前に離婚した夫婦だった二人。妻であった女性からの手紙から、二人の往復書簡が始まる。
    夫であった男の不貞から不本意な離婚となった女性の悔恨、各々の過去の告白、現在の生活、これからの別々の行く末と、綴られていき、徐々に気持ちの溝が埋まっていく。
    錦繍という美しい題名は小説の始まりの紅葉からだろうか。女性が人生を経て強く生きていく様かな。

  • 手紙のやりとりで構成されており、心の中で一途に愛し続ける女性の気持ちに胸がキュッと熱くなり、読み進むにつれ読者も終わりが近づいてきていることを感じ、切なく苦しく自分に重ね合わせ涙が出ました。終わりたくない、でも終わりが来ることは分かっていて始めたこと。その切なく苦しい思いが読んだ後も忘れられません。
    辻仁成さんのサヨナライツカがこれまで人生で一番好きな恋愛小説でしたが、そこに重なるような一途な思い、愛されるより愛したこと、愛することを選ぶ女性の想いに胸が締め付けられました。
    女性側の手紙の文体、文章がとても綺麗で日本語の美しさを感じ豊かな気持ちにさせてくれる本でもありました。
    胸を締め付ける本。一生の中で大切にしたい本になり、改めて新しい一冊を買い直しました。

  • 感動。
    本を読んでここまで心を揺り動かされたのは初めてかもしれない。

    父の本棚にずらりと並んでいた宮本輝の小説。それらがどの本よりも圧倒的な存在感を放っていたことから、興味を持ってその中の一冊を手にとったことがこの本とわたしの出会いです。
    結果的には、本当に本当に読んでよかった。
    もともと夫婦だった男女の往復書簡形式で綴られるこの本。
    最初は薄暗い印象でしたが、そこからの二人の再生の過程が美しい。
    最近、心が病んでいた分、二人の再生の物語に心の底から温まりました。
    自分もまた生きていこうと思えました。
    しんどい時は、またこの本を読むことになりそう。
    それくらいわたしの心に沁みました。
    他の宮本輝さんの小説も読んでみたい。

  • 宮本輝作品にはまり込み、もう一度読んでみたくなって再読。この本との出会いから読書にはまった。
    オススメの本は?と聞かれると今後1番にこの作品を紹介するだろう。

    偶然の再会から始まった2人による、書簡でのやりとりで構成された書簡体小説であるが、ひとつひとつの手紙は丁寧に書かれ、それはまるで一つの小説かのように感じる。
    手紙の最後は切なさで胸がいっぱいになるが、それでいてどこか勇気をもらえる。

    宮本輝氏の文章は、映像として頭の中で流れてくる。本作品を多くの人に読んでもらいたいと思うと同時に、自分と同様彼の作品にはまり込む人が出てきて欲しい。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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