- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101307053
作品紹介・あらすじ
その名前とはうらはらに、夢見通りの住人たちは、ひと癖もふた癖もある。ホモと噂されているカメラ屋の若い主人。美男のバーテンしか雇わないスナックのママ。性欲を持て余している肉屋の兄弟…。そんな彼らに詩人志望の春太と彼が思いを寄せる美容師の光子を配し、めいめいの秘められた情熱と、彼らがふと垣間見せる愛と孤独の表情を描いて忘れがたい印象を残すオムニバス長編。
感想・レビュー・書評
-
ある商店街に部屋を借りた青年が、そこで繰り広げられる人々の裏事情に出会う。お店の数だけ、ひとの数だけドラマがあるのだな。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人間はロボットじゃなくて、血が通っていて、いろいろ不具合があって、それぞれこだわりがあって、、、。みんな「きれい」じゃないよ。ということがよく分かる。
現実は生々しい。
第九章、春太がテープを光子に渡した後の春太の気持ちの描写。(p237)
中でも「前進しなければならない。自分は人間なのだから、前進しなければならないのだ」が、心に響く。 -
夢見通りに住む個性的な人たちを描いた短編集であり、大きくみると1つの物語となっている。
幸せなことがあれば悲しいことや報われないことがあって、それがリアルな人生模様だなぁと納得してしまう。日常は白黒つけられないこともたくさんあるけれど、絶妙なバランスを保っているんだなと思う。 -
商店街の笑いあり、涙ありのほのぼのストーリー?
そんなのはよくあるけれど、
いやいや、そうもありえるわけじゃないけど全然ありえんわけじゃない絶妙さがリアルなお話。
冷たいようでもあるし温かいようでもある。
そのリアルさがお気に入り。 -
大阪の商店街、夢見通りで起こる10個の出来事。
まるで、昭和のホームドラマをテレビで観てるような感覚。
一応、主人公は詩人を目指す春太。良い人なんだけど、なんとも頼りない。そしてウジウジ悩む。
とにかく、個性派揃いの中にあって、私が一番心惹かれたのは肉屋の竜一。並外れた性欲を持て余していた男。けれども、一番情の深い男に思えてなりません♪
ハッピーエンドの結末を求めがちですが、たとえそうじゃなくても、前進する強さを人は皆持っている事を教えられました。 -
宮本輝さんもこんな話を書くんだ、という感想。
感受性が高いが詩が「幼稚園児」と言われてしまう春太、元ヤクザの肉屋の兄弟、息子が盗癖のある時計屋、ホモのカメラ屋…
絶対に「良い人々との心温まるお話」ではなく、孕ませただの刺青があるだの強烈な劣等感があるだの、喧嘩の連続でモヤモヤした割り切れなさを持ちつつも、どうにか一日が終わる、そんな感じ。振り回される春太にほっこりする。あと誰にも理解してもらえない、元ヤクザの黒牛こと竜一が印象に残る。
読後感は良かった。 -
「夢見通り」という商店街に暮らすアクの強い人物を描いた群像劇仕立ての連作短編です。
第1章は、30歳で通信教育の仕事をしながら詩人になることを夢見る里見春太の物語です。彼は、美容師の光子にひそかな恋心をいだいているものの、歳のわりに純情な彼は、自分の想いを伝えることができません。その光子は、ヤクザあがりで女好きの噂のある肉屋の辰巳竜一に、拾ってしまった宝石箱の処分を依頼したことがきっかけで、少しずつ竜一に魅かれていくことになります。古川文房具店の一角でタバコ屋を営む、身寄りのない77歳の伊関トミは、立ち退きを求められて孤独をかみしめながらも、春太のやさしさに触れて、最後は死んでいきます。
時計店を営む村田英介は、息子の哲太郎の手癖の悪さに手を焼いていました。哲太郎は、商店会の組合長を務める吉武権二の娘の理恵と駆け落ちします。しかし、理恵が子どもを身ごもったことに哲太郎は戸惑い、春太が仲裁役として、北海道まで二人を迎えにいくことになります。
スナック「シャレード」の女主人の奈津は、生まれたときから顔に痣があることに、コンプレックスをいだいていました。そんな彼女に魅かれた客の「げえやん」は、痣をかくそうとして苦しむ彼女の心を開こうとします。
中華料理屋「太楼軒」を営むワンさんの娘の美鈴は、アメリカン・スクールに通い、外交官になることを夢見る才女です。彼女の依頼で、春太はホモのカメラ店主の森雅久のもとを訪れ、美鈴の友人のレスリーというアメリカ人と親密な仲にならないようにいいますが、森のひとを見る目の深さになすすべなく、引き返すことになります。
登場人物たちの泥臭さのなかで、春太の純朴さがどうしても浮いてしまっているように感じます。光子と竜一とのやりとりも、いかにも朴訥です。そんな彼が、多くの章で舞台回しの役割を務めることで、他の登場人物たちのアクの強さがいよいよ引き立っているようにも感じるのも事実ですが、ややバランスの危うさも含んでいるように思います。 -
再読。
大阪のうらぶれた商店街、「夢見通り」を舞台にした短編連作集。
ド昭和の、いかにも宮本輝らしい、
泥臭く、猥雑な中に温かみが感じられる物語。
気弱で詩人の春太、太楼軒の父ちゃん母ちゃんに優秀な娘、
肉屋の竜一と竜二、タバコ屋のトミさん、商魂逞しい時計屋、
シャレードの痣のあるママなどなど。
肉屋の竜一と美容院の光子のエピソードが良かったなぁ
そううまくいかないところもまたね(笑)
久しぶりに宮本輝を読んだけど、切ないけど、
身も蓋もないところもあるのにどこか上品なんだよなぁ
昭和だからなのか、私が昭和の人間だからなのかw -
淡々と読了。
最後、竜一さんに好感が持てた。