螢川・泥の河 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307091

感想・レビュー・書評

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  • 「泥の河」と「螢川」の二篇。前者は太宰治賞、後者は芥川賞を受賞しています。両作品ともに性の目覚めにある少年が主人公。その目に映る大人の弱さ、泥臭さ、悲しさと、自然の儚さ、雄大さ、不気味さ、厳しさ……色とりどりに目まぐるしく変わる描写が叙情たっぷりでした。

    少年は身近な者の死によって、常に死が意識下にあるような感じです。さらに二つの作品とも、怪しげな生物の動きが掉尾を飾っています。ラストはまさに衝撃的な一枚の絵となっています。余韻の中でなんとなく、生きることは刹那の繰り返しなんだろうなと思いつつ頁を閉じました。再読したい二作品です。

  • 丁寧に綴られた言葉とリアルな情景が秀逸
    人間の生の美しさと強さとそして嫌悪が
    子どもの視点を通して不器用に映し出される
    忘れた頃にまた読み返したくなる一冊

  • 文学的表現が美しく、内容も素晴らしい。
    こんな文学に出会えて良かったと心から思います。

    泥の河 太宰治賞
    螢川  芥川賞  

  • うまく言葉にできないのですが、宮本輝という人は「生きてきた」人なんだなと、すごく思いました。人間って、幼い頃は世界と未分化で、それこそ河とか虫とか田畑とかと同じような「世界の一部分」なのだけれど、生きながら独りになっていくのですよね。そのひたむきな哀しさ美しさが見事に紙の上にかきとめられている。胸を打たれました。他に一作品しか読んだことがないのですが、もっと読みたいと思いました。

  • 好きな本を聞かれたら必ず名前をあげる作品。
    戦後の混沌とした日本を明るく、でも悲しく描いた作品。
    私はこれを読んで涙が止まらなかった。

    戦後の日本とは言え、分かりやすい言葉で書かれた作品なので心に入ってきます。

    何回も読みたい本。

  • 息をのむほど緻密な感情の表現。小説なのに、嘘がないと思いました。ほんとうのことを書くために、この人は小説を書いているのだなと思いました。

  • 太宰治賞を受賞した泥の河と,翌年に芥川賞を受賞した螢川のカップリング.恥ずかしながら宮本輝を読んだのは初めてだが,美しいですね.

  • 収録内容は以下の通り。

    泥の河
    螢川
    桶谷秀昭: 解説

    「螢川」の最後に描かれる光景に、鳥肌が立つほどの不気味さを感じた。生命の神秘などとはとても言えない、むしろ、日々の生活で出来るだけ目を背けてきた、生命の儚さを直視させられたように感じた。

    カバー装画は川上和生。


  • 『螢川』のハッとする美しさ、『泥の河』の間近にある死の描写に作者の良いところが全て詰まっていた。

  • ぞくぞくと震えます。
    作品の持つ、芸術としての美しさと、
    我々の生きるこの世界の奥暗さに。

    物語のヴォリュームに比して、文章は簡潔。普通の作家がやったならばただの説明文になってしまうような短さです。
    しかし、必要最低限度のこの文章が、豊穣な風景を眼前に現出させます。まるで、昔見たことがある風景みたいに。
    不必要なものがすべて排除され、思考の妨げが何もないからこそなのでしょう。この圧倒的な表現力にただ息を呑みます。
    文章も、現れる世界も、すべてが美しい。


    泥の河よりも蛍川のほうが好きです。
    少年が大人になり始める「泥の河」と、
    子供である(もしくは世界から庇護される)時間が終わる「蛍川」。

    前者に感じるのは、ちくりちくりと胸をつつくほろ苦さですが、
    後者に感じるのは底知れぬ深い闇の恐怖です。
    手を伸ばしてみれば、じつは全然恐れることのない暖かな世界なのかもしれない。
    でも夜は暗い。

    蛍はいつか消えてしまう。もちろん、光を生み出しつづける英子とも、離れなければいけない。
    そしてその後には圧倒的な質量をもった闇が置き去られる。
    その最後の瞬間を、鮮やかに描いた作品です。

著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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