道頓堀川 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307107

感想・レビュー・書評

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  • 戦後間もない頃の昭和、大阪という土地柄を色濃く感じました。
    道頓堀川の濁りのように、一人一人の人生にも何かしらの濁りがある。道頓堀川界隈に暮らす人たちの人生の営みが描かれていました。

    歓楽街の猥雑でがちゃがちゃした感じは、うるさいのになぜかホッとする部分もあり、読みながら一人一人が抱える“苦難”や“人生の営み”みたいなのものを感じて、しんみりした気分になりました。

    個人的に、ちょっと性的な描写が多いなぁという気がしたけど、それも含めてこの作品の味わいになっている。
    喫茶店店主の武内、武内の息子・政夫、住み込みで働く邦彦。また、彼らに関わりのある人たち。
    他作品でも感じたけど、宮本輝さんの作品で描かれている“人間臭さ”がいい。

  • 人生の悲哀が美しい文章で綴られている。宮本輝さんらしさが発揮されている。

  • 後悔し続ける中年とジュブナイルの青臭さ。
    当時の“男”の描き方が上手すぎる。
    作者の作品では一番好きです。

  • 著者の初期を代表する「川三部作」の三作目。昭和42年、高度成長真っ只中の大阪道頓堀川が舞台。両親を亡くした大学生安岡邦彦は、喫茶店リバーで住み込みで働きながら大学に通っている。リバーのマスター武内鉄夫は、かつて玉突きに命を賭けていたが足を洗い、息子の政夫が玉突きにのめり込んでいるのを快く思っていない。玉突きで生計を立てていきたい政夫はかつて伝説の玉突き師だった父親に勝負を挑む。
    「泥の河」では小学生、「螢川」では中学生の視点から世の中を見つめていたが、「道頓堀川」では主人公が大人で人生の悲喜こもごもの当事者になっている。

    邦彦は大都市に暮らす人々をどこか覚めた目で見つめている。就職先を決める時期が近づいているものの現実には閉塞感が漂っている。全体的にモノトーンで淡々と日常の話は進行していくが、当時の時代や人々の息づかいが感じられるようにすっかり世界に引き込まれた。

  • 昭和中頃、道頓堀川に間近い喫茶店リバーの店主武内と、そこに住み込みで働く邦彦を中心に、彼らに関係する様々な人々との間で起きた、様々な出来事が筆述された群像劇。
    読んでいて自然に胸に浮かんだのは、濁世という言葉。道頓堀川の描写に使われる濁りが、人間世界にも入り混じっている感覚。
    けれど汚濁ではなく、雑多な事象の重なりによる濁りで、それはどの場所にも、どの時代にもある一側面のよう。
    事故で一本の脚を失った犬・小太郎が、この時期の、この地域の人々が、ぎこちなくしか人生を集めなかったことを象徴しているのだと思う。
    大学生邦彦の青春譚であると同時に、中年店主武内の回想録でもある。けれど回想は、思い出の中に留まらず武内の現在にも残響として生き続けていた。
    話があちこちの人々、あちこちの事件に飛ぶ中、ビリヤードの話が冒頭から末尾までを貫く背骨になっていて、最終場面で武内の涙で以て締め括られる。
    皆が皆不器用なりに懸命に明日を求める姿に、前向きな気持ちになれた。

  • やっぱり、昔のいい本は、いい。こういう大阪ミナミの話好き。

  • 宮本輝はある一時期の大阪の空気を感じられるなあ。

  • 良かった‼️
    昔見た映画版を改めて見たくなった‼️

  • 以前映画で観た作品なので、自分の頭で描く情景だけでなく映画のシーンが重なる。
    それは自分の中での創造を邪魔するものではあるけれど読書の道案内的なサポートにもなるものだな。リバーでアルバイトをする邦彦のまわりの人間模様が哀愁を帯びて描かれるのだけれど彼らの不安定な生き様を俯瞰するように読み味わえるのは自分自身が彼らよりは安定した楽な状況にあるからだろうか。

  • 味わい深い作品でした。
    邦彦の青春、武内鉄男の人生、二人を取り巻く道頓堀川界隈で生きる人々。
    鉄男と息子政夫とのビリヤードでの対決。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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