私たちが好きだったこと (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (393ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307121

感想・レビュー・書評

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  • 読み始めて「あれ?これってエッセイじゃないんだ・・・」と思いました。
    だって、宮本輝さんの本で一人称・・・私で書かれているのって珍しい。
    そして読み終えて、このタイトル「好きだった」と過去形なんだ・・・と思いました。

    ひょんな事から同居する事となった4人の若い男女の様子を描いた話です。
    高い倍率の公団住宅に幸運に当選した私-与志。
    所が、その公団住宅に入居するには同居者が必要だった。
    そんな訳で、与志はカメラマンの友達、佐竹-通称ロバちゃんと一緒に暮らす事にする。
    そして、その日たまたまバーで出会った女性二人組ともなりゆきで一緒に暮らす事になる。

    サラリーマンで、将来は独立して自分の事務所をもつのが夢の与志。
    カメラマンのロバちゃん。
    美容師の曜子。
    会社員で不安神経症を抱える愛子。

    まもなく、与志と愛子、ロバと曜子という組み合わせの二つのカップルが誕生する。
    そして、美容院の金を使い込んだ曜子のため、医師を目指す愛子のため、ロバちゃんが交通事故の際に知り合った10代の男女のため、4人は借金を抱える事となる。

    宮本輝さんの書くヒロインは大体において、いくつかの共通点があります。
    それは美女で賢くて清潔感があって、潔癖で、そして自分が悪い時も決して謝らないという特徴。
    この物語のヒロインは正にその通りでしたが、「こんな女性が潔癖だなんて私は認めない!」と読んでいてムカムカきました。
    もう一人の女性、曜子もすごく勝手で人の気持ちを考えない言動をしている。
    けれど、この物語では「優しい」という設定。
    これが作者の女性観なんだろうな・・・。
    それに逆らう気はないけど「潔癖な女性」「本当に優しい女性」ってこんなもんじゃないだろう~と私は思います。

    ただ、その本人のしている事が清潔でなくても、潔癖でなくても、そういう雰囲気を漂わせていたら周囲はそのように扱うというのはあると思う。
    同じように、「人のために生きる」「自分の事より人の幸せを考える」という事に徹した主人公たちの2年間という年月はそういう雰囲気を彼らに漂わせたのではないか?と思いました。
    だからこそ、物語の後半に主人公が旅行した際のエピソードが生まれたのだろうな・・・と。

    この作者の本にしてはストーリー展開はかなりお手軽だし、どうしても主要登場人物の女性たちが気に入らなくて、好きになれない話でした。

  • 宮本輝の小説はすべてがハッピーに終わらず、現実というのは山あれば谷もあるというのを暗に示しているような話が多いがこれもそう。

    結果的に見れば、主人公は大学に行かせる手助けをして、医者になれる道筋を作った挙げ句違う男に乗り換えられて恋は終わる悲しいストーリー。
    しかし女がひどいかといえば、このままだと破産する男から金の心配せず大学生活を送ることができる男に乗り換え、結婚後も安泰なわけで誠に合理的。
    でもこれじゃあ主人公はバッドエンドじゃないかと思いそうだが、本当の「愛」ってやつを受け取った四人での生活は、今後彼が得ようと思っても得られない経験であるだろうし、無駄ではないんじゃなかろうか。いやそう信じたい・・・。

    なんともほろ苦い気分になる、大人の小説。

  • 学生の時以来、2回目。
    ハッピーエンドではないのに、読了後に清々しい気分にさせてくれる。自分で信じた道を、無理せず歩いて行こうと思えた。

  • 主人公たちに対する作者の優しい目線を感じます。ご自身の患われた病気の描写は経験したこと故の説得力があります。ある作家が、自分の作品の受験問題に取り組んで、点数が低かったという逸話は、宮本さんの経験だったのではないかと記憶しています。面白い作品でした。

  • 再読4回目。
    人って、基本的には自分のことより人のこと、なのかもしれない。

  • 男2人・女2人それぞれが、ある日突然酒に酔った勢いで一緒に暮らし始め、いずれ愛が育まれ、そしてまた別れと新たな生活へと旅立って行く・・・無償の青春の遍歴が印象的だった。

    決してエゴではない、彼と彼女の生き方に好感が持てました。

    本書は、映画化されたそうですね、知りませんでした。

     いい作品でしたよ!

  • 共同生活をスタートさせた男女四人が互いを思いやり傷つけあい最終的に深く愛するという個人的に好みの内容。せつない、けれども暖かい作品。
    優しさとは何なのか、愛するとは何なのかを考えさせられるが、私自身は「子供心なんかはとうに萎えきっているのに、いつまでたっても大人になれない」口なので、登場人物のような考えはできないかなって感じるのが正直なところ。
    また会話に出てくる台詞でいいなぁと思う言葉が多く、心に残る。

  • 男2人、女2人の共同生活の話。俺はたぶんヨシ・タイプだと思うので、ロバみたいにゆったり大きく、人に接することのできる人に憧れるし、尊敬してしまう。四人共、魅力的でいい人だと思うけど、それでも、やっぱり女は怖いな…。と思った。ロバがハッピーエンドだったのが救いかな…。良い物語。

  • 10数年ぶりに再読。久々の再読なのに感想は一緒だった。

    宮本輝の作品の中では軽くて異色な感じ。昔のトレンディードラマみたい。
    主人公の心のあり方が印象的で、それが作品の魅力だった。
    やっぱり愛子がちっとも好きになれなかった。

  • ひょんなことから男女4人が同居することになり、紆余曲折の末、解散する。他人のために手助けするのが好きな4人。時には憤ることはあっても、自ら気持ちを鎮静化させる。別れても絆は残る。自立し一皮むけた中年になっていく。2023.12.21

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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