血族の王: 松下幸之助とナショナルの世紀 (新潮文庫)

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レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101310329

作品紹介・あらすじ

米相場で破産、没落した家名を再興すべく、松下幸之助は九歳で大阪へ丁稚奉公に出た。事業拡大への飽くなき執念は、妻と始めた家内工業を従業員38万人の一大家電王国へと成長させた。されど、好事魔多し。盟友だった義弟との訣別、GHQからの圧力、後継者問題、スキャンダル。激動の時代を背景に、数々の神話に彩られた「経営の神様」を、新資料と徹底取材で丸裸にした評伝決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 松下電器産業の創業者・松下幸之助の評伝。
    裏表紙の紹介文には、「数々の神話に彩られた『経営の神様』を丸裸に」すると書かれているが、その通り、ただのカリスマではない、松下幸之助の人間味にふれられる本になっている。
    関連本を読んで歴史をざっくりと知っているほうが楽しめます。

    さまざまな困難に直面しても「どんなに苦しいときも打つ手はある」と事業に取り組み続けた粘り強さは人並外れたものだったし、熱海会談のエピソードが象徴するように人の心をつかむセンスもあった。それが成功につながった。尊敬の念に堪えません。

    一方で、本書では、いつまでも権力にこだわり続けた幸之助の引き際の悪さも知ることができました。
    娘婿の正治と新任社長の山下が進める若返り人事に腹を立てた幸之助の姿は「神様」とは程遠い。いわゆる老害です。この人もまた、おそろしく凡人であった…

    「遠い昔の少年の日から、幸之助を支えてきたのは、自らが何者であるかを示すことであり、没落した家を興し、家名の復興を果たすという切実な願いであった。 … 八十歳の高年を越えたのち、幸之助の衝動が向かった先は、孫の正幸を自身の後継者に育て上げ、松下電器の経営を任せることであった。…」(p. 351)

    だがしかし、孫を後継者として育てる試みも、叶うことはなかった。

    生い立ちから丁寧にたどることで、なぜ松下王国は厳しいトップダウン体制でなければならなかったか、なぜ幸之助は「家」にこだわったのか、わかった気がします。

    個人的には、松下幸之助はどこまでも「商人」だったのだなあ…と思います。

  • 「経営の神様」松下幸之助を取り上げた本。
    著者は竹下登・元首相を取り上げた『ドキュメント 竹下登』の著者。

    著者の出身・和歌山県が生み出した一大経営者の足跡を追う。それは戦後のナショナル・パナソニック史でもある。

    評者自身ナショナル・パナソニック製品は使っていたので、やはり身近な製品を辿っていくのは面白い。

    この本の後、著者は講談社現代文庫+αでパナソニックの内情本も書いているみたいなので、そちらも読みたくなった。

  •  松下幸之助の歴史というより、特に戦後の日本の歴史というにふさわしいかも。盛田昭夫もすごいと思ったが、やはりこの人もすごい。やっていることのスケールと次元が違う。野村吉三郎が日本ビクターの社長をやっていたとは知らなかった。しかし、愛人との間に4人も子供がいたとは。。。

    「正治さんは、頭はいいが、物づくりの経験や商売の苦労をしていない。人使いも下手。何か問題が発生すると、ただ怒るだけで、しかも居たたまれんぐらい理詰めでやりますからね、重役陣からも事業部長からもいまひとつ信用がなかった。」

    <どんなに苦しくても、打つべき手はある。それが発展に結びつくわけです。艱難汝を玉にす、という言葉がありましょう。そのとおりです。投げたらおしまいです。最後の最後までがんばらないといけません>

    「幸之助さんの天才たる所以は、いったん取り組んだ仕事は、結果が出るまでやめない。結果が出るまで続けるので、失敗もないというわけです。」


    「いまにして思えば、ふたつの理由から怒ったんでしょうな。ひとつは、そんな『金儲け』にもならんことに熱をあげるな。そんな暇があるなら仕事せい、ということでしょう。そしてもうひとつは、幸之助さんの本心は、社員を金太郎飴のように育てたかったんですなあ。個性的な社員がバラバラに動くのではなく、会社が示した方向に向かって結束して働く社員を理想としていた。まさに、松下電器の総合力は、金太郎飴にあると信じていたということです」

  • 言うまでもなく、松下幸之助は、日本における不世出の企業家の一人だろう。

    しかし、少なくとも前半部分からは、なぜ、松下幸之助が日本を代表する企業を作ることができたのかが理解できなかった。

    典型的なワンマン経営者、というよりもほぼ独裁、無茶なことをしては路頭に迷う寸前まで資金繰りに苦しくなる、とても優れた経営者とはいえないエピソードが多い。

    おそらく、松下幸之助があれだけの企業に育て上げたのは、幸之助の異常なまでに鋭敏なビジネスに対する嗅覚があるのだということは、本書からはっきりと読み取れた。

    やれAIだビッグデータだともてはやされている現在に松下幸之助がいたら何をしただろうかということには興味がある。

  • 松下幸之助の伝記。不遇の幼少時代を過ごし、貧困からの脱出を目指した人生だった。苦労しながらも若い頃からの努力とアイデアでチャンスを掴み、ナショナルブランドで成功する。本田宗一郎と並ぶベンチャー企業だったが、会社の雰囲気は家族的であり、彼は「家長」として君臨していたようだ。読んでみて、正直なところ自分はこの会社では勤まらないと思った。幸之助は自分に厳しい人だったが、他人にはもっと厳しかったようだ。当時は権力を誇示しても問題無かったと思うが、もし現代だったらパワハラと言われることも多かったかも。昔の会社がどういうものだったかを知るには、良い本だと思う。

  • 松下電器創業者、松下幸之助の評伝。技術は二流でも販売網で勝つ、幸之助の強引とも言える戦略は、まさに「真似した電器」、「二番手戦略」そのもの。

    圧巻は、電球事業に進出した際、「品質面でマツダランプの足元にも及ばなかった」ナショナル電球を、販売店を説得してマツダランプと同額で売り出したくだり。問屋の社長や販売店の店主に人情で訴えかけ、「ナショナル電球が二流品であることを承知しながら一流品の価格で売ることに同意」を取りつけた、という。無茶苦茶な話ではあるが、販売店の力でマツダランプを凌ぐ勢いで売れたという。販売店の力、恐るべし。

  • 経営の神様と言われた松下幸之助。三洋、シャープ、ソニー、東芝と日本を代表する家電メーカーが不振にあえぐ現在、彼が存命していたら、この状況に何を思うか?と思いつつ、購入。まず間違いなくなり自分とは相性の最悪な上司になる人物。むしろ同郷の元軍人、外交官である野村吉三郎の方に興味がひかれる。

  • よく調べてあるように感じました。松下幸之助翁とGHQの関係とか、こんなに根深かったのか、とあの戦後の混乱を切り抜けるための努力と、そらから生まれる必然の運、、、そして晩年の思いなど、楽しませていただきました。
    これらから何を私たちが受け止めるのかが、重要ですね。

  • 松下幸之助評伝。

  • 自己啓発的な本ではなく、いわゆる松下の伝記といったところか。
    経営の神も人間。
    人間くさいところが見れて面白かった。

    晩年は少々見苦しい場面も。引き際(引退)って難しいですね。

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著者プロフィール

1955年、和歌山県生まれ。ジャーナリスト。2004年、『年金大崩壊』『年金の悲劇』(ともに講談社)により講談社ノンフィクション賞を受賞。また、同年「文藝春秋」に掲載した「伏魔殿社会保険庁を解体せよ」によって文藝春秋読者賞を受賞した。他の著書に、『われ万死に値す ドキュメント竹下登』(新潮文庫)、『血族の王 松下幸之助とナショナルの世紀』(新潮社)、『新聞が面白くない理由』(講談社文庫)、『パナソニック人事抗争史』(講談社プラスアルファ文庫)などがある。

「2020年 『裁判官も人である 良心と組織の狭間で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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