ロリヰタ。 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101310718

作品紹介・あらすじ

拙い言葉でもいい、誤解を受ける言葉でもいい、伝えようとする必死さこそが想いを運んでくれるのです…。ロリータ・ファッションを愛する作家の「僕」が出会った美少女モデル。二人のピュアな恋は激しいスキャンダルとして世間から糾弾される。携帯メールを取り入れたアバンギャルドな手法と、事実かフィクションかという謎が論争を呼んだ、乙女のカリスマが放つ「純愛小説」の進化形。

感想・レビュー・書評

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  • 何年かぶりの再読。

    やっぱり「ハネ」が好き。
    表題作も前回読んだときよりも響いたな。
    主人公の理屈っぽさがあんまり好きではなくて、まあ野ばらさん自身なんだろうけど、正論を言ってるようでそれはどうなのってところが何箇所かある。けど、年の差なんて関係ない、もっと言えばたぶん相手が誰であろうと、モデルであろうと女性だろうと男性だろうと子供だろうと大人だろうとそんなことは関係なくてただ愛し合うことは美しいのだということを「ロリヰタ」では伝えたいのかなと考えたので、そこはもちろん激しく同意するし、良いなと思う。
    「言葉なんて、思ったことの全部が、伝わらなくて当然なんだよ。」(p.154)
    だからこの世には文芸があるし、美術があるし、音楽があるし、ダンスや映画があるのだ。わたしは哲学を勉強しているが、哲学で大切なのは答えではなくどう思考するかなのだ。その答えにたどり着く過程が、方法がいちばん大切である。それと同じで思いも伝わることではなく伝えようとすることそれ自体のほうがよっぽど大切なのだ。

    「ハネ」は著者の作品のなかでいちばん好き。
    「天使には羽が必要だよ。」
    途方もなく救いがなく、だからこそ永遠的。
    「貴方」がかっこいい。

  • 10年振りの再読。高校の図書館で見かけてロリイタに興味があったから何度も読んだ。初めて読んだ野ばら作品。思い出の一冊。何度読んでも良い。他の作品よりもライトで性描写もないので読みやすい。たまに出てくるメール画面が斬新で良い。やりとりしてる気分になる。
    服と仕事と己の拘りが相変わらず強くて好き。この著者の、君と僕だけの世界観を書く所が好き。話し下手でもいい。おかしいことをおかしいと言えればいい。伝えたいことが正確に伝わることなんて多くないけど伝えようと努力することで想いは伝わる。口下手な君と作家の僕がお互いに伝わらないというもどかしさを感じながら歩み寄り二人の仲は深まるが世間には理解されなかった。それでも二人は会い続ける、それも愛。最後のホテルでの会話が心にくる。メールとホテルで会うたびのやりとりが初々しくて微笑ましい。ANGEL BLUEとジャンケンぴょん懐かしい。

    ハネ、言葉にできない悲しさ。普通ってなんだろう。ニュースを見てないだけで罵倒される世の中。ありのままの自分を認めて可愛い、天使のようだと羽をプレゼントしてくれた彼。理解してくれる人が一人でもいてくれればそれを信じて生きていける。主人公の心が折れなければいいけれど。



    どれだけ相手の言語体制に歩み寄ろうが、解り合えない者とは解り合えないのだ。解り合う為に存在する筈の言葉は、人と人とを謝絶する為にのみ機能するのかも知れぬ。

    言葉が誘導する力の強さと恐ろしさを、経験を積む毎に感じますよ。ペンは剣よりも強し-皮肉なことに、だからこそ、言葉は何よりも危険なものなんです。

    言葉なんて、思ったことの全部が、伝わらなくて当然なんだよ。

    永遠はね、ある。でも見付けられない人もいる。見付けても、それは放っておくと、失くなってしまうものなんだよ。時間の中で流されていくものなんだよ。だから永遠を手に入れたならば、それを見失わないように、それを色褪せさせない為に、必死に戦わなければならないんだよ。

  • 『ロリヰタ。』
    「言葉で全てを伝えることはできない」ということが、読者に意図しない形で受け取られた自らの小説、恋慕の情、マスコミなどの様々な場面において、これでもかというほど伝わった。
    『ハネ』
    自分も過去、ファッションに個性を持った途端、羨望を隠すようにあえて「雑巾」「股引」などオシャレでないものによく喩えられていた。
    作中でもそのような場面があり、当時抱いた言葉に対する憤りと悲しさが蘇った。

    改行が少なく綴りまくられた熱のある文章にめちゃくちゃ引き込まれた。

  • 乙女のカリスマが描き出す、純愛小説。

    ロリータ・ファッションを好む君へ。

    「僕」は伝えよう。

    年齢差カップルをどう思う?

    愛ってなにだろう?

    ねえ、君。

    さあ。

    ロリヰタ。

  • 付き合う相手は、対等でありたいと思える人、側から見たらくだらないことでも自分にとって尊敬できるところがある人。
    確かに、そう思えることって大事だなと思った。

  • 「君」の幼くて天然なキャラが面白いと思ったらキャラじゃなくてびっくり。プラトニックであまりにピュアな2人の恋愛は普通の人々に理解されない。決して許される恋ではないがそれだけに真っ直ぐで尊いものに感じられた。

  • 感想
    純粋な想いを永遠に持ち続けられるか。2人の間でならできる。でも世間はそれを許さない。どこかへ逃げるか、相手への想いを断ち切るか。後者で。

  • 同じ著者の「落花生」を読んだら、この本も読みたくなり。表題作も、「ハネ」も、この世界での生き辛さ、自らの特異さを背負いつつ。ロリータファッション好きが講じて、大人のような少女を知らずに愛してしまいスキャンダルになったり、自分に生きる意味をくれた存在を目の前で失いその遺志を継ぐように露店で「天使の羽」を売り続けたり。いまとなってはなガラケーの画面でのメールのやりとりが懐かしくてよかった。/「言葉なんて、思ったことの全部が、伝わらなくて当然なんだよ」/何を伝えるかが問題ではなかったのです。伝える内容よりも、伝えようとすることが重要なのです/一体、何を知っていれば、憶えていれば、良識ある人間だと思って貰えるのですか/永遠はね、ある。でも見付けられない人もいる。見付けても、それは放っておくと、失くなってしまうものなんだよ。時間の中で流されていくものなんだよ。だから永遠を手に入れたいならば、それを見失わないように、それを色褪せさせない為に、必死に戦わなければならないんだよ。/

  • 2009.3.28
    拙い言葉でもいい、誤解を受ける言葉でもいい、伝えようとする必死さこそが想いを運んでくれるのです…。ロリータ・ファッションを愛する作家の「僕」が出会った美少女モデル。二人のピュアな恋は激しいスキャンダルとして世間から糾弾される。携帯メールを取り入れたアバンギャルドな手法と、事実かフィクションかという謎が論争を呼んだ、乙女のカリスマが放つ「純愛小説」の進化形。

  • 純に生きる主人公たち、自分を貫く非常に強い心を持っていると思う。でも理解できない大衆達に飲み込まれて…。
     当初、「あ〜純愛小説かぁ」と思いつつも読んでみる。
     面白い。
    私自身、裸で歩いている以外は他人のファッションに文句は無いが色々と苦労もあるんだろうなぁ。

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著者プロフィール

文 嶽本 野ばら
京都府宇治市出身。作家。
1998 年エッセイ集『それいぬ̶ 正しい乙女になるために』(国書刊行会)を上梓。
2000 年『ミシン』(小学館)で小説家デビュー。
2003 年発表の『下妻物語』が翌年、中島哲也監督で映画化され世界的にヒット。
『エミリー』(集英社)『ロリヰタ。』(新潮社)は三島由紀夫賞候補作。
他の作品に『鱗姫』、『ハピネス』(共に小学館)、『十四歳の遠距離恋愛』(集英社)
『純潔』(新潮社)など。『吉屋信子乙女小説コレクション』(国書刊行会)の監修、
高橋真琴と共書絵本『うろこひめ』(主婦と生活社)を出版するなど少女小説、お姫様をテーマとした作品も多数。

「2021年 『お姫様と名建築』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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