シシリエンヌ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101310725

感想・レビュー・書評

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  • 中学生の時、女友達からお薦めされて読んだ。
    語り口からエッセイだと、最後の方まで勘違いしてた。

    昔読んだ時は、「貴方」が確固たる自己を持った完璧な女性に感じられたけど、歳をとった今読み返すと、生きるのが不器用で繊細な普通の女性に感じられた。

    二十代後半は女性にとって転換期だと思う。
    ハンディキャップだけじゃなくて、自身の女として価値が揺らぐ不安とか、色々が入り混じって最後の選択に繋がったように思う。

    不細工男を選んだことも、今なら理解できる。
    昔はその選択がすごく悲しかったけど、今はそこにある幸せも悪くないんじゃないかと思える。

    誰かのファムファタルとして、心に美しい姿で記憶され続けるのは羨ましいなと思った。

  •  ここまで物語の前半と後半で印象の違う小説はそうないと思う。
     今まで自分が読んできた嶽本野ばら作品の中でも、秀でて告白ぐあいがすごい。どうしてこんなに倒錯した美しい世界を書くことが出来るのだろう。自分にはどう足掻いたって届きそうもない恋物語が、この小説にはある。それに恍惚として、ちょっと哀しくなる。この感覚は一生忘れない。自分は嶽本野ばらさんの作品の他に、醜いとみなされているものに具備する美しさを赤裸々に語れる作品を知らない。
     印象に残ったのは「僕」と「館主」のマリアについての会話と、「貴方」がyohji yamamotoを着る理由、そして、「貴方」の「僕」に対する思いだ。
     ブルーフィルムに生きるアングラ世界の住人、「館主」に「僕」は「最低ですね」と言うが、読んでいて自分もそう思った。しかし、「館主」が話を進めていくにつれ、彼の「美学のあるエロス」を聞いていくにつれ、印象がガラリと変わっていく。醜いと思っていたものが、突如、眩しいまでの美しさをまとい始める。
     「貴方」は「僕」を閉じ込める監獄であり続けた。「僕」は「貴方」を憎み、愛し、求めた。が、それゆえに「貴方」はまた、不安になっていったと語る。永遠の幸せを信じることが出来なかった、と。やはり「貴方」に対する自分の印象も、ここでガラリと変わる。そして「貴方」――「永久に枯れない薔薇」は、気高くyohji yamamotoをまとった女性であり続ける。このような嶽本野ばら独特の、「貴女」=yohji yamamoto といったファッションの役割が、ものすごく好きだ。
     今、この本にはたくさんの付箋が貼られている。すべて自分が興味を持った、或いは心を動かされた会話や表現だ。これ以上語ることも難しい。今はとにかく余韻に浸りたいような気がする。そこで、この小説で心に残った文章を引用して、強引であるけれども感想としたい。・・・・・・本当に大好きになった本でした! ありがとうございました!

    『背が高い、顔がいい、手先が器用だ。――そのようなことと同一に、ハンディキャップを飽くまでポジティブに捉えようとする者達がいる。館の女優達は皆、そうなのだ。彼女たちは女優として生きることに己の誇りを持っている。彼女達は強い。しかしそれは最初からあったものではないでしょう。誇りと強さを内に秘めるまで、どれだけの煩悶と挫折、葛藤と自己嫌悪を乗り越えてきたことか。彼女達は美しい。何よりも美しい。』(本文より)

  • コップ一杯の水に垂らした一滴の毒が広がっていく
    とてつもなく強く美しく「僕」に演出していた孤高の薔薇の「貴方」は着る人に強さを求めるギャルソンではなく、弱さを受け入れてくれるヨウジをずっと好んでいたように実際はとても臆病で弱さを見せられない弱さがある等身大の女の子だったのだと思う。
    「僕」が「貴方」といたあの時間は「貴方」に捧げた春だったんだね
    最後まで「僕」を共犯者にしてくれなかったのは彼女が未熟だったから、でもだからこそ彼女の思惑通りになった 作戦は成功、痛いほど気持ちがわかってしまう
    そういえばつい昨日セックスをしたなとふと感じたのだけどそれはこの本のことだった、すごいな

  • 目はやめてって思ってたうちにそのオチは許せない

  • 服のブランドとそれを着るための心持ちがしっかりしているところが好き。今回出てきた女の子はロリータではなかった分お話の内容もセクシーだったし身につけているもの含めのエロスだった。
    ブルーフィルムの女の子たちもみんな愛おしい。私もみんなにドレスをプレゼントしたいなと思った。男優だけが浮いて見えるくらい馬鹿馬鹿しいのもらしくなくて良い。最初からわかってたけどハッピーエンディングにはしてくれない、非現実的ではあるけど、どこかでこういうことが起きていたらそれはとても悲しくて美しいことだなと思う。

  • 官能小説?でもないな
    野ばら作品4冊目だがライトに引き込まれる

  • 性描写がすごくて読むのが大変。

  • 野ばら本たくさん持ってるけど
    これが一番好き。

  • だいぶ前に図書館から借りて読んだ本を再読。いつもの野ばら作品とは雰囲気が違い、淫靡。キャラクターの名前は僕や君やニックネームのみ。主人公の僕は大が開く受験を控えた高校生。恋人もいる。だが散髪に行った叔母の家で従姉と出会ってしまう。彼女はノーマルだった僕の嗜好を変えてしまう。彼女なしではいられなくなるのもすぐだった。英語の勉強を教えてもらうという口実で叔母の家に行っていたのだが、彼女の目が見えなくなってしまう。しかし彼女はめげることなく、館へ行く事を決める。そこでは様々な障害を抱えた女性のブルーフィルムが撮影されていた。それから起こる様々な出来事の後、彼女は壊滅的に会わないと思う男と結婚を決めてしまう。

  • 性描写がものすごく多いので、電車で読み始めて後悔。別に嫌いではないのでちゃんと読みますが。
    僕と貴方の行為に関する描写と、ブルーフィルムを撮る時の男優が使う単語が違う(具体例を出したいような気がするけどいいのか、やめよう)のが、たぶん、野ばらストライクゾーンにより受け入れられるようになんだろうなって、邪推。
    「下品な男優の言葉ではエロスは刺激されないけれど、僕と貴方の行為は本当に官能的で甘美な興奮を覚えましたわ。」
    みたいな感想になっていくのではないでしょうか。狙いとしては。
    最後の主人公の生きていく方向にはすごく共感した。

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著者プロフィール

文 嶽本 野ばら
京都府宇治市出身。作家。
1998 年エッセイ集『それいぬ̶ 正しい乙女になるために』(国書刊行会)を上梓。
2000 年『ミシン』(小学館)で小説家デビュー。
2003 年発表の『下妻物語』が翌年、中島哲也監督で映画化され世界的にヒット。
『エミリー』(集英社)『ロリヰタ。』(新潮社)は三島由紀夫賞候補作。
他の作品に『鱗姫』、『ハピネス』(共に小学館)、『十四歳の遠距離恋愛』(集英社)
『純潔』(新潮社)など。『吉屋信子乙女小説コレクション』(国書刊行会)の監修、
高橋真琴と共書絵本『うろこひめ』(主婦と生活社)を出版するなど少女小説、お姫様をテーマとした作品も多数。

「2021年 『お姫様と名建築』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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