- Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101311821
作品紹介・あらすじ
白昼堂々行われる射殺、ハンマーでの撲殺、そして毒殺。社会主義政権崩壊後、開かれた国になるはずだったロシアで不審死が相次いでいる。犠牲者はジャーナリストたち。彼らはメディアが政権に牛耳られる国の中で、権力批判を繰り広げる急先鋒だった―-。偽りの民主主義国家の中で、今、何が起きているのか? 不偏不党の姿勢を貫こうとする新聞社に密着した衝撃のルポルタージュ。
感想・レビュー・書評
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ロシアという国が持つもう一つの姿が浮き彫りになっているような本でした。真実を告げようとするジャーナリストやその媒体は『何者かによって』文字通り『抹殺』されていく。そんな恐ろしさで身の毛がよだちました。
恐ろしい…。僕はこの本のページをめくりながら何度もそうつぶやいてしまいました。ロシアでは新聞やテレビなどで、現政権やプーチン氏を批判した際には、何らかの形。具体的にいうと 白昼街中でカラシニコフで文字通り『蜂の巣』になるまで射殺された者、放射性物資を密かに飲まされ衰弱の果てに命を落とした者、自宅前で撲殺された者......。 などなど、恐ろしい最期を遂げる中で(もちろん政府は関与を否定) 「ノーバヤガゼータ(新しい新聞)」という孤軍奮闘、鋭い権力批判をつづけている新聞社とそこで働く記者やスタッフたちを追ったルポルタージュです。
僕自身もこういう本を紹介して何か『警告』があるんじゃないかと思い、ビクビクものですが、ここに取り上げられているジャーナリストたちのこと思えば、そんなことは屁でもないであろうという考えに従っていこうと思っています。
僕が読んでいて特に恐ろしかったのは第8章の『ベスラン学校占拠事件の地獄絵図』という章のところで、現地で取材をしたエレーナ・ミラシナの前に繰り広げられていたのは、まさに地獄としかいえないような光景で、僕はここには書きたくないのであんまり具体的なことは書きませんが、突入した特殊部隊のメチャクチャな作戦内容と、『テロリスト』と呼ばれる人間に対してどういう報復手段に出たのか。そして女性でありながらよくここまで取材ができたな、という感想と、こういう『真実』を報道するとロシアでは文字通り『消される』ということをまざまざと知ることができました。
僕はロシアが語が読めるわけでもないし、正直、ここまでして真実は追究できません。ですので、国の意図どおりの放送をして、喫煙室でローンの完済日の話だけをし、高給をとっているテレビ会社の人間に対しても批判的な目を向けることができない自分が存在するのです。勇気あるノーバヤガゼータのスタッフたちに敬意を払うとともに、ロシアという国の多様性と闇の深さというものを思い知る一冊でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ロシアにおいて、政権批判をするマスメディアが政権から弾圧され、プーチンが大統領に就任した2000年~2009年までに120人を超える多くのジャーナリストが抹殺され(白昼堂々と射殺されたり、不可解な事故に遭遇したり、行方不明になったり)ている実情を、政権からの圧力に抵抗し続ける新聞社「ノーバヤガゼータ」の関係者への取材を基に描くノンフィクション。
本書で描かれる内容は、政権にダメージを与える内容の記事を書いたジャーナリストへの圧力や、マスメディアへの露骨な介入、など欧米・日本など報道の自由がある程度確保されている国の常識からは想像もできない酷いものです。本書自体は、2010年の出版で現在のロシアの状況を描いているわけではありません。しかしプーチンが大統領になってマスメディアを容赦なく締め上げる様子は、おそらくウクライナへの侵攻によってより一層激しくなっているだろうと容易に推測できます。
犯人を特定できて報道しようにも、政権に傷を負わせる内容だったら政権から恫喝される、マスメディアの大株主であり、政権の後ろ盾となっているオリガルヒ(新興財閥)から露骨に報道内容の介入がある、警察も国家権力に媚びて調査内容を捏造する…。本書を読んでいると現在のロシアの人々は”本当に”プーチンを支持しているのか、指示しているふりをしなければ身に危険が及ぶと考えているのか、私自身もニュースを見る時の視点が本書を読む前と後では少し変化したように感じます。 -
ソ連時代は過去のもの、とぼんやり考えていたことが間違いであることを痛感させられます。
正しくあるべき、市民の安全を守るための権力が、もっと大きな権力の下で恣意的に行動したらどんなことになるか、この本を読めば想像することができるでしょう。怖くならない人はいないと思います。
サミットの警備も、種々の「警戒」活動にしても、自分がその標的になるとは思わないから警察官の姿が「安心」につながります。でも、いわれのない罪で自分が対象になりうると考えたら、景色は一変して、不安と疑心が体を覆うことは避けられないはずです。
こんな題材に切り込んで著者は大丈夫なのだろうか、と思わずにはいられません。 -
権力批判をすると政権に命を狙われる。戦前戦中の日本の様相を呈する国家が現存する。それに抗するメディア、ジャーナリストが存在する。そこで本書のようなドキュメンタリーが生まれる。ロシアはさらに良くない方向に強化されているという。エリツィン時代にロシアに進出した企業は今後どうなるのか心配だ。2014.9.15
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政権とジャーナリズムとの関係を考えさせられる。
ソ連崩壊後、民主化、自由経済が進んでいると思っていたロシアだったが、何も知らなかったことに気付いた。
ノーヴァヤ・ガゼータは政権批判をしたいわけではない、只真実を伝えたいだけだ。
それらメディアに対し、様々な妨害を働き報道しないようにしむけそれでも止めれない場合は白昼堂々と殺害を行う。
如何なる妨害にも屈せず報道を続けるノーバヤガゼータを尊敬した -
単行本で既読。