夏の庭―The Friends (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.83
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本棚登録 : 11623
レビュー : 1541
  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101315119

作品紹介・あらすじ

町外れに暮らすひとりの老人をぼくらは「観察」し始めた。生ける屍のような老人が死ぬ瞬間をこの目で見るために。夏休みを迎え、ぼくらの好奇心は日ごと高まるけれど、不思議と老人は元気になっていくようだ-。いつしか少年たちの「観察」は、老人との深い交流へと姿を変え始めていたのだが…。喪われ逝くものと、決して失われぬものとに触れた少年たちを描く清新な物語。

感想・レビュー・書評

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  • このお話は、読んだ人の年齢や今置かれている立場によって
    感じたことや想ったことが、みんなそれぞれどこか似ているようでも
    実はみんな違う...読み終えてからしばらく心に残る余韻は
    読んだ人の分だけあるような気がしました。

    それはたぶん...(もしかしたら私だけなのかもしれませんが..)
    ここに登場する三人の少年たちのひと夏の経験を、同じ年ごろだった自分とを重ねて
    自分にとっての一番身近なお年寄りである、祖父母のことを思い出して懐かしんだり
    その頃の友達のことや、学校生活、夏のプール、サッカー合宿
    そして怖い話なんかにも、ふっとどこかに自分を重ねて回想してみたりする
    そんな想いを呼び起こしてくれたお話だったと感じたからです。

    その頃の私は祖母と一緒に暮らしていました。
    祖母は明治の生まれで、日本髪を結い上げたり、日本初期の
    パーマネントの機械も備えている髪結いさん(美容師)でした。
    立ち仕事だったからなのか足腰がとても丈夫で、何をするにも大抵は
    自分の足でどこまでもしゃんしゃん歩いて事こなしていた人だったので
    私が物心つく頃から皺くちゃで細くて小っちゃくて、華奢なおばあちゃんなのに
    何年たっても変わらない...ように見えていたおばあちゃんでした。

    だからあの頃"死ぬ"なんてこと、考えてもみなかった..。
    誕生日や敬老の日に贈る"長生きしてね"のメッセージでさえも
    お体裁のように書き添えていただけだったかも...と思ったくらいです。

    けれども、息が止まると死ぬとか、しゃっくりが百回止まらなかっから
    死んじゃうよ! とか、(←作中にはないです)そんなことは
    あぁ..あったあったあったよね~...と思い出して。(笑)
    子供ながらに怖がったりふざけあったりしていたことが
    とても懐かしく思い出されました。

    三人の少年たちにとってこの夏休みの出来事は
    少しだけ胸に痛むものもあっただろうけれど(動機)
    ほかの友達には出来ない事がやれているような
    ちょっと自慢もしてみたくなる大冒険だったことでしょう。
    そしてそこでは人と触れ合うことの優しさや寂しさも味わって...

    この先十年二十年三十年経って、あの少年たちもいつの日か
    このひと夏の経験を思い返すようなことがあったなら、
    どんなふうに懐かしく思い出すのかなぁ...と想像してみたりして。^^

    "だってオレたち、あの世に知り合いがいるんだ。
    それってすごい心強くないか! "

    なんとも微笑ましい..♪
    そっか....それなら怖くないよね...。^^

    この一言は、今の私自身にとっても心に響く言葉でした。

    コスモスの花咲く風景を目にしたらきっと思い出します。
    三人の少年たちとおじいさんと夏の庭。

    • nejidonさん
      yumiieさん、こんにちは♪
      感動がよみがえる素敵なレビューですね!
      細かい部分はかなり忘れているので、再読したくなりました。
      この...
      yumiieさん、こんにちは♪
      感動がよみがえる素敵なレビューですね!
      細かい部分はかなり忘れているので、再読したくなりました。
      この本は読感文の課題図書になったことがあったように思います。
      そうなると、感動しなくちゃいけない作品になってしまうのが、惜しいです(笑)。
      そんなことは抜きにして、多くの子どもたちに読まれてほしい名作だと思います。
      2017/11/24
    • yumiieさん
      nejidonさん、こんばんは!
      コメントありがとうざいます♪

      こちらは教科書なんかにも載せられているのでしょうか...?
      とすれ...
      nejidonさん、こんばんは!
      コメントありがとうざいます♪

      こちらは教科書なんかにも載せられているのでしょうか...?
      とすれば確かに、少年たちのしたことやおじいさんとの交流そのものに道徳を求めたり
      人と触れ合うことで感動するという事の方が大きいのかもしれないですね。
      読みながら、そんな思いは私にもありました。
      だけど読み終えて心に残っていたのは、なぜか私のおばあちゃんのくしゃくしゃな笑顔で...。^^
      お年寄りとの触れ合いといわれて自分と祖母とを重ねちゃっていたんですね。
      とても嬉しくて楽しい時間でした。
      大人にも子供たちが感じることとはまた違ったよい思いが伝わると思います。
      ぜひまた読んでみてください♪
      2017/11/24
  • H29.8.4 読了。

    ・三人の小学6年生と一人の老人の交流と死をテーマとしたお話。小学生たちとの交流を通して、活き活きと変化していく老人が印象的でした。また、草取りや包丁の使い方などを老人から教えられて学んでいく小学生たちの成長も垣間見れてよかった。
    少年たちが学んだ「おじいさんならこんな時なんて言うかな。」はまさに1UPしてますよね。

    ・「太陽の光の七つの色。それはいつもは見えないけれど、たった一筋の水の流れによって姿を現す。光はもともとあったのに、その色は隠れていたのだ。たぶん、この世界には隠れているもの、見えないものがいっぱいあるんだろう。」

  • とても素敵な少年たちとおじいさんの、ひと夏の話でした。
    この作者さん、初めてですが文章表現がとても美しい箇所がいくつもあり、何度か読み返してしまっては唸ってしまいました。私にしては珍し事です。

    少年たちの心の中、考えていることはとても微笑ましく読んでいました。そうそう、小学生の頃は何だかわからなくても意固地になって喧嘩したり、でも実はいろいろ考えていたり、、幽霊が怖かったり、、友達と連れだってなんだかしらないけど冒険みたいなことをやりたかったり、、

    この本はそんな少年の微妙な心を非常に丁寧に描きながら、ひと夏の貴重な体験を描いています。その体験が、とても素晴らしく、スタンド・バイ・ミーのように少年たちで冒険にでるのかと思いきや、近所に住む、荒れ放題の家にすむおじいさんを監視して、死ぬ瞬間を見ようという、一見実に不謹慎なもの。

    でも世間的には不謹慎であっても、少年たちの純粋な興味心から、止まらなくなってしまう様子はとてもよくわかります。「死ぬ」ってどういうこと?という興味というか、不思議というか、本当は怖いんだけど知りたい、という感覚は覚えがあります。ある意味、いまでもそうなのかもしれない。

    この物語のとっても素敵なのは、やはりそうやって監視しだした少年たちと、荒れすさんだ独居老人が、いつの間にやら触れ合い、心打ち解けていくところでしょうか。おじいさん、きっと誰とも会話がなく寂してゴミやら食事やら衣服などどうでもよくなっていったのではないかなと思います。いくつになっても人は社会や誰かしかの人と交流をもっていたいものですよね。そういう意味では、この少年たちの純粋な「死」への興味が引き寄せた偶然の出会いに、おじいさんが感じた喜びがとても感じられました。

    ひと夏の経験、この少年たちはどこへ行っても、離れ離れになっても、きっといつまでも忘れないでしょうね。とても印象に残る素敵な出会いと、少年たちの成長、おじいさんの再生の物語だったと思います。

    • kanegon69 さん
      mari さん、こんにちは! とても印象深い素晴らしい作品でした。私の拙いレビューなんかでよかったら、ご自由にお使い下さい^_^ こちら...
      mari さん、こんにちは! とても印象深い素晴らしい作品でした。私の拙いレビューなんかでよかったら、ご自由にお使い下さい^_^ こちらのサイトでは推敲など一切せずに、読んだ直後に一気に頭に浮かんだ事を書いています。ですので、文章全体としてまとまりがなかったり、重複してたりするかもしれません。変な部分がありましたら、読み飛ばして下さいね!今後ともよろしくお願いします!
      2019/10/11
  • 夏の文庫ラインナップに入っているので、いつか読みたいとずっと思っていた。

    少年3人と老人の距離がじわじわと縮まっていく人と人とのあたたかめの距離が懐かしかった。

    昔の番組で「みんななかよし」という道徳の番組があったけど、あの番組の「口笛ふいて~」のメロディーが自然に頭の中で流れ出した。

    子供に読ませてみたいと思ったけど、今時の子には(特にうちの子みたいな子には)「は?だからナニ?」と言われて終わりそう。

    どちらかというとターゲットは昭和40~50年代に子供だった子なのかな…と思ったり。

    それにしても所々、目頭が熱くなってしまって参ってしまった。亡き祖父母との夏の思い出が浮かび上がり、懐かしくて切ない。あの頃には戻れないけど祖父母に会いたいなぁ…とぼんやり思った。

  • どこの地域にも、ここって人住んでいるのかなぁ?と思うような古い家があると思う。
    そんな家に住む、生気のないおじいさんが気になる…というのはよく分かる。少年たちの心理を的確に捉えて書いている。
    おじいさんと少年たちの距離が縮まっていくところが、微笑ましく、またおじいさんが生きる力を得ていく姿もじんわりくる。

  • 夏らしい本と言えば、と聞かれると、安直だけどこの本を思い浮かべる。
    有名な作品なので、読んだ人も多いと思いますが、ネタバレ注意です。




    「夢の中で、オレはそのぬいぐるみとプロレスしてる。でもはっと気がつくと、それはぬいぐるみなんかじゃなくて……おばあさんの死体なんだ」

    「それがさ、まるきりぬいぐるみと同じなんだよ。反応が全然ない。オレがけると、ぐにゃってなるだけ。痛いともなんとも言わない。モノなんだ。物体」

    再読して、はっとした台詞だ。
    ここから三人は、もうすぐ死ぬんじゃないかと噂されているおじいさんの死を、見張りに行くことを決める。

    最初は無愛想だった、おじいさんとの交流。
    『スクラップ・アンド・ビルド』を思い出した。
    身体を動かし、頭を動かすことで、死の匂いからどんどんと遠ざかってゆくおじいさん。
    戦争の話、別れた奥さんの行方、花屋のおばあさんとの会話、花火とパチンコ屋の店長。
    すっかり忘れていた。
    こんなに沢山のエピソードが挟まれていたのか。

    おじいさんがいるから、自分にはお父さんがいないのかもしれない、と論理の破綻した愚痴をぼやくシーンがある。
    だけど、おじいさんがいたから、三人はそれぞれの抱えていた「難しさ」を克服したのだと思う。

    語り手のぼくが「お母さんがいつご飯を食べるか知らない」所から、母親が入院し、父親と下手なオムレツを作る所に至るのは、結構感動するよね……。

    また、テーマであるおじいさんの死。
    そこには、物体でありながら、物体と見なさない、単なる怖い話を越えた、現実があった。
    おじいさんが三人を待っていた、ぶどうの匂い。
    でも、三人が見つけて良かったな、と思う。

    知らなかったことを、知っていく。
    知れば、忘れる以外に知らないには戻せない。
    でも、子どもが世界にどんどん触れていこうとする、その勇ましい姿を、知らなくても良いことだって沢山あるこの世界にあっても、応援したい。

  • (あらすじ)
    町外れの古い家に暮らすひとりの老人を、ぼくらは「観察」することにした。生ける屍のような老人が死ぬ瞬間をこの目で見るために。夏休みを迎え、ぼくらの好奇心は日ごとに高まるけれど、不思議とおじいさんは元気になっていくようだ。いつしか少年たちの観察は、老人との深い交流へと姿を変え始めてゆく……。喪われ逝くものと、決して失われぬものとに触れた少年たちを描く清新な物語。

    ---------------------------------------------

    人が死ぬってどういうことなんだろうという疑問はまだ私も持っています。
    物語の終盤、3人が幽霊やお化けの話をしている時に「なんで人間は暗闇がこわいんだ?」という疑問を持ちます。

    その際、3人の少年のうち一人がこんな分析ををしています。
    「あんなにたくさんの妖怪やお化けを、人間は想像したり、名前をつけたり、絵に描いたりする。それは正体がわからないものがいちばん怖いっていう証拠だよ。はっきり姿を決めて、名前をつけてしまえば、お化けってこういうものだとわかる。わかってしまえば、少しは怖くなくなる。そうじゃないか?」

    たしかにそうかもしれないなと思った。
    私が「死」が怖いのも得体の知れないものだからなのかなぁとおもいました。私はまだ身近な人が亡くなるという経験をしたことがないので、この小説の3人みたいには割り切れていないところがあります。

    小学生の頃、「○○さんところのあの人亡くなったらしいで」と自分の両親か親戚かが話しているのを聞いて、「亡くなる」ってなんだろう。と心細いような不安な思いに駆られたのを思い出しました。

    湯本香樹実さんの描く少年たち、少年たちの見る世界、ささいな仕草や行動がとてもリアルで引き込まれました。

  • あのころに戻れる…
    こんなお話に弱いのです。本文で泣き、作者のあとがきで泣き、最後の解説文で泣き・・仕事の合間に読んでいたのですが、接客業だというのに、もう読み終えた後は、顔面ぐちゃぐちゃになってしまいました。「暑いですね。」が挨拶代わりにもなっている夏日の毎日ですが、こんな作品に出会えば、清々しい風が身体をす~うっと通り抜けていくような気持ちよさに包まれます。井上陽水さんの『少年時代』のメロディも浮かんできます。ビジュアル的にも心情的にも、ほわぁんと眼前に広がる世界が心地よくて。おすすめです!自分の子どもにも読んでほしい!

  • あの世に知り合いがいるからお化けも
    怖くないって…
    イイですね
    とても好きな作品です。
    他の作品も読んでみたいと思います

  • あまりにも有名な小説を、今更ながら。
    無駄がなく、すごくシンプルな筋だけど、それがまっすぐな感動に繋がる。
    本当に爽やかな読後感。
    あぁ良い物語だったな、と素直に思える。

    小学6年の3人の少年たち。その中の山下のお祖母さんが亡くなったのをきっかけに、木山と河辺も、人が死ぬところを見てみたいという好奇心に駆られるようになる。
    そして3人は、町外れに1人きりで暮らすおじいさんを観察し始める。生ける屍のような老人が死ぬ瞬間をこの目で見るために。
    3人の好奇心は日ごと高まっていくが、不思議とおじいさんは元気になっていくように見えて…。

    「人が死ぬ」ということを芯から実感したのはいつだっただろう、と考えた。
    初めて経験した身近な死は中学生のときの祖母の死だったけれど、身近で衰えゆく姿を見たわけではないし、亡くなる瞬間に立ち合ったわけでもないから、本当に実感したとは言えないかもしれない。
    生きているものはいつか必ず死んで、会えなくなる日がくる。そしてそれはいつか自分にも訪れる、ということを、実感したのはずいぶん大人になってからだったかも知れない。

    この小説の少年たちも、死という概念がまだ自分のなかには存在していない。
    祖母を喪った山下でさえも、死ぬということは何だかぼんやりと靄に包まれた感覚だ。それは普段あまり会ったことがなかった祖母だったから、というのがとても大きい。
    だから、知りたいと思った。死ぬ、ということを。
    という、幼いからこその残酷な感情が元で1人のおじいさんを追いかけ観察を始めるのだけど、それが思いがけない方向に転がってゆく。

    流れや結末を書いてしまうとこの物語の良さが薄れてしまうので書かないことにするけれど、その夏少年たちがした経験は、彼らのなかに一生忘れられない記憶として残るのではないかと思う。
    切なく、大きく、だけど瑞々しい子ども時代の経験として。

    青々とした植物やみどりの感じとか、プールに行ったりサッカーをする描写とか、面倒くさがりながらも塾に行くところとか、夏休みを目一杯楽しんでいた幼い日のことが懐かしくなる。
    1日1日が冒険で、新しく知ることで溢れていた年代。
    瑞々しい、という言葉が私のなかでは一番しっくり来る、素晴らしい青春小説だった。

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著者プロフィール

湯本香樹実
1959年、東京都生まれ。東京音楽大学卒。小説『夏の庭 The Friends』で日本児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞を受賞。同作品は10カ国以上で翻訳され、ボストングローブ・ホーンブック賞、ミルドレッド・L・バチェルダー賞などを受賞。『くまとやまねこ』(絵・酒井駒子)で講談社出版文化賞絵本賞受賞。その他に、小説『夜の木の下で』『岸辺の旅』、絵本『おとうさんは、いま』(絵・ささめやゆき)『わたしのおじさん』(画・植田真)『きつねのスケート』(絵・ほりかわりまこ)など。絵本の翻訳も手がける。

「2019年 『あなたがおとなになったとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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