ポプラの秋 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101315126

感想・レビュー・書評

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  • 父親が交通事故で死んでしまったあと、母親は七歳だった千秋を連れて知らない町を歩き回るようになった。そうやって行き着いたのが、大きなポプラの木のあるアパート。母親と千秋はそこで三年間暮らした。
    大家のおばあさんはこわそうだったけど、体調を崩して学校を休んでいた千秋を母親がいない間、預かってくれた。不安感から神経質になっていた千秋は親しくなったおばあさんから、秘密を教えてもらう。
    自分が死んだとき、あの世にいる人に届ける約束でおばあさんは手紙を集めていた。千秋は父親に手紙を何枚も書いた。
    母親が再婚して引っ越すまでの三年間、千秋はおばあさんやアパートの隣人たちと交流した。

    今では千秋ももう大人。看護師の仕事は辞めてしまった。そんなときにおばあさんの訃報を知る。
    駆け付けたアパートには今でもポプラの木があって、そこにはおばあさんに手紙を預けた人たちが大勢いた。当時の母親が父親宛てに書いた手紙を読み、千秋は父親の死の真実と母親の愛を知る。

    ---------------------------------------

    2020年、社会が不安定になっているせいなのかはわからないけど、たくさんのひとが自分で自分の死を選んでしまった。
    誰かが自殺してしまうたびに、テレビでは生前の輝かしい姿を繰り返し流していた。

    自殺について色んな考え方があると思うし、自分も色々な媒体の報道を見たり、本を読んで考えていた。
    この本を読んだのは、自殺について考えたかったからではない。けれど、死んでしまったひとと生きているひととの繋がり方の答えみたいなものを見つけてしまった気がする。

    どうして死んでしまったのか、そのことを幾度も考え、答えの出ない問いを抱えて生き続けていくのが、自殺を選んだ夫との繋がり方だ、と千秋のお母さんは書いていた。

    九十八歳で亡くなったおばあさんと、自殺を選んだ千秋のお父さん。死、という点では二人の死は同じかもしれないし、違うかもしれない。

    読み終わったあとも、自分が死んだあとのことを考えていた。色んなひとに色んなことを言われそうで、死んでもなお恥ずかしいな。

  • 自分の人生の中で、短いけれど美しい思い出として残っているひと期間を思い出させる素敵な物語だった。

  • 再読。
    よかった。
    生と死。子どもと老人。
    亡くなった人へ届けられる手紙。
    生きている人の再生。
    千秋がポプラ荘の大家のおばあちゃんによって、生きる力を得て行く。そしておばあちゃんの死によって、再びそのことに気づく。

  • 父を亡くしたばかりの少女にポプラ荘大家のおばあさんが秘密を持ちかける。長生きした分だけおばあさんは死を見つめその消化の仕方も知っているのだ。
    子供と老人が“死”によってその関係性を深める図は『夏の庭』そのまま。死を知らないがためにその興味から理解を深める『夏の庭』に比べ、身近な死を経験した当事者たちが死と向かい合う『ポプラの秋』はその点で続編と捉えても良いだろう。
    死と向き合うからこそ、生が見える。ポプラ荘に住んでいる住人は優しい。現代ではなかなか聞かないくらい住民のお付き合いだ。作者特有の死を扱いながらもあたたかな作品に仕上がっている。

  • 不安がたくさんになってしまった「私」と、それを救ってくれたおばあさんとの話。
    許せなかった母、そして和解。
    オサムくんにまた会えるかな。

    手紙を書くとすっきりするのはよく分かる。

  • 「死んだ人に手紙を書けば、私が持っていってあげるよ。」―こうして、父を亡くした7歳の千秋と、おばあさんの交流が始まっていく。大切な人を失った悲しみを、人はどうやって解決していくのか。死者への手紙が詰まっている『秘密の引き出し』は、恐ろしいけれどファンタスティックな魅力があり、読者心を惹きつけます。湯本さんのジュブナイル小説には、思いがけない展開と意外性があり、物語として大人も十分楽しめる内容です。

  • 胸の奥で眠っていた懐かしい思い出が、みずみずしくよみがえりました。

    ポプラの木を眺め、おばあちゃんと焼芋をした主人公と、
    自分が祖母と過ごした記憶が重なって、
    ラストシーンに涙しました。
    (私は、おばあちゃんっこだったのですが、亡くなってずいぶん経つので、最近では思い出すことも少なくなっていました。思い出せたことが嬉しかったです。)


    幼いころの幸せの原風景。
    おばあちゃんが自分の死に託したファンタジー。
    心温まるストーリーでした。

  • 父の死後、引っ越してきたアパートのお婆さんとの出会い。つっけんどんだが優しさを秘めた人だった。それぞれ辛い事も経験した人も多いが、人に助けられて再生することも多い。作者の穏やかで優しい人柄が感じられる。2019.6.28

  • 穏やか。悩みながら、でも、生きてるだけでがんばろって思える思い出と人との関わり。読んでよかった。

  • 心があたたかくなりました。読んでいると場面が想像出来るお話でした。

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著者プロフィール

1959年東京都生まれ。作家。著書に、小説『夏の庭 ――The Friends――』『岸辺の旅』、絵本『くまとやまねこ』(絵:酒井駒子)『あなたがおとなになったとき』(絵:はたこうしろう)など。

「2022年 『橋の上で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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