ポプラの秋 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 304
  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101315126

感想・レビュー・書評

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  • ポプラの木のそばに立つ小さなアパート。
    父を亡くした7歳の私は、まるでポプラの木に引き寄せられるように母とそのアパートに移り住んだ。

    あれから18年。
    幼心に怖かった大家のおばあさんが亡くなった一一。

    「何でも、手紙が出てきたらしいわよ。」
    18年という時を経て守られたひとつの約束。今は亡き愛する人へと綴った手紙一。

    ***
    電車で読んだのが失敗でした。泣きました。
    「夏の庭」で有名な湯本香樹実さんの作品。個人的にはこのお話の方が好きです。
    死というものをこれだけ身近に引き寄せて、なおかつその重みを丁寧に響かせるのはこの作家さんならではですね。他の作品も読んでみたいです。

  • 母が亡くなってからおよそ二年間、私は母に手紙を書いた。
    こんなにも話したいことがあったのかと、自分でも呆れるほどだった。
    分厚い手紙の束が貯まった頃、妙に気持ちが落ち着く日が来た。
    大丈夫、私、生きてるもの。きっと良い日もやって来る。そう思えた。
    この本に登場するおばあさんも、手紙を書くことの効能を知っていたに違いない。
    しかし、「あの世へ手紙を運んでやる」とは、なんと粋な誘い文句だろうか。
    亡くなった父親に自分の言葉が届けてもらえるならと、7歳だった主人公がせっせと手紙を書いたのも、とても頷ける展開だ。もっとも、そんなのは「子ども騙し」かと思いながら読むと本当に騙されるのだが。

    「夏の庭」、そしてひとつ前の「西日の町」と同じく、喪失と再生の物語。
    今回は20代半ばの女性が、母子家庭だった頃のアパート暮らしの記憶を、悔恨の思いで振り返る描写が多い。そこに微かなノスタルジーも入り込み、女性らしい語りになっている。
    読む年代によって、少女寄りになったり母親寄りになったり、あるいはおばあさんに共感して読んだりするだろう。
    特に身近などなたかを亡くした経験のある方は、身につまされるかもしれない。
    主人公は語り手であるかつての少女(今は成人している)だが、私はこの母親に肩入れしたくなる。
    何も言わず突然自死した夫。大きな「何故?」を胸に秘めたまま、幼い子を抱えて生きていかなければならなかった母親に、言いしれぬほどの孤独を見てしまう。
    電車に乗って行き当たりばったりの旅を続ける日々の、言葉に出せない深い絶望と葛藤。
    この子だけは守らねばならない。父親の死の事実から。
    激情とともに吐きだして、いっそ怨み事が言えたらどんなに楽だったかもしれないのに。
    最終章のポプラが黄色く色づく季節に、その母の胸の内を初めて知ることになる主人公。
    救われたのは、この主人公だけではない。母親もそうだったはずだ。
    そして私は今回もまた、しばしば涙ぐみながら読むこととなった。

    湯本さん、ありがとう。次もあなたの作品を読みます。

  • 小学一年生の時、お父さんが突然事故で亡くなった。
    「死」をなかなか受け止められず不安で押し潰されそうになった千秋はお父さんへ手紙を書く。
    アパートの大家のお婆さんが、あの世にいるお父さんへ手紙を届けてくれる、と言ってくれたから。
    周りで起こった出来事を日記のように手紙に書き綴ることで、自分の内面を吐き出す千秋。
    「書く」という行為が自分の気持ちを整理してくれて、千秋も徐々に落ち着いていく。

    最初はひらがなばかりの手紙だった。
    日を追って漢字が少しずつ増えていったこと、お父さんはきっと気付いて喜んでいるはず。

    秋になるとアパートのみんなで、庭にそびえ立つ大きなポプラの木の落ち葉を掃き集めて焚き火してお芋を沢山焼いた。
    勿論お芋はぬれた新聞紙と銀紙にくるんで。
    寒い中で食べる熱々の焼き芋は何よりのご馳走。
    ポプラの木は一部始終を知っている頼もしい証人だ。

    身近な人の死はとても切ない。
    そんな遣りきれない切なさを優しく包んでくれる静かな物語だった。

  • ポパイみたいなしわくちゃのおばあさんと、小さい千秋とのやりとりが微笑ましい。

    死んだ人に手紙を届ける仕事をするというおばあさん。
    千秋は亡くなった父宛てに手紙を書いて、おばあさんに預ける。
    父に手紙を書く中で、小さい千秋が抱えていた不安や焦りが、少しずつ解消していく。

    母から父に宛てた手紙を読んでいたら、嘘や秘密が必要なときもあるということが、建て前とか綺麗事ではなく、現実的な問題として分かったような気がした。

    ずっとひとりで嘘や秘密を持つことは苦しいけど、お母さんはその秘密をおばあさんに預けることで、少しは楽になったんじゃないだろうか。

    縁起でもないけど、大切な人が亡くなったときにもう一度読みたい作品。

  • 文書の表現が好きです。
    流れるような読みやすい文書なのに、
    登場人物の心象がしっかり伝わってきます。
    得体の知れない不安におびえる様子は
    きっと体験した人でないと書けないのでは、
    思えるほどリアルでした。
    でもそこで、ずーっと沈み込んでしまう物語ではなく
    おばあさんとの出会いが、
    主人公を変え、救ってくれる物語。
    ところどころの台詞が飾らないで、とても素敵です。

  • 夏の庭がそうであったように、この作者の「死」への対峙は柔らかで、穏やかで、温かみすら感じる。
    主人公がこころをよせる、アパートの大家のおばあさんは、死者への手紙を運んでくれる…
    主人公は亡くなった父へ手紙を書くようになる。1通書くたびに、まるで父の存在を消化するかのように。
    小学生が描くにはレベルの高すぎる文章力のある手紙なので、若干リアリティがないのだが、物語の世界観を冷やかすほどではなく、手紙の文面を通して感じられる、彼女が父の死を乗り越えようとする成長が、そして他人を思いやる優しさが、胸に迫る。
    そしてなんとなくは想像していた衝撃のラストで、彼女を包んでいた周りのすべての人をいとおしく思う。

    「夏の庭」のほうが好きだけど、目頭と心が熱くなる、素晴らしい作品。

  • 『西の魔女が~』と比較されやすそうな気がした。『ポプラの秋』の方はお婆さんと過ごした幼少期と大人になった現在の自分のニ視点で書かれている。それは一見小説にリアリティを持たせるかに思えるけど、「まい」の視点を貫いている『西の~』のほうがリアリティがある気がする。『ポプラの秋』、少し成長した自分が大事な人の死を受け入れるというのは設定的に読みやすいが、それが逆にリアリティを無くしてるような。色々な事がお伽噺っぽいというかノスタルジックというか。細かい出来事をひとつひとつ見ていくと、主人公をはじめとするポプラ荘の住人の辛い現実(離婚や自殺)が色々書き込まれているけれど、書き方が詩的に感じた。 (リアリティが何を指すか説明がいるな…)     でも読んで良かった作品。(13.12.28)

  • 秋のあいだに読みたいと思い手に取った本。
    「夏の庭」同様に素敵なほっこりと心が温まり、
    沁みていく素敵な物語だった。

    子供の頃におばあさんと出会うことで救われ、
    そして大人になってから、そのおばあさんの葬儀を
    手伝う中でまたもや救われる。
    人はどんな人と出会い、どんな関わり方をするか、
    それによって人生は豊かにも貧しくもなるのだろう。

  • 湯本香樹実初読。凄く、凄く良かった。最後のお母さんの手紙の件は特に良かった。梨木香歩の『西の魔女が死んだ』と似たような雰囲気の作品ではあるけど、私は断然こちらのほうが好み。図書館で借りたけど、あまりにも気に入ったので即日文庫をお買い上げ。将来子供が生まれたら絶対に読ませたい本。久々に素敵な本に出会えた。また読み返したいと思う。2011/414

  • 再読。この作者は…すごい。

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著者プロフィール

湯本香樹実
1959年、東京都生まれ。東京音楽大学卒。小説『夏の庭 The Friends』で日本児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞を受賞。同作品は10カ国以上で翻訳され、ボストングローブ・ホーンブック賞、ミルドレッド・L・バチェルダー賞などを受賞。『くまとやまねこ』(絵・酒井駒子)で講談社出版文化賞絵本賞受賞。その他に、小説『夜の木の下で』『岸辺の旅』、絵本『おとうさんは、いま』(絵・ささめやゆき)『わたしのおじさん』(画・植田真)『きつねのスケート』(絵・ほりかわりまこ)など。絵本の翻訳も手がける。

「2019年 『あなたがおとなになったとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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