カリスマ 上巻―中内功とダイエーの「戦後」 (新潮文庫 さ 46-1)

著者 :
  • 新潮社
3.75
  • (15)
  • (21)
  • (25)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 205
感想 : 23
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (463ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101316314

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • いやー読み応えあります。
    まんま昭和経済史。
    太平洋戦争でフィリピン戦線を体験→戦後動乱、もののない時代(闇市)→58年大阪千林にダイエー1号店→高度成長(価格破壊。いいものをもっと安くでメーカーと対立)→83年連続3年赤字をV革作戦で盛り返す→V革成功とともにV革戦死を社外へ追い出し、息子の潤を専務に迎え入れる→85年プラザ合意→バブル(過剰投資とM&A)→バブル崩壊(赤字が膨らみ株価が下がる)→資産を次々と売却→2001年中内引退→2005年死去

    昭和の時代を一気に駆け抜け、絶頂と凋落を体感した稀有な人生だ。絶頂期にはカリスマと呼ばれ、金と権力をほしいままにしたが、引き際の悪さと、一度手にしたものは手放さない往生際の悪さで評判を落とし、寂しい晩年を過ごしたようだ。

     生前、あれほど忌み嫌ったライバル、イトーヨーカ堂に差をつけられてしまったのを、どのような思いで受け止めていたのでしょう。本の年表は2001年で終わっていますが、2005年にはイオングループに吸収され、来たる2018年にはダイエーという屋号は完全に廃止される予定になっている。
     私の息子はまだダイエーの存在を知っているけれど(平成6年生まれ)、その息子はもはや「ダイエーってなんの会社だったの?」っていう時代がくるんでしょうね。神戸出身の私としては少し寂しいです。

  • もちろん店は知っていたが、大学の授業でダイエーの経営に興味を持ち知りその実像を知るために。時代背景もあるが小売に起こした価格革命とその経営者のエネルギーをうかがえる1冊(~2004大学時代の本@202012棚卸)

  • 戦争を経て戦後のし上がっていった人物で最も有名なのが田中角栄だとしたら、経済界版田中角栄にあたるのが中内功ではなかろうか。

    栄華を極めやがて没落していくところもダブる。
    「ダイエー」という日常買い物に訪れた場所だけに、影響力は田中角栄以上かもしれない。

    近時、偶然ネット発のライター・岸田奈美氏の著作にも触れたことで、「神戸」という都市をもっと知りたくなった。

    そんなきっかけにもなった一冊だった。

  • 日本の流通革命を起こした中内功のノンフィクション
    ノベル。日本近代史を象徴する一冊と考えてよい
    ただ、あくまで小説である。体系的にまとめている、
    というものでもないし、あくまで著者の視点である。
    よってマネジメント視点や流通の勉強としては向かない

    だが、戦後から流通の形が作られた時期であるため
    中内氏の軌跡は、ほぼ戦後以降の日本近代を総纏め
    したかのような内容だ。

    もし、これから読まれるならば、ある程度の知識が
    あると面白いと思う。百貨店法、大店法や小売業界の
    知識があると面白さは広がっていく

    この書物では戦争前の中内氏がどのような人物
    だったかを中心に展開されるが、様々な要素がある。
    どの視点で読むかで面白さは全く変わってくるだろう。

    中内氏が戦争から戻り、どのような人物へ変わったのか
    著者は最後まで戦争と中内氏を紐づける。
    人間不信。狂気。戦争。
    これらの用語が執拗なまでに繰り返される。

    時代背景は複雑だ
    戦争。ヤミ市。神戸の特性。
    冷戦下における資本主義が提供する消費主義と
    システムも注目すべきだろう。その中を中内氏は
    強かに生きる。その姿は凄まじく、同時に哀れでもある

  • 中内功とダイエーの誕生から興隆そして衰亡までを丹念に描きながら、戦後日本における消費文化と流通業に切り込んでいる。
    上下巻なのでボリュームはあるが、著者の筆力があるので退屈せずに読める。

  • 戦後日本の流通業発展の歴史において外すことのできないカリスマ経営者中内功氏の人生に迫るノンフィクション。実の弟たちとも全面対決してしまう、主人公の恐ろしさに引き込まれてしまう一冊でした。カリスマ性がある人とはある物事に対し狂気的な執着心がある人だと思いました。

  • 中内さんの評価は、低すぎる。

  • スーパー「ダイエー」の創業者・中内功の生涯を描き、戦後史の中で彼の果たした役割を検証するノンフィクション作品です。

    上巻では、目立たない少年時代から説き起こし、フィリピン戦線でアメリカの圧倒的な物量に直面した戦時中を経て、戦後神戸の町でヤミ市を舞台に活動を始め、さらに大阪の千林商店街で「主婦の店・ダイエー薬局」を起こすまでの軌跡を追います。

    中内功という人物の矛盾に満ちた生涯そのものも非常におもしろいのですが、彼の人生と戦後日本の歩みの中に置くという著者の企図もたいへん興味深く感じました。

  • (あらすじ)
    小さな薬屋の息子として生を享けた中内功。戦時中はフィリピン戦線を彷徨い、終戦後はヤミ市を舞台に人生の再スタートを切る。やがて「主婦の店ダイエー」を開業。キャッシュレジスターの導入や、独自の流通網を築き上げることで、思い切った値下げ作戦を展開する――。戦後日本経済の発展とともに成り上がり、そして破滅していった男の全てを書き記した超重厚ノンフィクション。

    (感想)
    平成13年の本なので、すでに12年前時点での話ではあるが、勉強になる。
    Wikipedia でその後の動きもフォローしながら読んだ。
    自分が下関市民なので、丸和がダイエーの創業時の戦略に大きな影響を与えていたというのは非常に興味深かった。

  • 03042

全23件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1947年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。編集者、業界紙勤務を経てノンフィクション作家となる。1997年、民俗学者宮本常一と渋沢敬三の生涯を描いた『旅する巨人』(文藝春秋)で第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年、『甘粕正彦乱心の曠野』(新潮社)で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞。

「2014年 『津波と原発』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐野眞一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×