だれが「本」を殺すのか 下巻 (新潮文庫 さ 46-6)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (467ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101316369

作品紹介・あらすじ

「本殺し」の"犯人"は、驚くべきところにも潜んでいた-。「本」が生まれる現場から、読者の手に渡るまでを漏らさず検証。その末に炙り出された、新たな容疑者。破綻寸前の制度疲労、押し寄せる電子化の波、マイナスを続ける販売額…。日々激変する刹那的状況を、さらに徹底取材。新たに「検死編」として加えた、瞠目のルポ。いったい「本」は、再び息を吹き返すことが出来るのか。

感想・レビュー・書評

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  • 月刊誌ダ・ヴィンチへのアツい批判に笑う
    うーんまあ確かにそうかもだが・・・諸行無常だよねえ

  • 感想は、「上巻」に記載。

  • 出版業界のビジネスに興味を持って。不況と言われて久しい気がするが、問題は電子書籍の登場だけではなくいと感じた(~2004大学時代の本@202012棚卸)

  • 2004年刊。上下巻中の下巻。

     自費出版請負の如何わしさ(といっても目新しくはない)と図書館論(著作権法の、出版著作物の貸与権問題)は多少目を引いたが、全体的には斜め読みで済ませられそうな…。
     理由は、⑴過ぎた良書嫌悪と悪書礼賛が露悪趣味を鼻にかける風で嫌味に見える点。そもそも良悪を自ら区別できると考えていそうな点が気持ち悪い。
     ⑵雑誌「ダ・ヴィンチ」への醒めた叙述が教養主義への憧憬に見える一方、その教養主義の権化と看做す岩波への否定的視座という矛盾。
     この豹変の他、読書力低下に関し、東大法学部関係者の「『岩波』すら読めなくなった東大生」との証言がある。この教育関係者としての自嘲気味の証言を、著者は理由を挙げずに言下に否定した(上巻にて)一方で、下巻では「バカの壁」のベストセラー化を引き合いに、読書力の低下を当然(所与)の前提とした叙述を展開する。
     というように、叙述の豹変や矛盾を衒いなく出来てしまうところに??だからだ。

     そももそ、ルポと銘打っているが、雑誌連載から単行本化・文庫化にあたり書下ろしに近くなった(一部書下ろしもあるそう)と自負している上、ここで提示する教養主義の衰退も読書力低下は何れも出版不況の要因論に関わる重要事項なのだから、その叙述を再検討しないのは○○○だろう。叙述の信用性にも関わるし…。

     確かに、著者は悪徳をリサーチする情報収集には長けているのだろう。実際、「沖縄…」は良かった。が、証拠を固めて事実を暴き出す能力は……という印象。
     首尾一貫の叙述ができないのは、書いている時に前に書いたことを忘れがちに加え、激しすぎる思い込みが叙述にストレートに反映する問題なんだろうなと感じる。

     なお、電子書籍の利用。
     個人的には、①今よりも脚注の豊富さが増せば、利用し甲斐があるかも、と感じる。
     例えば、経済系の知らない言葉を範囲指定すれば、即時に広辞苑や経済辞典の該当箇所に移ったり、引用部分を範囲指定すれば引用元の該当頁とその周辺に飛べるようになった時。
     あるいは、②本書の如く、個人的にはどうでもいいと思う部分の多いノンフィクションの場合、情報のスリムアップと自身の理解亢進のために、不要の叙述部分を抹消できる機能が付いた時(著作物の翻案権の問題はあるが)が妥当するか。

     補足。
     ①書籍に付すICタグ。万引き防止のそれは、個人の書籍購入情報の第三者(国も含む)による取得・集積を可能にする。
     ②著作権の消尽。私が子供や知人に本500冊を安価で貸し出した行為を、法令で著作権侵害とすべきなのか。ブックオフとどう区別するんだろう(不特定又は多数への貸与か否かで区別するんだろうな)。
     侵害を肯定する場合、前者はどのように捕捉するのかな?。
     ③超高級マンガ喫茶≒高級有料(例えば会員制)図書レンタル業が誕生しつつある。個人的には不要だけれど…。

  • p229『博士の愛した方程式』
    電子図書館 本に対してインターネット感覚
    p263

  •  年間書籍のタイトルは年々右肩上がりであるのに、売り上げが伸びない理由が知りたい。書籍販売の再販制度の弊害をよそに業績を伸ばす業態もある。マンガ喫茶やレンタル本またはわたしも利用しているブックオフなどが上げられる。業界のシステムは百科事典を家具として揃えていた時代のものであり、現実は新刊1200円で購入した本を1,2週間後にはアマゾンで個人が800円で売るような時代なのである。そして新たに電子書籍ブームが到来するとしたら、出版業界はお先真っ暗な状況であることは間違いない。

  •  零細書店 教科書と学習教材をがっちりおさえておけば、客はひとりもいなくてもやっていける。地域の学校をひとつもってさえいれば、かみさんと二人で経営している小さな店なら食うことはできる。

    バジリコ 永井護 敗戦真相記
    森岡正博 無痛文明論
    山本義隆 磁力と重力の発見

  • いったい誰が「本」を殺したのか?先日の上巻に続い下巻を読了。
    本書は2000年出版時の内容を捜査編として、上巻に1章から6章及び下巻に7、8章とエピローグとして収録し、文庫化に合わせて下巻には新たに検死編を収録している。
    出版不況を招いている犯人は誰なのか?という視点で、本に関係する川上から川下まで、著者〜出版社〜取次〜書店〜読者とそれぞれの立場の検証を行ったルポであり、ここであぶり出された問題は文庫化から5年以上経った今日でも改悪はされど、改善しているとも思えないのが現状だ。
    その後毎年のように繰り返されている特定著者によるビジネス本の乱造ブーム、「作者棚」による書棚占拠、まるで首に縄をくくったかのようなブックオフへの大手出版社の出資、あれよあれよという間にできあがった大日本印刷グループによる出版コングロマリッドの形成、そして昨年からの何度目かの電子書籍元年幻想......。
    この数年でさえ話題に事欠かないこの業界だが、なぜ根本的な解決に至らないのか?
    本書のルポに全面的に共感するわけではない。さすがに一般人以上に本に接してきたからこその作者であるがゆえに、「本」に対する幻想は出版社の持論と同じ匂いをそこかしこに感じる。
    なぜ「本」だけ消費財ではなく文化財(それも今ではなく未来に対しての)扱いなのか?しかも、出版社と名乗る営利企業が販売する商品に対してすべからく「文化財」扱いする必要が有るのか?
    まるで既得権益としかいえないこの部分に対して、いまだ明確な答えはない。
    しかも立ちが悪いのは、この問題に言及する作者自身が出版社から本を出版し、取次がその書籍を各書店に卸し、書店が読者(これもおかしいと思う、なぜ本を買う人は顧客・消費者・購入者とは呼ばれずに「読者」という名前付がされるのか?)に販売して、はじめて我々にその主張が届くわけだ。
    ということは、内部の業界に属する人がいくら頑張っても構造改革並の荒行は期待できないということ。
    それこそ、他業種もしくは黒船にすがって無理やり開国を迫られるしか手立てはないのではないかと思えるほど、非常に先が暗いルポタージュだった。

  • 読了して思ったのが、この作者のフットワークの凄さ。

    時代の移り変わりに翻弄されながらも、必死で策を練る人々。それをインタビューで浮き彫りにしていっている。

    書物が持つ本質を見極めた上で、時代に対応したコンテンツをつくれば、「本」は死なないと思う。

  • ・「講談社とか集英社のような大手版元の出版物やベストセラー本は、時速50、60キロで走れる道が取次と書店の間にできていると思います。しかし大手版元でもない、ベストセラーでもない、新刊でもない本の流通が、読者の大きな障害になっているんです」(今井書店社長・永井伸和)

    ・「僕らは人様の精神を商品にするといういかがわしい仕事をしている。この人がどれくらいのものになるか。そんな目で人の異常さとか不足さとか過剰さとかがカネになるか、ならないかを見ている。この仕事にはそういう嫌な面がある」(幻冬舎社長・見城徹)

    ・「ぼくの足元には、おそらくぼくが20年かかっても掘りつくせないほどの本の材料が、まるで宝物のように埋まっているのだ」(無明舎出版社長・安倍甲)

    ・「ひとつはじぶんも物書きであるか物書きの候補者のにおいをもったものである。もうひとつはじぶんが所属している出版社を背光にして文壇的にか政治的にか物書きを将棋の駒のように並べたり牛耳ったりしてやろうと意識的にあるいは無意識のうちにかんがえているものである。あとのひとつは、他の職業とおなじような意味で偶然、出版社に職をえているといった薄ぼんやりしたものである」(思想家・吉本隆明)

    ・「川の表面を流れている”いま売れているもの”を追っても、それはもう流れ終わって遠くに行っている。編集者はもっと上流に狙いを定め、みえない底の流れをとらえなければいけない」(新人物往来社書籍編集部編集長・大出俊幸)

    ・「作家・版元側は複本問題をよく主張しますが、ほとんどの地方図書館は、複本を揃えようと思っても、一冊以上揃えられないというのが現状です。それ以前に複本を買うだけの予算がない。」(慶応大学文学部教授・糸賀雅児)

    日本の近代化が達成できたのは、寺子屋からの伝統をもつ学校と、名もなき庶民までが本を読む習慣の二つが両輪のようになって日本の歴史を牽引してきたからだと唱える著者による本を取り巻く現状ルポ。
    カバー写真:広瀬達郎(新潮社写真部)

    書店、取次、版元のルートや地方出版者、零細書店のあり方、
    雑誌やコミックスの扱われ方にブックオフの台頭、
    図書館の無料貸本屋問題に電子ブックのこれから、
    インターネット時代の著作権問題やICタグ導入によるプライバシー問題、
    書評の消費社会化に読者の読解力の低下など
    様々な問題点やそれに取り組む人々のインタビューによって
    これからの本の未来を模索する手がかりとなる本です。
    解決方法は示されていはいないけれど、
    とりあえずこのままではいけないと危機感を持たせてくれます。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。編集者、業界紙勤務を経てノンフィクション作家となる。1997年、民俗学者宮本常一と渋沢敬三の生涯を描いた『旅する巨人』(文藝春秋)で第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年、『甘粕正彦乱心の曠野』(新潮社)で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞。

「2014年 『津波と原発』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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