- Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101318165
作品紹介・あらすじ
1994年の春、ジャック・マイヨールはカリブ海の島にいた。映画『グラン・ブルー』主人公のモデルにして素潜りの世界記録樹立者は、いかにして水深105メートルに到ったのか。イルカに導かれて長い歳月を海で生きる彼の思想はどんなものか。そして野生のイルカやクジラと泳ぐ夢はかなうのか。すべてを確かめるため、ジャックと共に過ごした著者が贈る「幸福な日々」の記録。写真多数収録。
感想・レビュー・書評
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『〝クジラ〟強調月間始めました!』14
第14回は、池澤夏樹さんの『クジラが見る夢』1994年作品です。
ジャック・マイヨール。フリーダイビングで55歳にして105mの世界記録を樹立し、自伝を基にした映画『グラン・ブルー』もあります。
本書は、著書が海とともに生きるジャックと3週間生活を共にし、ジャックの半生を辿りながら、生き様に迫る「幸福な日々」の記録です。
著者の目に映ったジャックからは、「何か〝偉大なもの〟に近づこう、自分の〝内なる力〟でそれを実行したい」という意志を感じるのでした。
水深105mのグラン・ブルーの青い暗闇も、シロナガスクジラ(と共に泳ぎたい、が見る夢を共に見たい)も偉大なものの一つでしたし、イルカのようなエレガントさを求めて、スキューバを使わずにフリーダイビングにこだわるのも、内なる力の一つなのでした。
文字が大きくページの余白に余裕があり、ブルーの写真も挟まれているので、抒情あふれる仕上がりになっているようです。
偉大なものへの憧れ、内なる力を信じて追求…、こんな姿勢に、イルカやクジラとの距離が縮まったのかなと思いました。
捕鯨に関する小説・ノンフィクションを数冊読んでいたので、新鮮な感覚で読むことができました。 -
風邪をひいた息子の隣で読んだ本。
熱を出してぐずる息子から離れて家事をすることもできず、本の中でのみカリブ海の潮騒を感じる。
「クジラはとても大きな脳をしている。人間の比ではないし、身体に比較しても大きい。しかもクジラの生活には何の苦労もない。海の中で最も大きな生き物だから、敵というほどの敵はいない。食べるためにあくせくすることもないし、着るものの心配も金の苦労もない。出世しようと身をすりへらすこともない(中略)では、クジラはあの大きな脳で何を考えているのか?物質的なことは何一つ考えなくていい。そういう問題があることさえ知らない。とすれば、あとは哲学的な瞑想しかないじゃないか。宇宙とは何か、存在とは何か、自分が今ここにいるとはどういうことか、時間とは?」
ここを読んだとき、あぁこの本を買って良かった。と思った。
2018.12.17読了 -
幸福な日々の記録。読了感は瞑想後のような旅行後のような。
2017.8.9
3週間ジャックと共に過ごした日々の記録。記憶の奥深ーくに残るだろう、残ってほしい。
クジラは大きな脳を持ちながら物質的なことは考える必要がない、とすればあとは哲学的な瞑想(夢)しかないじゃないか
クジラが見る(夢)を共にみたい。一緒の時を過ごしても、クジラもイルカも海へ、ジャックは船へ帰る。淋しそうな満足の表情。幸福だけじゃない、多分それがいい。
2020.6.20 -
ジャック・マイヨール。
映画グランブルーのモデルになった人物、憧れるひと。
ジャック・マイヨールという人 そのものが伝わってくる描写。
その心の広い海の人とカリブ海で過ごした至福の時間。
時間の流れが明らかに異なる、でも確かに実在した時間。
宝物みたいな時間が詰まった旅行記。
さらに高砂氏の写真がとても素敵だ。どれも波の音、水の中の独特の無音、イルカ達の鳴き声、そしてジャックの呼吸が聞こえてきそうなショットばかり。
ジャック・マイヨールのように、シンプルに真っすぐ生きていたいと思わせてくれる1冊。 -
日本のプロフリーダイバー、篠宮龍三さんが敬愛するジャック・マイヨールとの旅を綴った詩的な本。
星の王子様の翻訳で有名な池澤夏樹さんと、海洋写真で有名な高砂淳二さんという、
私からすると奇跡的な組み合わせで作られた一冊。
電子書籍で刊行してくれたこと、大変に嬉しく思います。
全体を通して、ひたとクジラを追いかける優雅でいて、ちょっと浮世離れした、
ずっと海の中に潜っていることを思わせる本です。 -
クジラやイルカの話も興味深いけど、やはりジャック・マイヨールという人の生き様が心に残る。最も印象的なシーンは、スキューバダイビングをやらない理由についての問うた時に、「あれはエレガントではない」と答えるところだ。そのひと言に、彼の自然や人間に対する哲学が凝縮されているように感じた。たしかに、写真のなかのジャック・マイヨールは、一見みすぼらしいおじいさんのようでいて、とても「エレガント」に映る。それは、己の肉体一つで海と向き合ってきた誠実さ、真摯さから来ているようにも思われる。
ネットで人物検索をすれば、ここに描かれた姿とは違う一面も持っていたようだし、それが自死という意外な最期を招いたのかもしれない。でも、この幸福な日々の記録も、きっと真実の一部分であったはずだ。矛盾のない人間などいないだろうから。 -
ミニコメント
深い青色の海の写真は、自分も潜っているような感覚に。素潜りで水深105m潜ったジャックと過ごした日々の記録。
桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/265341 -
生きることそのものへの喜び。真の知。 -
もっと真っ青な写真のついた大型の本だった。
その本は登録になさそうだった。
ジャックマイヨール。
永遠の少年。
だいぶ壮観な本棚になってきましたね
いつも非常に面白い取り組みと思ってレビュー読ませて頂いてます
それにしても「クジラ」が...
だいぶ壮観な本棚になってきましたね
いつも非常に面白い取り組みと思ってレビュー読ませて頂いてます
それにしても「クジラ」がテーマ、題材になってる作品って本当に多いですよね
それだけ「クジラ」が人の生活密接に絡み合っていて、かつ人の感性に働きかける存在であることの証なのかもしれませんね
いつか真似っ子したいと思います
その時のテーマは…ダイオウイカで!(図鑑読んで終わるわ!)
コメントありがとうございます。
あと数冊で、この勝手な企画も終わりにしたいと思います。「月間」と銘打っ...
コメントありがとうございます。
あと数冊で、この勝手な企画も終わりにしたいと思います。「月間」と銘打ったので、ほぼ予定通りなのですが…。
私自身、初めてのことで、クジラ以外を読めないハンデ(?)を抱えながらの読書は、苦しくもあり新たな気づきもありで、一長一短でした。でもまぁ、やらない後悔よりはよかったかなと、一人で納得しています。
ひまわりめろんさんのレビューから、いつも刺激をいただいております。鋭い指摘・感性に、唸ることもしばしばです。
今後ともよろしくお願いします。