- Amazon.co.jp ・本 (558ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101318172
作品紹介・あらすじ
通常、ハワイと呼ばれる太平洋上の島々。しかし島本来の言葉では、ハワイイと発音される。「南国の楽園」として知られる島々の、本当の素顔とは?キラウエア火口を覗き、タロ芋畑を見に行き、ポイを食べる。サーフィンやフラの由来を探り、航海技術の謎を探る…綿密な取材で綴る、旅の詳細なレポート。文庫化にあたり、新たに2章を追加した。ハワイイを深く知りたい人必読。
感想・レビュー・書評
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タイトルの文字を見て思わず「誤植?」と思ってしまいます「ハワイイ?」。
しかし、表紙の日本語タイトルの下、「ハワイイ紀行」の英訳タイトル「Cruising Around Hawaii」そう、「ii」iの文字が重なっています。そもそも本来、英語の単語にこのような綴りはありません。現地の元々の発音に沿ってのスペルHawaii(ハワイイ)なのです。詳しくは本書中の著者の説明を読んでいただくとして、このこと一つとっても想像できるように、この本は「ハワイ」と聞いて一般の人が普通に思い浮かべる、芸能人やお金持ちのリゾート地、ホノルルやワイキキビーチ、キラウェア火山観光といったところ、太平洋の楽園「常夏の島・ハワイ」の旅行ガイドではありません。
今年の夏8月、テレビや新聞等で報道されたマウイ島での火災、壊滅的な被害を受け、多くの犠牲者が出て、今も復興がなかなか進んでいない、かって、王国の首都が置かれていたラハイナの中心市街地の著述にしても、王国の実態、外界との接触、交流、それらのアメリカの統治になる前の歴史を具体的な記述で描いていきます。
著者の池澤夏樹は、ギリシアや沖縄にも住み、観光地のオフシーズンのありようについてもエッセイ等で描き、語っているように、観光地としてのハワイイでない部分、サーフィンやフラも光が当たっているところだけでなく、もっと根源的なところについても迫っています。また、観光ではなく、現地の、生活者としての島民の暮らしについても自身の取材、文献探索、読み込みにより、丹念に描き、トータルなハワイイを把握しようとしています。中身は深いですが文章は平易です。
観光地としてのハワイだけでない、ハワイイを知りたい人、また、ハワイに限らず、それぞれの地域で暮らすということ、人間の営みの根源について考えてみたい人、ぜひ手に取って読んでみて下さい。
へろへろ隊員 井上詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白いです❗
ハワイイに行きたくなった‼️
(なぜ「ハワイ」ではなく「ハワイイ」なのか?
知りたい方はは本書をお読みください。) -
ハワイを題材として、人類、文化、歴史、植物、地理から、科学と宇宙にまで至る様々な考察に、非常に沢山の学びと刺激を得ることができた。内容的には間違いなく紀行文というより、文化人類学と自然科学に関する論文に近いものだった。
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なぜ気付かなかったのだろう。HAWAIIはなぜ「ハワイイ」でなく「ハワイ」と呼ばれていたのだろう…と、本のカバーを見て思い、ページをめくると、そこには素顔のハワイイの姿がとても丁寧に描かれています。「南国の楽園」としてあまりにも有名な島々の素顔です。雑誌の連載をまとめた単行本が1996年に発行され、文庫化にあたって加筆されたまさに「完全版」がこれです。
ハワイイという場所には、リゾートなどという浮ついた総称を簡単に一蹴できるだけの力のようなものがあります。ひとたび訪れると、そこにはちゃんと、大地・海・植物・動物といったものたちが厳然としてあります。そして、そこに住む人々の食生活も宗教も文化も、その大地や海のうえに成り立っているのです。著者はくまなくハワイイを巡って綿密な取材をし、サーフィンやフラの歴史にも迫ります。ハワイイに行く前にもおすすめですが、現地で読むのもおすすめ。まさにハワイイのバイブル的一冊といえるでしょう。 -
完本!保存版!何度でも読み返します。
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★3.5ですか。
生態系から見たハワイイのお話です、そして人間も生態系の中の一つという見方に立ってます。当然と言えば当然ですけれども。
当方、それほどハワイイには思い入れもございませんが、こんな分厚い本が上梓されるほどの魅力があるのだということは否定しません。
確かに多くの人を狂わせる何かがあるな、と直感的に思います、この本読むと。 -
2020年1月4日読了。
●フラは神話的な要素と個人の感情と技術の全てを
表現する非常に高度な踊りである。
●元々カラパナはハワイイ人にとっては重要な土地
言ってみれば神々から特別の恩恵を受けても
いいはずの場所だった。
●ハワイイの火山の女神ペレ P82
ペレはなかなか難しい神であるとハワイイ人は言う。
ハワイイの神話の神々はもちろん一神教の全知全能の
神ではない。
彼女はキラウエアに住んで、溶岩の流れを左右する
権能を備えている。
●ビショップ博物館
→元々はカメハメハ王家直系の王女とその夫のアメリカ
人の個人的なコレクションから始まって、その後展示
も充実し、今では教育・啓蒙の機関としての活動
も広く行っている。
●ニイハウ島 P123
→ハワイイ諸島の人が住む島の中では最も西に位置。
→ロビンソン一族が所有
→ハワイイ人を住まわせて、島の中で通用する言葉も
ハワイイ語のみで
昔ながらの暮らしぶりを守っている。
→島のほんの一部は観光客にも解放されているが、
島の中を自由に歩くことは許されない。
→ヘリで行って、着陸地点の周囲を少し見て、
その日のうちにヘリで戻らなければならない。
●メハメハメ
→芯がとても固くて鉄の斧も歯が立たないということで
有名。
→昔のハワイイでは最も大木になる種類のひとつだった
●ジェイムズ・クックの進出に関して
倫理というのは基本的には個人の問題だから、
社会全体が反倫理的なことをする場合
それを指摘する者はどうしても少数者になる。
それは十五年戦争の間の日本の反戦主義者の立場を
考えてみればよく分かる。
実際の話、“倫理というのは習慣であり、多数決なのだ”
●カメハメハの登場 P200
三つの王国の第一は、クックの死にも関わったカラニオ
プウの統べるハワイイ島ならびにマウイ島東側の
ハナ周辺。
二番目は慈悲なき戦士王カヘリキの支配下にあるマウイ
島の残り部分とカホラウェ島、ラナイ島、それにオアフ
島。
最後がカヘリキの弟カオエが君臨するカウアイ島。
カメハメハはカラニオプウの甥にあたる。
1753年頃、ハワイイ島の北部コハラで生まれた彼は
若い時から体格においても知力においても格段に優れて
目立つ人物だったらしい。
英雄には伝説がつきまとうと言えばそれまでだが、
クックの部下のジェイムズ・キング中尉は彼のことを
「酷いと呼んでもいいほど勇猛な顔立ちだが、非常に知
的で、観察力に富み、良い性格をしている」
と書いている。
●1819年5月18日、カメハメハ大王は世を去った。
その墓所は秘密にされ、今も知られていない。
●1819年
→最初の捕鯨船がラハイナに到着
→最初の宣教師を乗せた船がハワイイ人をキリスト教徒
にすべくアメリカの港を出た。
●カアアフマヌ(大王の21人の妻の中で最も愛され、
信頼されていた)は大王の死後半年にして、カプの廃止
を宣言。
→カプはポリネシア語で言うタブー、宗教的理由に
基づく禁忌のことである。
ハワイイではこのシステムは古来強い強制力を
もっていて、違反者が殺されることも珍しく
なかった。
→いわばカプは共同体の自衛手段だ。
ある時期を限ってある魚の漁を禁じるカプのよう
に、今日の視点から見るならばエコロジカルな意義
が認められるものも少なくない。
→1819年11月、2つのカプを敢えて破る
・男と女が一緒に食事をすること
・女に禁じられたバナナやある種の魚などの食べ物
を食べること
●1881年から世界一周旅行の途中でカラカウア王は
日本に立ち寄った。
ここで彼は明治天皇に会い、外務卿・井上馨と移民増強
について交渉した。
●フラとは何か。フランクの説明によれば、フラとは手の
動きや足の動き、それに表情などで詩的感情を表現する
ものだという。全ての始まりは詩である。詩が朗唱さ
れ、その言葉に合わせて振りが決まる。
言葉の一つ一つを決まった振りで表現する、いわば一種
の手話のような踊り方もあるが、彼はもう少し自由に考
えて動きから動きへの流れの美しさを重視している
とのこと。詩が最初にあるというのは大事だと思う。
●ポリネシアは刺青が広く行われた地域として有名であ
る。刺青を意味する英語のタトゥーの語源はタヒティ語
のタタウだという。
ポリネシア人は実に力強い神の像を木や石で作った。
イースター島のモアイ像が最も広く知られているが、
島ごとに様々な像が作られ、崇められ、拝まれてきた。
ハワイイで最も大事な四柱の神はポリネシア起源であ
る。
四柱とはすなわち、父にして、太陽、水、その他生命を
支える自然の恵みの体現者であるカネ、男性的な力の源
泉、戦の神であるク、平和と農業、豊穣、暗雲、風と雨
と海の音の神ロノ、それに海と海の風の神である
カナロア。
●初めてボードの上に立ったのは、ジョージ・フリースと
いう若者だったと伝えられる。
カリフォルニアに初めてサーフィンを紹介したのも彼で
ある。
伝説のサーファー:デューク・カハナモク P339
●ドール社は成功した会社である。松ぼっくりに形が似て
いることから松の林檎(パイン・アップル)と呼ばれる
ことになったこの奇妙な果物をシロップ漬けの缶詰にし
てうる。これは二十世紀のアメリカを象徴する商品にな
った。
ジェイムズ・D・ドールは1922年に360平方キロ
あるラナイ島の事実上全てを100万ドル、
すなわち1エーカー12ドルという安値で買った。
売主はハワイイ先住民ではなく、ボールドウィンという
元宣教師の一族だった。
⚫️ハワイイ諸島全体で珊瑚礁が少ない。
⚫️鳥島でアホウドリの羽毛を採り巨万の富を得た、
玉置半右衛門。
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日本人の海外旅行先として最も有名であろうハワイ。Hawaiiの綴りのとおりハワイイが発音どおり。西洋文明に接触する前の先住民、さらに人跡未踏の悠久に思いを馳せる紀行の傑作。
単なるガイドブックの枠を超えた壮大なスケールの作品。その土地に筆者がとことん惚れ込んだからこそ生まれた奇跡の作品のように思える。
ハワイの先住民の文化、言語そしてハワイ諸島固有の動植物まで。実に奥深い文明批評としても味わい深い。
ほとんどの観光客はオアフ島ホノルルのみの訪問だろう。本書を読むと他の島も含め味わうのが本来のハワイイ紀行であることを痛感する。
旅、紀行、歴史に関する本は多かれど洞察力、スケール、本としての頁数、どれを取っても大きな一冊です。 -
自身をイスロマニアと呼ぶ池澤さんの本だからおもしろくないわけがないと思って読み始め、いっしょに諸島をめぐったような気分で読了。そういえば「南鳥島特別航路」も大好きで繰り返し読んでいる。
ものの見方が示唆に富んでいる。もやもやと感じていながらどう言えばいいのか分からないことに言葉を与えてくれる。池澤さんの本ではそういう体験がとても多く、この本もそうでした。一部を切り取ることができず、ひたすら手で書き写すのが快感となる文章。押しつけがましさや教訓臭さのない文体で、思索に誘われる。難しい問題もあるのだけれど、それでも印象を一言で言えば「爽やか」。
文庫なので写真の小さいのが少し残念。単行本の方を買えばよかった。 -
大陸から遥かに隔絶したこの太平洋の真ん中の島々に、ヒトはどのように移り住み、そして生きてきたのか。その歴史と文化を自然条件とともに見聞し考察する。
西洋の大航海時代まで外部との接触もなく、いわば閉鎖系の社会で生きてきたこの島の現在の有り様を知ることで、グローバルな時代に生きる我々が次に向かうべき世界のヒントを探る。
自然や歴史を俯瞰する鳥の目と、タロ芋作りからプランテーションや観光業への生業の変遷や、フラやサーフィンといったハワイ生まれの文化をつぶさに見る虫の目と、著者の好奇心と博識ぶりは相変わらずだ。
この島に吹き付ける貿易風と打ち寄せる波の音を感じながらこの本を読んでいると、まだ行ったことはないけどなんとなく知ってるつもりになっていたハワイが「ハワイイ」に改るのを感じた。
ここ数年ウクレレを習っている私としては、ハワイイの国民的シンガー「イズラエル カマカヴィヴォオレ」についても触れられていて、とても嬉しかった。