カデナ (新潮文庫)

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  • 新潮社
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本棚登録 : 181
レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (574ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101318219

感想・レビュー・書評

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  • ものすごくおもしろかった、
    この小説、もっともっと評判になってもいいのに! いま読まれるべき本ではー?

    沖縄の基地だし、ベトナム戦争だし、でもっと硬くて小難しい暗い感じかと思っていたら、まったく違って、すごく読みやすくてエンターテイメントで、青春モノだし恋愛モノだった。
    沖縄の人々や生活、米軍基地、アメリカの軍人、戦争、そういうなんとなく知っているというレベルだったいろいろなことを、情報じゃなくて、身近なことという感じで小説をとおして知ることができるというか。
    ごく普通の人々がスパイ活動にかかわって脱走兵を逃がす、という小説の主軸となる話も、純粋にサスペンスフルだったし。
    あらためて、池澤夏樹さんて、ほかの著作を読んでわかっているはずなんだけど、人々を、女性や若者を描くのがうまいなあと。登場人物それぞれの語りで話がすすむのだけれど、その語り口調が読みやすいうえにそれぞれ「らしく」(らしい、とかいうのも失礼な感じだけど)てすばらしい。
    そして、声高になにかを主張するんじゃなくて、エンターテイメントな小説という形にして楽しませつつ、いろいろ考えさせるところがすばらしい。
    脱走兵を逃がす組織について、一致団結して、とかではなく、ひとりひとりが自分で考えてゆるく集まる、やめるのも自由、っていう考えにはなんだか感動すらした。

  • 小説としての出来はそんなに良いとは思わない。池澤夏樹はもっともっと良い小説をほかに書いている。だけど、わたしはこれをコザで読んだ。コザ十字路を歩いた日に、プラザ・ハウスをバスの中から眺めた日に、米軍基地で機械工として働くおっちゃんと話した日に、沖縄民謡を三線で弾き語りしてもらった日に、この小説を読んでいた。体験知と、小説から得たものが自分のなかで一体化していく実感を生々しく感じながら読めたこと。この小説を読むうえで最上の読み方だったと思います。一度あたまに入れた知識を、歩いて食べて話して聞いて得た体験を、大事にかかえて考えていかなければならない。

  • 「宝島」が評判になって、大いに喜んでいますが、これもあります。ネタバレとかも含めて、ブログに書きました。覗いてみてください。
    https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/201905150000/

  • ベトナム戦争中の沖縄、嘉手納。
    そこには、米軍基地があり、そこには、米軍で働くフィリピンとアメリカのハーフ・フリーダ、米軍基地にも出入りするロックバンドのドラマー・タカ、太平洋戦争時のサイパンで家族をなくし一人で戦後の沖縄に暮らした朝栄、がいた。

    ある日、朝栄はサイパンでの知り合いであるベトナム人安南さんに出会い、ベトナムに住む人々のためにスパイをしてみないかと持ちかけられる。

    それは米軍の爆撃計画を入手し、ベトナムへ知らせると言うものだった...


    戦時中の沖縄についての小説はいくつか読んだが、戦後の米軍基地ができ、そこから各地の戦地へ出撃もする沖縄については、知らないことが多かった。
    戦争は全体ではなく、一人一人の行為や恐怖、悲しみに繋がってしまう。そんな状況でどうやって生きていくかが大切。

  • ベトナム戦争末期の沖縄を舞台に米軍基地内と外を結ぶスパイ組織とともに日常を送る見ず知らずの4名の物語。沖縄現代史とともに戦争と平和の本質を問う。メッセージ性の強い青春小説といった風情。

  • 池澤夏樹氏の中で初めて読んだ作品。
    読み応えがあり、スピード感もあって、最後まで飽きさせなかった。

  • 舞台は、1960年代後半、B52が配備された沖縄。米軍高官の秘書のフィリピン人女性、模型屋の店主、そしてドラマーの少年。アメリカ施政権下の沖縄で、それぞれが戦う”戦争”。それぞれが遠い彼の国を思い繫ぐそれぞれの闘い。そして最後に訪れた出来事――。
    置かれた環境に安住しながらも抱えるジレンマと、それに合抗い生きる術を見つけた彼らの闘い。当時の沖縄に、静かながらも、でも確かに存在したと思う意識感情。自分がその時代を生きてたら、どう生きてただろうか。そして変わらぬ沖縄。どう生きるか、は不変のテーマだと感じた本。ありがとう!

  • 限りなく☆5に近い☆4。池澤夏樹のある方面における最高傑作だと思う。

    沖縄人から語られた話というのは読んだことがない。でも、沖縄人の感覚は沖縄人にしか分からないし、本土の人間はそれを知る術がない。伝え聞くことはできるが、感じることはできない。なぜなら、自分たちは沖縄人じゃないから。そういう意味ではすごく濃密に沖縄の目線で書かれた話だった。

    昨年、沖縄に行った。きっかけはcoyoteの沖縄号と探検バクモンとCocco。

    coyoteは、沖縄とアメリカの関係を深く切り取った上、沖縄人のアイデンティティにも切り込んでいた。

    探検バクモンでは、嘉手納基地の中にあるアメリカタウンを取材していた。小波津という沖縄の芸人がこんなことを言っていた。「沖縄人は基地をなくしたいと思ってる。でも、沖縄は米軍による収入が多くを占めていて、アメリカは生活の中にある。基地をなくしたいと思いながらも、若者は基地の中で働くことをステータスのように感じることもある。アメリカはすぐ傍にあって、沖縄人はいつも矛盾の中に生きている」

    あとはCocco。慰霊の日に出演したNews23での筑紫哲也との会談や、めざましテレビのインタビュー。「沖縄人はいつも自分たちの願いは叶わないものだと思ってきた。ずーっとなんくるないさと言い続けてきた。でも、基地移設の話が挙がったとき、いままでなんくるないさーと言い続けていた沖縄人が、初めて自分たちの願いが叶うかもしれないってことを信じた。でも、最後にはやっぱりダメだった。」

    ずっと負け続けてきた沖縄。自己矛盾の沖縄。アメリカの沖縄。そんな沖縄に触れたくて、去年生まれて初めて沖縄に行った。

  • 三人の視点で描かれる、ベトナム戦争中の沖縄の夏。戦争、反戦、セックス、ロックンロール、そしてスパイ活動。

  • 池澤さんの長編というとじっくり向き合うエネルギーがないとしんどいかなと思ったけど、解説にもあるとおり1968年の沖縄を舞台にした”青春小説”ということで、すんなり入っていけた。沖縄のことは少しはわかるけれど、ベトナム戦争となるとほとんど知らない。テーマは重たいし、悲しいこともあるけれど、湿っぽくなくて、読後感も悪くない。

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著者プロフィール

池澤夏樹(いけざわ なつき)
1945年、北海道帯広市生まれ。1964年に埼玉大学理工学部物理学科に入学し、1968年中退。
小説、詩、評論、翻訳など幅広い分野で活動する。著書に『スティル・ライフ』(中央公論新人賞、芥川賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『花を運ぶ妹』『カデナ』『光の指で触れよ』『世界文学を読みほどく』『アトミック・ボックス』等多数。また池澤夏樹=個人編集『世界文学全集』、同『日本文学全集』も多くの読者を得ている。旅と移住が多い。
2018年9月から、日本経済新聞にて連載小説「ワカタケル」を連載。

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