朱夏―警視庁強行犯係・樋口顕― (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101321523

作品紹介・あらすじ

あの日、妻が消えた。何の手がかりも残さずに。樋口警部補は眠れぬ夜を過ごした。そして、信頼する荻窪署の氏家に助けを求めたのだった。あの日、恵子は見知らぬ男に誘拐され、部屋に監禁された。だが夫は優秀な刑事だ。きっと捜し出してくれるはずだ-。その誠実さで数々の事件を解決してきた刑事。彼を支えてきた妻。二つの視点から、真相を浮かび上がらせる、本格警察小説。

感想・レビュー・書評

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  • 警視庁捜査1課強行班係・樋口顕。
    仕事もでき、周りからの信頼も厚いにもかかわらず、なぜか自分に自信がない樋口。

    樋口の妻・惠子が行方不明に…
    樋口は、荻窪署・氏家と必死に恵子を探す…
    手がかりが掴めない…
    恵子のことを何も知らなかったこと
    恵子の話をちゃんと聞いていなかったこと
    後悔する樋口…

    やがて、誘拐の可能性が高まり、容疑者も…

    しっかりものの恵子。
    きっと樋口が助けにくると信じている。
    『あなたは間違いを犯した。』
    『私の夫を敵にまわした。』
    樋口に対する信頼を感じる。
    恵子だからこそ、照美もしっかりと育ったんだな、と感じる。
    今回の事件で、樋口は恵子をより一層大切だと感じたはずだ。

    高度経済成長時代のモーレツ社員の父親。
    そんな父親を馬鹿にする母親。
    それを目の辺りにし、育ってきた容疑者。
    完全に大人を舐めきっているような…
    少子化、核家族化が生んだ事件なのか…
    人間関係が希薄になりすぎているのか…
    人との付き合い方がわからないのか…
    大人がちゃんと躾をできていないんだろう、自分が生きるのに精一杯で。

    ちょっとしたことで、ここまでやるのか。
    何か事件の深層に疑問が残る…

    何かいろいろ考えさせられる。


  • 今野敏「警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ」第2作目(1998年4月単行本、2007年10月文庫本)。
    1作目より断然面白かった。捜査の小気味良い進行とドキドキ感と期待感、夫婦の信頼感、相性のいい捜査の相棒との信頼感、そして最後に権威権力者を出し抜く痛快なオチまで用意されている。このシリーズにもハマるかもしれない。

    主人公の警視庁捜査一課強行犯係の樋口顕警部補の妻恵子が失踪した。翻訳の仕事で金曜日の午後、翻訳家の自宅に下訳の原稿を届けた後行方不明になった。誘拐の可能性があるがわからない状況だ。樋口は独自に捜査を始める。月曜日の朝には警備部長脅迫状に関する捜査本部がたつ。それまでに独自に解決すべく荻窪署生活安全課の氏家譲巡査部長に協力を依頼し、前作「リオ」の相棒コンビが事件解決に動く。

    2日間のタイムリミットで優秀な刑事が頭を働かせ、足を使い、徐々に誘拐犯の特定に近づいていく。樋口の自宅は多摩プラーザ、翻訳家の自宅は初台で所轄署は代々木署、そして誘拐犯と見越したのはその交番に勤務する若き警察官安達弘だった。
    恵子はその警察官のアパートにはいなかった。どこかに監禁されているはずだ。もう命の危険性もある。樋口は代々木署に状況を話して捜査の緊急配備をして貰う。
    恵子はゴムマスクを付けた男に高円寺のマンションの一室に手錠を掛けられて監禁されていた。しかし優秀な刑事である夫が必ず救ってくれると信じている。犯人との会話で誘拐の理由を知り得ることになるのだが、恵子が犯人に言い放った言葉が凄い。「あなたは間違いを犯した。私の夫を敵に回してしまった」と。
    樋口が身を挺して恵子を守り、氏家と代々木署の捜査員が安達を逮捕した後の恵子の言葉はただ一言「来てくれると思ってました」と。凄い信頼です。感動です。
    そして恵子が安達から聞き出した誘拐の目的の中で、警備部長狙撃計画のことを聞き、樋口は2件の事件を同時に解決することになるのである。
    安達犯人説に当初懐疑的だった樋口を説得したのが氏家だ。警視庁の刑事と所轄の生活安全課の警察官がこれからも相棒になるのかわからないが、きっといい関係は続いてちょくちょく出て来ればいいなと思う。

  • <天>
     僕はまず 『無明』から読み始めてしまった。読み終わるまでには それが「樋口班シリーズ」のその時の最新刊だという事が分かり,出来ればシリーズのっけの作品『リオ』から読み始めたかったのになぁ と思った。が,既に手遅れだった。 その後は『ビート』『廉恥』と読んだ。どちらも全部面白かった。もう順番はどうでもいいと思い直して次は本書を読んでいる。あ,また感想文以前で終わりそうだなぁ。いつもの事だよあんたは, とまた言われそうだ。

     今作の準主役であって翻訳のお手伝い仕事をしている樋口係長の奥さんにパソコンを買ってあげたくなる下りがある。そう言えば似た様なお話が先日読んだ前出の『廉恥』にもあったなぁ。ある事件に巻き込まれた樋口の娘にパソコンをねだられる下り。樋口は存外嬉しそうなのだった。

     この文庫本には解説が無い。大概の文庫本にはあるのにこれには無い。解説がある事が当たり前なのにこれには無い。しつこいが無い。なんでないのだろう。ググって調べてみるか。いや 今流行りの chatGPT に訊いてみるか。でも奴には上手く訊かないと とんでもないでまかせを平気で言うからなぁ。

     「朱夏」かあ,いい言葉だなぁ。僕の年齢は朱夏はとうに過ぎ白秋も終わりに近づきつつある感じだろう。まあ玄冬までは今少し時間があると信じて読書にいそしもう。すまぬ。

  • 1998年4月幻冬舎刊。書下ろし。警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ2作目。2007年10月新潮文庫刊化。誘拐された奥さんの捜査にあたる樋口さんが良い。奥さんの振る舞いが良くて、犯人確保のラストシーンは、熱くなりました。

  • 樋口顕シリーズ第二弾。ある日、妻が何者かに拉致されてしまい、樋口は氏家とともに単独で捜査に乗り出すことに。

    まったく手がかりのない状態から細い糸を手繰り寄せるように少しづつ事件の真相に、そして妻の居所へと近づいていく過程に思わず引き込まれてしまいました。事件は金曜の夕方に起こり、週明け月曜から別の事件の捜査本部が立ち上がる予定でそれまでに事件を解決しなければ、という”タイムリミット”という制約もあり、読み手も樋口とともに焦燥感を味わいながら読み進めることができます。

    前作では被疑者となったリオに惹かれつつ自分をどうにか保とうとする樋口の姿が描かれていましたが、本作でも少ない手がかりと徐々に少なくなってゆく残り時間の中で、囚われてしまった妻を探そうとするあまり、ときに迷い、ときに自らの欲望に従い進もうとする樋口の姿が描かれています。

    また、一時的とはいえ妻を失ったことにより家庭での妻とのコミュニケーションについて我が身を振り返る樋口の姿をみて、そういえば自分も、と気づく男性諸氏も多かったのではなかろうか…。妻の話しに生返事、といったことは多くの方に当てはまりそうなシチュエーションですよね。

    そんな樋口とは対照的に、妻・恵子は夫が必ず自分を探し出してくれると最後まで信じている。このあたりのお互いに対する想いは真逆なんですが、そうであるからこそ余計に素晴らしい奥様だなと思いましたね。二人の想いからは、なんだかんだで、心の奥底では固い絆が読み取れます。夫婦として最高のかたちではないでしょうか。

    このシリーズは安積班やSTシリーズのように多くの仲間とともに事件を解決する、いわゆるチームプレイを描いたものではなく、樋口自身の葛藤が軸なんですかね、まだ2作目なのでなんとも言えませんが、3作目以降も読み進めます。

  • 今野敏さんのシリーズ作品でも人気のあるキャラ、樋口顕。シリーズ第2弾。本作では樋口の妻が誘拐?されてしまい樋口が右往左往する様が描かれる。事件を公にする前に解決を試みるようにしたい樋口は1作目でバディを組んだ氏家に協力を仰ぎながら立ち向かっていく。このシリーズは樋口の警察官らしからぬ心の機微が読んでいて面白くもあり歯がゆくもある。悩みながら立ち向かっていくので爽快感はないが仕事をする人間からするとその揺らぎが共感を生む。事件の犯人自体はまあすぐ分かるのでミステリ的には面白味は少ないかもだが人情ものとして読むのが良かったりする。

  • 奥さんが誘拐される、というお話。刑事の妻は色々大変そうです。でも度胸もしっかり据わっていたので安心して読めました。夫婦だからって特別な事はなく、いたって普通。それが分からない育て方はしたくないなぁ。氏家さんが良いパートナーで時々笑ってしまいました。

  • 夫婦ってこんな感じかも?

  • あらすじ
    あの日、妻が消えた。何の手がかりも残さずに。樋口警部補は眠れぬ夜を過ごした。そして、信頼する荻窪署の氏家に助けを求めたのだった。あの日、恵子は見知らぬ男に誘拐され、部屋に監禁された。だが夫は優秀な刑事だ。きっと捜し出してくれるはずだ-。その誠実さで数々の事件を解決してきた刑事。彼を支えてきた妻。二つの視点から、真相を浮かび上がらせる、本格警察小説。

  • 樋口顕シリーズ 新潮文庫で出ていた。
    奥さんが誘拐されちゃう話です。
    落ち着いて自分のおかれている状況を把握して、相手が何を望んでいるのか?って考えられないよ普通!
    今回は樋口さんよりも奥さんがカッコ良かったです。

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著者プロフィール

1955年北海道生まれ。上智大学在学中の78年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。2006年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を、08年『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。

「2023年 『脈動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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