隠蔽捜査 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 5154
感想 : 600
  • Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101321530

作品紹介・あらすじ

竜崎伸也は、警察官僚である。現在は警察庁長官官房でマスコミ対策を担っている。その朴念仁ぶりに、周囲は"変人"という称号を与えた。だが彼はこう考えていた。エリートは、国家を守るため、身を捧げるべきだ。私はそれに従って生きているにすぎない、と。組織を揺るがす連続殺人事件に、竜崎は真正面から対決してゆく。警察小説の歴史を変えた、吉川英治文学新人賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 初めての今野敏さん作品。
    読みやすくて2日間の通勤で読了してしまった。

    読み始めた当初は主人公:竜崎に対して、エリートで仕事はできるけれど自分の考えを曲げない頑固な人だなと感じていたが、物語が進むにつれて不器用なだけで仕事に対する信念や一途な行動がカッコイイと感じるように気持ちが変化した。同期や部下、家族が竜崎を信頼しているのも今までの竜崎の想いからくる行動が正しい結果を生んできたからなんだろうなと思った。

    同期の伊丹と竜崎の掛け合いがなんか良くて、伊丹の危機を救う竜崎の迫真の気概と行動力には感動もした。
    性格も性質も異なる2人だからこそ良い相棒になれるのかな。

    また、事件と並行して竜崎家でも問題が発生。
    今まで仕事一筋で家庭のことは妻に任せきりだった竜崎も今回ばかりは決断を迫られる。迷いながらも最終的に取った決断は父親としての役目をしっかり果たしていて、反抗的だった子供たちとの絆も深まるきっかけになったと思う。

    警察という巨大な組織の中で自分の信念を貫き通すのは相当な意思が必要だろうに、それをブレることなく決断できる竜崎はやっぱり一目置かれる存在だ。
    自分に不利なことでも受け入れて前に進む姿勢は容易ではないけれど見習いたい。

  • 隠蔽捜査は、9冊連載されている。ほとんど読んだが、初版がよい。主人公は「出世よりも官僚としての役割を果たしているかどうかの方が重要」と考えている。昨今の官僚はもう一度役割を自問して欲しい。

    • ダイちゃんさん
      なおなおさん、今晩は。コメントして頂き、有難うございます。そして、“フォロー” と いつも “いいね” を頂き、感謝してます。励みになります...
      なおなおさん、今晩は。コメントして頂き、有難うございます。そして、“フォロー” と いつも “いいね” を頂き、感謝してます。励みになります。さて、本棚に上げた、「隠蔽捜査 続編」のレビューに書きましたようにに、主人公は “原理原則” に忠実に生きる人で、少し羨ましく思います。私は、今年、愛犬を亡くし、ブクログ始めました。これからも、楽しく読書したいと思います。どうぞよろしくお願い致します。
      2021/10/03
    • なおなおさん
      ダイちゃんさん、こちらこそ「フォロー」と「いいね」をいつもありがとうございます。
      私はブクログのおかげで知らなかった作家さんや本を知り、読書...
      ダイちゃんさん、こちらこそ「フォロー」と「いいね」をいつもありがとうございます。
      私はブクログのおかげで知らなかった作家さんや本を知り、読書が楽しくなってきました。
      そして何よりも、ブクログ利用者さんオススメの本が非常に参考になり、読みたい本であふれております(いつ読めるやら…^_^;)
      ダイちゃんさん推し⁉の山崎豊子さんの本もその一つです。
      これからもよろしくお願いします。
      お返事をありがとうございました。
      なおなお
      2021/10/03
    • ダイちゃんさん
      返信コメント有難うございました。
      返信コメント有難うございました。
      2021/10/03
  • 某刑事ドラマでの主人公の所轄刑事が警察官僚たちに向かって叫んだ「事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きてるんだ!」世代(……よりだいぶん前です、すみません^_^;)のわたしにとっては、「え、警察官僚が主人公の警察小説って面白いの~!?所轄と対立とかキャリア仲間の足の引っ張り合いとかそんなありきたりなものでは満足しませんよ~」とちょっと高をくくってました。
    ところが初っぱなから、この物語の主人公である竜崎の言動に「うん?世の中の奥さん方を敵に回すような、いけ好かない奴だな」とまずはムッとして、けれど次第にこの男何か違うぞと第一印象とのギャップに戸惑いはじめ、「お、今までにない新しいドラマが始まるな、これは!」と姿勢を正して本腰を入れて読み始める始末……竜崎の警察官僚としての「役割」「役目」を命をかけて果たそうとする姿に熱くなります。

    ある連続殺人事件を巡り、警察全体の秩序を守るため間違った指示を出そうとする国家警察。その方針を受け入れざるを得ない地方警察。その捜査本部の責任者である幼なじみの伊丹に待ったをかけるのが竜崎です。
    世の中は正論が通用するとは限らないんだと言う伊丹に、正論が通用しないのなら、世の中のほうが間違っているんだと竜崎は言い放ちます。その通りなんですよね。本当、その通り当たり前のことなんですよ。それが現実でも、いつも物事が難しくこんがらがったり、うやむやになったり、簡単に事が運ばないのはなぜでしょう。
    狭い取調室で2人が激論を交わすこのシーンが、私の中では山場でした。外に漏れてはいけないから決して大声で言い合うわけにはいかない分、余計に2人の緊迫した空気感が伝わってきます。

    そんな竜崎も家庭では、妻の冴子からは「無能な父親」と言われてます。けれど、家庭で起きたある事件に対して、竜崎が父親として取った行動に冴子は一番父親らしいことをやったと伝えます。その決断は子どもたちにも、きっと父親としての竜崎の想いは伝わっているでしょう。竜崎も冴子さんには頭が上がらないのではないでしょうか。「国のために働きなさい」と家庭のことを一手に引き受けて竜崎の背中を押してくれる冴子さんを、大切にしてくださいね。彼女がいてこそ、国家のために全身全霊で働けるのですから。

  • 吉川英治文学新人賞受賞作

    東大から警察官僚にまで上り詰めた竜崎伸也は、長官官房の総務課長。

    家庭のことは妻に任せっきりであり、有名私大に合格した息子に東大以外は大学ではないと浪人させ、部下にも心を許さない。
    原理原則を大切にし、不正や隠し事は一切しない。
    まわりからは変人と呼ばれている。

    調和や人間関係を考えると正論ばかりでは違和感を持たれるのは当然だろう。

    だが、読み進むうち、そんな竜崎の行動の奥にある真意がだんだんとわかってくる。

    警察組織を揺るがす連続殺人事件が起き、家族内でも大きな問題に直面する中で、苦悩する竜崎。

    終盤で、何度か熱いものがこみ上げてきた。
    そして、私の竜崎に対する見方がまったく変わっていた。

    北上次郎さんが解説に書かれていたように、本作は警察小説でもあるが、感動的な家族小説でもあった。

    今野敏さん初読みだったが、警察小説で感動するなんてとても意外だった。
    シリーズ作品を読み続けていきたい。

  • 元厚労省事務次官の村木厚子さんが、今野敏さんの作品を熱く語っていたので興味を持ち、本書を手に取りました。
    ネタバレになるので割愛しますが、
    「ある場面」から、本を読む手が止まらなくなりました。読まれる方には、まとまった時間を取ることをお勧めします。

    個人的に、主人公の奥様の言動から「夫と他の男性を比べたら、プライドを傷つけるだけだからダメだよ〜」と思いながら読んでしまいました。

  • 警察官僚竜崎伸也はある意味理想のキャリアなのかもしれない
    周りからは型物で変人だと思われているが不正や隠蔽をよしとせず時には迷いながらも信念を貫く姿勢に彼を深く知る人は敬愛の念をいだき読者もまたそのひとりとなっていく
    今野敏さんいったいどんな思いを込めてこのヒーローを生み出したのか
    シリーズを読み進めていくうちにそのあたりのこももっと深く知れるのだろう

  • 事件は起こるけど、ミステリーじゃなく、人間ドラマ。警察小説、私にとっては新感覚でした。竜崎さんが変人という設定でしたが、64や慟哭の主人公と重なって見えて、変人には思えず。むしろ、こんな上司だったらやりやすいかも?私は変人ではありません。

    • ダイちゃんさん
      tumさん、今晩は。ダイちゃんと思います。いいね!ありがとうございます。隠蔽捜査は、主人公のキャラクターが好きです。自分にないものへの憧れで...
      tumさん、今晩は。ダイちゃんと思います。いいね!ありがとうございます。隠蔽捜査は、主人公のキャラクターが好きです。自分にないものへの憧れですかね。愛犬が永眠した時から、ブクログ始めました。まだ3ヶ月位しか経ってません。皆さんの本棚を参考にさせて頂きます。よろしくお願いいたします。
      2021/08/25
    • tumさん
      ダイちゃんさん、こんばんは。コメントありがとうございます。隠蔽捜査シリーズを読み進められているようで、参考にさせて頂いております。主人公、私...
      ダイちゃんさん、こんばんは。コメントありがとうございます。隠蔽捜査シリーズを読み進められているようで、参考にさせて頂いております。主人公、私も好きです。ブクログを始めて、読みたいなと思える本の幅がぐっと広がりました。本棚や感想、これからも参考にさせて下さい^_^ 愛犬さん、天国でブクログ見てくれていると良いですね!
      2021/08/25
    • ダイちゃんさん
      返信して頂き、ありがとうございました。
      返信して頂き、ありがとうございました。
      2021/08/25
  • ここまで正直に生きるって、なかなかできない。理想だが、現実的ではないな。でも竜崎はかっこいい。

  • 原理原則に相対して実直で、寧ろ正論ばかりの言動が周囲との軋轢も生む、警察官僚竜崎。
    好きになれないキャラだなと思っていたけど、物語が進むにつれその魅力に完璧ファンになってしまった…

    シリーズなのか… 困った。読みたいシリーズものがどんどん増えてゆく…

  • 「こういうのっていい​​なあ」と面白く読みました。

    主人公は東大卒の警察官僚ですが、頑なに自分の信念をつらぬいています。融通の利かない性格もあいまって周りに「変人」と言われております。自分は出世したいためにキャリアを目指し努力してきたのではなく、悪いことをしたら謝り反省する、法に違反したら処罰を受ける、そういう普通のことに重きを置くという信条なのです。いわゆる上級役人エリートは、自分のために栄達を望みますでしょう。だから少々方向の違う主人公は職場では浮きがちです。しかしそれが意表を突いていて、沈着冷静に次々と難問に立ち向かっていくこのキャラクターを作り出した作者の慧眼に好感度です。

    確かに「警察小説」では新しい方向です。わたしの好きな松本清張さんがご存命なら、真っ青になってたかもです。

    わたくしが知らないだけでかなり前にブレイクしていたのですね!映像化されてもいて。
    シリーズの次作『果断』も期待します。

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著者プロフィール

1955年北海道生まれ。上智大学在学中の78年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。2006年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を、08年『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。

「2023年 『脈動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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