疑心―隠蔽捜査3― (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101321578

作品紹介・あらすじ

アメリカ大統領の訪日が決定。大森署署長・竜崎伸也警視長は、羽田空港を含む第二方面警備本部本部長に抜擢された。やがて日本人がテロを企図しているという情報が入り、その双肩にさらなる重責がのしかかる。米シークレットサービスとの摩擦。そして、臨時に補佐を務める美しい女性キャリア・畠山美奈子へ抱いてしまった狂おしい恋心。竜崎は、この難局をいかにして乗り切るのか?-。

感想・レビュー・書評

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  • 1.著者; 今野氏は、大学在学中に「怪物が街にやってくる」で、問題小説新人賞を受賞し、作家デビューしました。隠蔽捜査シリーズで脚光を浴び、第一作「隠蔽捜査」で吉川英治文学新人賞受賞。第二作「果断 隠蔽捜査2」で、山本周五郎賞と日本推理作家協会賞を受賞しています。中学生の頃、北杜夫に憧れ、詩を書き始めました。北杜夫独特のユーモア感覚と小説全体に漂う上品さに 魅了されたそうです。空手の指導者という武道家でもあり、異色の作家です。
    2.本書; 警察庁のキャリア官僚の活躍を描いた警察小説シリーズの第三弾です。概略は、主人公の竜崎が米大統領の訪日第二方面警備本部長に抜擢されます。そして、テロ情報が入り、米シークレットサービスとの摩擦や単独捜査に走る所轄刑事及び女性刑事の畠山への恋心等の葛藤の中で、難局に取組む竜崎の活躍を描いた小説です。
    3.個別感想(気に留めた記述を3点に絞り、私の感想と共に書きます);
    (1)段落2より、「感情と理性のどちらが大切かと問われれば、竜崎は迷わず理性だとこたえる。・・・人間を人間たらしめているのは、間違いなく理性なのだ。理性こそが大人の証しだ」
    ●感想⇒この考え方に賛成です。しかし、理性が大切なのは分かっていても、喜怒哀楽の無い人間なんて、つまらない気します。私は、理性を基本にしても、泣きたい時は泣き、笑う時には大いに笑うというメリハリのある人間関係を好みます。
    (2)段落10より、「日本人の中には、外国人におもねって、相手の習慣に合わせようとする者が少なくない。おそらく、それは劣等感の表れなのだろう。竜崎は、日本にいる限りは外国の客に合わせる必要などないと考えていた」
    ●感想⇒私は、米人3人と数カ月間、仕事をした経験があります。当初は、言葉のコミュニケーションがうまく取れず、外人アレルギー気味でした。しかし、仕事を続けていく中で、相手の性格が分かり、コンプレックスが和らいでいきました。外国人と言っても同じ人間なのです。意思疎通のポイントは、相手の国の文化への理解と言語力だと痛感しました。
    (3)段落22より、「情報を整理・分析・統合し、常に的確な指示を出すために準備をしておく。それが管理者の仕事だと思った」
    ●感想⇒管理者の役割としては正しいでしょう。しかし、管理者には、組織は人間集団なので、現場への理解と行動科学(人間行動に関する学問)の勉強が必要と思います。右、左と指示だけするマネジャーは失格です。
    4.まとめ; シリーズ物を続ける事は、難しいと言われます。この「隠蔽捜査3」も前二作に比べると、前述3.のような気に留める記述があるものの、竜崎は女性警察官に心を奪われて、仕事の精彩を欠いています。隠蔽捜査は、主人公竜崎のキャラクターが魅力です。徹底した合理主義者で、判断のモノサシが、揺るがない理屈で押しまくる点です。私は、竜崎に警察機構の中で、隠蔽されるものを明らかにしていくストーリー展開を期待します。とは言え、竜崎の言質に惹かれ、隠蔽捜査シリーズを読み続けます。     ( 以 上 )

  • この巻いらない…
    3巻目で血迷ったか竜崎!!
    恋だと⁈仕事中にボーっとするだと⁈
    あなた仕事以外はポンコツなんだって!!
    女のキャリアで仕事できて美人でアイヌって…

    完全に今野敏氏の趣味じゃないのかい⁇

    投げ捨てるの我慢してとりあえず流し読みだ!!
    ☆2にしてやる…
    またヘッポコ竜崎になったら許さぬ(´^`)プイッ


    • ひまわりめろんさん
      いやだからこの巻があるから、竜崎が決してパーフェクトな人間じゃないってことが分かるんじゃん!
      自分たちと同じ地平に立っている
      自分たちもそれ...
      いやだからこの巻があるから、竜崎が決してパーフェクトな人間じゃないってことが分かるんじゃん!
      自分たちと同じ地平に立っている
      自分たちもそれぞれの立っている場所で、それぞれが属している組織で、リトル竜崎を目指すことができるんですよ
      現実の目標に設定できるんですよ!
      2023/09/24
    • ひまわりめろんさん
      まぁ、人間としての不完全さを表すのに中学生みたいな色恋じゃなくても良かったんじゃね?とは思うけどw
      まぁ、人間としての不完全さを表すのに中学生みたいな色恋じゃなくても良かったんじゃね?とは思うけどw
      2023/09/24
    • みんみんさん
      女じゃなくて毎回アニメで泣けばいいし笑
      女じゃなくて毎回アニメで泣けばいいし笑
      2023/09/25
  • 隠蔽捜査シリーズ第三作

    前作に続き大森署署長を務める竜崎は、アメリカ大統領来日の警備で、所轄の署長としては異例の第二方面警備本部長に任命された。
    そしてその補佐役としてやって来た女性キャリアの畠山に、思いがけず熱い恋心を抱いてしまう。
    それは、原理原則を大切にし、不正や隠し事は一切せず、妻からは唐変木と言われる竜崎にとって、夜も眠れず、仕事にも支障をきたすほどの一大事だった。

    そんな中、テロ計画の情報が入り、
    管轄内の羽田空港では不審な男が防犯カメラで確認された。
    竜崎の肩に重責がのしかかる…



    今作は意外にも竜崎が恋をするという、シリーズ第一、ニ作からは想像もできない展開。
    しかも、それはまるで中学生が恋しているようで、周りに動揺を隠せないほどなのだ。

    恋するという感情から一番遠いところにいるような、あの竜崎が…

    本人に言わせれば「事故のようなもの」なのだが、国賓の安全を守る重大任務に就きながら、心ここに在らずの状態を必死に隠そうとする竜崎が、なんだか可愛く見えた。

    それでもラストはやはり竜崎らしくもって行くところが流石!

  • 2012年(発出2009年) 426ページ

    『恋愛など、発情した猫の感情とそれほど違わない。人間を人間たらしめているのは、間違いなく理性なのだ』
    冒頭で、アイドルの山咲真美が一日署長を勤めることになり、署内の雰囲気が浮かれ気味になった際に竜崎伸也が思っていた言葉です。
    今回は、そんな竜崎が、美人の女性キャリアに恋して苦しんでしまうお話です。

    アメリカ大統領の訪日の警備計画に関し、竜崎は羽田空港を含む第二方面警備本部本部長に任命される。竜崎の補佐役として女性キャリアの畠山美奈子が送られてきた。その畠山美奈子に、竜崎は嵐のように激しい恋愛感情を抱いてしまう。四六時中彼女のことが頭から離れず、他の男性といるところを見ると嫉妬し、そばを離れると喪失感を覚え、苦しみのあまり夜も眠れなくなってしまう。そして、米大統領警護のため派遣されたシークレットサービスとの摩擦。大統領に対するテロ計画があり、それに日本人が関与しているという。大統領専用機は羽田空港に乗り入れる予定だが、その羽田空港の防犯カメラに不審な動きを発見し、シークレットサービスのハックマンは即座に羽田空港を封鎖すべきと主張する。国からは空港は封鎖はしないとの決定が。板挟みになった竜崎の判断は? そして苦しい恋心の結末は?

    なんだか、竜崎のいつもの切れ味が影を潜めてしまいます。仕事中もずっと悶々としており、畠山美奈子への感情が仕事に影響してしまっていて、正直イラッとしました。終盤になり、ようやく竜崎は自分の悩みを解決できましたが、このあたりは禅問答の話で煙に巻かれたような。

    このシリーズが、警察官僚・竜崎伸也の人間的成長を描く物語だとしたら、必要回なのかもしれません。また、娘の美紀の恋愛問題に対する竜崎の姿勢の変化を描くのにも必要な悩みだったのかも。

    今回、竜崎語録で1番共感した言葉です。

    『出世するというのは、それだけ権限が増えることを意味している。権限が増えれば、できることも多くなる』

    私は、同様のことを上の立場に立ちたくない同僚に言ったことがあるからです。しかし、責任も増える立場には立ちたくないみたい。

  • シリーズ③
    唐変木が恋に落ちた♡ これまではステキな変人だったのに、恋に翻弄される、凡人中年になってしまった竜崎伸也。

    アメリカ大統領来日に際し、大規模な警備体制を整える。

    到着の羽田空港を含む第二方面警備部長に任命された竜崎。一介の大森署長の竜崎には異例人選である。
    竜崎に責任の重圧をかけて蹴落とす罠⁈
    美人キャリア:畠山美奈子を秘書官としてつけられたのも、ハニートラップ⁈

    そんな中、大統領暗殺計画も発覚して…。原理原則主義が恋煩いに苦悩していく様はコミカル(笑) 今回も大いに楽しませてもらえた!

  • 隠蔽捜査シリーズの3。
    竜崎が美人キャリアに心を奪われ、煩悩に苦しむ。
    禅問答の「婆子焼庵」という公案から解決に導くところが面白い。戸高刑事の活躍もよかった。

  • どうした?竜崎。この牧歌的でお粗末な内容はお前らしくない。竜崎よ、お前は、馬鹿なほど実直で色恋沙汰なんて皆無だったはずだろ。それが、あろうことか元部下でキャリア上がりの畠山美奈子に熱をあげやがって。説教だ!!お前には十分過ぎる妻がいるじゃないか?そうだろ!なんとか言ってみろ。全部妻にバレているじゃないか!恥ずかしい。禅だか、婆ばぁだかよく分からんが、何を納得したんだよ?俺は納得しないからな。今回だけは許してやるが、今度は馬鹿なほど真面目で唐変木なお前が見たい、見せてくれ、頼む。お前が好きなんだ!

  • 今回は恋愛というテーマも含まれます。
    竜崎が考える恋愛が冒頭にありますが、論理的に語られる恋愛論がとても面白い。
    そんな竜崎が仕事に女性にオロオロしてしまいます。
    さてどんな結末が待っているのか。
    ラストのスピード感はたまりません。

    冴子さんは何でもお見通し。
    竜崎は勝てないでしょうね
    いつか冴子さんとの馴れ初めも話しにしてもらえたらなあ。

  • 今回も一気に読んでしまった
    今回は竜崎が部下に恋心をいだき嫉妬に狂う状況が事件と同時進行でこちらのほうも実に竜崎らしい決着を見せとても示唆に富んでいる
    前作、前々作に比べれば一段下がるが十分面白かった

  • 今野敏「隠蔽捜査」シリーズ第3作目(2009年3月単行本、2012/年2月文庫本)。
    主人公は元警察庁長官官房の総務課課長、大森署に署長として左遷されて1年の竜崎伸也47歳、東大卒のキャリアで警視長である。家族は主婦の妻冴子、大学を卒業して広告代理店に就職1年目の娘美紀、東大を目指す予備校生の息子邦彦の4人家族。
    そしてもう一人の主人公が警視庁刑事部長の伊丹俊太郎47歳。竜崎の幼馴染、小学生の同級生で私大卒ながら入庁キャリアの同期生である。
    今回の物語はアメリカ大統領来日に向けての方面警備本部の本部長に竜崎が任命されたことに関わるテロリストとの闘いとあろうことことか竜崎の恋の葛藤の物語だ。
    所轄の警察署の署長である竜崎が警視庁の方面本部長をさておいて方面警備本部長に任命された。その理由について竜崎は探るが警視庁の藤本警備部長も警察庁の落合警備企画課長も言うことは建前だけに聞こえて本音が見えない。
    前作で竜崎に遺恨を持っていると推察される第2方面本部の野間崎管理官が竜崎の失敗を画策したとかという噂は聞くが確証はない。左遷された竜崎だが前作の拳銃立てこもり事件で功績をあげている。竜崎の復活するのを恐れる藤本と落合の画策だと伊丹は言うがそれも確証がない。
    結果的には竜崎はまたもや方面警備本部長としても大手柄をあげ、大役を果たすことになるので最後まで竜崎の本部長任命に裏があるのかどうかはわからず仕舞い。
    先遣隊でアメリカから派遣された二人のシークレットサービス、大統領暗殺のテロ計画が進行しており、日本人の協力者がいるという。羽田空港に怪しい人物が発見され、彼らは空港閉鎖を主張する。やはり竜崎に責任を負わせる為の任命か?と思わせるような難題だ。
    竜崎は彼らに首謀者確保の確約の啖呵をきり空港閉鎖を拒否、大統領来日まで数日とせまり、ここで前作と同様に戸高刑事が大活躍、日本人首謀者を特定するのである。そしてここからが竜崎の凄いところで警察組織の縄張り根性や縦割り行政を一挙に破壊して、警察組織を総動員して瞬時に犯人検挙に到達させるのだ。竜崎が警察組織の中枢に復活する予感を思わせるエンディングだ。
    もう一つのドラマ、竜崎の恋の葛藤物語だが、これは要らない。
    藤本警備部長が竜崎の補佐役に派遣した警視庁警備部の美人のキャリア、畠山美奈子に竜崎が恋をしてしまうのだが、寝ても覚めても彼女のことを想う竜崎の姿は情けないのだ。
    それでも必死に自制をかけるところが痛ましく可哀想でもあるのだが、禅宗の本の禅問答に救われ、吹っ切れ、事なきに終わることになるが、竜崎の恋愛に対する考え方は明らかに変わる。人間的に丸くなり、恋愛について温かく優しくなり、娘の美紀と三村との交際への対応も親身になり、冴子からも何かしら見透かされる。しかし良い方に変わったと指摘する冴子の大きさに竜崎はかなわないと実感させられる場面だ。
    しかし畠山美奈子の派遣も竜崎を失脚させる為の策略ではなかったのかとも竜崎は思ってしまう。
    エンディングでは、皆んな竜崎への賞賛と尊敬の言葉を投げかけ、竜崎を失脚させる策略なんか全くなかったのではないかと思う結末になっているが本当にそうだろうかと思わせる結末でもある。
    方面警備副本部長を務めた警視庁第2方面本部の長谷川本部長44歳警視正、同じく野間崎管理官50歳超ノンキャリア警視、警察庁警備局の落合警備企画課長46歳警視長、総合警備本部長を務めた警視庁の藤本警備部長50歳警視監。これからも登場するであろうこれらの人物の本音を監視しながら次回作以降シリーズを読む楽しみが出来た。

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著者プロフィール

1955年北海道生まれ。上智大学在学中の78年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。2006年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を、08年『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。

「2023年 『脈動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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