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Amazon.co.jp ・本 (512ページ) / ISBN・EAN: 9784101323220
みんなの感想まとめ
因習と運命が交錯する濃厚な物語が展開される本作は、明治時代の越後の寒村を舞台に、半陰陽の旅芸人と村の女性との禁忌の恋愛を描いています。主人公の涼之助は、美貌の裏に秘めた秘密を抱え、村の人々との複雑な人...
感想・レビュー・書評
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ドロドロした日本の因習絡みの話が印象深い坂東眞砂子氏の直木賞受賞作品。上下二巻の上巻。第一部では、半陰陽の若い旅芸人がとある山里でトラブルに巻き込まれ、逃げた先は山姥のもとであった。第二部は鉱山の町にある遊郭の遊女が、マタギと暮らすようになったのだか、生まれた子供が、、、下巻に続く。
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116回 1996年(平成8)下直木賞受賞作。明治時代、越後の寒村が舞台の社会派小説。しきたり、禁忌、地主社会が色濃く残る村の祭りで事件が起こる。タイトルが”やまんば”ではなく”やまはは”となっている理由は読了してから納得する。おもしろい、おすすめ。松井今朝子 『吉原手引草』で遊郭の知識を、熊谷達也 『邂逅の森』でマタギの知識を備えてこの本に取り組むのがベスト。(まるでドラクエの”魔法戦士”のような小説だ。)
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どうしても坂東さんは四国や奈良のお話のイメージが強く、東北の炭鉱、小作人の話だと、情景をイメージするのが難しかったです。「さぁ!読むぞ!」と下巻を読み始めるまで時間が掛かりました。。下巻に続く
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女の負の歴史を思う。女性劣視や権利、そして性の弱者をまざまざと思い知らされる内容だ。やまんばを山姥と書くのではなく山妣と表現し、タイトルはやまはは。うまくつけられたなと感心した。
上巻は女形俳優の話と山に住む女の話。ページ数が多いながらもグッとこの世界に引きずり込まれて先が気になって読むのが止められなかった。
下巻が楽しみでならない! -
再読。
第一部では、労働と子育てに明け暮れ不要な妊娠は命がけでその始末を負わされ、老いれば闇入りかお山迷いが待っている村の女たちの過酷な宿命が語られ、二部でも希望など一つも持てない女郎たちの境遇が語られる。読み進むほどに女は割を食うことばかりとため息。
男が楽だとは言わないが、女の歴史は妊娠堕胎出産が付いて回る分、痛く辛い思いをすることが多すぎる。かと言って、琴のように男と一生無縁で生きていく覚悟もまた別の悲しい痛みを伴う。
先人たちが越えてきた厳しい人生の冬。だから、この本を読むのは雪降る真冬が相応しい。 -
ほとんど前知識なく読み始めたため、
最初は伝奇ホラー小説だと思って読み進める。
うーむ、どうも様相が違うなと思ったけど、
かと言ってこの物語はどう着地するのか
ずっとわからないまま読んでいたのが
ちょっともったいなかったかも。
下巻まで読了してはじめて、
なんとなく作品のテーマらしきものが
おぼろげに見えてきた状態。
涼乃助含めて、やっぱり女性の生き方が
テーマだったように思う。
濃密で出口のない閉塞された村社会のなかで
生活手段の乏しい女性が自身の境遇、
運命に立ち向かいながらどう生きていくか。
坂東真砂子は、徹頭徹尾このテーマだった。 -
通勤電車で読むには、ちょっと向かない小説。
直木賞受賞作品だったので期待して読んだものの、上巻だけでお腹いっぱいな感じでした。
なんとか下巻も流し読みしました。
「死国」の方が好きです。
下巻でいきなり女性の視点からの物語が始まり、この女性が一体何者なのかと興味はそそられたものの、何となく先が予想されてしまい…。
方言も読みにくさを増長させているのか?
私は長過ぎて好みではありませんでした。 -
先日亡くなった坂東眞砂子さんの直木賞受賞作。あらためて読んでみてその力強い筆致に惹かれた。
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冬の雪国の冷たさがじんじん伝わる。山の厳しさ、生と性と血が色濃く描かれる。山妣となった女の話が凄い!色んな感情が揺さぶられ、前半の涼之助の話が霞む。しかし物語は繋がり緊張感と共に下巻へ。
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読んだのは1996年の新潮社単行本だけど、登録できないね・・・
単行本は2段組み488ページの大部だが、明治時代の東北に生きる人々を、お国訛りの会話で活写する筆力に引きずられて、ぐんぐん読める。人々に「子をとって喰う」と恐れられる白髪の山姥を中心に、浅草から師匠と村にやってきた美しい芸人・涼之助、妻に去られることを恐れる地主の若旦那・鍵蔵と、どこか得体のしれないその妻・てる、子守の娘・妙、その姉の瞽女・琴、多数のひとびとの運命が雪山で縒り合わされ、凄惨な殺戮がくりひろげられることになる。
これまで怪奇風味の作品が多かった作家だが、自然の猛威と人のつくった掟にしばられながら、里に鉱山町に生きる人々の暮らしの圧倒的ディテールにうならされる。とりわけラストパートの熊と人間の対峙は圧巻。獣の牙に己れの骨をバリバリと割られ肉を剥ぎとられる感じがリアルすぎてマジ怖い!その厚みある描写を通して、伝説の存在である山姥となる女の姿が吹雪の向こうに見えてくる。
軛を絆に変える女もいれば、軛も絆もふり捨ててしまう女もいると、登場人物は語る。残酷なほどに無頓着な山の力を、畏れとして対象化することなく、己のものとすることによって山姥となる女・いさは、冬眠する獣のように、うつらうつらと夢を見ながら、産んだ子を忘れていく。それは人の世に求められる「母」の規範からもっとも遠いが、それゆえに、「ふたなり」として疎外されてきた涼之助にとっては、突き放す冷たさと同時に救いとなる温かさをもあたえてくれる。てると鍵蔵のセックスとは対照的に描かれる彼の自慰にも、人の世から棄てられることを、自ら捨てることへと変えた者が到達する解放がある。
子を産む存在にして子を食う山姥は、異形として忌み嫌われるが、実はどんな母の中にも潜んでいる。今の私たちはそのことを忘れて見ないようにしているだけなのだ。殺した子の死体を抱いて体は土に戻り、魂は山姥となって雪山を駆けていく妙の母は、そのことを思い出させるようである。 -
雪深い越後の山里を舞台に繰り広げられる、壮絶な愛憎のドラマ。
山神への奉納芝居の振り付け役として、村の地主は東京から二人の役者を招いたが、妖しい雰囲気を持つ弟子の涼之助の存在が、次第に村の平穏を乱していく…。
序盤では、主筋となる涼之助の物語と、山に住むという山妣の言い伝えがどのように結びつくのかと思ったが、後半の意表をつく展開の連続には圧巻である。民俗学的にも意味深く、久々に直木賞受賞に大きく頷ける作品に出会った感じだ。山妣、かっこいい。(特にラスト。)
☆直木賞 -
おお。死国の作家さんなのか。
最初の出だしで若干つまずくも、そこを超えれば面白くぐんぐん読める。 -
終盤は壮絶な展開でした
いさとの別れのシーンはグッとくるものがあった -
越後の山里に芝居指南のため東京から旅芸人が招かれるところからお話は始まる。瞽女(ごぜ)の琴や、地主の家で子守をしている妹の妙、熊の肝を遊郭に売りに来るマダギ、明日の命も知れない鉱山夫など。時代は明治末期の文明開化とはいえ、昔ながらの生活を送る寒村が描かれる。
師匠扇水を養父にもつ涼之助と寒村に伝わる山姥伝説の思わぬつながりが二部では語られる。自分の意思とは関係なく遊郭に身を落とし、周りの遊女が死に行く様を見ながらも、それでも生きる希望をすてないイサには凄みがある。運命を素直に受け入れる瞽女(ごぜ)の琴とは対極な存在だ。どんな時代でもどんな状況でも、女性は子を産み育てる強さには何事も敵わない。 -
第116回直木賞。
表題の山妣(やまはは)はやまんばのこと。山を住処とし、迷い込んだ子どもを喰らうと言われている。
第一部は、雪山の里が舞台。ここに東京から扇水と涼之助という芝居芸人が訪れる。しかし涼之助は、世話になっている旦那の家の若奥様に手を出し、若旦那に殺されそうになり逃げ出す。
第二部は、時代がさかのぼった鉱山町。ここにある遊郭の遊女と鉱夫が駆け落ちする話。
閉鎖された集落での人生の機微などの描写が細かく、しかも涼之助はふたなり(両性具有者)であるなど、内容はややおどろおどろしい。 -
面白い。
寒い時期の、スッキリしない日に読んだらピッタリ。
子供は欲しい。それにかわりはないけど逃げ腰になるほど出産描写が怖過ぎ。 -
直木賞というものは、その作家渾身の最高傑作が満場の賛意を得て射止めるというよりも、幾度か候補に上がって落選した後に、言葉は悪いが“もうそろそろあげとこか”的なタイミングで適当な作品に贈られるケースが多いように個人的に思っていたのだが、この坂東眞砂子の「山妣」に関しては決してそうではなく、これぞ直木賞という看板にふさわしい類稀なる傑作である、と痛感した。
ストーリー自体は決して難解ではないものの、重要で重厚なテーマが幾つも、時に独立して、時に絡み合いながら描かれ表現されているという、成分的には非常に複雑な作品。
何本もの太い幹や枝がそれぞれ個別の生命体であるがごとくねじり合いまとわりついている、鬱蒼とした広大な森の深奥に聳え立つ太古の巨木のようだ。
ほんのちょっとしたボタンの掛け違いのようなものが発生し、あるいはそれが積み重なり、境遇と状況はぐるぐると変容してゆく。
ああ、あの時こうしていれば、ああしていなかったら。
私は決して運命論者ではないが、ひょっとしてすべての人間はそれぞれの運命という明白な存在によって動かされているだけなのか? と疑ってしまうことしばしば。
そして、そんな人々を翻弄し呑み込んでいく運命を形作る数々の事象、数々の出来事は、それを観察する者の立場により、いくつもの異なった顔を見せる。
それぞれの些細なボタンの掛け違いは、ある者にとっては毒であり、ある者にとっては薬である。
白は黒。
神は悪魔。
この世は1つかもしれないが、人間が棲む世界というものは人間の数だけ存在する。
誰もが、自分が中心に据えられたただ1つの世界に棲んでいる。
1つの“事実”に対して無限に存在しうる“真実”を灰色に彩るのは、どうしようもなく哀しすぎる肉親の情愛。
浮世のすべてを捨て去り、隔絶された山に生きることを選択した女の母性を、私たちは一体どう受け止めればいいのだろうか?
限定された地域に土着しながら、そういったことを超越したスケールで繰り広げられる伝奇小説は、物語が進むにつれてどんどん加速してゆき、最後にはまさに疾走する。
「裏切らないはずの人が、自分でも気がつかないうちに、誰かを裏切ることになってしまう。世の中とは、そんなものだ」。
著者プロフィール
坂東眞砂子の作品
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