フィンガーボウルの話のつづき (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 67
  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101324517

感想・レビュー・書評

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  • そう、これこれ!
    僕が読みたかった吉田篤弘は
    まさにこんなん(笑) 

    世界の果てにある食堂と
    ビートルズの『ホワイト・アルバム』をめぐる
    無国籍風味な大人の童話集といった味わい。


    夜の喧騒を一手に引き受ける「世界の果て食堂」。
    入り口の青いガス燈と真っ白なテーブルクロス。
    ゴンベンを擁するあらゆる領域に詳しい「ゴンベン先生」。
    黒ビールに串焼きを食べながらの秘密の会合。
    壁にドアノブだけを30個並べた「小さな冬の博物館」。
    たった一作だけを発表して雲隠れしたイギリスの作家。
    唯一ジョン・レノンを待たせたサンドイッチマンの伝説。
    バディ・ホリー商會のシシリアン・ソルト。
    ジャン・ギャバンによく似た海辺の漁師。
    謎が謎を呼ぶ「閑人(ひまじん)カフェ」。
    鞄の中でくたくたになった
    サリンジャーの「フラニーとゾーイー」。
    薄汚れたシナトラ食堂と老犬フール。
    数億年分の時間が詰まった
    空から落ちてきた星の欠片…。

    いやはや、なんという心地よさ。
    少しずつ少しずつ、
    ささやかにリンクし共鳴し合う登場人物たちの妙。
    何度となく読むたびに
    毎回好きな話が変わっていくのもいい感じ(笑)

    日本でも外国でもない「ここではないどこか」で起こる
    シュールで奇妙で、
    それでいて微笑ましい16+1のショートストーリー。


    『白河夜船』のレビューで
    吉本ばななの作品はストーリーがどうこうより、
    ほとばしる切ない感性を楽しめばいいと書いたけど、
    吉田篤弘の連作短編集で言うなら
    一冊トータルとしてどうこう評価するのではなく、
    読んだ人それぞれが
    それぞれのお気に入りのストーリーを見つけて、
    そのショートストーリーを
    何度も何度も読み返すのがベストな楽しみ方だと思う。
    (また吉田さんの短編は何度読み返しても、そのたびに心地良さが持続するところがスゴい!)


    ということで僕のお気に入りのストーリーは、

    一人旅を続ける女性カメラマンは
    「親愛なる、夜ふかしの皆様…」で始まるラジオの声に導かれ、
    「6月の月放送局」のある島を目指す…
    『その静かな声』、

    しわくちゃな白シャツがトレードマークの有名な作曲家と
    同じアパートに住む少年とのひとときの触れ合いを描いた
    『キリントン先生』、

    「レインコート博物館」で働く仲良し三人組の活躍に
    頬がゆるみっぱなしになった(笑)
    『小さなFB』、

    予告編専門の映画監督を夢見るちょっと変わった青年「ろくろく」が
    村上春樹の「風の歌を聴け」の鼠とオーバーラップした、
    ほろ苦くちょっと切ない青春ストーリー
    『ろくろく』、

    10歳の小学生が初体験する
    ビートルズのレコードと焼きたてのピザの味。
    お店で買ったピザが崩れないように
    15秒おきに水平になってるか確かめまくる小学生二人が
    ホンマ微笑ましくて笑えます!
    『ピザを水平に持って帰った
    日』、

    かな~♪


    詩的で寓話的なストーリー。
    強烈に郷愁を誘う、
    かつてそこにあった
    懐かしくて切なくて美しい世界。

    村上春樹の「カンガルー日和」同様に
    いつでも読めるように鞄に入れて、
    公園のベンチやカフェでまったり読むのにも最適だし、
    自宅で英国風ティータイムを気取って(笑)
    紅茶にビスケットをつまみながら
    ゆるゆると読むのも
    おそろしいくらい合いそう(笑)。

    あっ、もちろんBGMには 
    ビートルズの
    『ホワイト・アルバム』をお忘れなきよう(笑)♪

    • むう&ぴょんこさん
      プロボクサーの方と仲間になるのは初めてですねぇ~!!
      いやあ~、光栄ですっ(笑)
      身に余る嬉しいコメントをアリガトッ!!
      円軌道の外さ...
      プロボクサーの方と仲間になるのは初めてですねぇ~!!
      いやあ~、光栄ですっ(笑)
      身に余る嬉しいコメントをアリガトッ!!
      円軌道の外さんの的確なレビューに比べたら、私達のなんて拙くて・・・ただの暴言と私見でまくりの超偏見レビューなのにそんなに褒められちゃうと逆に困っちゃうよ??
      えへへ・・・私達は犬派だけど、これからもヨロシクね!(笑)
      2015/05/25
    • 円軌道の外さん

      むう&ぴょんこさん、
      たくさんのお気に入りポチとコメント返しありがとうございます!

      あはは(笑)
      プロボクサーと言っても
      も...

      むう&ぴょんこさん、
      たくさんのお気に入りポチとコメント返しありがとうございます!

      あはは(笑)
      プロボクサーと言っても
      もう引退寸前のポンコツなんで、
      そんな大したもんじゃないですよ(^^;)
      それにむう&ぴょんこさんのレビューは
      読んでいて「ああ~、この作品を好きなんやろなぁ~」っていう
      作品に対する愛が文章の端々に溢れてるので
      レビューを読んで受ける印象は
      みんな好感しかないと思います(笑)
      (それにみんなを楽しませようというサービス精神からくるユーモアもバッチリやし、作品をけなしたりはしないところも惹かれる理由です笑)

      それにそもそもレビューなんて
      それぞれの「好き」を自由に語るものだから
      偏見があっていいと思います(笑)


      あっ、僕も昔はずっと犬を飼ってたので、
      基本的には動物全般に好きですよ~(^^)
      毎朝走ってますが、
      散歩中の犬を見ると必ず触らせてもらってます(笑)

      ではでは、今後ともよろしくお願いします!
      また後ほどそちらの本棚にも
      お邪魔しますね♪
      2015/05/30
  • 無性に読みたくなって再読。たぶん四読目くらい。
    隅々まで大好きな短篇集。

    「世界の果て」と呼ばれている食堂の話から始まり、食堂の物語のしっぽをつかもうともがいている吉田君の話から、サンドイッチマンの叔父さんの話になり…、全く違う話に移っているようでいて実はどんどん奥に誘い込まれているような感覚。
    もうどんどん引き込まれてしまう。
    心地よくて肩の力が抜けてくるのが分かる。
    あぁ、なんて幸せなんだろうと思いながら本を閉じた。
    すぐにまた最初から読みたくなってしまってパラパラとめくってしまう。

    今度は無性にホワイト・アルバムが聴きたくなってしまった。

    • takanatsuさん
      「クラフト・エヴィング商會っぽいですよね」
      はい!いいですよねぇ…。もう大好きです。
      「クラフト・エヴィング商會っぽいですよね」
      はい!いいですよねぇ…。もう大好きです。
      2012/06/26
    • 円軌道の外さん

      コメントとお気に入りポチ
      ありがとうございました(^O^)


      わぁ〜
      自分も吉田さんの小説は
      もう無条件に好きです(笑)
      ...

      コメントとお気に入りポチ
      ありがとうございました(^O^)


      わぁ〜
      自分も吉田さんの小説は
      もう無条件に好きです(笑)

      小難しいことなんて話してないし、
      日常のありふれた話なんだけど

      必ずここではないどこかへ
      一瞬にして連れてってくれるし、

      いつまでも浸っていたくなるほど
      心地いいんですよね♪


      だけどこの小説は
      『読んでみたい小説リスト』に
      書いたままで
      まだ読んでなかったんで、
      近いうちに
      必ずGETしたいと思ってます(笑)(*^o^*)


      てか、ホワイトアルバムって
      ビートルズのアレかな?(笑)

      2012/06/28
    • takanatsuさん
      はい。ビートルズのアレです(笑)

      はい。ビートルズのアレです(笑)

      2012/06/29
  • 登録3000冊目はこちらでした。

    吉田篤弘さんらしい世界観。
    世界の果てにある食堂。消息不明となった謎の作家。静かな声。レインコート博物館。ビートルズのホワイト・アルバム。

    既読本については全部レビューを書きたいけど、さすがに中高時代に読んだものは記憶の彼方。。理想としては「あれ、どんな内容だったっけ?」と思ったときにレビュー読み返して記憶が蘇ると良いのだけれどなかなか再読する余裕がないよ。

  • 吉田篤弘の小説デビュー作をようやく。作家自身のエピソードもまじえ虚実が織り交ざった凝った構成の連作短編集。不思議なことに(?)いちばん最近読んだエッセイ『木挽町月光夜話』と、ほぼ10年の時を経てリンクしているような印象を受けました。

    そして同時に、ベタだけれど、デビュー作にはその作家のすべてが詰まっている的な説を、妙に納得させられてしまう1冊。これとほぼ同時進行だったようだけれど『つむじ風食堂の夜』を始め、すでに読んだ他の吉田篤弘作品の萌芽(エッセンス)が、すべてこの1冊の中にもう「ある」んですよね。

    収録されている短編どれも好きでしたが、何故か唯一ビートルズではなくフランク・シナトラがらみの「フールズ・ラッシュ・イン」が印象的でした。フォースターの『天使も踏むを怖れるところ』という小説のタイトルがアレグザンダー・ポープ『批評論』の一節「天使も足を踏み入れるのをためらう場所に、愚か者は飛び込む」(Fools Rush In where angels Fear to Tread)からの引用だと以前教えてもらったんですが、この「フールズ・ラッシュ・イン」という曲、まさに同じ部分の引用なんですよね。思いがけないところで豆知識が増えました(笑)

  • 大好きだよ、クラフト・エヴィング商会、吉田篤弘さん。旅行に取っておくつもりだったのに我慢できずに読んでしまった。彼らの書く作品の悪いところはどこまで事実でどこから虚構かが分からないところ!レインコート博物館てあるの??ちいさなFBに会いに行きたいじゃないか!

  • おだやか/静か/少しだけファンタジー/どこかにありそうでない町、どこかにいそうでいない人/ビートルズが出てきたり、まったく出てこなかったり/作者とはたぶん好みが似ているのだろうな、という感覚/中扉のイラストも味があって良い

    その静かな声
    キリントン先生
    フールズ・ラッシュ・イン
    の3編がとくによかった。

    ————————————————

    ●ろくろく
    おー、この予告編だけの映画、昔同じようなことを考えたような。予告編って、ショートムービーなわけで、そのワクワク感、肝心なところは言わない感、好きなんだよなあ。これに限らず、ちょこちょこ共感できるポイントがある。
    予告編への偏愛、分かる。俺の片岡義男好きにも、ちょっと通じる。
    この短編にはビートルズもホワイトアルバムも出てこない。んー、全部入っているスタイルで通してほしかったかな。この作品自体は連載? 書き下ろし? 作中の前半では連載という記述あったけど。

    ホワイトアルバムの通しナンバー、Aがつくのとつかないのがある。
    ホワイトアルバムが、モチーフ。

    ●フェニクス
    通しナンバーついてない。おや?
    インタールードとしてとてもいい。こういうところも含めて、この人好きだなー。堀江に春樹とタルホを足したといったら乱暴か(笑)。

    ●ハッピー・ソング
    200ページ
    北の涯ての灯台に魅かれる、というのに惹かれる。
    「北に何があるの?」
    「何もない。だからいい。自分で作り出さなければならない」

    ●フールズ・ラッシュ・イン
    港町の食堂の窓から、日曜の朝に降る霧雨を眺めている。窓ガラスには水滴がびっしりと付いている。向かいの売店の老犬は、頭を撫でると「ふぅん」と鼻を鳴らすような声を立てる。

  • 目次より
    ・「彼ら」の静かなテーブル
    ・ジュールズ・バーンの話のしっぽ
    ・ジョン・レノンを待たせた男
    ・シシリアン・ソルトの効用
    ・閑人カフェ
    ・私は殺し屋ではない
    ・その静かな声
    ・キリントン先生
    ・小さなFB
    ・白鯨詩人
    ・ろくろく
    ・フェニクス
    ・ハッピー・ソング
    ・ピザを水平に持って帰った日
    ・フールズ・ラッシュ・イン
    ・Don't Disturb, Please 起こさないでください
    ・あとがきのかわりにジュールズ・バーンの話のつづき

    ビートルズの(ホワイト・アルバム)を軸としてゆる~く繋がっている連作短編集であるこの本を読んでいる本日、職場で回ってきた業界紙のコラムで(ホワイト・アルバム)が紹介されていたというこのシンクロ。
    それも含めての吉田篤弘ワールドなのでしょうか。

    目次を見ても『フィンガーボウル』は出てきませんが、それぞれがフィンガーボウルの話のようでもあり、ジュールズ・バーンが紡いだ話のようでもあり。
    各タイトルには6桁あるいは7桁の数字がついています。
    頭にAが付いているものと付いていないものがあり。
    これも、ビートルズファンなら知ってる(ホワイトアルバム)のトリビアル。
    初版についていた限定番号になぞらえているらしい。

    まだ宅配ピザがなかった頃、テイクアウトのピザが寄らないように、箱を水平に捧げ持ちながら帰る少年たち。
    家に帰る友人に渡す(ホワイトアルバム)が濡れないようにピザの空き箱に入れて。
    そんな経験がないにもかかわらず懐かしい光景。

    そして、私もシシリアン・ソルトをふんだんにお風呂に入れて、ぷっくりと持ち上げられた身体の中から新しい物語が浮かび上がってくるのを見ていたいと思ったのだった。

  • 16.02.25

  • おそれ入り豆です。

  • 構想はあるのに、なかなか新作に取りかかれずにいる吉田君は、ゴンベエ先生の紹介でスパイスを扱う会社の小冊子に文章を寄稿することになる。
    謎の作家の存在や、ビートルズの「ホワイト・アルバム」に導かれ、いくつかの物語がシンクロし始める。

    2016年2月6日読了。
    読むのは2度目になります。
    ひとつひとつが短いお話なので、眠る前に1ひとつずつ。今回はそんな感じで読んでみたのですが、ちょうどいい感じで気持ちがゆったりできました。
    余談ですが。この作品を読んでから、ずっと気になっていたビートルズの「ホワイト・アルバム」を聴いてみました。ただ、一気には聴けなかったので、ちょっと良さが半減してしまったかも。。。

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著者プロフィール

吉田篤弘

1962年東京生まれ。小説を執筆するかたわら、「クラフト・エヴィング商會」名義による著作と装幀の仕事を続けている。2001年講談社出版文化賞・ブックデザイン賞受賞。『つむじ風食堂の夜』『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『レインコートを着た犬』『金曜日の本』『京都で考えた』『あること、ないこと』など著書多数。

「2019年 『天使も怪物も眠る夜』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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